新薬史観

地雷カプお断り

スクスタ21章の感想

※この記事は、スクスタ21章のネタバレを多分に含みます。未プレイの方は、まずプレイしてから読むことをオススメします。

 

 

お気持ち表明にならなくて良かったという気持ちが強い。

20章に比べ、21章には少ししか不快感はなかった。が、そのぶん疑問が多かったし、面白いなという部分もあった。ここではそれを雑に書いて行く。

 

 

①あなたちゃんの人物像について

これまでのストーリーを読んできて、あなたちゃんは自己肯定感が非常に低いなと感じている。それは、スクールアイドルフェスティバルでのボランティア集めで、すべて自分の責任だと思い込み、狭い視野でワアワアしていたところや、同好会の人間との会話で度々見られる過剰な謙遜、部の設備を見てあっさり負けを認めて通常運転してるところなんかは、普段から自分の価値を自分で認めていない人間の言動だと思う。これまでに何度も歩夢ちゃんやみんなから「あなたのことを支えたい」と言われてきたのに、20章5話では、結局最後までみんなとあなたの会話は噛み合っていなかった。

で、21章1話で描かれたのは、やはりそんなあなたちゃんの一面で、「部のしずくちゃんには興味がある」「(しずくを取られて悔しいという気持ちは)なくはない」という発言が、かなり面白いなと思っている。歩夢から「あなたのスクールアイドル好きは筋金入りだね」で笑われた発言なのだが、ここをそんなに軽く流していいのかなと思っている。

間違いなく、あなたちゃんは、歩夢を含めて全員が部に異動しても「私に実力がないから仕方ないな……でも部のみんなの活動も楽しみ!」で済ませてしまう。

それがめちゃくちゃ恐ろしい。

何が恐ろしいって、今後の展開が、である。

21章の8話で、しずくがあなたちゃんに作曲の秘訣を聞く(部への突破口を聞く)シーンがあるのだが、そこでは、あなたちゃんが同好会のみんなの「やりたいこと」「大切な気持ち」を真摯に受け止め、それが観客のみんなに伝わるように作曲できる(力を持っている)ことが明示される。

あなたちゃんは、ミアのようにデータを分析し、確実に売れる曲を作ることはできない。しかしながら、応援してくれるみんなと一緒にステージを作り上げるために、なくてはならないこの力こそが、同好会のメンバーが同好会を離れない大きな理由であり、同好会のみんなが、荒削りながらも魅力的に見える理由なのだ。そんなあなたのことを、同好会のみんなが感謝しない訳がない(DD組は除く、と書かなければならないのが辛くて苦しいが)。

で、この決定的な点が、同好会が部に対抗できる一番のポイントと明示されてしまったにも関わらず、21章のあなたちゃんは「(しずくを取られて悔しいという気持ちは)なくはない」で済ませるのである。20章5話の、みんなからの熱烈なラブコールをもらってもなお、あなたちゃんは自分の価値を理解していない。

しずくが部に行っても、「悔しい!」じゃなくて、「まあ、悔しいかな」くらいの気持ちである。なぜなら、あなたちゃんは「スクールアイドル」にしか興味がないいちファンだからである。あなたちゃんにとっては、全ての価値基準が「スクールアイドルとして輝けるかどうか」なのであり、どこに所属しているのかなんてどうでもよいのだ。あなたちゃんから見て、同好会という場に、今まで積み重ねてきたものはないとすら言えるかもしれない。

もはや「ファン」としての役割を越え、同好会の絶対的な支えになっていることに無自覚で、いつまで経っても、何をしてもその役割を自覚できないところが、自分には非常に恐ろしい。

だからこそ、ランジュがあなたちゃんの価値に気づき、「みんながスクールアイドルとしてステップアップするために、あなたは部に入った方がいいラ(適当)」とさえ言えば、あなたちゃんは「マジで? 行きます行きます」と二つ返事で答えるだろう。

そうなったときの同好会は、もう見てられないことになる。特に歩夢は。

今後、あなたちゃんがキーパーソンになることが明示された以上、あなたちゃんを巡ってひと波乱はあるはずである。あなたちゃんはファンであり、スクールアイドルではない。それはそうだし、その壁を越えることはないだろうが、スクールアイドルにならないにしても、自分がファンよりも上の立場で、みんなの支えになっているという「自覚」を、そろそろあなたちゃんに覚えさせてあげてほしいと思っている。

 

②ランジュの人物像について

このランジュ、なかなか可哀想である。

20章では、パーフェクトキャラとしてあるまじき「余裕の無さ」とは書いたし、今もその思いは完全には拭えないでいるのだが、そもそもこのキャラを、アマとプロの対比である21章の、プロ側の象徴と考えていたのが誤りだったのかもと思っている。

というのも、ランジュの「親友」の使い方である。

21章で、ランジュはしずくを「親友」と呼ぶようになったが、その時の文脈がかなり独特だった。ランジュは、「自分のことを羨ましい、尊敬する」という感情を覚えた人間を、「親友」と呼ぶのである。まるで朝貢のような関係だが、ランジュにとっては、この関係こそが健全だと信じ込んでいるようである。

また、栞子は、しずくの適性は部の環境にぴったりだと判断した。その様子を見て、ランジュは「自分の虜になった」と勘違いしている。他の会話においても、施設の充実具合と、自分の評価を同一にしている部分が多々見られる。繋がり自体も「パーフェクト」であるからこそ生まれているものであるし、「パーフェクト」でなくなった瞬間に、メンバーを切りそうな感じである。

