新薬史観

地雷カプお断り

近況報告として最近の思想や気付きを雑多に書きました

最近まったくブログを更新していませんが、理由は簡単で労働で削られた時間をさらにブログで削るとあまりに自由時間がなくなるからです。ブログを書くのも好きなんですが、読書や二次創作、一次創作に比べると優先順位が低い。というのも、自分というキャラクターにそれほど興味を見いだせないこともありますし、自分は実在より虚構の方が好きということもあります。架空のキャラ大好き!

そういうわけでそれらと戯れる時間や天井を見つめるだけの時間を確保すると、自分語りに等しいブログなんて書いている暇がないわけで(実は自分はかなりタイピングが遅くめちゃくちゃ書き直すし、思考速度もRAM2GBのPCみたいなものなので、ひとつの記事を書くのに4時間くらいかけていることもあります)、結果として放置するかたちになりました。今後この傾向はより顕著になると思います。本を読んでも感想を書けるかわからない。書かなきゃ忘れてしまうんだけど!

結論として、ブログはやはり書くべきですし、そうなるとやはり自分は労働すべき人間ではなかったということになります。労働やめてえ。労働自体は嫌ではないが、労働に時間を取られるのが死ぬほど嫌だ。なんか労働という文字を書いているだけで腹が立ってきたな。みんなで「いっせーのせ」でやめませんか、労働。

まあそう言っても私は実家が裕福なわけでもなく、国民として勤労と納税の義務がありますので、イヤイヤながらも働かざるをえないわけです。実はそのあたりはしっかりしている人間です。常に生活保護の受給資格を狙ってはいますが、家族がみな健在なのでその線は薄い。じゃあ家族全員を猟奇的に殺すかと言えば、そこまで極悪非道な人間ではありません。しかし生活保護は欲しいし、できればこの二十代のうちになるべく自由な時間を確保しておきたいし、やっぱりフリーターがいいのかなあと思いながらも、今後の自由時間を考えると正社員がお得だよな(フリーターより多く稼げて早めに労働からリタイヤできるので)と考えています。

でも、それなら高給の仕事の方がより早めにリタイヤできるし、福利厚生がしっかりしている大企業に就職した方が良かったかなとも思うのですが、自分は(一部の)大企業に勤めている人間、および資本家や投資家とか情報商材屋とかコンサルやってる「すごい人たち」を常に社会的弱者の敵(および弱者への共感性が欠如している人間)として見ているので、自分はそれらになってはいけないという縛りプレイを設けています。資本家とかはともかくとして、「お前が大企業に就職できるわけないだろバーカ」というご指摘は尤もなので、本当に縛りプレイになっているのかは疑問が残るところではありますが、とにかくそういう心地で人生をプレイしているのは事実です。

さて、こう書くと「お前は資本主義の崩壊を画策しているのか」と言われてしまいそうですが、まずそうではないと断言しておきます。資本主義は大嫌いですが、めちゃくちゃ便利なので崩壊してほしくありません。資本主義サイコー!

また、ひとつの横槍として考えられる「そんなに大企業が嫌いならお前は大企業の製品を使うな」というのは批判としてお門違いだと言っておきます。既に製品として市場に出回っておりそれを基に生活が営まれている以上、私たちは大企業の製品を使わざるを得ないし使わないと損をします。洗濯機があるのに洗濯板で衣服を洗うのはマジで時間と労力の無駄です。なので自分は大企業の優れた製品は嫌いではありません。むしろ大好きで愛しています。しかしそれはそれとして(一部の)大企業に勤めている人間と、その精神に恐れてしまうのです。

より詳細を書きますと、自分が最も恐れているのは、自分の社会的な立場を高くすることで徐々に自分と同じ立場の人間しか観測範囲に入らなくなり、次第に世界が狭まり自己の安定性(金銭)を求めるようになることです。

これは大学についても言えそうですが、大学における「学歴」というステータスについては自分の嫌悪の対象外です。これはおそらく「学歴」と「金銭」が大学内においてはほぼ結びつかないからでしょう。勉強したい者だけがよりより研究・学習環境を目指す。これは非常に良い動きであるように思います。

会社もそうであれば(つまり、大企業に行けば行くほどより研究設備が整っている、この会社でなければ生み出せない/得られないスキルがある、社会的に価値がある良い製品を生み出せる、芸術作品のように人の精神を豊かにすることができる、という精神がモチベーションであるのなら)、非常に素晴らしいことだと思います。世の人のために頑張ってくれ……(この利他思想の呼びかけ、自分でもちょっと気持ち悪いなとは思うのですが、自分のなかでそれなりにある利己主義への嫌悪と結びついているっぽい)。

ただ周りを見ると上のような人はあまりおらず、大企業と金銭が短絡的に結びついている人が少なくないんですよね。自分はそれがどうしても嫌なのですが……はい、間違いなくお気持ち表明ですね。本当に自分の偏見・価値観でしかないです。でも(過剰な)金銭のために人が働くのが本当に無理なんですよね~。この感情は利己主義や弱者への共感性と繋がるのですが、大企業にいる意義ではなく、ただ高給な金銭だけを求めることって、めちゃくちゃ感性が死んでないと出来ないというか、利己的だよなあと思ってしまうんです。もちろん生活をするためには稼がなければならないし、仕事に見合った成果として弁護士や医者のように高給の賃金が支払われるということにはまったく異論はありません。ただ「仕事→金銭」ではなく「金銭→仕事」となる人間の精神性に嫌悪感を抱いてしまうんですよね。(この辺りで、自分は共産主義を支持しているわけではないとも言っておきます。自分は賃金の平等を求めているわけではなく、過剰な金銭を求める人間の精神性に嫌悪感を示す、というお気持ち表明でしかありません)

そんで、ここで自分が危惧している人間の安定志向が関わってきます。上に書いている通り、自分が最も恐れているのは、自分の社会的な立場を高くすることで徐々に自分と同じ立場の人間しか観測範囲に入らなくなり、次第に世界が狭まり自己の安定性(金銭)を求めるようになることです。つまり、自分は自分が安定志向であることを分かっているからこそ「一度大企業に入ったらやばい、絶対に二度と抜け出せなくなる」と怯えているという話です。金銭を求めていない自分が、過剰な金銭を求めるようになる自己変革への恐怖と言った方が正しいかもしれない。それが大企業の務め人や資本家やコンサルやってる人間へのレッテルというかたちで、自分のなかで危険信号として機能しているのかなと考えています。

はい、結局は「お前がお金嫌いなだけだろ」に終着すべき議論ではありますし、自分のお気持ちを補強するためには「その人の生活にとって過剰な賃金とはどの程度を差すのか(お前はどこから過剰な賃金として人を軽蔑するようになるのか)」という話をせねばなりません。ただ、自分で言っておきながらなんですが、そんな厳密な数値なんて出せるわけがなくて、至極どうでも良いんですよね。それより自分は、誠に勝手ながら自分の核をなしている「お金嫌い」に注目したい。

