新薬史観

地雷カプお断り

【旅行3日目 秋田→青森→十和田→八戸】青森県立美術館(富野由悠季の世界)、十和田市現代美術館

 

negishiso.hatenablog.com

前日の話はこちら。

 

さて3日目。

起床!!!(AM3:00)(ウマ娘理事長)

殆ど寝てないが、寝過ごしが怖いので強制的に目を開ける。

ネカフェをうろつき、眼に入った志村貴子「おとなになっても」を読んで、完全に目が覚めた。良すぎる社会人百合だ。社会人百合と言っても、社会人の私と漫画家志望の生活力のないあの子、という鉄板から外れており、優しい小学校の先生とバーでキビキビ働くキリッとした女性のリアルな出会いが描かれており最高の気持ち。そろそろ登場人物の片割れが創作行為をしている社会人百合から離れてみるのもいいのではないか。俺の観測範囲が狭いだけか。まあ面白いから読んじゃうんだけどさ(『Still Stick』、『異国日記』、『2DK、Gペン、目覚まし時計。』などなど)。

 これです、気になれば是非。

 

はい、話を戻して秋田から青森への道程を無事に踏み、ダッシュでバスに乗り込む。ここの時間がめちゃくちゃ厳しかった。目的は青森県立美術館である。

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へ~、これはまイメージ通りかも。白くて綺麗ですね。

ちなみにその隣には教科書でおなじみの三内丸山遺跡の姿が!

興味ないのと時間がないので今回はスルーしました。

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で、実際に近くに行くと……ん?
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あ~!そういえばやるって言ってたな。正直「美術館に行く」ことしか決めてなかったので、何をするのかすら分かってなかった。へ~富野由悠季の展示やってんだ。

ガンダム、無印しか観たことないんだけれど、折角だし観るか~と思って中に入ったのですが……。

これ、やっばいですね。ガンダムって何が面白いんだろうと思っていた(少なくとも無印ではそこまでハマれなかった)のだけれど、富野由悠季の半生を追いかけて、彼が目指していたものを観ることで、ガンダムというより、富野由悠季の姿勢がすごくて素直に尊敬してしまう。いや、畏敬のほうが近いかもしれん。

企画展では、まず富野由悠季の学生時代の日記や作文、絵本や論文(!)まで幅広く展示されていたのだけれど、この時点ですごかった。ロケットの設計図やそれぞれの部位の意図、どのようにすればロケットが実現できるか、また惑星の距離などがみっちりと書かれている。今の自分でも書けないような知識を頭のなかでまとめ上げながら、当時の最新の情報をインプットしつつ、それを少年がアウトプットしているという事実に驚いた。

しかもまた、絵がうまい。それでいて脚本の善し悪しもしっかり分かっているんだから、もはや狂気の沙汰である。ロボットが動いてかっけ~だけじゃなくて、「ここに人間のドラマがない!」と気付く少年、流石にすごすぎる。

さらに、絵コンテを切る速度が異常だったらしく、脚本も無しに絵コンテに入るその異常さ、また構図の良さを観て、手塚治虫に認められて即出世(もちろん下積み時代はいろいろあったが割愛)したらしい。半端ねえ。

それで、目玉はなんと言っても今にまで至る長い監督時代と、その作品に関わった人の絵コンテや脚本、設定資料の数々だろう。これ、ガンダムが好きなら絶対に観た方がいいと思いますよ。ガンダムが好きじゃない、というよりミリしらだった自分でも興奮できるくらいに当時のスタッフの熱量が作品を通して伝わってくるので、たまらんかった。ここに日本のロボットアニメの原点があるっていうのは、全く嘘じゃないんだなあと素直に認めざるを得ない。

あと富野由悠季の作家性も完結に纏められていて良かった。

①戦いに巻き込まれ、受け入れる主人公

②家族

③善悪の相対化

を常に意識していたというのは、まあ無印だけでもわかることではあるのだけれど、それをずっと意識し続けて、なおかつ新たなシリーズを(そしてあれだけの時代考証、設定考証を経て!)描き続けてきたのは異次元の能力だろう。常に時代を刷新していこうとする(固定観念を崩そうとする)富野由悠季の作家性に感動しました。いや~かっこええっす。

特にターンエーガンダムは全てのガンダムの転換でありながら、とりかへばや物語をイメージして月と地球を舞台に作られているとのことなので、めっちゃ面白そう。音楽菅野よう子だし、デザインもめっちゃかっこよかった。観たいな~。

 

話は変わるんですが、最後に「エピローグ」として展示されていた「富野由悠季の世界」と題して構成された部屋があったんですよね。そこには、飛行機の模型やフィギュア、アニメーションの機材や歯車、SFのBD等がうまく配置されていて、少年時代から監督時代にかけての富野由悠季を表現している空間になっていました。

ただ、その一角にラブライブ!の顔なしフィギュアが15体くらいぶっささっている球体が置かれていて、声を出して笑いそうになってしまいました。

アレ、なんなんですか?

