新薬史観

地雷カプお断り

Human BeatBoxとかいうめちゃくちゃ面白コンテンツとYoutube

Rofuというビートボックスのタッグチームがある。

大人しそうな雰囲気がHIRO、顔面からして五月蠅そうなのがFugaだ。

自分はこれまでビートボックスの知識が全くなかったのだが、たまたまYoutubeを漁っているとこの動画に行き着いた。

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きちんと自己紹介や背景説明をしっかり行っているのが門外漢にも有り難く、よくわからないがRofuというのはアジアチャンピオンらしいし、この動画で紹介されているSO-SOもループステーションの部門でアジアチャンピオンになっていることを教えてくれる。

ちなみにループ・ステーションとは、「ギターやボーカルなど数小節のフレーズを演奏しながら録音、それを再生しながら新たなフレーズを重ねることで、1人でもバンド演奏やアンサンブルのようなパフォーマンスが展開できるフレーズ・レコーダーのことである。」(引用:https://www.barks.jp/news/?id=1000067587

要するに、ループステーションという機材がビートボックスに適用されたことで、口から出る音だけで即興の音楽を生み出す独自の部門が確立されたのだ。多分。

SO-SOはそのなかでかなり目立つ存在だと言う。

上の動画は、そのすごさをかなり丁寧に解説してくれるので、自分のように「マジでビートボックス全然わかんねえ!」って人は観て欲しいし、大体知っている人は(恐らくSO-SOの事も知っているとは思うが)下の大会の動画を見てください。

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今回取り上げている大会の動画は、前回大会優勝者のBEATNESSと、当時はほぼ無名だった謎の日本人SO-SOが初戦で対決した様子を余すことなく見せてくれる。スーザンボイルが「ブリテンズ・ゴット・タレント」で発掘された話が好きな人なら特に楽しめる動画だと思う。

先攻のBEATNESSは、圧倒的な余裕を見せ、自分の音楽を徹底的に貫くことで1st, 2ndラウンドともに波のような穏やかさのなかにチラリと見せるドロップ(歌のサビみたいな盛り上がり)を際立たせ、全体的に見ても圧倒的な完成度でSO-SOの前に立ちはだかる。というか、まずこの時点でビートボックスを知らない自分はループステーションの可能性に驚いた。たった3分間でこんな音楽が生み出せるんだ。

一方で後攻のSO-SOは誰でも分かる音の「強さ」で観客と審査員をバチボコに潰していく。1stラウンド途中の喉をガラゴロと蛇のように鳴らす「奇妙な音」こそがSO-SOが最も得意とする独自の「音」で、それが観客にも大受けしているのが分かる。これはマジで何も知らない側の人間からのコメントだが、SO-SOの見た目の奇抜さや、そこから繰り出される意外性のある音、しっかり観客と一緒になって音楽を楽しみ、会場でのパフォーマンスを強く意識している点が非常に良い。

個人的に好きなのが「What's UP!? 」「SO-SO!」「NAME PLEASE?」「SO-SO!」の下りで、自分の名前を二つの意味で重ね合わせ、なおかつ観客とのやりとりの中で使うパフォーマンス性だ。実際にこれには非常に力があり、審判の判断が下される前はずっと「SO-SO!」コールが鳴り止まなかった。それくらいのフレーズの中毒性がある。

自分もそのキャッチーさに毒された一人だ。

早速SO-SOについて調べていくと、なんとそのSO-SOがSARUKANIというグループを組んでいることが明らかになる。SO-SO, RUSY, KAJI & Koheyの4人グループで、さらにその内訳はSO-SOとRUSYのタッグSORRYと他2人というようにも分けることができるという結構複雑な組み合わせなのだが、とにもかくにもこの4人がめちゃくちゃにすごかった。

下は今年のHuman BeatBoxの大会GBB(Grand BeatBox Battle)でWildcard としてSARUKANIが選出されるキッカケとなった動画だ。本来、GBBは世界各国の大会優勝者のみが出場できるめちゃすごい大会なのだが、Wildcardとは大会に出場していなくても、Youtubeに動画を投稿することで、その再生数や話題性、大会審査員の審査によって出場枠を獲得できるという仕組みである。もちろん世界各国のビートボクサーの動画が対象になるわけだから、すんごい倍率になるわけだが、今年のCREW部門のその枠を勝ち取ったのがSARUKANIの「1!2!3!4!」なのだ。

説明はこれくらいにして、実際に動画を見て欲しい。

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この動画も例の如くRofuに解説されており、SARUKANIにそっくりな4人を招いてその技術について議論する。

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ノリが寒いような寒くないような微妙なラインを攻めているのだが、3000dBボイスマンが3000dBのボイスを出すと時間が巻き戻る辺りは説明責任を一切果たさないジョジョっぽくて面白い。途中の色彩豊の「ドロップ/水滴/猿も木から落ちる」、「SARUKANI/猿まね/モンキークラブ同好会」の言語の繋がりも非常に綺麗で美しい。背後にずっと無言で立ち続けるHIROもめちゃくちゃに良い。

