新薬史観

地雷カプお断り

視聴映画記録(2020.08/28~09/10)【マグノリア・マッドマックス等】

この2週間も相変わらずほのうみ小説総集編と格闘していたが、無事に入稿できたし(3日後に不備があって再入稿をおねがいされるが)、ハ~やれやれ次は何しようかなと思い、そういえばパスタの話書いてなかったなと思って書いたら大変なことになった。想像以上に。拡散されてから丸二日、各所への対応に時間を取られまくったが、ようやく落ち着いてきたのが今日の9日……ということで、前回の記録からかなりの期間空いたが、全然映画は見れていないんだよな……。

まあ、でも今後も平常運転で映画を見ていこうと思う。暇なので。本当は暇じゃないけど。

てか一昨日、急に大学の同期から酒に誘われたから、高級パスタの記事を見せられて「これお前?笑」されたらどうしようかと思ったが、そんなことなく、政治経済映画小説といういかにもな話をして終わったのでよかった。キリンの一番搾り呑んで「キモさの一番搾りw」とか言い出したらそれこそ手に負えん。

 

9月8日 映画144「マグノリア」(1999)

 

PTアンダーソン監督作品。

これ、めっちゃくちゃ面白かった。なんと言ってもテンポの良い始まりが最高すぎる。OPの入りだけでも見て欲しいし、自分はそこで完全に呑まれた。3時間もあるから長丁場になるが、群像劇だしそこまで長いとは感じない。主な登場人物だけでも10人くらいはいるんじゃないかな。ちょっと顔の区別がつかない女性が二人くらいいたが、集中して見れば分かるはず。多分。SEXについて熱く語るカリスマ、クイズ番組の司会者、その番組に出演する天才児、かつての天才児(雷に打たれて今はポンコツ)、莫大な資産を持った死にかけの老人、その妻、麻薬中毒の女、それに一目惚れした警官などなど、かなり癖の強い人間がめちゃくちゃ出て来る。これほどの人数を、うまく作品のなかで動かせるのかと疑うのは当然だが、出来てるんだよな……すごいわコレ。最終的に、繋がるようで繋がらない登場人物たちが、まさかのもので繋がるのだけれど、もしこれを読んでから見る人がいると悪いので伏せておく。とにかく、その「まさかのもの」で、全ての登場人物が、一気に「許される」。この映画のテーマが「許し」だと分かった瞬間、すごく気持ちよくなった。一見何が起こっているのかわからないのだけれど、それによって動かされる人々の表情や会話を見ていると、「決して起こりえない」ことですべての人が許されるという、めちゃくちゃ面白いことをやっているのだと気付く。作品としての脚本、構造がめちゃくちゃに良い。最後の「まさかのもの」を受け入れることができるかどうかで、この作品の評価はまったく別のものになると思うが、自分は実際にこれが事件として起こったことを知っていたので、うまく受け止めることが出来た。でも、これ事前に知らないとかなり受け入れがたい気もする。自分としては間違いなく傑作だと思うが、これほどまで人によって評価が分かれそうな映画は見たことないな。

繰り返しますが、自分は傑作だと思います。

 

9月9日 映画145「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)

ジョージ・ミラー監督作品。前々からツイッターでも話題で大人気なのは知っていたが、見る機会がなかったので放置してた。けどもネトフリに新しく入ったみたいなので視聴、して脳がぶっ壊れた……。