ぼくは一応ラブライブ!のオタクなので、彼女たちの衣装についてはどれも認識できるはずです。なので、ラブライブ!のフィギュアであることは間違いないと思います。園田海未の水着のフィギュアもありましたね、多分。

その全部の顔がもがれて、身体だけ球体にぶっささっているんですよ。

流石に怖すぎる。

ガンダムラブライブ!は確かに同じサンライズの作品ですよ。でもそれだけでフィギュア球体が構成される要素になるんですかね?それなら普通に飾っておけばよくないですか、と思うんだけれど。アレ本当に何が表現したかったのか気になって仕方ないので、どなたか分かる人教えてください。というか実物を見て欲しい。マジでびびるし本当に笑う。

 

はい、では気を取り直して常設展に。

こちらは正直、う~んまあまあという感じでした。

ウルトラマンが好きな人はいいかも。デザイナーの成田亨のイラストが大量に見れます。これは良かったな。

あと、寺山修司の演劇のポスターが見れたのも良かった。奇抜で、時代巻き返して現地で見たい気分にさせてくれるものばかり。見れたのは良かった。

ただ、まあ残りは基本的に奈良美智のオンパレードです。悪いわけではないし、面白いものを見れたことは確かです。有名な「pancake kamikaze」とか「あおもり犬」とか(下図)。f:id:negishiso:20210331084518j:image

クソでかい あおもり犬。

他の奈良美智の作品だと「Outrun」が好きだったかな。

ん~、どうしてもガンダムに持って行かれすぎたかもしれない。普段なら興味深く歩いていたところを、今回は時間がなかったこともあるのだけれど、じっくり見ることができなかった。ちなみに奈良美智の特徴的な可愛らしいキャラ造形の型紙は、なにか意味があるのだろうか。パッと視認できるのは強みではあるから、別にいいのかな。(視認性に長けているという意味で)特許とれそう。
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さて、気が済んだところで今度は十和田市現代美術館のある十和田市に向かわなくてはならない。なぜなら明日は休館日だからだ。この日に回るしかないのである。

けれど、もし青森に来る人で県立美術館と十和田市現代美術館を回そうと考えている人はかなり注意をしてほしい。というのも、青森県立美術館青森駅から近いのだが、十和田市現代美術館がある十和田市はかなり青森と離れているのだ。アクセスが非常に悪い。レンタカーなら良いが、公共交通機関を使う人は綿密に計画を立てるように。

まあ、自分みたいに美術館を回るのに最低3時間はかかるような人間ではない限り(あと気軽に新幹線が使えない人)、難易度はそこまで上がらないのですが。

バスが来るまでの時間、美術館内のカフェでホットドッグを購入。うまし。
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なんとなく青森要素を探そうとしたが、なけなしのお菓子(林檎のサンドイッチ?とせんべい)しかなかった。
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林檎をなんとなく購入。阿呆なので店員に「齧って歯茎から血が出ないやつがいいです」と言い、困らせてしまった。それはそうだ。明らかにこちらの歯茎の問題だろう。

ちなみに青森の林檎屋さんだと、シナノゴールドがよく出ているらしいですね。

 

林檎を齧りながら待っていると、無事に十和田市行きのバスが到着。

乗車すること1時間、運賃はほぼ2000?だった気がする。結構高いですよ。

この十和田市現代美術館の面白いところは、街全体をアートにしようという心意気があるところで、美術館の周りにずらりと展示があり、なかなか面白い空間が演出されているところ。入る前からもう楽しい。
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でかい花のウマ! チェ・ジョンファ「フラワー・ホース」

 

以降、お気に入りの展示作品を紹介したい。そう、実は十和田市現代美術館は作品の写真撮影がOKだし、SNSへの掲載も、「撮影場所」「制作者名」さえ記載すればOKなのだ。

towadaartcenter.com

太っ腹すぎる!オタクの自己顕示欲を満たしてくれて感謝です。

というわけでようやくご紹介。以下の作品の撮影場所はすべて十和田市現代美術館です。

 