これ、考えると割といろんな自分の末端と繋がって面白いんですよね。

例えば自分は上に「弱者」という単語を何度も出しましたが(この言葉が引っかかるなら「他者」でも良いです)、自分が考える「弱者」ってのはとにかく金銭さえあれば(親の不在を上書きするとか、そういうのは無理だけど最低限の)「弱者」からは脱却できるよなと考えている節があって、だからこそその金銭的格差を増長させている資本主義が嫌いなんですよね。まあ資本主義は大好きなんですけれど(だからといって、賃金の格差を是正せよ!という共産主義?を推しているわけではないってことは何度でも言っておきます。自分が言いたいのは賃金ではなく、最終的に皆の手元に残る金銭が非常に緩やかに最低保証されているイメージ。そういう政治思想があるなら教えてください、興味があります。結局言っていることはベーシックインカムなんだろうけれど)。

で、こういうことを考えていると弱者への思いが募って寄付とかしたくなってくるし、給料の1%は最低でもそういう人たちに渡せないかなあとか考えてしまって、自分でも偽善者っぽいかな~と考えているのですが、これって結局は「弱者」への「共感」に違いないなと最近気付いたんですよね。それで冒頭にも書きましたけど、自分は架空のキャラが好きなので、この前から架空のキャラクターの権利とかも割と大真面目に考えていたんですけれど、これもまた「架空のキャラ」への「共感」だよなと。もっと日常的なことを言えば、自分は犬の散歩で「ここらへんの道路は肉球が痛くないだろうか」とか常に犬に「共感して」考えてしまうし、研究室でも会社でも友人間でも、コミュニケーションがうまく言っていない人たちを目にしては、互いの立場に「共感して」お互いの言い分を翻訳する作業をよくしていたんですよね。自分を「キモオタ」として極端に卑下するのも、自分を見た他者の不快な感情に「共感」しているからであって、ああ、ここにも繋がるのかと。

これって普通なのかなと思っていたんですが(犬の心配とかはあるあるかも)、実はそうでもないんじゃないかなと気づけたのが「自分の給料をどれほど寄付すべきか」と真剣に悩み出した時でした。なぜならそこまで考えている人は全く見当たらなかったからです(当たり前か)。検索すると出てくる「アメリカの社長は当たり前のように寄付をやっているらしいです!」「だから自分も成功者になるために寄付を始めました!」とかは本当にクソどうでも良くて、他者に共感する気持ちに国境(あるいは生物種、実在と非実在の境界線)なんて存在しないだろうと思っていたのですが、あんまりみんなそうは感じていないようで、給料は当然のようにすべて自分のものらしい。

いや、それはマジで当たり前だし、他人を助けて自分がひもじくなるなら本末転倒だからそんなことはしなくていいのだが、いよいよ生活が安定してくるとお金はそれなりに余るわけで、その余ったお金(今の時代に余るお金なんてないのが本音だろうけれど、ここでは生活が苦しい一般庶民ではなく裕福な人たちのことを言っています)の使い道として自然と寄付とかは出てこないもんなのかなと(してるのかな?)。街をぶらりと歩けばホームレスとして生活している人や、コロナ禍で母子ともに苦しい思いをしている人々、お給料すらも手にできない人々が日本にもいるわけであって、その人たち全員を救いましょう!と狂気染みたことを言うつもりはないのだが、少しは助けになれないかとか、そういう他者への想像力が湧かないのかなあ……と不安な気持ちになり、そこまで思考を発展させてようやくハッとする。

うわっ、もしかしたら自分、あまりにも他者に「共感」しすぎ?

で、「共感しすぎ 辛い」で検索すると(その時は真剣に悩んでいて辛かったので)出てきたのが「エンパス」とか「HSP」という単語でした。みなさん知ってました?自分は知りませんでした。

 

www.nhk.or.jp

www.sankeibiz.jp

簡単にまとめると「共感しすぎ」というそのままの意味なのですが、エンパスは感情に特化していてややスピリチュアルみ(第六感?)があるのに対して、HSPは感情も含めて五感が敏感で、おもに外部環境や表情から共感するって感じでしょうか(上の記事はどっちもHSPについてです)。

そんでエンパスではないかな~と思っていたんですが、HSPの特徴を見るとびっくりするほどよく当てはまるので、ADHDでもASDでもなかった自分の不具合はこれだったのねと嬉しくなれました。あと、何を根拠に言っているのかはわかりませんが、5人に1人はHSPらしいのでそんな珍しいものではないようです。それに病気ではなくあくまで性質に過ぎないから、薬も効かないとのこと。それは割と困りますが、ないものはないから仕方ないですよね。

さて、それはそれとしてこのHSPという性質、なんだか自分の価値観に繋がっているような気がしてならないのです。

例えば、他人に共感しすぎるのはHSPのせいで、だから弱者に共感しがちで、ゆえに弱者を弱者たらしめるという意味においてお金が嫌いで、そのお金を利己的に求めがちな(一部の)大企業やコンサルが嫌いで(でも大企業じゃないと賃金的に早めにリタイヤできないわけで)……と言うように、ある程度一貫した理論で自分の価値観や偏見が構成されているんじゃないかと、そういう考えが持ち上がったわけです。

尤も、(いくら自分のものとはいえ)人の感情をこんなに短絡的に結びつけてはいけない気もするのですが、もし本当にこれで自分の感情が説明できるなら、すごく面白いことだなあと思うわけですよ。自分は人間が思考と身体のなかで矛盾を抱え苦悩することに興味があるし、不合理な感情にこそ人間の愚かさと美しさが同居していると考えているのですが、もしここに過剰な合理性を持ち込むと、一気に人間は架空のキャラクターになってしまうんじゃないかなと思っています。なんでもかんでも自分の仕草を説明できるよって態度は、あまりに傲慢だし、おそらくその説明は正しくないよなとは思います。けれどもその領域に自分が足を踏み入れているというのは、個人的にはかなり面白いなと感じてしまうのです。どんどん人間性が剥奪されている気がするから。

 

はい、以上で最近考えていることは終わりなのですが、〆の言葉は「やはり労働はクソである」ということにしようかと思います。大企業やら資本家やらコンサルが云々言いましたけれど、そもそも労働がなければ自分もこんなに悩まないわけで、賃金を手にしなければ弱者への共感もしなくて済むわけです。だっていくら大企業から離れて低賃金の地方中小に就職したとしても、正社員として雇われている時点で非正規雇用の人間よりかは「強者」になってしまう。資本的に上を見てもキリが無いように、下を見てもキリがないんですよね。その「共感」には必ず限界があります。そのうえ自分が身を切る、切らないレベルを見極めなければならないし、めちゃメンタルと思考が削られます。というのも、ここに自分の根源的なキャラ設定があって、「趣味・興味に時間を割きたい強い欲求」と「HSP」が並列して葛藤を起こしているのかなと。

で、HSPは自分が望んで手にしたものではないので(優しいですねとか、そういう類いのものではない。勝手に他者の気持ちを妄想して現実との齟齬にパニックになるだけなので)、自分としては前者を強く優先したくて、だからHSPが働く余地のない下層の立場(強者への共感というのは、基本的に「上の立場にいることの承認」、あるいは「自分たちが弱者であることそのもの」であり、自分が手にするはずだったものを奪われることはあっても、自分から手にしている何かを差し出すことではない)で、自分の欲求を満たしたいということになります。

