新薬史観

地雷カプお断り

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第1話感想

アニメ「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第一話の感想です。

なんかごちゃついたので軽く纏める。

 

上原歩夢の葛藤について

まず歩夢の服への発見だが、誰に言われるでもなく自分から惹きつけられている。

歩夢の視線に気付いて侑が会話を中断し、自分も同じ方へ。

そこには、最後に歩夢が「Dream with you」で着ることになる衣装と、幼少期の頃に着ていたといううさぎパジャマ。

侑「歩夢、これいいんじゃない。似合うと思うよ」

歩夢「い、いいよ。かわいいとは思うけど子供ぽいって」

と断るが、まずこの時点で侑は一言も歩夢にかわいいと表現していない。

ここで気付くべきは、侑からは一度も歩夢に働きかけていないというところで、歩夢が一人で衣装を見つけ、彼女が初めて「かわいい」と表現しているのだ。

要するに、このショーウィンドウのなかには歩夢が思う「かわいい」が詰まってることになる。で、同じショーウィンドウという「透明な壁」は、歩夢にとって「見えるけれど自分の手の届かない存在」であることを示している気がする。過去に着ていたといううさぎの洋服と、小学生までは着ていたというワンピース?を同じ箱のなかにつめることで、どちらも大人になろうとする歩夢には、同列に手が届かない「かわいい」であることを鑑賞者に伝えている。また、よく見ると、ところどころにトランプが貼り付けられており、ウサギの洋服にも、アリス・イン・ワンダーランドであわてんぼうのウサギが持っていた時計が、洋服に掛かっている。

つまり、このショーウィンドウの中には、歩夢にとってのかわいいの他に、「アリス・イン・ワンダーランドの世界」も内包されている。

 

さて、次の台詞で、

歩夢「そういうのはもう卒業だよ」

侑「着たい服着れば良いじゃん。歩夢は何着たって可愛いよ」

歩夢「もう、またそんな適当なことを」

というやりとりがされる。ここでわかることとして

①歩夢は自ら「かわいい」を我慢して、大人になろうとしている

②侑は恐らく、中学生頃から歩夢が「かわいい」服を着なくなったことに気付いており、その度に何度も「何を着てもかわいい」と伝えてきた

③歩夢は侑の言葉を軽薄に(無責任に)感じている

つまり、中学生から今に至るまで、歩夢のなかでの葛藤は、「自分の大人になろうという気持ち>侑の言葉(かわいいに素直になればいい)」という図式ができあがっているのだ。

ここはかなり重要なところだ。

なぜなら、スクスタの歩夢なら間違いなく「貴方がそういうなら……」とかわいい服を手にするからである。アニメの歩夢は、そういう点では、侑と健全?な幼なじみの関係を結んでおり、「貴方のために卵焼きを練習したり」「貴方との思い出を頻繁に確認したり」と言ったことをしなくても、侑に冗談を言えるし、食べ物を半分こできるし、フラットな関係を築けているのである。

なんと言っても、「やってみてよ、あゆぴょん」に対し、素の「はあ?」が出るような女である。スクスタ歩夢なら間違いなく「そんな……いくらあなたのお願いとはいえ……恥ずかしいよお……」と言いながらも「あゆぴょん……♡」と顔を真っ赤にしてやりそうなものだが、アニメの歩夢は「はあ?」である。

スクスタの歩夢は先述の通り愛が重く(なんと言っても、演者の大西亜玖璃さん曰く、「友達以上恋人未満」が意識されている関係なので)、オタクに包丁を握らせられがちな弱みがあったが、アニメ歩夢はしっかりと自我があることから、オタクに包丁を握らせられる心配もない。

これはこれで、アニメという幅広い視聴層を意識した、良い性格の改変だと思う。

単に愛が重い系百合は、百合豚がブヒブヒ言うだけで、普通の視聴者は「また百合か」と一話切りしそうなものである。それをやや軽い味にするだけで、一般視聴者からも純粋に二人の絆を見てもらえるので、とても良い。少なくとも自分は良いと思う。これで興味を持った人がスクスタを初めて、ストーリーを読み進める毎に、「えっ!?歩夢、俺(私)のこと好きすぎ内科医!????!!!???」と混乱し、泡を吹いて死んでほしい。

また、せつ菜のライブ以降、この二人の生活について多くが明かされることになるが、

上原歩夢からの着信音が歩夢の1st「夢への一歩」(スクールアイドルを始めて歌うことになるはずの曲が着信音になっている)