なんだこれは……って声が出た。初っ端から独特の世界観の構築に余念が無く、なおかつ前情報が一切無い。登場人物が、ただ必死に「今」を生きているだけ。でもその今で、主人公が置かれている立場や状況が理解できるし、いちいち映像のセンスがすんごいので、グッと引き込まれる。わけのわからない世界だけど夢中になって視聴した。すごいなコレ、脳が沸騰するような情報量だけれど、色使いや刺々しい形や、独特のフォームがひとつの場所に集っているのに、何も違和感がない。いや、今思い返せば「なんだあの世界」と突っ込みどころしかないのだが、それでも舞台としてすべてが完璧すぎて、突っ込みどころがない。「これはこう言うものなんです!」という主張を、説明もなく受け入れさせるパワー、これすべての創作物において一番大切なんじゃないかな。それがこの作品には備わっていて、自分はそれに打ちのめされた。ストーリーとしては、フュリオサの産まれた緑の地を追い求めたものの、それがもう朽ち果てていて、また結局砦に戻るという、それだけのもの。そんなシンプルなのに、途中のバトル(?)がいちいち見たことのない熾烈なもので、マジでなんなんだろうなこれ……。とにかくトゲトゲしくて、全くしらんがデスメタルを思わせるものが多数あったけれど、それがぴったり合っている。北斗の拳(見たことない)の海外版みたいな、世紀末みたいな感じがして非常によかった。てか、途中のカラスの飛んでたかつての緑の地、あまりに世界観が良すぎて、しかもなんか四肢に竹馬みたいなやつらおるし、こいつら時代が時代ならブラボに出てきただろってくらい異質で最高だった。てか思い出した、なんか見覚えあると思ったら、「武器人間」のモスキートだな。

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武器人間のモスキート

 

こいつは狂った博士によって作られた存在だけれど、あんなんが人間の進化の果てとして存在しているの、嫌すぎるけど最高過ぎる。ほんまに頭のなかどうなってんだよ。監督の写真見ようとしたら、今年で75歳らしくて震えた。

えぇ……。

とにかく、マジでみんないちいちかっこいいし、敵対していたはずのマックスとフュリオサが手を組んで一緒に車を走らせるのかっこよすぎるし、過去一に面白い映画だったかもしれん。すごいわこれ、大傑作ですね……。絶対にIMAXで見たい映画だ……パソコンで見る映画じゃねえよな……。

 

9月10日 映画146「マッドマックス」(1979)

引き続きジョージ・ミラー監督作品。いや、こうなったら始まりを見るしかないだろ。で公開年を見たら40年前でびっくりした。そんな期間が空いていたのか。

内容としては、暴走族(というよりもはや人殺しか……?)に同僚や妻子を傷つけられた(ほぼ殺された)マックスが復讐に燃えるというものだが、なかなかに面白い映画だった。最近見た奴でタランティーノ監督の「デス・プルーフ in グラインドハウス」というやつがあったが、あれとかなり近くて、車でバトる感じのやつ。デス・プルーフは後味がスカッとしていて最高で、見終わった後にありがと~!って拍手するタイプの映画だが、こっちは正直マックスの背負うものが重すぎて、いけいけいけ復讐しろしろしろ!!!って思って、実際に視聴者のみたいものを見せてくれるのだが、「で、復讐したからってなんなの……」と真顔になってしまう。まさに「マッドマックス」。でも、マックスの今後を考えると、ふつうに鬱病になってしまった。

自分としてはスカッとするくらいの作品が好きなので、作品としては普通に面白い映画くらいの印象だったのだが、ここから40年かけて怒りのデスロードに進化するのかと考えると、そのギャップという意味でめちゃくちゃ面白い映画だった。続編も見ます。

 

9月10日 映画147「マッドマックス2」(1981)

同じくジョージミラー監督作品。続編。だけれど、初手で世界が滅んですげえ笑った。

いや、まだ前作は治安の悪いアメリカ(映画自体はオーストラリア映画らしい)って感じで受け止めるわけが出来たのだが、どうも監督はそこに収まりたくはなかったらしい。すごいなあと思う。核やらなんやらでこの世界が一度は滅びたあと、どんな世界が残るかというと一般人は駆逐され、暴走族が道を行く「スピードと暴力だけが生き残った」世界、最高だと思う。マッドマックスってこの一文に尽きるんだよな。で、今作からもうしっかりと怒りのデス・ロードの舞台、すげえ砂漠になっているわけで、なるほど、無印からどう繋がるのかと思ったんだけれども、普通にこうなるのかと妙に納得した。で、本作からしっかり「モヒカンヒャッハー」をしている。強烈だよ。無印からこんなになる?という驚きがあった。なんかすげえハードゲイみたいなやつらもいるしな。「北斗の拳っぽいな」というのはデス・ロードの感想で書いたのだが、Unextの紹介曰く、北斗の拳のパクりではなく、本作が北斗の拳に影響を与えたとか。ほんまかいなと思ったが、どのサイトを見てもそう書かれているのでそうなのだろう。すごいな……。

