新薬史観

地雷カプお断り

スクスタ20章へのお気持ち表明

この記事はスクスタメインストーリー20章について書いている。

ネタバレをめちゃくちゃ含むので、まだ読んでない方は先入観を持ちたくない方は読まないほうが良い。ストーリーを読む気がないけど、スクスタで何が起こっているのか気になるとか、同じようにストーリーを読んだ上で「これってどうなの?」と考えたい人は読んでくれると嬉しい。

ただ、20章が好きな人と、読んでないけど他人の感想を読んで本編を読んだ気になって批判したい人は絶対に読まないでほしい。

まず第一に、世論に流されず、一次ソースを参照して、自分の意見を持ってください。

自分は20章を自分の目で読んで、その上で「クソ」だと確信している。 

 

というわけで、ネタバレ踏みたくない方はブラウザバックお願いします。

以下オタクの落書き。

 

さて、今回書くのは、スクスタのメインストーリー2ndシーズンにおいて、何が良く、何が悪かったのかという問題整理である。

おおまかに、20章で批判されている内容を大きく分けて、それぞれについて自分のお気持ちを表明したい。

  

①「ランジュ・ミアの参入が気に入らない」という意見について

まず書かなければならないのは、鐘嵐珠(ショウランジュ)の存在と言動だろう。

ランジュは資産、権力、才能、設備環境など全てを有しており、いわゆるパーフェクトな存在として描かれている。こういうキャラ自体はアイドルアニメではテンプレ化しており、簡単に思いつくものに「アイカツスターズ!」のエルザ・フォルテ、似たような設定のキャラに「ラブライブ!」無印の綺羅ツバサがいる。

エルザなんて「パーフェクト・エルザ」とも呼ばれ、気に入った学生を自分の学園に引き抜こうとするなど、かなりランジュと被っている部分がある。気になる人は調べてみると良いかもしれない。

ともかく、彼女たちはノブレスオブリージュを意識していて、自分たちが「持っている側の人間であること」を知っている。ゆえに、自分たちの環境についても満足しており、不自由な環境に置かれている「原石」を見ると、磨いてあげようという気になるのだ。

綺羅ツバサはまだとっつきやすかった印象があるため、ランジュと同列に並べるのは反感を買うだろうし、事実同じものではない。μ’sに対して積極的な引き抜きを行わなかった、という点でも大きく違う。

ここで整理したいのは、綺羅ツバサとランジュの間にある共通点である「プロとしての意識」である。先程ノブレスオブリージュと述べたが、似たようなものだと考えてもらって良い。

栞子もストーリー内で散々述べているが、ランジュに悪気は一切ないのである。ただ親切心で「本気でやりたいならウチの最高の環境を使ってもいいけど? ていうか、本気ならなんでウチの環境を使わないの?」ということを言っているのである。

プロ顔負けの最強設備、天才作曲家を有するスクールアイドル部と、素人集団である同好会。

要するに、2ndシーズンの問題提起は、プロとして活躍できる最高の環境で自分を磨くことが出来るのに、弱小の同好会が存在する意義があるのか、というものがまずひとつあり、これはラブライブ!無印でも描かれていた、最新鋭の設備を整えたUTXとボロい音ノ木坂学院との対比と同じ構造になっている。

このような対比によって、廃校寸前の音ノ木坂は、「音ノ木坂という学校が大好きな生徒がこんなにも居て、こんなにも多くの人たちが自分たちの夢を、みんなの夢とし、叶えようと協力してくれている」という解を導き出した。

UTXとは違う音ノ木坂の魅力とは、様々な人の想いがいっぱいに詰まった場所であり、みんなの想いを本当に叶えてくれそうな存在(μ's)がいるという事実である(個人的な解釈)。

では、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はどうだろうか。

同好会が同好会であるための魅力は、どこに、だれに、どのように備わっているのだろうか。

2ndシーズンは、そのような問題に向き合おうとしている。

そのようであるから、この「プロ」という概念を極限まで高めたランジュ・ミアの存在は、個人的にはかなり面白いと思う。よくやった、とすら言いたい。

なので、個人としてはこの2人の参入は否定しないし、肯定している

 