上原歩夢と高咲侑で部屋の位置関係がスクスタと逆

などなど、やはりスクスタとは別の世界線であることが強調される。

 

話がかなり逸れたが、要するにアニメでは上原歩夢の性格の改変がなされており、スクスタの歩夢と違って、アニメの歩夢はどことなくしっかりした印象を受ける。「自分の大人になろうという気持ち>侑の言葉(かわいいに素直になればいい)」という図式ができあがっているのだ。

 

上原歩夢と高咲侑について 前編

さきほど、歩夢の判断基準に、侑の言葉はそれほど重要ではない(あまりにもかわいいと言われすぎて貴重さがない)というのは書いたが、それはそれとして、歩夢は侑のほっぺについたコッペパンをさりげなく取って口に運ぶし(!)、おそらくインスタに上げるだろう写真を撮るときには、慣れた手つきで侑から歩夢の腕に絡みにいくし(!)、なんかかなりいちゃついている。本人達は意識していないのだろうが、端から見ているオタクたちに百合認定されかねない仲の良さである。

それとは別に、二人の結びつきが「幼なじみ」しかないというのも事実である。

というのも、二人の行動パターンは、お台場でぶらぶら買い物をして、「じゃあ次どうする?」「映画に行こっか」のように、ただ一緒に時間を潰す存在でしかない。ポジティブな方面で結びついている要素が、幼なじみ以外にないというのは、スクスタと同じである。「なんか面白そうだ、行ってみようか」というのは、アニメにおいてはモブの台詞でしかなく、あくまで観客側の台詞である。

今までのラブライブ!シリーズで描かれてきたように、この二人は、スクールアイドルに出会うまでは、ただの幼なじみの高校生なのだ。

 

③優木せつ菜の「CHASE!」について

優木せつ菜のキャラ背景はおいておくとして、彼女はとにかく「好きに正直になること」をテーマに活動しているスクールアイドルである。なかでも1st singleの「CHASE!」はラスサビのシャウトがびっくりするくらいによくて、ライブでオタクの度肝を抜いたことは記憶に新しい……新しくもないのか? とにかく、その時の彼女の熱意は、まさに天地を揺るがすほどのもので、現実のライブでも、それまで虹ヶ咲にあまり興味がなかった人間を次々と沼に堕とすような勢いだった。

まさにその衝撃を映像にしたようなライブ映像であり、そしてこの映像は明らかに今までのラブライブ!シリーズと異なったものである。

というのも、今作の主人公は高咲侑その人でありながら、彼女はスクールアイドルをしないことになっている。少なくとも現時点では。あくまで裏方を貫き通し、舞台からではなく観客の視線からライブを見ることになる彼女の存在は、それ自体が特別だ。

そんな彼女の感情を、ライブステージに上がらせずにどう表現するか……これは
アニメ「King of Prism by PrettyRhythm」でも描かれた表現だが、演者の音楽を視覚化し、それが実際に観客に影響を与えるようにリンクさせるのだ。 別の言葉でいうなら、妄想を共有することになる(キンプリは妄想が現実を侵食するようになったところに狂気が潜む訳だが)。

これに関しては、今までのラブライブ!シリーズのライブ演出だけでなく、アイカツ!、プリパラでも見られなかった映像である。そこに新鮮さがあるのだ。

また、演出として、レインボーに光るゲーミングせつ菜と侑のすれ違いも非常に面白い。あれは、ライブステージが上、観客席が下という視覚的な立場が左右に適用されたもので、左がステージ、右が観客側という構成になっている(はずである)。その区分を、わざわざレインボーになって(実体化せずに)侑とすれ違い、立場が逆転する。そこに、視覚的な驚きが含まれるとともに、「あなたは観客席で見ているだけの存在ではない」というメッセージが込められているのではないか。

ライブの終わりにせつ菜は汗を流すが、あれは涙の暗喩でもある。背景を知っているスクスタ勢が多くを語ることはないだろうが、涙を流すような心境でも、それを一切表に出さない優木せつ菜のスクールアイドルとしての完成された精神と、その燃えるような熱意が、上原歩夢と高咲侑に受け渡されたのだという構図は、まさにアイドルアニメの構図そのものである。

最後に、せつ菜が退場する方向だが、こちらは横ではなく上に行く。これは、高咲侑と上原歩夢にとって、今よりさらに遠く離れることを暗喩しており、スクールアイドル同好会廃部への布石である。多分。

 

④桜坂しずくの演劇部の練習の引用

「明日もまた、同じ日が来る(の)だろう。(幸福は一生来ないのだ。)それはわかっている。けれども、(きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。)」