ロン・ミュエク「スタンディング・ウーマン」
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これ、すごいですよ。二枚目の写真からも、その手の表情のリアルがわかるかと思うんですが、ここまで精巧につくりながらもスケールだけは精巧ではない。クソデカいリアルな人間。ここに錯覚が生まれるというわけですね。


ハンス・オプ・デ・ピーク「ロケーション(5)」
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これ、死ぬほど大好きです。

絵画とかではなく、展示空間自体が作品になっているんですけれど、入り口から目が慣れるまで大変でオバケ屋敷みたいに真っ暗なんですよね。それでもなんとか手探りで前に進んでみると、かすかにジャズの音楽が流れ、窓の外では、右にも左にも人気の無い高速道路が伸びている光景が……。

これ実際に観ないとわからないと思うんですけれど、景色がめっちゃくちゃ綺麗で、すんごい居心地がよくて、それでもすべてが作り物だから異質な空間でしかないんですよね。幻術を見せられているかのような気分になる。フリゲーム「ゆめにっき」が好きな人間ならぶっささるような気がします。「此処ではない安心する何処か」を表現しているのに、これほどまでにすごい作品は観たことがない。まあ僕が美術館に足を運んでないだけで他にあるのかもしれないけれど。

これはマジで現地で観てほしいので、各自お願いします。


森北伸「フライングマン・アンド・ハンター」
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ハンターの部分は映っていないのだけれど、ここだけ切り取ってもかなり面白いから観て欲しい。美術館の間にある作品。

 

山極満博「あっちとこっちとそっち」(そのうちの一点)
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めっちゃ凍ってる。寒そう。

 

スゥ・ドーホー「コーズ・アンド・エフェクト」
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キルラキル!?と叫びそうになった作品。プロメアでもいいけれど。

人間が組み体操をするかのようにひとつの作品を作り上げている。この作品では輪廻を表現しているらしいけれど、それでいながら下から上に色が徐々に変化していることから、進化(進歩)という概念も取り入れているのだろう。ひとつひとつは小さなピースでも、歴史全体を俯瞰すればひとつの壮大なアートになっている、という視点は非常に面白い。

 

栗林隆「ザンプランド」

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ビジュアルが面白すぎる。アザラシが天井に刺さっているのである!

しかし、アザラシの下半身を楽しむだけがこの作品の面白さではない。

置かれている椅子や机に登ることで、部屋の真ん中から天井の穴を通して、天井裏(アザラシが観ている世界)を観ることができるのである。

かなり感動したというか、忘れられない経験をした。これほどにイマジネーションが膨らんだ作品もないかなあ。天井裏はあえて掲載しないので、気になる人は現地で観てね。


ボッレ・セートレ「無題/デッド・スノー・ワールド・システム」
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セコムマサダ先生!?(ゆめにっき)

あるいは2001年宇宙の旅とか?

圧倒的「SF」を醸し出す空間。まんなかにいるヤギみたいなやつが良い味を出している。変な電子音楽も流れているし、めちゃくちゃ楽しいです。

 

奈良美智夜露死苦ガール 2012」
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奈良美智だ。


インゲス・イデー「ゴースト / アンノウン・マス」
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でっかいオバケ。


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なんかが天井から垂れているのわかりますかね。この建物はなんだという話なんですけれど。
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男子トイレでした。なんか変なヤツに覗かれながら小便するのめちゃくちゃに嫌だな。

 

エルヴィン・ヴルム「ファット・ハウス/ファット・カー」
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めっちゃ太っている家と車。もう最高の発想だよな。一度ここの美術館を調べた時にこれがヒットして一目惚れした。ムチムチである。親近感を覚えますね。

 

気になったやつをザッと挙げてこんな感じである。

これ、本当に価値がある(あるいは価値を感じやすい)美術館だと思うので、是非青森観光をした時には行って欲しい。ただ、土日祝はアクセスがよろしくないので……。

 

この日は日曜だったわけだけれど、雨に降られながらバス停でひたすらバスを待ち続けました。青森までいくと大変なので、八戸に宿泊することに。

またそこで飲み屋街にいくのだけれど、それは別に纏めました。

下の記事です。

negishiso.hatenablog.com

 

はい。お疲れ様でした。

4日目に続く。