②「ギスギスのストーリーが嫌だ」という意見について

このような声をよく見かけた。

せっかくみんなで仲良くしている虹ヶ咲を、ギスギスさせてどうするんだ!とも。

だが、自分はこの点においては全く正反対だ。

寧ろ、ギスギスさせてくれて全然構わない。もっとやってくれても良い。

ちゃんとキャラ崩壊をさせないのなら。

キャラ崩壊については、③で語るとして、ギスギスすることの必要性を書きたい。

というのも、これは①にも通じる話で、虹ヶ咲を前に進ませるためには、必ず一度は立ち止まらせ、あるいは後退させるべきである。

「いやだ!俺はずっと同好会がいちゃついていれば満足なんだ!」というオタクは当然いるだろうし、流石に今回の話を見せられると、そう思う人間が出るのもおかしくはない。それくらい、2ndシーズンの印象はひどいものになっている(と個人的には思う)。

 

ただ、スクスタのメインストーリー自体の話の流れはちゃんとしていると考えている。

オタクはやたらと1stシーズンのシナリオを叩いているが、自分にとっては(栞子の加入の流れの雑さと面白くない日常回)以外は、しっかりしているように見える。

というのも、1stシーズン9~13章では、栞子による「部員同士で競い合い、何年も時間と労力をかけた末に、大会には決まった人数しか出ることができないという不合理な部活動を行う意義」についての問いが投げかけられている。

簡単に言えば、「部活動ってやる意味あるの?」という問題提起である。

その問いに対して、「部活動の意義は、結果ではなく過程で育まれる感情にある」という結論を導き、さらに結束した虹ヶ咲。この感情をもっとも誘発するのがスクールアイドルという存在であり、それに惹かれたからこそ、栞子も無益だと思っていた部活動に、自らの身を投じることを決意したのである。

導き出した結論としては、何らおかしなところはないし、自分は面白いと思っている。

14章からは、スクールアイドルフェスティバルを実現させるまでの過程を、あなたちゃんと歩夢の感情を織り交ぜて話を進めるとともに、その調整に奔走する栞子を描くことで、栞子の株上げは出来ていたし、加入までの下地も出来ていたと思う。

さらに背後では、ボランティアを通して「どうすれば人の心を動かすことが出来るか」という問題提起がなされ、ここでは答えとして、栞子が導き出した「人は機械ではない。正論をいくら振りかざしても、心を動かすことはできないのだ」「人の心を動かすには、感情が――心が大切なのですね」というものが用意されている。そして、それをもっとも人に伝えるものが、スクールアイドルだとも言われている。

個人的には、ここはめちゃくちゃうまいなと思っていて、9~13章で導き出された部活動の意義が「感情」で、14~17章で導き出された人の心を動かすものが「感情」で、栞子がスクールアイドルになることを決めた理由も、スクールアイドルの根源となる「感情」となっていて、すべての物語が「感情」とスクールアイドルを結びつけている。

まあ、スクールアイドルの部分はありとあらゆるスポーツに置き換え可能だと言うのは野暮だが、それでもスクールアイドルについての大きな流れは非常にうまいように思える。

 

勿論、1stシーズンが手放しに褒められるかと言えばそうではない。例えば、あなたちゃんが頑なに同好会のみんなから助けてもらおうとしないところは、シナリオを読んでいるものに苦痛を与えるし、自己肯定感があまりに低いところは、同じ精神構造を持つオタクとして同族嫌悪を覚える。また、栞子の加入の最も大きな引き金となった、姉・薫子との邂逅では、「それだけスクールアイドルが好きなら、絶対に自分のなかにスクールアイドルをやりたい気持ちがあるはず」という一連の言葉が、驚くほど「あなたちゃん」にも重なるのである。詳しく書けば、あなたちゃんと栞子は、スクールアイドルへの熱量、裏方への徹し具合、スクールアイドルに心を動かされている、という点ですべて共通しているのだが、お姉さんが指摘した点は、この3点のみである。つまり、ここであなたちゃんが「スクールアイドルを始めない理由」が描かれていない点で、栞子の加入に違和感を覚えるのである(プレイヤーキャラだから、というメタ的な視点は無しで)。