その状況が尤も実現されていたのが、社会的に独立しておらず親の扶養下でありながら(強い金銭を持たないことから弱者に分け与える責任を持たない)、自分の趣味に没頭できる「学生」という立場で、やはり自分にとって学生こそが転職だったんだろうなと考えています。まあ、何歳になっても学生やっているのは親としたらニート養っているようなもので可哀想なので(ここでも親への共感が働いてしまう!)、本当は国全体に養われてるという弱者の王者たる「生活保護」こそリアルな立場なんですけれど。その制度は実際にはどうしようもなく働けない人たちのものであるので、なんやかんや言っても肉体的にも精神的にも働ける自分は利用してはいけないわけです。

あ~考えるだけでイライラしてきた。

働いて社会的な強者になりたくなさすぎ。自分の貴重な時間を労働に投げ捨てて、なおかつ弱者にも共感しなきゃいけない自分ってなんなんだよ。

やはり労働はクソである。

 

(執筆所要時間 4時間)

【八戸の居酒屋】らぷらざ亭(せんべい汁)

negishiso.hatenablog.com

 

この日の晩ご飯の話。

どこで飯を食おうかと思ってうろちょろしてたんですけれど、ちょうど本八戸のホテルの近くに「八戸屋台村みろく横町」という飲み屋街があることが発覚。札幌でいう「すすきの」みたいなものですね。

そこまで歩いてみると……。

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すごい!ガチで屋台通りだ。この通りがあと3回くらい繰り返される構成になっている。店の中の様子がギリギリ見えるだろうか。この日はやや雨が降っていたのだが、客足が伸びており、ひとつひとつの屋台におっさんやらおねえさんやらがギュウギュウに詰まっていて余所者が入る場所がなかった。

コミュ障なので「すでに楽しい空間」ができあがっている場に入りたくはない人間である。さびれた屋台でもあったらいいなあと一店舗ごとに中の様子を確認してみたのだけれど、まあどの屋台もほぼ満席で身内間の強いこと。

屋台、めちゃ魅力的なんだけれどなあ。旅で後悔はしないように決めていたが、屋台という「逃げられない」空間でヘマをやらかした時のダメージを考えるとあまり気が進まなかった(あと青森の数字はまだ低かったけれど、某コロナを警戒していたというのもある)。

 

というわけで屋台村を通り抜け、他の店を探すことに。

そこで見つけたのがこの店、「らぷらざ亭」。
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いかにも僕が好きそうな店だ。


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入店即「桃川 にごり酒」を注文。お通しで美味そうなのが出てきた。

メニューを眺めてみると「あれ?なんか全体的に高いな」という印象。

それもそのはず、この店は(やや)高級居酒屋にランク付けされている良いところだった。予算5000円……まあいいか。お金に関しては今回気にしないので(青春18切符で節約している人間の言うことではない)。

というわけでドシドシ注文したが、なんとなく5000円になるラインで止めることにした。いくらなんでも飲みに5000円以上使うのは精神的にキツいものがある。(自分が気苦労しない)大人数での飲み会ならいくらでも使えるが、ただひとり黙々と食う中で5000円以上使うのはなあ。井之頭五郎なら使えるだろうけれど、自分はまだあそこまで金銭的に余裕があるわけではないのである。

はい。

で、まずはこれ、八戸前沖鯖 1500円。
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一切れ300円!なんという贅沢な刺身だ。

おそるおそる鯖を食ったが、高級な鯖の味がしました(小並感)。

まあ真面目に説明するなら、いつも食べている鯖より脂の染みだし方が下品ではないという印象。自分にとって鯖は最高に好きな魚であり、寿司屋でも常に頼むネタである。どのお店に行っても鯖は美味しくて満足する一方、鯖の脂の出方というのは、肉のようなところがある。噛んだり舌で転がすだけで強烈に旨味が出てくると言えば良いだろうか。ところがこの鯖はそうではなく、キンキンに冷たいこともあるのだろうか、脂の広がり方がやや大人しく、組織のなかに収まっているから、噛んではじめて脂がじわじわ広がってくる感じ。旨味の総量は同じなのだが、微妙に脂の染み方が違う気がした。

いや、知らんが。個人の感想です。

 

不思議にんにく揚げ 650円だったかな?
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何が不思議なのかはわからないが、にんにくを皮ごとそのまま丁寧に揚げてくれている。これ、めっちゃ美味いです。皮まで食えるかなと思ったが、それは無理だった。結構にんにくの皮は繊維が硬いのだ。

反面、にんにくは非常に柔らかく、濃厚な旨味を楽しむことができた。うれしい。

 

三八つみれのカリカリ南部ボール 950円
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これ、めっちゃくちゃ美味しかった!!!!!です!!!!

なんでも何かの賞を取ったこのお店の目玉商品らしいのだが、ひとくち食べた瞬間に全てを納得した。美味いんです、これ。三八ってのは「さば」という風に読むんですけれど、要するに鯖のつみれとせんべい汁のせんべいだろうか?これを一緒にカリカリに揚げたものという説明になる。面白いのが、鯖の旨味がぎゅ~っと中まで詰まっているところで、このボールのすべてに鯖が泳いでいる。ひとくちひとくちが面白くてたまらん。腹持ちも良いし、かなり良い料理だと思った。

 

〆 せんべい汁 600円とか?
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せっかく青森にきたので、せんべい汁は頼んでおきたかった。鍋にせんべいを割って入れる、というシンプルな郷土料理ではあるが、実際に口にすると、なかなかどうして美味しいのである。何よりもこのお店の鍋の汁の旨味がすごかった、というのもあるだろうが、シンプルな鍋でここまで満足できたのは久しぶりな気がする。

まあ基本鍋はうまいはずですし、鍋がすきな人はせんべい汁は絶対に好きになると思います。とろとろになったせんべいがこれまたうまいので是非食べて欲しい。家でつくってもいいと思うけれど、あまり居酒屋で見かけないところを見ると、青森県外でせんべいを鍋に入れる行為は罰金対象だったりするのだろうか。もしそうだったらやばいので、青森で食べるのが得策かもしれませんね。

 

以上。たしかこれで5060円の会計だった気がする。まあまあな金額にはなったが、非常に満足した1日となった。

 

→4日目に続く

 

【旅行3日目 秋田→青森→十和田→八戸】青森県立美術館(富野由悠季の世界)、十和田市現代美術館

 

negishiso.hatenablog.com

前日の話はこちら。

 

さて3日目。

起床!!!(AM3:00)(ウマ娘理事長)

殆ど寝てないが、寝過ごしが怖いので強制的に目を開ける。

ネカフェをうろつき、眼に入った志村貴子「おとなになっても」を読んで、完全に目が覚めた。良すぎる社会人百合だ。社会人百合と言っても、社会人の私と漫画家志望の生活力のないあの子、という鉄板から外れており、優しい小学校の先生とバーでキビキビ働くキリッとした女性のリアルな出会いが描かれており最高の気持ち。そろそろ登場人物の片割れが創作行為をしている社会人百合から離れてみるのもいいのではないか。俺の観測範囲が狭いだけか。まあ面白いから読んじゃうんだけどさ(『Still Stick』、『異国日記』、『2DK、Gペン、目覚まし時計。』などなど)。

 これです、気になれば是非。

 

はい、話を戻して秋田から青森への道程を無事に踏み、ダッシュでバスに乗り込む。ここの時間がめちゃくちゃ厳しかった。目的は青森県立美術館である。

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へ~、これはまイメージ通りかも。白くて綺麗ですね。

ちなみにその隣には教科書でおなじみの三内丸山遺跡の姿が!

