新薬史観

地雷カプお断り

視聴映画記録(2020.04/24~04/30)

今週も映画週間は続く。今回見たのは以下のラインナップ。

優しいフォロワーさんに色んな映画を教えてもらいました。感謝。

 

4月24日 映画8「キャロル」(2015)

百合映画としてあまりに有名。自分も名前だけ知ってました。

あまり容姿については言いたくないけれど、本当に顔がいい。画面にパッと写るだけでも、どちらもくっきり印象に残る顔立ち。

「さっき画面に映った子(テレーズ(ルーニー・マーラ))が百合ならいいのにな」と思ったらガチでそうなって、本当に感謝した。

話の背景としては、同性愛は精神の病気で、精神科医にかかれば治せると思われている時代。

キャロルとルイーズは一目合っただけでお互いに「いいな」と思ったかどうか、少なくとも映画を見ている自分にはそう見えた。

アニメとかだと結構過剰なキラキラ演出で運命の出会いとかを彩るんだけれど、こっちは映画でそんなエフェクトは入れられなくて、

けれどもデパートのクリスマスコーナーという人々が賑わう環境で静かに接近して、言葉を選ぶ「間」がキラキラ以上の効果を果たしている。

遊び慣れているというか、ぱっと見お高く止まっているような貴婦人のキャロルと、純朴そうなテレーズの出会いと逃避行が良すぎた。

お互いに男がいながらも目の前の女を優先しているように見えて、きっと劇中の男にはつまらない逃避行なんだけれど(この時代の男に限らないけれど、男さんすっごく男としてのプライド高くていいですよね。自分はプライド一切ないので羨ましい)、結局二人はお互いに自分のことをわかってくれる相手を選んでいるんだろうなと、ここでひとつの展開がある。というのも、劇中の男はすっごくプライド高いし、女の望んでいることがまったくわかっていない。心の中では大切に思っているのかもしれないけれど、側から見たら(キャロルやテレーズから見ても)結局自分のことしか考えていないというか、「自分とくっつくのがどう考えても幸せだろう」と思って譲らない。(まあ同性愛は精神病みたいな時代ですから)

それを踏まえたうえで、「こんな人間関係は嫌だ、世界は嫌だ」という逃避行が始まる。二人とも言葉には交わしていないんだけれど、「この人なら自分のことをわかってくれる」という確信を持っていて、そこがいい。

あと、ゆりえっちのときにキャロルが口にした「天使みたい」という溜息が非常に良かった。

終盤は連れ戻されて別れてしまうけれど、一見サバサバしてそうなキャロルが熱心にテレーズに歩み寄るのも良かったし、子供は子供、私は私と同性愛を病気ではなく自分らしさだと割り切る強さに心打たれた。ラストにテレーズがレストランに入り込み、キャロルに気づかれるまでじっと見つめるあのドキドキを、窒息しそうなくらい苦しい呼吸を共有できた、それだけでも大切な映画。

やっぱり百合は目線だよな。

 

4月24日 映画9「グレイヴ・エンカウンターズ」(2011)

B級ホラー好きの友達に教えてもらった映画。

ホラー映画を撮るつもりで忍び込んだ廃精神病棟に閉じ込められてしまって、ガチでやばい!という感じ。

無限に続く廊下や、地下道の演出などはかなり好きだった。が、いちいち出てくるお化けがみんな「😱」こんな感じで、ギャー!と出てくるお化け屋敷でしかないのでそこまで怖くはなかった。「ウォーリーを探さないで」じゃないんだから。2も出ていたが見るかどうか悩み中。

 

4月25日 映画10「はじまりのうた」(2010)

音楽には明るくないが、すごく楽しめた音楽映画。

ザックリ言えば、能力を持ちながらも正当に評価されなかった人間(グレタ)が、かつて世間を唸らせた天才(ダン)にスカウトされて、常識を疑うようなやり方でアルバムを作り、世界を見返してやろうというストーリー。かっこいい。

何度もいうが自分は普段から音楽を聴く習慣がなく、聞いてもアニソンくらいなので音楽についてはまったくわからん。が、劇中で流れる音楽、街中で演奏される音楽はメチャクチャに良すぎるのでかなり興奮した。カッコ良すぎる。ほんとに。

あとこの映画は音楽だけじゃなくて、グレタとダンの関係もすごく熱い。グレタは彼氏、ダンは父親としてうまくいっていなかったし、途中ふたりで夜の街を音楽を聴きながら一緒に歩き回るという最高なシーンがあるんだけれど、一線は超えない。「妻と一緒に音楽を聴きながら夜の街を歩いた」という前振りがあって、それを上書きするように楽しそうに過ごすし、めっちゃいい雰囲気にはなるんだけれど、それを遮るかのようなイベントの発生にもやもやする。いい意味で。結局グレタは、彼氏への気持ちをダンとの慰めではなく音楽にして突き返すという手段をとってるわけで、それがまた良い。

この映画では、自分の意思をすべて音楽で伝えようとする登場人物に心打たれる。売れるか売れないか、家族や人間関係など複雑なことは周りにありふれているが、音楽の力ですべてが解決するというストーリーは非常に元気付けれるもので良かった。音楽好きなら是非みてほしい。