あとは日常回が絶望的につまらない。

個人的にはここらへんが気になるだけで、このように、大雑把に見れば、メインストーリーは面白いものになっていると思う。

話が逸れたが、要するに自分は、スクスタのシナリオ陣営は、「大雑把に見れば」面白い話を作れると思うのだ。

なので、多少のギスギスした話でも、きっと後で盛り返してはくれる。それは間違いないし、大雑把に見れば、この2ndシーズンも面白いものになるとは思う。

ここまで書いてきて、「なんだこいつ、スクスタのアンチじゃないのかよ」と思われるかも知れないが、自分はあくまでスクスタにDVを受けている側の人間であり、アンチではない。日常回のつまらなさに殴られながらも、1stシーズンがそれなりに面白かったから、仕方なく2ndシーズンを読んでいるに過ぎない。

そして、20章でも殴られた。

この打撃が、今までみたいに「おもんね~」と笑って流せるレベルのものならいい。ランダムキャラによる浅いイベストのつまらなさも、部活の先輩からの肩パンくらいの傷みで済んだ。結構痛いけど、文句を言って終わりレベルである。

ただ、今回の殴られ方は、これまでに無かったものだ。みぞおち、或いは顎をガツンとやられたようなショックがあった。警察、という単語が頭をよぎる。

全ての問題は、③が許せるかどうかの話である。

 

③「同好会の分裂が許せない、愛さんと果林さんの裏切りが許せない、しずくが抜けたのが許せない」という意見について

これまでの記事では何度も書いてきたが、自分にとって一番許せないのが「キャラの性格・設定改変」「理不尽なキャラsage」である。なので、正直そのラインを越えなければ、自分は何をしてもいいと思ってる。

20章否定派のなかには、②と被るが、「同好会が分裂するのが堪えられない!彼女たちはそんな子じゃない!」と怒っている人間がいる。

自分はそうではない、と考える。

個人的には、同好会は分裂しても良いし、消滅しても良い。ギスギスした展開は、話を面白くするためには必須だし、キャラは成長し、情報が更新される事に変わるのだから、そのような変化も受け入れなければならない。

「否定派はこれしきのギスギスも受け入れられないのかよ」という意見もあったが、それには同意である。「同好会が分裂する」という事実自体は、オタクは受け入れるべきである。

ただし、「分裂する理由がしっかりと明記されれば」の話である。

ここで、以下のように反論するオタクが殆どだろう。

 

「いやいや、しっかり理由は喋っているじゃん。愛さんは『単に練習がしたい』『スクールアイドルが好きな人ならみんな友達になりたい、全否定はしない主義』だから入った。果林さんは『同好会のみんなは大好きだけれど、なれ合うつもりはなく、互いに高め合いたい』『パフォーマンスが向上するから』入ったんでしょ」

 

文章として書かれている、という事実に対しては正しい。

確かに果林さんの「理由」には納得せざるを得ない部分がある。果林さんは読モとして並々ならぬ意識を持っているし、ダンスの技量に関しても自信があり、上昇志向が強いキャラだと考えている。同好会のみんなが大好きだけれど、互いに高め合うためのライバルでもある、という言葉は、果林さんのストイックさを表現できていると思うし、ここに関しては問題が無い。

しかしながら、愛さんの「理由」には、自分は納得することが出来ない。

これは愛さんのキャラの性格を、全く違うものに変えているとしか思えないのだ。この「思えない」というのは、あくまで自分の解釈である。だから、上記の理由がキャラ改変には繋がらないと考える人もいるかも知れないし、それが殆どかもしれない。

とにかく、まず自分が引っかかっている箇所を挙げる。

愛さんにとって大切なものは「友達」と「楽しいこと」であると自分は考えている。そして、愛さんは友達を増やす名人でもある。故に、ランジュと友達になるために部に入ったというのは、一見筋が通っているように見える。

しかしながら、そこには犠牲になっているメンバーの姿がある。自分たちが活動している裏で、同好会は監視委員会によって練習を妨害されている。

ここでオタクに聞きたいのは

新しい子1人と友達になりたいがために、既にいる友達よりも、更に深い関係にある7人が辛い目に遭っているのに、それを放置して友達作りに精を出すか

その状況は、愛さんにとって楽しいと言えるのか

という点である。

結論から言うが、恐らくこれに関しては答えが出ない。いろんな背景が描かれることで、どのようにも解釈されうるからだ。

例えば、大きくわけて以下2通りの流れがあるだろう。

○ランジュと友達になって、同好会のことを認めてもらうように話し合うのが目的だった(同好会のことが一番にある。自分が練習できるだけでなく、同好会みんなの楽しいをしっかり考えている)