興味ないのと時間がないので今回はスルーしました。

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で、実際に近くに行くと……ん?
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あ~!そういえばやるって言ってたな。正直「美術館に行く」ことしか決めてなかったので、何をするのかすら分かってなかった。へ~富野由悠季の展示やってんだ。

ガンダム、無印しか観たことないんだけれど、折角だし観るか~と思って中に入ったのですが……。

これ、やっばいですね。ガンダムって何が面白いんだろうと思っていた(少なくとも無印ではそこまでハマれなかった)のだけれど、富野由悠季の半生を追いかけて、彼が目指していたものを観ることで、ガンダムというより、富野由悠季の姿勢がすごくて素直に尊敬してしまう。いや、畏敬のほうが近いかもしれん。

企画展では、まず富野由悠季の学生時代の日記や作文、絵本や論文(!)まで幅広く展示されていたのだけれど、この時点ですごかった。ロケットの設計図やそれぞれの部位の意図、どのようにすればロケットが実現できるか、また惑星の距離などがみっちりと書かれている。今の自分でも書けないような知識を頭のなかでまとめ上げながら、当時の最新の情報をインプットしつつ、それを少年がアウトプットしているという事実に驚いた。

しかもまた、絵がうまい。それでいて脚本の善し悪しもしっかり分かっているんだから、もはや狂気の沙汰である。ロボットが動いてかっけ~だけじゃなくて、「ここに人間のドラマがない!」と気付く少年、流石にすごすぎる。

さらに、絵コンテを切る速度が異常だったらしく、脚本も無しに絵コンテに入るその異常さ、また構図の良さを観て、手塚治虫に認められて即出世(もちろん下積み時代はいろいろあったが割愛)したらしい。半端ねえ。

それで、目玉はなんと言っても今にまで至る長い監督時代と、その作品に関わった人の絵コンテや脚本、設定資料の数々だろう。これ、ガンダムが好きなら絶対に観た方がいいと思いますよ。ガンダムが好きじゃない、というよりミリしらだった自分でも興奮できるくらいに当時のスタッフの熱量が作品を通して伝わってくるので、たまらんかった。ここに日本のロボットアニメの原点があるっていうのは、全く嘘じゃないんだなあと素直に認めざるを得ない。

あと富野由悠季の作家性も完結に纏められていて良かった。

①戦いに巻き込まれ、受け入れる主人公

②家族

③善悪の相対化

を常に意識していたというのは、まあ無印だけでもわかることではあるのだけれど、それをずっと意識し続けて、なおかつ新たなシリーズを(そしてあれだけの時代考証、設定考証を経て!)描き続けてきたのは異次元の能力だろう。常に時代を刷新していこうとする(固定観念を崩そうとする)富野由悠季の作家性に感動しました。いや~かっこええっす。

特にターンエーガンダムは全てのガンダムの転換でありながら、とりかへばや物語をイメージして月と地球を舞台に作られているとのことなので、めっちゃ面白そう。音楽菅野よう子だし、デザインもめっちゃかっこよかった。観たいな~。

 

話は変わるんですが、最後に「エピローグ」として展示されていた「富野由悠季の世界」と題して構成された部屋があったんですよね。そこには、飛行機の模型やフィギュア、アニメーションの機材や歯車、SFのBD等がうまく配置されていて、少年時代から監督時代にかけての富野由悠季を表現している空間になっていました。

ただ、その一角にラブライブ!の顔なしフィギュアが15体くらいぶっささっている球体が置かれていて、声を出して笑いそうになってしまいました。

アレ、なんなんですか?

ぼくは一応ラブライブ!のオタクなので、彼女たちの衣装についてはどれも認識できるはずです。なので、ラブライブ!のフィギュアであることは間違いないと思います。園田海未の水着のフィギュアもありましたね、多分。

その全部の顔がもがれて、身体だけ球体にぶっささっているんですよ。

流石に怖すぎる。

ガンダムラブライブ!は確かに同じサンライズの作品ですよ。でもそれだけでフィギュア球体が構成される要素になるんですかね?それなら普通に飾っておけばよくないですか、と思うんだけれど。アレ本当に何が表現したかったのか気になって仕方ないので、どなたか分かる人教えてください。というか実物を見て欲しい。マジでびびるし本当に笑う。

 

はい、では気を取り直して常設展に。

こちらは正直、う~んまあまあという感じでした。

ウルトラマンが好きな人はいいかも。デザイナーの成田亨のイラストが大量に見れます。これは良かったな。

あと、寺山修司の演劇のポスターが見れたのも良かった。奇抜で、時代巻き返して現地で見たい気分にさせてくれるものばかり。見れたのは良かった。

ただ、まあ残りは基本的に奈良美智のオンパレードです。悪いわけではないし、面白いものを見れたことは確かです。有名な「pancake kamikaze」とか「あおもり犬」とか(下図)。f:id:negishiso:20210331084518j:image

クソでかい あおもり犬。

他の奈良美智の作品だと「Outrun」が好きだったかな。

ん~、どうしてもガンダムに持って行かれすぎたかもしれない。普段なら興味深く歩いていたところを、今回は時間がなかったこともあるのだけれど、じっくり見ることができなかった。ちなみに奈良美智の特徴的な可愛らしいキャラ造形の型紙は、なにか意味があるのだろうか。パッと視認できるのは強みではあるから、別にいいのかな。(視認性に長けているという意味で)特許とれそう。
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さて、気が済んだところで今度は十和田市現代美術館のある十和田市に向かわなくてはならない。なぜなら明日は休館日だからだ。この日に回るしかないのである。

けれど、もし青森に来る人で県立美術館と十和田市現代美術館を回そうと考えている人はかなり注意をしてほしい。というのも、青森県立美術館青森駅から近いのだが、十和田市現代美術館がある十和田市はかなり青森と離れているのだ。アクセスが非常に悪い。レンタカーなら良いが、公共交通機関を使う人は綿密に計画を立てるように。

まあ、自分みたいに美術館を回るのに最低3時間はかかるような人間ではない限り(あと気軽に新幹線が使えない人)、難易度はそこまで上がらないのですが。

バスが来るまでの時間、美術館内のカフェでホットドッグを購入。うまし。
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なんとなく青森要素を探そうとしたが、なけなしのお菓子(林檎のサンドイッチ?とせんべい)しかなかった。
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林檎をなんとなく購入。阿呆なので店員に「齧って歯茎から血が出ないやつがいいです」と言い、困らせてしまった。それはそうだ。明らかにこちらの歯茎の問題だろう。

ちなみに青森の林檎屋さんだと、シナノゴールドがよく出ているらしいですね。

 

林檎を齧りながら待っていると、無事に十和田市行きのバスが到着。

乗車すること1時間、運賃はほぼ2000?だった気がする。結構高いですよ。

この十和田市現代美術館の面白いところは、街全体をアートにしようという心意気があるところで、美術館の周りにずらりと展示があり、なかなか面白い空間が演出されているところ。入る前からもう楽しい。
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でかい花のウマ! チェ・ジョンファ「フラワー・ホース」

 