というのは太宰治の「女生徒」の一節だ。自分は既読ではあったがこれに気付かなかったが、普通に台詞を検索したら出てきたのでよかった。

「女生徒」は女生徒の日常を描いた短編であり、その心理描写が綺麗で美しくて舌を巻く。太宰治、お前男なのによくこんなの書けたなというのが正直な感想だが、今回のアニメで大事なのはそこではなく、引用された一節だけで問題は無いと思う。

ここでしずくが言いたいのは「廃部になった日常からの脱却」で、明日からもずっとスクールアイドル同好会は廃部したままだろう、それでも自分はスクールアイドルを諦めきれないというしずくの想いが込められている。

また、この想いを抱いているのはしずくだけでなく、他のメンバーの紹介も兼ねながら、それぞれが前に動き出す直前の瞬間が描かれている。

唯一、中須かすみだけは声に出して決意表明しており、2話への布石になっている。

 

上原歩夢と高咲侑について 後編

 

スクールアイドル同好会の部室探しになってからは、歩夢の気持ちがやや曖昧なまま、侑のスクールアイドルへの興味だけで話が運ぶようになる。

そんなだから、スクールアイドル同好会が廃部になると、侑は気持ちの行き場を失い、表面上の話は終わったかのように見える。しかしながら、歩夢もまたせつ菜のライブに力をもらっていたからこそ、次の話に繋がるのだ。廃部以降、歩夢がスクールアイドルになることを決意するまでの、感情の移ろいに注目すると面白い。

もっとも歩夢の表情が動くのが、侑が「今は夢がないけれど、夢を追いかける人を応援できれば」と自分の気持ちを漏らした時である。

これが侑の行動原理であることが明かされた時から、きっと歩夢はスクールアイドルになることを強く意識したのではないか。

また日常が戻りつつあり、服を買うことを悩み、結局変えずに明日に引き延ばすような「何でも無い日常」を送ろうとする侑と、未だに自分のなかで、燃え続けるスクールアイドルへの想い。

歩夢がスクールアイドルになることを決意したのは、「自分が好きなかわいいピンクに正直になりたいから」というのが大きいだろうが、それと同じくらい大きな理由に、「侑が夢を語ったから」というのもあるに違いない。

いままでの日常を見る限り、二人はぼんやりとした未来(予備校にいく)くらいしか話した事が無く、本当の自分の気持ちについては話し合ったことがないのだろう。

そんな折に、侑が始めて自分の口から「夢を持った誰かを近くで応援したい」と夢を語った。それは、身近にいた侑の口から出た本気の夢だからこそ、歩夢の背中を押したのだろう。

つまり、侑が夢を語ることで、歩夢はようやく侑の本音に触れることになる。この本音に触れるということが、歩夢が侑の言葉に信頼を取り戻すキッカケになっているのだ。

口先だけだと思っていた侑の「歩夢はかわいい」という言葉が、現実味を帯びてくる。

それによって、冒頭で述べた、「自分の大人になろうという気持ち>侑の言葉(かわいいに素直になればいい)」という図式が逆転し、「自分の大人になろうという気持ち<侑の言葉(かわいいに素直になればいい)」となったのだ。

ここにあるのは、「今はまだ恥ずかしいけれど、かわいいに正直になりたい」という歩夢の夢と、「夢を持った誰かを近くで応援したい」という侑の夢である。

侑の夢は、まだ夢というにはふさわしくないかもしれないが、侑と同じフラットな関係を望む歩夢だからこそ、侑の夢も「夢」にしたい。そういう想いがきっと歩夢のなかにあるのだ。

それが結実した曲が、「Dream with you」(侑と一緒の夢)である。

 

⑥Dream with youについて

5000億回見た。

アリス・イン・ワンダーランドをモチーフにした楽曲である。

冒頭に述べたように、ショーウィンドウのなかのアリス・イン・ワンダーランドの世界は、歩夢にとって「かわいい」世界である。また、それと同時に、ウサギと歩夢を絡めることで、アリス・イン・ワンダーランドでウサギがアリスを不思議な世界につれていったように、歩夢が侑をスクールアイドルという新たな世界に連れ込むという、第一話の構成をそのままイメージした曲。

MVの冒頭ではそのかわいい世界から影のほうに逃げるように進む歩夢が描かれながらも、様々な小ネタをはさみ、今までいろんな形で歩夢の背中を押してくれたすべての「あなた」への楽曲となっている。