○単に、ランジュと友達になりたいだけ(友達になりたいのが一番、自分が練習できて楽しい)(20章現在)

前者と後者の違いは、簡単に言って情報の有無である。「同好会のことを認めてもらうため」という言葉は、20章時点では一切出ていない。

この後に、付け足しの情報が出てくる可能性はある。

「今後に期待ですね!」と明るく言える人は、それを期待しているのかも知れない。

しかしながら、絆エピではおねーちゃんかあなたちゃんか、というくらいにあなたちゃんのことを好いている愛さんが、あなたちゃんと腹を割って会話する機会が与えられても、「同好会のため」という単語が出てこなかったのだ。

この後、愛さんが「同好会のため」という単語を吐露する機会は、自分には全くないように考える。「実はスパイで、同好会のためとは誰にも言えなくて」という可能性もあるにはあるが、「部に入るのは同好会のため」だと、同好会のみんなに隠すメリットがなさ過ぎる。強いて言うなら、ガチで部に入った果林ちゃんに向かうヘイトを、DDのよしみで分散させるという高度なテクニックを使ったかもしれないが、愛さんはそんな頭脳戦はしないだろう。隠し事はしないだろうし、思ったことはスッパリと言う。そういうオープンな人間だからみんなに好かれるのであって、それは逆に考えれば、「愛さんが言わないことは、愛さん自身全く考えていない」ということにもなる。

まだ分からない、分からないのだが、愛さんが「同好会のために」ランジュと友達になろうとしている線は、限りなく薄いように思う。

そして、もしその場合、愛さんは「性格改変」をされていることになり、それは自分が最も嫌いなことなのである。

キャラは人間と違い、いろんな機会にいろんな手段で逢い、話し合い、多角的に人物像を作り上げることが出来ない。自分たちが、今、この瞬間に、最も新しい愛さんに逢うためには、スクスタ20章しか接点がないのだ。なかでもスクスタは、虹ヶ咲のためにつくられた、一番影響力のある媒体と言っても過言ではない。アニメの話がもともと無かった虹ヶ咲にとって、スクスタこそが正史であり、そのつもりでシナリオも作られているはずなのだ。嫌なら読むなという反論は、「常に新しいキャラに触れたい、一番影響力のある、力強いキャラの話を読みたい」というオタクの感情を否定することになる(嫌なら黙ってアニメを見ろ、という話ではないのだ。分からん人には分からんと思うが)。

キャラだって成長する。しかし、愛さんで言うところの「友達が大事」「楽しいが一番」という魂の部分が歪められるのは非常に悔しいし、悲しいし、辛いものがある。もしそれが変わったというのなら、本当に「練習がしたいだけで、同好会のみんなを置いてけぼりにして、ランジュのところに行く」ようなキャラになったのなら、それ相応の理由付けが必要なのである。

 

何度でも繰り返すが、自分は同好会が分裂してもいいと思っている。

愛さんや果林さんが、部に移ったとしても何ら問題は無い。愛さんが、友達との繋がりを大事にするよりも、プロとしての技量を持つスクールアイドルになりたいと考えても一向に構わない。しかし、その理由は誰にとってもわかりやすく、明確に描かれる必要がある。

現在、愛さんが部に移った理由としては説明が不十分だし、ここで話を区切ってしまった以上、オタクが初見で「二人は同好会を裏切ったのか?」と少しでも思った記憶は消えないだろう。まだ話が続いているならいい。解決編がすぐに読めるなら、その印象も軽減されるだろうが、1ヶ月近くもロクに説明がないまま放置というのは、あまりにも愛さんが可哀想すぎる。

それに、まだ自分はこの点に関して文句がある。それは、見せ方の問題である。

事実として、愛さんと果林さんとしずくが抜けたし、恐らく「同好会を分裂させろ」というのは運営の要望だろう。ただ、どのタイミングでどのキャラが抜けるのかは、ライター陣に一任されていてもおかしくない事項で、それを踏まえると、きっともっとうまいやり方があったはずである。