以降、お気に入りの展示作品を紹介したい。そう、実は十和田市現代美術館は作品の写真撮影がOKだし、SNSへの掲載も、「撮影場所」「制作者名」さえ記載すればOKなのだ。

towadaartcenter.com

太っ腹すぎる!オタクの自己顕示欲を満たしてくれて感謝です。

というわけでようやくご紹介。以下の作品の撮影場所はすべて十和田市現代美術館です。

 

ロン・ミュエク「スタンディング・ウーマン」
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これ、すごいですよ。二枚目の写真からも、その手の表情のリアルがわかるかと思うんですが、ここまで精巧につくりながらもスケールだけは精巧ではない。クソデカいリアルな人間。ここに錯覚が生まれるというわけですね。


ハンス・オプ・デ・ピーク「ロケーション(5)」
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これ、死ぬほど大好きです。

絵画とかではなく、展示空間自体が作品になっているんですけれど、入り口から目が慣れるまで大変でオバケ屋敷みたいに真っ暗なんですよね。それでもなんとか手探りで前に進んでみると、かすかにジャズの音楽が流れ、窓の外では、右にも左にも人気の無い高速道路が伸びている光景が……。

これ実際に観ないとわからないと思うんですけれど、景色がめっちゃくちゃ綺麗で、すんごい居心地がよくて、それでもすべてが作り物だから異質な空間でしかないんですよね。幻術を見せられているかのような気分になる。フリゲーム「ゆめにっき」が好きな人間ならぶっささるような気がします。「此処ではない安心する何処か」を表現しているのに、これほどまでにすごい作品は観たことがない。まあ僕が美術館に足を運んでないだけで他にあるのかもしれないけれど。

これはマジで現地で観てほしいので、各自お願いします。


森北伸「フライングマン・アンド・ハンター」
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ハンターの部分は映っていないのだけれど、ここだけ切り取ってもかなり面白いから観て欲しい。美術館の間にある作品。

 

山極満博「あっちとこっちとそっち」(そのうちの一点)
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めっちゃ凍ってる。寒そう。

 

スゥ・ドーホー「コーズ・アンド・エフェクト」
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キルラキル!?と叫びそうになった作品。プロメアでもいいけれど。

人間が組み体操をするかのようにひとつの作品を作り上げている。この作品では輪廻を表現しているらしいけれど、それでいながら下から上に色が徐々に変化していることから、進化(進歩)という概念も取り入れているのだろう。ひとつひとつは小さなピースでも、歴史全体を俯瞰すればひとつの壮大なアートになっている、という視点は非常に面白い。

 

栗林隆「ザンプランド」

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ビジュアルが面白すぎる。アザラシが天井に刺さっているのである!

しかし、アザラシの下半身を楽しむだけがこの作品の面白さではない。

置かれている椅子や机に登ることで、部屋の真ん中から天井の穴を通して、天井裏(アザラシが観ている世界)を観ることができるのである。

かなり感動したというか、忘れられない経験をした。これほどにイマジネーションが膨らんだ作品もないかなあ。天井裏はあえて掲載しないので、気になる人は現地で観てね。


ボッレ・セートレ「無題/デッド・スノー・ワールド・システム」
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セコムマサダ先生!?(ゆめにっき)

あるいは2001年宇宙の旅とか?

圧倒的「SF」を醸し出す空間。まんなかにいるヤギみたいなやつが良い味を出している。変な電子音楽も流れているし、めちゃくちゃ楽しいです。

 

奈良美智夜露死苦ガール 2012」
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奈良美智だ。


インゲス・イデー「ゴースト / アンノウン・マス」
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でっかいオバケ。


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なんかが天井から垂れているのわかりますかね。この建物はなんだという話なんですけれど。
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男子トイレでした。なんか変なヤツに覗かれながら小便するのめちゃくちゃに嫌だな。

 

エルヴィン・ヴルム「ファット・ハウス/ファット・カー」
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めっちゃ太っている家と車。もう最高の発想だよな。一度ここの美術館を調べた時にこれがヒットして一目惚れした。ムチムチである。親近感を覚えますね。

 

気になったやつをザッと挙げてこんな感じである。

これ、本当に価値がある(あるいは価値を感じやすい)美術館だと思うので、是非青森観光をした時には行って欲しい。ただ、土日祝はアクセスがよろしくないので……。

 

この日は日曜だったわけだけれど、雨に降られながらバス停でひたすらバスを待ち続けました。青森までいくと大変なので、八戸に宿泊することに。

またそこで飲み屋街にいくのだけれど、それは別に纏めました。

下の記事です。

negishiso.hatenablog.com

 

はい。お疲れ様でした。

4日目に続く。

【酒田の居酒屋】とらさん(酒田名物のむきそば)

前記事。

negishiso.hatenablog.com

 

はい、ということで秋田行までの列車の待ち時間、100分間に居酒屋を楽しめるかのタイムアタックです。

今回選んだのは「とらさん」。

何と言っても、駅から徒歩2分くらいに位置しており最高に近い。

それに見た目が良い。大好きになりました。

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店内はかなり混雑しており、なかなか人気店のようでした。

そんでもって、店を切り盛りしているのが老夫婦とその兄弟?なのかな。3人だけで調理とホールとキッチンをやりくりしていてかなり忙しそう。それもあって、予め「多分提供が遅くなりますが大丈夫ですか」との話が。普段ならいいのだけれど、今回は100分という限定された時間がある。果たしてこの「遅くなる」がどこまで遅いのかは未知数だが、行けると踏んで入店した。

注文は何にしようかとメニューを見ていると、なるほど、酒田名物の「むきそば」なるものがあるようです。詳細は頑張って画像の文字を読んでください。

簡単に言えば、麺になっていない蕎麦です。
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早速酒を注文しようかなと悩んでいると、「どういうのが呑みたいの?」と女将さんが話してくれ、「地酒を飲みたいです」と話す。

すると、女将さんの手元にあったお酒を「じゃあこれどうぞ」と渡された。

えっ、このお酒は何だ!?そもそも誰かの注文なのでは!?と思ったが、面白いのでそのまま呑むことにした。

味はね、わかんないです。うまい日本酒はみんなうまい。f:id:negishiso:20210329030114j:image

お通しでこういうのが出てくるの、最高ですね。めちゃうまです。

ちなみに酒の銘柄は何度聞いても聞き取れませんでした。

「これなんですか」

「東北の大吟醸です」

このやりとりを30分くらい間を開けて3回くらいした気がする。東北の大吟醸って、候補が多すぎるんよ。

まあ美味しいからオッケーです。
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「三幸」での奇跡を信じて頼んだもつ煮込み。うん、まあ大衆居酒屋のもつ煮込みですね。というより、むしろ豚汁のようなものかも。身体が温まっていいですね。
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つぎにこれ。確かシロとカシラ。もうめちゃウマです。このこんがり感が最高で、風味も味付けも一級品。こういうのが食いたかったんだよ。

 

最後に、酒田名物「むきそば」。

これがかなり調理に時間がかかるらしくて、電車の時間に間に合うかどうか、かなり厳しいところを攻めていた。注文してから70分くらい掛かっていたかも。

途中で「オーダー通ってますよね」と急かしてしまったのが申し訳ないのだけれど、こちらも明日の美術館巡りが掛かっているので許してください。ここで謝罪しておきます。

で、これは冷と温を選べるようで、自分はなんとなく冷を選択したのだけれど(これも時間がかかった要因かも、すみません手間取らせて)、これが抜群に美味かった!
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スプーンがぶっ刺さってますが、これで提供されました。ビジュアルがおもろい。