小ネタについて

・バラは全て蕾みで、ライブ中に舞っているのはすべて♡である。これはスクールアイドルとしては未熟な自分(「開花宣言」など参考)を示しながらも、自分の気持ちという意味での♡と、かわいいの象徴としての♡を侑に届けようとしている。

・散らばったトランプが1~10(おそらく栞子を含めた)とニジガクのメンバーの数になっており、遠くにジョーカー(高咲侑ではなく、あなた)がいる。(スクスタネタ回収)

・草原で寝転がるのは大西亜玖璃さんのジャケ写イメージ(声優ネタ回収)

・歌詞は「繋いだ手 その温もりが 胸いっぱいの勇気をくれたから」となりながらも、侑の手から離れる演出が入る。これはアニメ世界線から離れることを暗喩しており、事実、次の映像では何か打ち上がっているが、おそらくあれは火星行きのロケットであり、ちょぼネタの回収となる。また、次のカットは今までのCDで着ていた衣装のカットである。一見ただのファンサービスのようにも見えるが、これらが意味するのは、当初はアニメ化されないと言われていたニジガクを最初から応援し続け、アニメまで導いてくれたあなたと「手を繋いでいる」ことを示しているのではないか。

・そういう意味では、CDジャケの衣装のカットが入るところは、しっかりと意識された別の世界線の歩夢でもあり、現時点で、アニメの歩夢にとっての「なりたい自分」でもある。その後の映像の花びらは♡ではなく桜の花びらになっていることからも、「開花宣言」を受けていることも読み取れる。

・振り付け、最後の両手を組んだ動きが♡になっている。

以上、非常に愛と♡に溢れた構成になっており自分はもう何度か泣いてしまった。

また、ライブ後はせつ菜と違い、歩夢は侑のところに降りて侑と同じ目線に立つ。ここで侑が登るのではなく、歩夢が降りるのがめちゃくちゃ良くて、本当にちいさな一歩で頑張ってライブステージに立ったんだというのが感じられてよかった。

その後、交換したのものが何なのかわからなかったのだが、どうやら序盤に出てきた「トキメキが足りない」パスケースらしい。確かにこれ、スクスタの一番最初のストーリーで交換していたような……気がついた人すごいな。ここでも、いままでずっと何も買わなかったお店(日々の繰り返し)から物を購入したというアクションが、現状の打破を暗喩しているし、わざわざ「トキメキが足りない(未熟な)」パスケースを侑にあげるという行為は、「ふつつか者ですが、これからどうぞよろしくお願いします」という――。

冗談はともかく(冗談ではないかもしれないが)、「夢への一歩」の歌詞とリンクするアクションになっている。

 

⑦NEO SKI, NEO MAP!について

めばちさん効果もあるのか、やたらとスタァライトを感じるなと思ったら小高光太郎UiNAの恋の魔球・御してぎょしゃ座コンビだった(Aqoursの曲も書いてたんですね。知らなかった)。しかも作詞は畑亜貴である。どこまでラブライブ!愛に溢れているんだ。楽しく駆けるようなリズムが最高に良くて、これ、ライブで聞きた過ぎるだろう……涙です。

 

⑧まとめ

様々に展開される虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。その世界線をいろんな形で表現し、リスペクトしながらも、上原歩夢というひとりの女の子を最高のかたちで視聴者に届けてくれた最高のアニメーションでした……。

また、スクスタとの大きな違いに、あなたではなく歩夢が、自分の意志でスクールアイドルの世界に踏み出したという点があり、非常に面白い部分だと思う。どことなくさっぱりしながらも、胸のうちには侑にも負けないようなスクールアイドルへの想いを宿した歩夢が、今後どのような話を描いていくのか……。

あと、映像作品としては、ラブライブ!シリーズでありながら、ラブライブ!ではない新たな地平に向かう野心も感じる。キャラデザの刷新もあるだろうが、映像の色使いがくっきりしたものから淡いものになっているのと、作品世界が普通の学校から、学校と言う名のコミケ会場になっているのも無視できない気がする。

ていうかこれ、今後も話ごとに個人の掘り下げが改めて行われて、最高のアニメーションと一緒に新曲が提供されるんですか……?

え……天国?

以上で感想は終わりだが、感想のつもりがいつも通り変な部分まで突っ込んで、7000字くらい書いてた。書き始めて3時間くらい経つし……まあでも、それくらい面白かったアニメだったのでいいかなあ。本当にありがとうございました。来週が楽しみでならん。

てか、まだOP見てないし……。来週の放送、やばすぎるだろ……。