新薬史観

地雷カプお断り

視聴映画記録(2020.06/26~07/02)

最近哲学の勉強を浅くやっていて、あまり映画に時間を割けていない。 もうちょっとバランスを考えたいものだ。

 

6月27日 映画101「雪の轍」(2014)

パルムドールを受賞したトルコ映画

眠くならないタルコフスキーという感じで、流石にタルコフスキーレベルの映像美は無理にしても、綺麗な絵作りが心がけられている気がする。対話が中心に扱われており、個人が自分の考える哲学を語ったり、決して歩み寄ることのない平行線の議論をずっと行っているのが印象部深かった。あと、金持ちと貧困層という意味でも交わらない価値観やプライドが対立している構図も良かったが、だからと言ってこの映画で何を学べたかというと難しい。その段階にまで落とすことが出来ない。白痴のように、金持ちがくれた金を火にくべるシーンをずっと覚えているのだけれど、あのあたりのシーンはかなり好きだったな。「正義とはなにか」「善とは、悪に抵抗しないことだ」あたりの議論も面白かった。いま書いていて気がついたのだけれど、娘が「悪はどうしようもないけど、こちらにナイフを向けてきても、無抵抗でいることで相手の良心を自覚させる」と主張しているんだけれど、善が貧困層、悪を金持ち(娘は金持ちの家に生まれている)図式に当てはめると、最後まで金持ちに踏みにじられていた貧困層が、最後まで耐え抜くことで相手の良心(娘が差し出した金)を呼び覚ましたという構造になっていて、けれども結局その金は娘の目の前で燃やされる訳なので、娘の主張「悪には抵抗しないことで良心を呼び覚ませる」ことは事実だったが、その結果得られる「悪の人間が持つ良心」の無価値さと、「悪によってつけられた善人への傷」は一生治らないということを主張しているのかも。感想書いて良かった、微妙に解像度があがった気がする。合っているかはともかく。要するに、全体を通して「いくら悪人(善人)が対立している相手を理解しようとしても、決してできない」という平行線の状態を、「雪につけられた轍」という表現で表しているのかな。だとしたらとても綺麗なタイトルだ。けっこう好きでした。

 

 7月1日 映画102「下妻物語」(2004)

中島哲也監督作品。言葉選びや思想がめちゃくちゃ嶽本野ばらだとおもったら普通に原作がそうだったらしい。桃子とイチゴの関係性がとても良くて、語り口も好き。こういう、ちょっとギャグテイストで早口気味のノリ、軽い映像とでも言うのだろうか。「翔んで埼玉」とか「超高速!参勤交代」みたいな、日本の映画に独特の空気に、もしも名前がついているのなら、まさにそれをまとっている。非常にテンポが良くて、見ていて退屈せずに楽しく見ることが出来た。自分の世界をしっかり持っている桃子と、他人と群れていたイチゴが、互いに引き寄せ合い、少しずつスペースを共有することで、原子の共有結合のように二人だけの世界、スペースを作り出すのが良かった。決して恋愛関係にはならないと思うのだけれど、伝説の暴走族「卑弥呼」の秘密を共有しているという点で、いわば共犯の関係になっていて、やっぱり「二人だけの秘密」というのは百合において大きなファクターなのかなと思った。嶽本野ばらってこういうのも書けるのか。今度原作読んでみます。

 

7月1日 映画103「ローズマリーの赤ちゃん」(2004)

サムネがめちゃくちゃブラボっぽくて飛びついてしまった。ポランスキー監督作品。結論から言うと、非常に面白かった。鬱陶しい隣人関係から、夫の不安定な職、優しくしてくれた住民の突然死など、妻の不安を煽るような状況が続くが、それがかねてより望んでいた妊娠という行為で、いっぺんに安定していく。けれどもそれもつかの間の出来事で、気がつけばまた奇妙な出来事が巻き起こって……という風に、観客の気分を非常に不安にさせるのがうまいなという印象。赤ちゃんを守りたいというローズマリーの気持ちに感情移入しつつ、最後の付近では、見ているこっちまでもつらくなるくらいにローズマリーが疲弊し、もしかしてこれらはローズマリーの見ている悪夢か何かか?と思ってしまう。けれども、最後に至る流れが非常によくて、ああ、これは傑作だなと思った。オタクが見たいものをしっかりと見せてくれる。ホラー映画(ゾクゾク系)では傑作になると思う。ローズマリーの最後の表情、ずっと忘れることが出来ないだろうな。

 

 以上。少ないけれど楽しく見られた。もうちょい映画に時間を割きたいな。

あと、この前チェンソーマンの作者、藤本タツキさんのインタビューで「とにかく映画を大量に見たほうがいい」と言っていたので、自分なんかはよかったよかったと思うわけですね。ここ最近の時間の使い方は間違っていないんだと。まあ、チェンソーマン読んでないんですけれどね……流石に申し訳ないので全巻アマゾンでポチりました。ジャンプコミックスは安くてありがたいな。また読んだら感想書くかも。ていうか映画の感想も1作品ごとにやったほうが見やすいんだよなっていうのはずっと思っていて、でも文字数そこまで稼げないし、数が膨大になるからやってなかったんだよね。やったほうがいいのかなあ。