こんな見た目で、お椀に入った麺汁、そこにそばの実がいっぱい沈んでいる感じですね。なので、ぷちぷち(ぷりぷり?)した蕎麦の実をスプーンで掬いながら、そばつゆと一緒に食べる感じ。見ての通り薬味もしっかり効いているので、味としては蕎麦をすすっているのとまったく変わらない。でも食感はズルズルではなくぷちぷちで、喉ごしではなく口の中で味わうような違いがある。これもなかなかのカルチャーショックというか、「こういう蕎麦もあるのか!」といい体験が出来ました。

来て良かった~。賑やかだし雰囲気も良かったです。
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で、お会計の時にこういうの渡してもらえました。なんでも開店してから(10周年だったかな?)何周年になるらしく、その記念だとか。いや、すごい金額だな。500円って結構な値段ですよ。

また酒田行くときは是非寄らせてもらいます。

【旅行2日目 上越→新潟→酒田→秋田】ラーメン二郎、利き酒体験

前日の話はこちら。

negishiso.hatenablog.com

 

起床!!!(AM5:00)(ウマ娘理事長)

ではまず、宿泊したホテルの朝食バイキングの様子から。

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全然謙信の味しなかった!(それはそう)

ちなみに上越の米だからと言って、特別な味はしなかったです。そういうものか。
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ちょっと海苔っぽい香りがしなくもない。

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これ美味しかった!もっと全国展開してほしいな。

これを入れた味噌汁、入れなくても絶品だったのが、かんずりスーパーサイヤ人になった感じです。
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これが朝食バイキングで一番うまかったやつ。揚げ豆腐とは違う、麩菓子のような甘みも軟らかさもない。かたく自立した油揚げとでも言おうか。非常にジューシーで面白い味でした。
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言っちゃ悪いが、カツを乗せてソースを掛けるだけなので、多分家でも作れます。でも美味しかった!特にカツが好き。
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朝からよく食うなあ。ウマ娘か?

そうです。(違います)

飯を大量に食い、新潟駅に向かう。

改装中でその全貌は見えず。エンドコンテンツかもしれんな。
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で、新潟に来た理由はもちろんコレですよ。黄色と赤と黒の看板が眼に嬉しい。
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店舗に入って驚愕。

えっ。
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二郎に予約席なんてあるんだ……!

これ、二郎のオタクならみんなビビるのでは!?

個人的には、この予約席の札があるだけで美術館に置けるレベルのアート性を感じました。見事に二郎についての固定観念を破壊している。評価されるべき作品です(ただの予約席です)。


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小豚 900YEN 全マシ。

この美術館はラーメンも出てくるのか……と思いながら写真撮影。実は前評判で、新潟二郎はまあまあの旨さと聞いていたので、あまり期待はしていませんでした。

が。

これ、めっちゃ美味いですよ!

たまたま上振れた可能性もありますが、それにしても美味い!

シャキシャキヤサイの隣にある塊の背脂には笑ったけれど、スープが格別に美味くて真顔になった。富士丸の豚臭さをうまく除きながらも、塩分ではなく豚の旨味とニンニクでスープが作れている気がする。麺は極太で嬉しいし(札幌は最近細くなりつつあるのだ)、何より豚である。豚の繊維の一本いっぽんがPURIPURIしていてジューシーだし、ふた口サイズの豚がゴロゴロしているのも嬉しい。

この日の新潟二郎はかなり完成度が高いと思いました。ごっそさん。

 

いや~食った食った。と新潟駅に戻る途中でおにぎり屋さんを発見。

新潟のおにぎり専門店かあ……。

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デブにそういうの見せないほうがいいですよ。あいつら満腹でも食うんで。
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あ~あ。ほらね。

(ちなみにやや美味い程度で、どこの白米も常にうまいことが分かった)

 

さて、電車までまだ時間がある。

時間つぶしに駅構内の店で利き酒体験でもやるか。
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良い感じにできあがってそうな人が一升瓶を掲げているのめちゃくちゃ怖いな。銅像でも近づきたくねえ。
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コスパ最高と言いなさい(マキマ)

コスパ最高!コスパ最高!コスパ最高!


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ワイン酵母!?ワインの味がするのかなと思ったが、酵母の役割は糖をアルコールに変えて同時に炭酸ガスで香り付けを行うことではありながらも、米とブドウでは元の成分が違うから、お酒の種類を越えてまで「ワイン」らしさを獲得するのは難しいですね。そもそも口当たりが違うし(要するに、ワインではなく日本酒だったと言っています)(それはそう)

あと、なんとなく選んだこれが人気ランキングに入っていて、恐らくみんな「ワイン」の文字列の物珍しさに選ぶんだろうなあ~と思いながら、みなと同じようにこのお酒に真っ先に食いついた自分の主体性のなさに悲しくなりました。日本酒のなかにワインがあるという特別性の強調、その「広告」の購買喚起力によって、主体の意志決定能力が削られていく痛み……。

俺たちは、広告に踊らされて消費するだけの存在じゃねえ!(ドン!)(酒を飲みながら)
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ふつうだ。
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2枚も入れるんだから頼むぜ!と思ったが、ふつうの大吟醸だ。

ここらへんでやはり俺の舌はバカだと気付く。
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最後のこれ、これだけはすごく美味しかった。看板に書いてました、「あとから風味が変わって林檎のような甘みがあります」と。まさにその通りです。僕は看板に書かれたとおりの感じ方をして、そのままを文字にして伝えます。

いや~。酒、わからん!

個人的には、おばちゃんが「ああもうあかん、酔ったわあ!」とふらふらしてデカい声を出しながら酒を飲み続けているのが印象的でした。はやく僕もこれになりたい。

 

時間も潰せたので、ようやく今日の目的地の秋田にまで向かう。

ここで面白いのが羽越本線、酒田行きの電車。

なんとこの電車、たった2両なんです。ちんまい。それでいて、乗り換え無しで4時間32分かけて酒田まで走るので(途中長すぎる休憩もあるが)かなりパワフルな電車だな~と思いました。

で、さらに面白いのが、この電車は撮り鉄(電車を撮影するのが好きなオタク)に人気なのか知らんが、発車してからすぐにめちゃくちゃオタクの群れに遭遇するんですよね。カメラや三脚やらでポジション闘争しながら、複雑に絡み合った撮り鉄の黒い塔が至る所にできあがっていて、素直にキモいなあ(褒めてる)と思いました。

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撮り鉄の塔のイメージ(左の三人組みたいな感じ)。

ガンダムを持ち出したことに一切悪意はありません、念のため

右側の車窓は平地でオタクばっかりですが、左側の車窓はまあ綺麗でした。この路線、ずっと海岸線に沿っているので、景色がすごくいいんですよね。日本海がずっと見れます。
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こんな感じ。綺麗だなあ。