例えば、20章の最後でしずくが部に入ることを決めたが、その話の流れは素直にうまいと思った。あれだけの状況で、うまくスクールアイドルの「かすみん」を崩さずに歌いきったかすみのシーンは心を打つし、しずくが悔しく思うのも無理がないと思う。

自分は、ああいう理由付けを果林と愛にもさせてほしかった。

20章を見て「しずくは裏切り者だ!」「株を下げた」などと言っている人間は、全くの理解力がない人間なので相手にしなくても良い。しずくがかすみに向ける想いは丁寧に描かれていて、理由もはっきりしている。これ以上描くのはあの尺では難しいと思う。

だから、一章ずつ「メンバーが抜けていく」展開にすれば良かったのにと思ってならない。現時点のように、開幕でDD推しをびっくりさせて、プレイする気をそがせるようなシナリオは、お世辞にもうまいとは思えない。

開幕で愛と果林に「裏切り者」という印象を持ち、その後読めなくなった人(実際に自分は本当に読むのが辛かった。見せ方がひどいから)にとって、愛と果林の物語が更新されることはない。そうなると、一番辛いのは誰かというと、読んだ人はもちろんそうだが、一番は変なレッテルを貼られるキャラの方である。

「裏切り者」というレッテルを貼られたキャラは、あくまでキャラであるため、何も反論することは出来ない。当然のことだが、この一方通行の情報伝達を考えると、オタクとキャラの意思疎通において、シナリオが唯一の交流の場であり、そのシナリオの質と見せ方こそが大事なのである。

あなたちゃんが海外留学をしている間に、愛さんと果林さんが抜けていた、という展開は、あまりに人の感情を置いてけぼりにしている。

これは1stシーズンで、栞子が学んだことをシナリオライター陣が全く活かせていないのである。

もう一度、よく読んで見て欲しい。

 

人は機械ではない。正論をいくら振りかざしても、心を動かすことはできないのだ」「人の心を動かすには、感情が――心が大切なのですね

 

「ちゃんと果林さんと愛さんの脱退理由は書かれている」じゃないのだ。それは正論であり、心を動かすことにはならない(キャラの行動を理解、同情することができない)。何も、「いま愛さんがお茶を呑んでいる理由は!?」とか、そんな揚げ足取りなことはしていないのだ。

同好会からの脱退、というのは、今までニジガクのみんなが大切に守ってきた場所から抜ける、ということであり、それは「みんなとの絆を裏切る行為」だと考えられても仕方がない。それだけの大きなアクションをしているのに、「ほら、後から説明したでしょ」で納得できるほど、機械のような合理性と思考力を、人間は持ち合わせてはいないのだ。納得できた人は、物語を俯瞰的に見ているのかも知れない。どちらが良い悪いとは言い切れないが、いずれにせよ、キャラの内部から心情を追うように読む自分のようなタイプの人間は、ここで必ず引っかかる。

とにかく、人の心理を理解できていないシナリオは、自分には「下手」に見える。虹ヶ咲は特に、今までのラブライブ!シリーズと違って、「個」を大切にしているのだ。キャラのみんなにとっての重大な決心を、1章かけて丁寧にやるくらいの意気込みでないと(そうしろと言っている訳ではない)、虹ヶ咲の良さが失われてしまうように思う。

キャラを大切にして欲しい。

自分が20章を「クソ」だと断言するのは、この部分が最も大きい。

 

④「ランジュの行動、妨害はやりすぎではないか」という意見について

この点については、非常に多くの人から指摘されているように思う。

監視委員会はやり過ぎだ、という意見について、自分も全面的に同意する。

これはランジュにとっても良くない。ランジュというパーフェクトなキャラが、ここまで露骨な欠陥(性格がクソというのは栞子のお墨付きだが)を晒さないで欲しい。

「天性のものを持っていて、自分の演技に絶対の自信を持っている。少し子供なので、他者への理解力がなく、自分が一番だと思っている」

という点。自分も地雷カプはカスで自カプが一番だと思っているので、耳に痛い話だが、少なくとも自分と違い、ランジュは誰もが認める才能と技術を持っているのだ。

それでいいじゃないか……。

冒頭で述べたアイカツスターズ!に出てくる「パーフェクト・エルザ」は、登場当初に反感を買い、かなりのオタクが視聴をやめたと聞くが、最後まで見ると非常に泣ける話になっていた。そんなエルザでさえ、「他の学校のアイドル活動を禁止する!」というような訳の分からないことはしてこなかった。あくまで実力で全員を潰す、それくらいの迫力があってこその「パーフェクト」である。

