新薬史観

地雷カプお断り

津原泰水「ヒッキーヒッキーシェイク」感想

非常に楽しく読めた。津原氏の著作を読むのはこれが始めてなのだけれど、読んですぐに文章のうまさに気付いた。何がうまいって、登場人物のセリフの掛け合いである。ポンポンとテンポよく進む会話、その中身のなさが非常にリアルで読んでいて楽しい。人物像がくっきりと浮かびあがるセリフっていうのは、文章をかけば書くほど難しいことがわかるので、実際にそれを400P通して書ける胆力に尊敬の念を禁じ得ない。当たり前のことなのですが、プロはすごいですね……。

そんでもって、これはまあSF小説に入るのかな?確か自分はSFというジャンルでこの作品を見つけたから(あと塩澤編集長の帯で購入を決めた記憶がある)、一応そのつもりで読んでいたのだけれど、たまたまSFっぽい描写が出てくるだけで「ひきこもり小説」だなと。ジャンルの是非はこの際どうでもいいのだけれど(SFだから、そうじゃないからどうなる?)、ひきこもりが外界と連絡する手段として必然的にSFの2文字が生み出されるだけで、キャラ描写の綿密さからも、描かれているのは「ヒッキー」以外の何物でもない。このヒッキーをいかに魅力的に書いているかはぜひ実際に読んでほしくて、自分としては「バッファロー'66」を様々な側面から見ているような楽しさがあった。

物語の構成も非常に練られていて、謎のちりばめ方や話の進め方がうまい。本当にお手本のような小説で、読んでいて非常に元気づけられました。ありがとうございました。