新薬史観

地雷カプお断り

視聴映画記録(2020.07/24~07/30)

訳あってホテル暮らしをしていたが、集中力が欠如し何もできなくなった。映画も見れなくなって泣いている。ホテルをチェックアウトし、元通りの暮らしを手に入れることができてよかった。という近況報告。今週も見た映画が少ない。

 

 

7月24日 映画120「モンティ・パイソン/人生狂騒曲」(1983)

かねてより気になっていたモンティ・パイソンのやつ。

まず「クリムゾン終身保険会社」から始まるのだが、これがまたはちゃめちゃに面白かった。佐藤友哉の「デンデラ」みたいな話だが、オチが天才すぎてしばらくゲラゲラが止まらんかった。これ、マジですごいわ。すごすぎる。

次からは「生きる意味」パート1~7くらいまで広がるが、これがまたすごい。

「神に祝福されて食うものに困っている」などの笑える名言が多く、本当の「風刺」というものが痛いほど詰め込まれておりすごいことになってる。かなり強気なものに、パート1の宗教批判などがあるが、「カトリック精子のひとつひとつが神の祝福なので、性行するたびに子供が生まれる。プロテスタントはゴムを使って性交をすることができるので最高だと言いながら子供は無限に生まれる」といおう部分。結局は宗教は違えど、人間の自制心なんてそんなもんってことですかね。あまりに皮肉が過ぎて笑う。それから途中で人間じゃなくて魚に向けてのメッセージになっているし、メタ的にもなるしグロいし意味分からんけどゲラゲラ笑えるとかいうかなり稀有な体験が出来る。構成も非常にうまい。すごい作品でした。他のモンティ・パイソンの作品も見たすぎる。傑作。

 

 

7月26日 アニメ121「凪のあすから」全26話(2013)

篠原俊哉監督、シリーズ構成岡田麿里、音楽は出羽良影。PAオリジナルアニメ。

正直リアタイ含め何度も5話くらいまで見ていたのだが、こういう男と女だけの物語はかなりきっついので毎回死んでいた。が、なんとなく見ようと思って5話を越えるとあとはスムーズだった。

改めて見ると、ただの恋愛アニメではなく、けっこうギミックが施されていて良かった。序盤は海と陸の間の障壁が大きく聳え立っていたが、中盤からはその障害が取り払われて時間が新たな障害になるというのが、2クールアニメの退屈しない秘訣だなと思った。テーマとしても、時間のなかで変わるものと変わらないものの対比がよくなされており、それをうまく恋愛に結びつけられている印象があって、かなり脚本が巧かった。あと、それぞれの感情の向き先や、取り残される人間の置き方が非常にうまいように感じた。26話という話数のなかで、主要キャラ7人の感情をうまく表現しつつ、綺麗に締めた構成力も抜群。また、恋愛もので(特に女性に)ありがちな不可解な言動が控えめで、強いキャラ嫌いのある自分でも嫌いになるキャラが居なかったという点でも、キャラを大切にしているなと感じた。

ただ、身体的に成長しているちさきちゃんを団地妻みたいに扱うのはどうだろうか。いや、扱うだけならまだしも、実際に言葉として出されることに不快感を覚えた。まあ確かにエロいんだけどね。めちゃくちゃエロいんだけど、言葉選びが安易だったように思う。ただ、文脈のないエロいキャラというよりかは、時間を扱っている以上、成長してしまった身体という時間を孕んだ存在になっているので、この表現については完全に否定できない。

また、音楽については出羽さんがめちゃくちゃいい仕事をされていて、海と青春をテーマに扱うアニメに相応しく、親和性が強かった。作画も安定のPAクオリティで、リアリティと光の表現は抜群。すごくいいですね。

最後に作品のテーマとして、運命の批判、人の意志の強さ、時間による変容の受容、人の想いの無次元性などが扱われていたけれど、これらについて非常に説得力が強い話が組まれていたと思う。文句なしに傑作でした。また、しっかりした幼なじみの恋愛ものとしても、非常に大きな立ち位置を占めると思う。「幼なじみって海のようなもの」とはまなかちゃんもよく言ったもので、似たような文言に「あおいは水みたいなもの」といういちごちゃんの言葉があるんですよ。それが恋愛感情に結びつくひとつの事例を挙げてくれたことで、いちあおがまたひとつ強固なものになりました。