話としては、V8(これが油田の集落に「すげえ!最後のV8だ!」と扱われるのがめちゃくちゃ面白かった。マジで前作の続きなんだと実感させられて)に乗ったマックスがなんやかんやでジャイロ・キャプテンと行動をともにしたりしなかったりして、暴走族に目をつけられた油田の民を救う物語。今更だけれど、この概要を書きながら、前作からの地続きだからこそ、元警官であるマックスは暴走族とは手を組まないんだよなと当たり前のことに気付いてしまった。いや、なんとなく暴走族は悪という刷り込みが人間にはあると思うのだが、この世界においてはスピード狂のマックスは十分暴走族として生きることが出来るわけで、けれどもそれをしないあたり、妻子を殺されたという(そういや妻はどうなったんだ?一応一命を取り留めたはずでは?)怒りが常にマックスを動かしているんだなあと。でも今回、本当にマックスの怒りが根底にあるなら、最初からマックスは敵(暴走族)の敵である油田の民に味方をしようとしたはずであり、でもそうせずに、誰の味方にもつかずに戦地を離れようとするあたり、マックスにはもはや暴走族への怒りはないのかなと。無印で暴走族にやったことで怒りの精算はついており、マジですることがなくなった、あのやるせない無印の終わりを、確かにマックスも抱いているのかもしれないなと思った。そういう意味では、2,3,デス・ロードという3つの作品で、マックスの流浪する感じのスタンスは変わらないなと。1の怒りの残滓をずっと引きずっている男がマックスなのだなと今更ながら感じました。

で、それはそれとして、序盤の強烈なインパクトに慣れさえすれば面白いかなと。脚本自体もすごくしっかりしていて、序盤の語り手が最後に誰か明かされる部分や、ジャイロ・キャプテンが何度も助けに来てくれるところ、トレーラーが運んでいたものがわかるところなんかはすごく良かったし、ラスト17分、デス・ロードに繋がるカーアクションは最高に熱かった。でも、カーアクションを見る度に、そのカーアクションでほぼ全編をやりきったデス・ロードの異常性(良い意味で)が際立つように思う。ようするに、デス・ロードの下敷きとなる重要な作品だけれど、自分の場合はデス・ロードを見ているので物足りなく感じてしまったという感想。キャラも立っているし、そこらの映画よりかはずっと面白いと思うし、繰り返し見ても楽しいと思うが、全部「コレ見るならデス・ロードで良くない?」ってなる。そんな感じの映画でした。

 

9月10日 映画148「マッドマックス/サンダードーム」(1985)

続編。サンダードームという名で3番目の作品。正直、かなり微妙な感じだった。序盤、何をしているのという感じで車が一切出てこない。バーバータウンは興味深く、この荒廃した世界でもブタを集めてメタンガスさえ出せればエネルギー源は得られるわけで、エネルギーのあるところに、ビジネスのあるところに街ができるんだという説明にはなったが、砂漠に追放されてからはマジで「この時間いる?」という感じだった。ラストになってようやくカーアクションになったが、カーではなく機関車だし、そこから飛行機になってしまう。確かにマックスは車を運転し続けてはいるのだが、マックスの良さがあまり活かされていないような気がした。マックスの個が弱い気がする。マックスの良さが出ていたのは、あのサンダードームでブラスターの仮面が外れ、子供であるとわかった瞬間に戦えなくなったくらいで、優しさをもったマックスの一面が見えてよかった。でもその程度かなあ。なんというか、変な世界に足を踏み込んだマックスという感じで、これにマッドマックスを名乗られると、当時の観客は不満だったんじゃないかと思う。

しかし、こうなるといよいよ続編のデス・ロードが生まれたことが奇跡に近いように思う。正直、ここから続編なんて誰も期待しないだろうし、この設定からどう面白くするんだよとも思う。それでも、きちんと今までの作品を下敷きにしながら、あの伝説ともいえる映画を生み出したのはすごい。デス・ロード万歳。デス・ロードしか勝たん。

 

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