ちなみにこの路線(新潟-酒田間)、4時間32分と言ったけれど、特急の「海里」に乗ればもっと速く行けるんですよね。「のってたのしい列車」として売りに出されているこの特急は、地元の高級料亭の弁当が食べられるということで、かなり面白そう。席もかっこいいし、気になる人は一度調べてみてはどうでしょう。海里の存在を知ったのがこの日の前日だったので、予約できずに悲しい思いをした自分ですが、もしこの路線を通る用事があるなら、海里に乗ることをオススメします。いい経験になる気がする。

あ、でもこの鈍行の列車も良くて、本当に人が乗らないので、2車両あって全乗客2~10人を行き来する感じになります。それでみんな靴を脱いで向かいの席に足を乗っけたりしていて、実質新幹線よりも広い足場が確保されているんですよね。今の時期だけなのかもしらんが、鈍行でも十分面白い路線だと思う。

 

さて、ようやく酒田駅に到着。
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外、暗いですねえ。まだ20時なんですけれど真っ暗だ。

問題なのは、

①ここが目的地ではないということ。

②秋田行きの電車までの待ち時間が100分あること。

なんですよね。

いや、もうここで泊まれよという感じではあるのですが、今日中に秋田まで行かないと明日の「早朝(ここが重要です)」に青森に行けないのです。

というわけで、ここからさらに100分待って、秋田行きの電車を待ちます。

100分の時間の潰し方といえば、もちろんおわかりですね。

酒です。酒田だけに(ドッ!)

は?

というわけで駅近くの大衆居酒屋に凸しました。(酒飲みのために記事は分けてます)↓

(リンク予定地)

で、それなりに酔いながら電車に乗り込み、無事に秋田駅に到着。

この時点で23時です。しんど。
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ここから駅直結のネカフェに泊まって、学園アリスの30巻と31巻を読んで(ぼくは異常者なのでネカフェに泊まった時は必ず学園アリスを読み返します)、今井蛍が佐倉蜜柑に向けた感情とその決断と勇気と愛にボロボロ涙を流してから寝ました。

全人類、学園アリス(漫画版)を読んでください。

お疲れ様でした。

3日目に続く。

【金沢の居酒屋】三幸、赤玉本店(金沢おでん)

別に本編と分けなくてもよくねえかと今更思ったんだけれど、酒は酒でなんとなく分けてみたい。居酒屋への入店はそれだけでコンテンツなのだ。

 

というわけで兼六園から徒歩で15分くらいかけて着いたのが、この「おでん居酒屋 三幸」である。かなりの有名店で、金沢と言えばここと「赤玉」が挙がるらしい。少し調べてみるとめちゃ並ぶらしく、警戒した自分は開店30分前に到着した。それでも、まぁいますよ人間。

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だいたい8人くらいは前に並んでいて、結果として自分は予約していた客が来るまで、つまり1時間20分制限付きでの入店を許された。人気がヤバすぎる。実際に自分が入ってから数分もせずに、何人もの人が「入れますか!?」「ごめんね、もういっぱいだよ〜」と追い返されていた。

どうやらこの店は予約していくのが確実のようだ。しかしながら、予約可能人数は3人組かららしく、1人や2人では予約ができないのだと言う。なんと殺生な……。

次に来る時には友人を作らなければならないが、それはそれとして今回は入れたのだからヨシとせねばならない。

早速お酒を注文。

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加賀鳶、地元の極冷?大吟醸らしい。600円くらいだったかな?

というか、金沢ってこんな容器に入れてお酒を出してくれるんですね。かなり入っているように見えるし、実際にいくら飲んでも減らないのでビックリした。無限酒だ。

注文したつまみはこれ。
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牛すじ煮込み 600円?

これ、めっちゃくちゃに美味しかった!

牛すじがトロットロでやわらかい。これが1番大事だと思うんだけれど、味付けの醤油はくどくなく余分な脂も全然ないのだ。まさに理想の牛すじ煮込みである。牛すじ特有の牛の繊維とまろやかな脂が合わさって最高。牛の旨味と感触が非常にうまく喚起されている逸品。

続いてこれ、金沢おでん。これを食いにきたんだよね。大根とちくわ、シューマイを注文。
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これは美味しい、けれど味が静かとでも言おうか、落ち着いた真面目なおでんという印象のせいで格別好きというわけでもない。金沢おでん自体がそういう感じなんだろうな。自分は味覚が死んでいて味が濃い方が好きなので、丁寧に出汁をとって透き通るような汁で似ているおでんが好きな人にはドンピシャだと思う。

 

次は串物で、シロと牛バラ。
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シロはいつも食べる店より美味しいかもくらい。これに関しては圧倒的に宇ち多゛が強いな〜。もっかい行きてえ。

 

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これが牛バラなんだけど、これマジで牛バラの最高峰です。舌で肉の表面に触れるだけで、細かな旨み脂がすくいとられて目を見開く。その軟らかさに、噛めば噛むほど笑顔になってしまう。めっちゃいいですよ、これ。大好きになった。

極め付けはこれです。三幸名物のとろろ焼き。
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これね……めっっっっちゃ美味しいんです!!!絶対にみんなに食べて欲しい味!とろろが粉物と合うことは知っていたけれど、とろろを多くすることで主軸がとろりとした生地になって、そこにエビとかタコが隠れていて、口の中でめちゃくちゃ嬉しい邂逅を果たすことになる。しかもこれ、【和風×チーズ】のハーフアンドハーフなんだけれど、和風はわさびソースが香り高くてすごく合うし、チーズは粉物にもう合わないわけがないんだわ。伸びる伸びる。すんごい美味しい!

これ食うためだけに行ってもいいレベルですよ、金沢。本当にうまいので。

確かこれ全部合わせて3000円くらいだったかな。旨さを考えると安すぎますね。最高の時間を過ごせました。

 いやあ、満足満足。で、新幹線の乗車時間までは残り2時間と……。

 

なるほど。

よ〜し、2軒目行くかあ!

というわけで来たのが赤玉本店。
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アッ!桃鉄マークがある!

なるほど、ここがモデルになっているのか。すげ~。 
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頼んだのは……何だったか忘れた。特筆すべき点はなし。
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三幸でそこまでだった金沢おでんのリベンジ。

車麩とかにしんじょうと、丸いかまぼこ(名前忘れた)

こちらのほうが出汁は美味いです。というより自分好みの濃さをしている。ただ、だからと言って格別に美味いかというとそこまでかな……。暖かいおでんは確実に美味しいのは事実としてあって、そのカテゴリ内に収まっている味ではある。

ただ、車麩の「軸(?)」だけ硬い感触は新鮮で面白かった。これは美味しい。f:id:negishiso:20210329024747j:image

追加で注文した「たこ」と「肉いなり」。たこは微妙な硬さで悲しかったが、肉いなりはジューシーでかなり良かった。美味しいですねこれ。

 

以上。総合的には、是非とも「三幸」に行って欲しいものです。絶対にうまい。自分も21世紀美術館の企画展に合わせて、時間見つけてまた行きます。一緒に行ってくれる三人見つけないとな~。

小説版「韓国・フェミニズム・日本」読んだ!