要するに、ランジュはものを持っていて、心をもっていない大富豪のようなものであり、自分はこれを映画「市民ケーン」で見た覚えがある。充実した練習環境を求めて部に入ってきたしずくを、自分の虜になったものだと勘違いしていて、結局逃げられてしまうなんてものはまさに同じ流れであり、ランジュには孤独という名の破滅が待っている。ちなみに、この流れはアイカツスターズ!のエルザ様も辿っている(ような気がする。自分で解散させたんだっけ?とにかく孤独になる)。

きっと、最後までエルザの隣にレイが居たように、ランジュの隣には栞子が寄り添うのだろう。「なんでこんな私に最後まで側にいてくれるの?」というランジュに「幼なじみだからですよ」と語りかける栞子のやりとりは、多分本編で見ると泣いちゃうような気もするが、ありきたりのような気もする。自分はそれでもいいんだけれど。

ただ、このまま、ランジュに足りないものとして「心」が焦点になるようであれば、やはり栞子の話(人の心を動かすには心が大切である)の焼き直しになってしまうので、そこはどうなのかなと思う。一番つきやすい穴は、最も続けるのが難しい「パーフェクト」についてであり、そこを深く掘り下げると、やはり「心」の問題に行き着いてしまう(パーフェクトであることに価値がないなら、どこに価値を見いだすのか、という話になるので)。

幸いにも(?)ランジュは「親友」の定義を見誤っている部分があるので、「本当の親友とは何か、親友の距離」をランジュが知ることになるという話でもいいのかも知れない。これは、「仲間だけどライバル」という虹ヶ咲のテーマにも繋がっていて、どこからが仲間で、どこからがライバルか、という線引きをするものではない。そもそも虹ヶ咲の関係性自体、令和の価値観に合いそうだなと思っていて、パーソナルスペースを害さない程度に距離感を持って、緩い共同体に属しながらも、ライバルとして向き合っても壊れない範囲を扱っているのだと自分は考えている(アニガサキはめっちゃ百合百合しているから「適度な距離感」においては説得力がないし、スクスタは多分そこまで真剣に考えていないだろうけれど)。

ただ、「仲間だけどライバル」が描かれるなかで、「じゃあこの世界において、どこからが親友なんだろう?」という問いは、自分としては非常に興味深いと思っている。

「仲間だけどライバル」というのが、同好会が実現させた令和の新しい距離感だとしたら、「親友」という強い関係で結ばれたスクールアイドル部があってもいいと思う。

孤独になったランジュに、どのように、誰が手を差し伸べることになるのか。願わくば、まだオタクからの心象が芳しくなさそうな、栞子とミアであってほしいと思っている。人から学ぶということをランジュが覚え、新たに定義され直した「親友」によって、スクールアイドル部が再興するという話の流れならば、自分としては非常に面白いし、キャラとしての魅力も強まると思う。

スクスタ、いろんなところに目を瞑れば、面白くなる可能性はあります。

同好会への吸収オチはマジでやめてほしい。

 

③違和感、疑問について

自分が感じたキャラへの違和感について、簡単に書く。

・あなたちゃんはいつ自分が大切な人間であることを自覚するのか

・2話で唐突に明かされた、璃奈と愛さんがいまも仲良く弁当を食っている(果林さんも一緒)という話、ちょっと火消し目的すぎないか。仮に本当にこのタイミングで入れる予定だったとしたら、めちゃくちゃだと思う。20章で入れたらいいじゃん。りなりーと愛さんが飯食いながら、「なんで愛さんは部に行ったの?」というやりとりの一つでも入れたら良かった話では。あとなんで果林さんが出てくるんだよ。不自然に感じる。(まあみんな仲良く!の愛さんが、エマから拒絶されてぼっちの果林さんを少しでも慰めようとお昼ご飯に誘うのは確定で、璃奈ちゃんもぼっちにさせたくないから誘って三人で、というのは予想できるが、そのシーンの描写もされずに突然文字だけでぶち込まれるのはやはり不自然。せめてその食事シーンを入れて欲しかった)

・ランジュからの「かわいい」は嬉しくなさそうなかすみ。「かわいい」が一番の価値基準なのであれば、どんな人から(不審者を除く)「かわいい」と言われても嬉しいはずである。よほどランジュを嫌っているのだろうか。まったく心が動いていないのが意外だった。

・ミアの作曲について。プロとして活躍していて、全く歌う人のことは考えていないというスタンスは、正直無理があるんじゃないかと思う。これまでにイベントやらラジオやらパンフレットやらなんやらで、プロの作曲家がどのようにしてアーティストの曲を作ったかを聞いたことが何度もあるが、いずれも歌う人のことを考えて、話し合って、リサーチするのが大前提だった。その程度の基本を押さえられていない作曲家が世界のチャートTop100の30タイトルも独占しているとなると、現実への希望が潰えるのでやめてほしい。データ分析系キャラが無双するのは構わないが、大前提が出来ていなくて「クソ……!」となるのは、ちょっと……まあ、そういう作品ですと言われるとそうですかとしか言えないが。

・相変わらず消えない監視委員問題。しずくにつっこまれ、「それについては、私たちも言っているんだけれど……」と曇った顔を見せながらも、充実した練習をして「今日もレベルアップした!」と喜ぶDD組。なんだろう、よくわからないです。確かにみんなはライバルだけど、それと同時に仲間のはずでは、という考えはやはり消えない。

 

以上。

 

とりあえず、メインストーリーを追うには、DD組のことはもう思考停止で受け入れて、「そういうもの」だと割り切るしかないです。ペンギンが空を飛んでいても、一度そういう物語だと受け入れると問題なく読めます。とりあえず、今後ランジュにどのような動きをさせるのか、あなたちゃんがどう動くのかは楽しみなので、引き続き読んでいきたいと思います。