 

4月25日 映画11「ミリオンダラー・ベイビー」(2014)

ガチで良すぎてひっくり返った。なんだよこれ。

勝者と敗者の差が歴然としてあるアメリカ。それは経済面でも、人種的な意味でも、単純な力でもそう。

貧困層出身で学がないマギーにとっては、力が、ボクシングこそが唯一社会で勝ち上がることのできる手段だった。

マギーは、フランキーのマネージャーとしての才能を見抜き、弟子入りさせてもらえるように頼み込む。

しかし、フランキーはかつての友人スクラップを自分の判断ミスで失明させたことをずっと後悔している。

それ以降、選手の試合に慎重になりすぎるあまり、なかなか試合に出させなかったことから、もっと高みを目指したかった選手に逃げられてしまい、

人間不信になり、マネージャーは引退していた。

それでも足繁く通うマギーに折れて、フランキーはマネージャーになると約束する。ここからロッキーのような展開になるのかと思うと、そうではなかった。

この映画を観た衝撃はあまりに大きく、正直、ここで文章にすることに戸惑いがあるし、書きたくないと思う。

それぐらいメッセージ性に溢れた映画だったし、自分にとって大切な映画のひとつになった。

フランキーがマギーにつけた「モ・クシュラ」の名の意味を、映画のなかで、フランキーの口から直接聴くことをお勧めする。

 

4月26日 映画12「英国王のスピーチ」(2010)

吃音が故にスピーチに悩む次期英国王候補のアルバートと、言語聴覚士のローグの話。

王室故の有り余る悩みを、吃音を通してローグがほぐしていく過程が良い。

なかなかローグに素直になれないアルバートもいい味を出しており、これがあるからこそ最後の下りで笑顔になる。

最後にアルバートがスピーチをする、数分間の快感がいい。

 

 

以下フォロワーさんに教えてもらった映画多数。感謝。

4月26日 映画13「5つ数えれば君の夢」(2014)

かなりクセが強いなというのが正直な感想。

演技が下手、とも言えるのだけれど、明らかに間の悪いセリフの長さや歳に不相応な言葉遣い、口調とまで揃うと、

きっと狙って撮ったんだろうなと思う。

これは映画じゃなくて、アニメでシャフトとかに任せた方が違和感を拭えるのではないかと勝手に思っているが、お節介かもしれない。

感覚的には詩と演劇の融合のようなものかなと。背伸びしている感じや、言葉のちぐはぐな感じが、

不安定な少女の気持ちを演出しているようにも見える……が、確証はない。

あと、何度も何度も繰り返し背景で流れ続ける音楽があまりに短調すぎて、間延びした印象があるが、これも計算なのか……?

スプリットした画面はけっこう気持ち良くて、寝起きのシーンやプールに飛び込むシーンは良かった。

世間体が邪魔して、誰もができないことをやってのけるりこの姿は良かった。プールにしてもダンスにしても、内面だけの美しい世界があって、それを観た人が自然と共感してしまうような、少女の内面世界が映されていたように思う。

都と宇佐美に関しては、背景が薄かったのでそこまで入れ込む理由が分からなくて微妙な気持ちになった。好きに背景なんて要らんだろと言われると困るし、この映画は極力前後の話が取り払われているような気がする(少女たちの今だけを撮っている)から難しいかもしれんが、百合のオタクなのでその感情が萌芽した背景にこそ惹かれてしまう。そういうわけで、都と宇佐美についてはあまり深く考えることはしなかった。

最初にも言ったが、かなりクセが強い映画。傑作か駄作かは、己の感性に委ねられている。

俺は挑戦されているのかもしれない(?)

この感想をかくために、同じ山戸結希監督の映画「溺れるナイフ」をその日のうちに観た。

 

4月26日 映画14「溺れるナイフ」(2016)

良かった。田舎特有の荒い言葉遣いや人間関係の狭さ、信仰心が合わさって俺好み。

タイトルの表現方法がすごいよくて、言葉遣いや音楽、アニメーションが気持ちいい。

閉塞的なんだけれど、田舎にしかない自然に囲まれた限定的な開放感もあって、

全能感に溢れた10代の青春(ナイフとも言う)があって、観ていてめっちゃ良かった。

それがレイプ未遂によって、未成年の力の壁、できないことを突きつけられるという展開もテンプレだけど良い。

時は流れて、もう二度とあの全能感に満ちた自分たちだけの青春は戻ってこないのに、何度も何度もその影を追い求めてしまうのが好き。

あと、大友があまりに良いやつすぎて、友達にほしい人間ナンバーワンかもしれない。

全体的に見ると普通に好きな映画なんだけれど、山戸結希監督の作品といわれると「そうなのか……」と少しがっかりする節もある。

かなり我儘なオタクだな……。

 

4月27日 映画15「永い言い訳」(2016)