気になった細かいところ

・海神様の剥がれたうろこであるウロコ様という重要な人物がいるが、ウロコは本当に一人だけなのかというところ。あまり原理は分からないが、他にも剥がれたウロコ、つまりウロコ様っているんじゃないのって思うんだけれど。

・2回目の儀式で、1回目の反省を活かして防護服などの準備がされていなかったところ。乗船しているみんなが泳げるなら良いが、そうではないならいくら儀式とは言えちゃんとした対策は必要だと思う。まあそれを言うと絵面は地味になるが。

・最終話のラスト、美海がまなかに声をかけるシーンは、ぱっと見エモいが何をやっているのか全く分からず支離滅裂。

・前評判で、「誰かがめっちゃ可哀想な目にあう」と言われていたのを思い出したが、最後まで見てなるほどとなった。確かにめちゃくちゃ可哀想だが、すれ違った例の男子学生による匂わせもあるしな。完全に救いがないわけではなくて良かった。

以上、クソみたいな粗探しはしたが、人と感情と時間を扱ったアニメ作品としての出来はかなり良かった。篠原俊哉監督の次回作に「色づく世界の明日から」があるが、これは視聴済みで、今思えば少しこの作品とテーマ的に繋がっていたのかなと思う。こちらの作品も満足度は高かったので、篠原俊哉監督の強さが分かる。う~ん素晴らしい。

 

7月26日 映画122「ガタカ」(1997)

アンドリュー・ニコル監督作品。

これはSF映画の最高傑作かもしれん。めちゃくちゃに好きな映画だった。デザイナーベイビーというのは、2020年にして今後一番あり得そうな設定なんだけれど、それを20年前にここまで問題提起できたのがすごい。マイケル・ナイマンの曲が半端なく切ないし、空間や美術もすごくよくて、20年後の今見ても洗練されているようにすら感じる。テーマとしては、科学技術が進み、健康な赤ちゃんしか生まれなくなった世界で、先天的な障害を持った人間はどのように自己実現するかというもの。このテーマを扱う作品として満点に近い解答を示しているように思う。感動できるSF。傑作。

 

7月30日 映画123「トゥルーマンショー」(1998)

アンドリュー・ニコル脚本、ピーター・ウィアー監督作品。ガタカから同監督の作品へ。これも設定自体がまず面白く、つくられた世界という宗教染みたテーマだが、つくったのは神ではなく人間だということで、いろいろな綻びが生まれてくる。それが徐々に見えてくる様子が、非常に面白かった。また、同じような視点で見ると、ラストのトゥルーマンが世界から脱出するというシーンも、神の支配からの脱却、決定された運命などないんだというメッセージにも見えるが、あまりに陳腐だろうか。まあ20年前だしな。現実にも人間をモニタリングする番組がいくらでもある以上、微妙なリアリティを持っているのがすごくよかったし、見方を変えれば「マトリックス」や「SAO」「キャビン」のようにも見える本作は、トゥルーマンの心の強さと映像を通した人間のリアリティさで一線を画しているように思う。SF色は強くないが、自分の外部を満たす環境に対して強くあらがう様子に元気づけられる。非常に面白かった。傑作。

 

7月30日 映画124「シモーヌ」(2002)

アンドリュー・ニコル監督作品。3Dモデルが現実の女優を凌駕したら、それに誰も気がつかなかったらという映画。シモーヌを生み出した監督は自分のことばかりでシモーヌを作品の一部としか見ていない、つまり恋しているわけではないのに、映画が公開されるたびにシモーヌが全世界の人々に愛されていくという展開が面白かった。成り上がり方がなろう小説のそれで笑ったが、監督はあくまで自分のことしか考えていないので、特別不快感もなく良かった。気になったのは、序盤シモーヌの存在が世界にばれるかもという緊張感があったものの、その緊張感を最後まで強いられることになるので、だれてしまう。前後半で緊張感を持たせるアイテムを交換するとかした方がいいんじゃないかなと思った。とはいえ、タランスキーというおっさんが3Dモデルのシモーヌに息を吹き込むだけで世界が熱中するという設定は、完全にvtuberの到来を予見しているし、結局人間は内容ではなく外側しか見ていないのだというメッセージにも、反論したいが現実がそうだという強固な証拠がある。映画としては悪くはないが、そこまで面白い作品でもなかった。ただ、vtuberの席巻を予見している点では非常に興味深い。

 

今週は以上。 

オススメ映画などありましたら、マシュマロ(marshmallow-qa.com/jluayiz4j7fh249) に投稿お願いします。