ランジュのように全てを持っているキャラが、「ああ、また同好会のネズミちゃんたちがしょうもない練習をしているのね」と流せなくてどうする。そこで「練習もさせないぞ!」となると、折角魅力的なキャラが台無しである。パーフェクトなキャラに絶対に必要な「王者の貫禄・余裕」が、ランジュには一切ない。これではただの、「強い小物」である。相手を潰そうとする理由は、同好会を恐れている、という結論にしかならない。同好会が力をつけてきて、ランジュも余裕がなくなり無視できなくなった2ndシーズンの途中からとかならともかく、始めから妨害をしてくるようでは、本当にランジュのキャラが分からなくなる。このままだと、本当に性格が悪いだけの人間になる。

ランジュをそんなキャラにしないで欲しい。

 

また、プロとしての説得力も怪しい部分がある。

「部は、一番完璧な人がセンターに立つステージ作りをしている」というのは果林の言葉だが、このステージを見ても本当にそう言えるだろうか。

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これがプロのステージだ!……本当に?

愛も果林も栞子も、同好会の時の衣装のままである。自分はプロのステージと言われれば声優のライブにしか行ったことがないオタクだが(声優のライブもプロのステージに間違いないだろう)、行った先のステージ設営はどれも丁寧で、まずライブとしての「コンセプト」があった。当然、そのコンセプトに沿った衣装、メイク、ダンスがあるわけで、パッと見ただけで「あ、これはあのときのライブだ」と分かる視覚的な特徴もステージにはある。

しかしながら、数多ものプロが集まったステージで、バックダンサーの衣装すら揃っていない(個を強調しているはずの虹ヶ咲の衣装で、バックダンサーを踊らせるランジュのプロ意識って何?)ステージに、そのような説得力が生まれるだろうか。あるいは、バックダンサーがこれほどまでに目立った衣装をしていても、自分に絶対に目が行くというランジュの自意識によるものなのだろうか。

「支配してあげる」という言葉は、割とそのようなイメージを膨らませるが、もし本当にそのような「支配」がコンセプトなら、めちゃくちゃ恐ろしいスクールアイドルだと思う。同好会を潰したという実績も助けて、いよいよ本当の悪者ではないか。

もちろん、このコンセプトについては、オタクが口を出すところではないかもしれない(今までのシナリオについてもそうかもしれない)が、A-RISEに加入した(妄想)絵里の姿でさえちゃんと衣装を揃えているのだ。

もう少しこう何というか、手心というか……。

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A-RISEに加入した絵里の姿。衣装が統一されている

みんなプロを揃えています! 作曲家には1日で5曲かけるようなバケモンもいます!って、そんななろう小説みたいな説明をされても、それこそプロを馬鹿にしているのかという話になってくる。

実際にプロなりの苦労を丁寧に見せるなどして、「純粋なプロの部 VS 同好会」という図式にしてくれないと、ただの勧善懲悪ストーリーになって終わりではないか。

ランジュ・ミアについてのプロとして隙が多すぎる点が、非常に気にかかる。

まあ、こっちに関しては③のような怒りはないが。ランジュにはまだ同情できるような情報を持ち合わせていないので。

 

⑤その他

詳細は省く。

これに関する怒りが③と同じくらいで、ちょうど③と⑤で半々くらいある。

 

 

⑥まとめ

以上、かなりの文量になってしまったが、自分の気持ちを整理できたという意味で、自分のためにはなった。他人のための文章にする気はなかったので、読みづらかったら申し訳ない。

①②で挙げたように、確かにこの先の話は、面白くなるだろうとは思う。しかしながら、自分にとっては③④⑤が許せなかったのだ。それが面白さへの期待に勝った。それだけのことである。