主人公にかなり不快感を覚えた。妻にイライラをぶつけるタイプで、洋画みたいにブチギレてから

「すまん、悪かったよ……」とすぐに謝ってくれればいいんだけれど、こいつはねちねち嫌味をいうタイプのかなりうざい人間で、顔も腹立つし、

なおかつ他人に迷惑をかけまくっても一切謝らないというクズなので観ていて非常にストレスだった。衣笠でキレるの謎すぎるし意味わからん。

意味わからんのだが、これがこの物語のテーマなので仕方がない。人間的にかなり未熟だった作家が、子育てを通して他者への愛や思いやりの心を

知っていくというストーリーなので、その前提を否定するなら最初からこの映画は向いていないということなのだろう。

それはそれで癪なので、ちゃんと最後まで見た。

感想としては、「計算の仕方は合っているけれど代入する数字が間違っていて、けれども結局答えは合っている答案」という感じ。

ストーリーの運びとしては文句なしで、非常に適切にテンポ良く物語が進むので良かったし、終わり方も良かった。

ただ、主人公をここまでイライラさせるキャラメイクにしなくても良かったんじゃないかというのと(妻の事故のとき不倫していた、夫婦の仲は冷めていた、くらいでも十分この物語は動いたんじゃないか)、途中でポッと出の編集がやけにわかった口をきいて、「子育てなんて生きている価値のない自分に無理やり役目を与えているようなもの」みたいなことを言い出すのがビックリした。どうなんだろう、結構過激な部類に入る発言だと思うんだけれど、こういう発言をふと登場してきた人間が口にするようなものなのだろうか。もっと主人公に辛口で当たる人間みたいな描写があればよかったんだけれど(それこそ花見でひとりだけめっちゃキツいことを言うとか)、そういう気持ちがありました。

まあオタクの戯言なんですけれど……。

 

4月28日 映画16「叫びとささやき」(2016)

芸術的だな……と素直に思った。

いちいち構図や赤を基調とした色使いがすごく綺麗で、まったく不快にならなかった。

赤はかなりビビッドで刺激が強いと思うんだけれど、それをあれだけ使っておいて、綺麗に止めることができるのがすごいと思う。

また、ストーリーはかなり薄いけれど、間の取り方がよかったのか、視聴者も一緒にアグネスと過ごし、看取るような心地にさせてきたのでビビった。

カーリンとマリアの、妻として、女としての苦しみや不安を浮き彫りにしつつ、「やっぱり家族にしか本当の愛はないんじゃないか」と思わせておきながらも、

最後の蘇ったアグネスを受け入れることが出来ず、最終的にはアンナだけが支えてあげることができたというのが、すごく切なかった。

しかも、アグネスにとってはアンナが最後に呼ぶ存在だというのも……。

最初の母についての語りや、最後にブランコに乗って語る、あの空気と言葉遣いが良すぎて、何より風景が美しすぎる。

ひとつひとつのシーンが絵画みたいで、本当に綺麗な映画だった。終わり方も良すぎた。何度でも観たい傑作。

 

4月29日 映画17「牯嶺街少年殺人事件」(1991)

大天才の映画だった。台湾の歴史と大陸から渡ってきた外部の人間と内部の人間の矜持、日本の名残が色濃く混じっていて、

ひとりの少年の殺人事件に結びつく。めっちゃ良かった。

大人のいいようのない不安や、その子供への影響は映画の冒頭で語られるが、それを抜きにしても映像を観ているだけで嫌というほど伝わってくる。

父親の子供への縋り付くような信頼や、父のプライドと生活の不安定さに挟まれる母親の苦しさ、周囲の人間関係、それらがめっちゃ圧迫してくる。

観ているだけでも、自分の閉鎖的だった部活の人間関係や、学校での付き合いを思い出すし、自分が変わることを強いられている。

少年の狭い世界の周囲に広がる、激動の時代は、固定されたものなしには生き抜くことはできなくて、その「固定」が結局は少女からの愛、つまり少女にとっての変化だという構図が、どこにも救いがなくて辛かった。少年を殺人に至らせるまでに追い詰めた、中国の「絶対的な権力・学力主義」の象徴である、文学部の合格者発表のラジオが、スタッフロールにまで持ち越されて流れるラストがほんまにありえん強すぎて声が出てしまった。

本当に凄すぎる。クソ長いが、4時間でこれだけの体験をできる映画はないんじゃないか。

劇伴の無さが、世界にリアリティをもたらしている。

 

4月30日 映画18「地獄の黙示録」(1979)

ベトナム戦争をテーマにしたコッポラ監督の作品。ゴッドファーザーしか見てなかったので良かった。

前半部分は戦争の狂気が十分に伝わってきたし、なかなかに面白かった。

なんとなくボルヘスかレムの、ジャングルの中に帝国を作る話を思い出したけれど、作品名が思い出せない。

後半につれどんどん狂気の度合いがあがってきて、なんとなく空想的な映像になっていくのが楽しかった。

ただ、解釈となると自分にはレベルが高すぎるし引用される文学を全く読んでいないので「戦争こわ」で終わってしまった。

無能。

 

 

 

以上、引き続きネトフリやアマプラで観れるオススメ映画を募集しているので気が向けば是非。