最近フェミニズムに関心があるのと、SFとしての傑作デュナ「追憶虫」があるとのことで読んだ。

感想として、韓国勢の小説は総じて素晴らしかったが、反面日本勢はちょっとこれどうなのと思わないでもなかった。

以下、個別に感想。

チョ・ナムジュ「離婚の妖精」

2010年代のレズビアン映画にありそうなプロット。少し違うのは、両者に女子の子供がいることだろうか。女同士の共同体を形成する方が(女性)みんなにとって良いという話であり、それ以上でもそれ以下でもない。文章としてはそこまで惹かれなかったのだが、これに関しては訳者「すんみ」さんの技量がちょっとアレなのかも。苛立った時に発する「まったく」の省略形「ったく!」を「ったぐ!」と表現していたのが気になり、なかなか本文に没頭できなかった。明らかな誤字だと思う。校閲は何をしているんだ?

 

松田青子「桑原さんの赤色」

これは好きですね。「女性募集」という張り紙から求められる人材、そしてそれをあくまで生物学的な「女性」としか認識できない主人公の構図、社会が「女性」に求められるものとは何かをやや直接的ではあるが表現できていたのが良かった。

 

デュナ「追憶虫」

これは確かに良作なSFですね。設定を説明しすぎず、うまく作品世界に溶け込ませているのが良い。特に好きなのがこの一文だ。

私、恋に落ちた、とユンジュンは思った。そして、この感情は私のものではない。

こんなにうまくこの作品世界を説明できる文章ってあるのかなあ。めちゃくちゃお気に入りの文章。それでいて、この作品のなにが良いって、「追憶虫」はもはや現実の「本能」や「直観」と何が違うんだろうという話に持って行けるところだと思う。「誰かが特定の女性を好きになった気持ち」が、女性である自分にもたらされたために「女性が女性を好きになる」ことが「仕方ない」とされる。この論理構造は、追憶虫が存在しない(とされている)現実においてもそのまま適用できると考えられるのではないか。素直に読んで、誰かを好きになる気持ちが伝播していく世界の特異性とその平和な美しさ、それでいてその「幸福な気持ち」を否定せずに甘受しようとする主人公の姿勢が非常に好ましかった。この作品集のなかでもかなり卓越している作品ではないかな。

 

西加奈子「韓国人の女の子」

言いたいことは分かるのだが、フェミニズムと在日差別を直接結びつけ、誰にでも優しい立場をとれる存在として「韓国人の女の子」を提案するのが気に食わない。繰り返しになるが、言いたいことは分かるし、ことフェミニズムと在日差別に関して「差別側」から話したいのならその通りだと思う。しかしながら、なんというか、あまりに直接的すぎるというか、それを作品タイトルにしないで欲しいというか……安直だというような気がする。これでは、差別されている人間にしか問題意識が持てず、他に属している人たちの協力を自ら手放しているようなものである。もちろん、これを書いている自分は日本人男性という圧倒的抑制者の立場だから、こういう趣旨の発言は良くない受け止められ方をするだろう。そこが難しいところである。

一方で、差別されているという自覚を持っている、傷を負った人間同士の恋愛感情の描き方は良かった。終わりが「韓国人の女の子」の死ということになるし、どうしても巨大すぎるマジョリティに屈服せざるを得ない人々は痛ましく、問題提起としては力強くあると思う。その強さは好きだが、作品としては好きになれないという、なんとも評価しにくい立ち位置の作品になった。

 

ハン・ガン「京都、ファザード」

これは好きというか、最近読んだ松浦理英子の「ナチュラルウーマン」「最愛の子供」と同じタイプの問題意識(正直すぎて嘘をつけない、一方で自分から自分の秘密を口に出せないタイプの人間の葛藤)を扱っているなと思った。松浦理英子が好きな人は好きになれると思う。自分は好きです。

 

深緑野分「ゲンちゃんのこと」

あまりに小説が下手くそでびっくりした。文章は下手ではないが、not for meを越えた存在にあると思う。この作品が好きな人と作者さんには申し訳ないです。

 

イ・ラン「あなたの能力を見せてください」

これ面白いですね。内容としてはフェミニズムに関するエッセイという感じなのだけれど、所謂「名誉男性」だった女性の立場からの文章で興味深い。

 

小山田浩子「卵男」

正直、よくわからなかった。韓国の卵は茶色い。しかし「私」は白い(日本の)卵を運ぶ男性を韓国で観た気がする、という話。ここで「私」が観た幻想として、日本=男性が結びついており、(少なくともこのテーマにおいては)弱者として扱われている韓国のなかでこれらが立ち上がっている。ここから何を読み取れば良いのだろう。韓国のなかでさえ、日本人男性の恐ろしさを幻視するということだろうか。実際、この幻想の卵男は、「私」がぶつかってもなかなかバランスを崩さないということから、差別意識の崩壊の難しさを訴えかけているように読み取ることは可能だろう。ただ、それにしても話がうまくないというか、う~ん、さっきの「韓国人の女の子」にしてもそうだけれど、短編だとここらの構成は難しいのかな。少なくとも「韓国人の女の子」よりは話はうまいのだが、こちらの方は作品全体から「差別意識への反抗」ではなく「韓国人の親しみやすさ」が描かれていた点でテーマが揃っておらず美しくないと思った。読みが良くないのかもしれないが、そこまで好きではない作品。

 

パク・ミンギュ「デウス・エクス・マキナ

個人的には「これがピンチョンです」と言われても信じてしまいそうな荒唐無稽なシナリオだった。よくわからないが面白い。自分は思考停止して読んでいたが、これが「韓国・フェミニズム・日本」のテーマで書かれているのだから、何らかの問題提起を孕んでいるのだろう……多分。ここでは「おじ」のような「神」がニュージーランドを食ったり精液をぶちまけたりして世界を破滅させるのだが、それくらい男性は女性の世界を破壊しているクソだということだろうか。そうなのかもしれないが、この読みでいいのかはまったく分からない。

 

高山羽根子「名前を忘れた人のこと」

日本人作家のなかでも、こうして並ぶと高山羽根子の文章の巧さが際立つ。旅行慣れした文体、異国情緒漂う文体、いろいろな言い方が出来るが、文章からにじみ出る「日本とは別のところ」からうみだされているような文章は綺麗で好きだ。「首里の馬」や「オブジェクタム」「居た場所」など、このあたりの作品はすべて同じ文章で書かれており、どれも綺麗で良いと思う。この文章それ自体が、国同士の問題を扱うのに長けている気がする。反面、どうしてもイーブンになるばかりで問題提起の力は損なわれてしまうのだが、そう思うと「首里の馬」はそこのバランスが一番よくとれていた作品だったのかもしれない。

 

パク・ソルメ「水泳する人」

これは結構好きだなあ。文書がうまくて、やや気怠げな感じで「」という感じ。これに関しては性癖で判断しています。台詞をカッコで括らずダッシュで表現するあたり、この作品の内容通りの解放感に満ちた気怠げな、現代らしい小説という感じがして好き。

 

星野智幸「モミチョアヨ」

韓国に歩み寄ったエッセイのようなもの。星野という人物が主人公であることからもメタではあるのだが、恐らくこのエッセイにはそこまでの意図はないはず……あるのかな?

個人的には、内容としてかなり好きなものでした。韓国の人たち(あるいはホームレスの方々)をここまで活き活きと書ける力が良いと思う。本作のまとめとしても、実に気持ちが良い作品だ。

 

以上。デュナ「追憶虫」は評判に違わぬいい作品でした。デュナの他の作品も読んでみようと思う。