「1!2!3!4!」の内容については、動画内で十分に触れられているのだけれど、本当に4人の強い音が非常に際立っており、なおかつそれをしっかり視聴者に意識させる作り(1!2!3!4!でしっかりパート分けをして、動画内でそれを示すあたり)になっているのも素晴らしい。

ちなみにSARUKANIはGBBのCREW SHOWCASE部門で第2位に輝いている。これめちゃくちゃすごいことで、日本人初の快挙らしい。ヤバすぎる。

 

続いてSORRYの動画も見て欲しい。実はGBB2021には、SARUKANIのSO-SO, RUSYがタッグSORRYとして出場し、TAG-TEAM LOOPSTATION SHOWCASE部門でなんと優勝を果たしている。日本人がGBBを制覇するのは初めてだという。あまりにヤバすぎる。その様子が下の動画だ。

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まるで水中のなかにいるかのような音楽、ドロップを危険海域と結びつけるその構成力、そもそもの音のクオリティ、二人の息ぴったりのリズムなど、気が狂う6分間である。これが世界最高峰の音らしいです。これは観客が撮影した動画なので、恐らく公式からさらに音響がしっかりした動画が出されるとのこと。めちゃくちゃ期待したい。

 

で、SO-SOを中心に、SORRYもすごいし、SARUKANIもすごいんだなと最近のHuman BeatBoxの世界を覗いてみた訳だが、少し話を進めて、「そもそもこのSO-SOを紹介しているRofuって何者なんだ?」ということもしっかり追っていこうと思う。

実はRofu、先ほどから話題に上がっているGBB2021に出場しており、なんとTAG-TEAM SHOWCASE部門で世界第3位に輝いているのだ。第3位、これも日本人として部門初の圧倒的快挙である。

そう、実はこの記事で取り上げた人々は、全員が日本を背負ってHuman BeatBoxの最前線を走るめちゃくちゃ凄すぎる人たちだったのだ。やべ~。

そのRofuが2020年7月にチャンネルを開設し、初めて投稿したのが下の動画である。

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「HIKAKINって本当にビートボックスがうまいわけ?」という今やボイスパーカーションの人では無くYoutuberになったHIKAKINを、改めてアジアチャンピオンの肩書きを持つ彼らが分析をするという動画は人々のニーズに合致し、今日で動画は600万回再生を超えている。Rofuは開設してたった1年でチャンネル登録者数53万人を突破した訳だが、その数字にこの動画が貢献していないとは流石に言い切れないだろう。勿論、SO-SOの紹介動画でも見たように、今も変わらず人のプレイを丁寧に解説して褒める動画は見ていて勉強になるし心地良い。「この人ってすごいんだ!」という純粋な感情は人を見る目を変えるし、ふたりの画面の収まり方も絶妙なことから、遅かれ早かれ話題になっていた二人であると思う。

 

そんなRofuを、実はHIKAKINが認知していたというのが今回の記事のハイライトだ。

HIKAKINとRofuが初めて邂逅する瞬間を、是非この動画で見て欲しい。

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この動画の文脈はすごい。多くの人が知っているように、HIKAKINとは日本一のチャンネル登録者数を誇るYoutuberである。もはや彼から「ビートボックスでマリオのBGMをやっていた人」というイメージは薄れ、代わりに「Youtuberのトップに君臨する人格者」という強固なイメージがついてしまった。そのHIKAKINが、およそ10年の時を超え、Youtubeを始めるキッカケとなったHuman BeatBoxに戻ってくるという感動は文字では語れないものがある。

この動画は、既にしっかり獲得されたYoutuberとしての仕草に満ちていて、ドッキリ企画というテーマや、音の編集の仕方、HIKAKINの表情や動き方についてもYoutuberとしての「HIKAKIN」の動画であることが一目で分かる。

ただ、「HIKAKINを目指してHuman BeatBoxを始めた」と語るFugaを前にしたHIKAKINの表情は、BeatBoxをやっていた時のHIKAKINそのものであり、ひとつの時代を切り開いた時の力強さをヒシヒシと感じた。三人の語りを聞いていると、日本におけるYoutubeはHuman BeatBoxから始まったのだと思えるし、HIKAKINとRofuの邂逅はその再帰性ゆえに感動的だ。

 

最後に、Rofuが2018年にアジアチャンピオンになった時の大会の映像を紹介したい。

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彼らのHuman BeatBoxは、SO-SOのような意外性に満ちたものではなく、SARUKANIのように力強い四人の音の組み合わせとも違い、SORRYのような圧倒的な世界観の構築力に長けているわけではない。

けれども、Fugaの全身で音楽を楽しんでいる姿や、観客や対戦相手をも巻き込むパフォーマンス、HIROのびっくりするような綺麗で安定した音はまさに動画で見てきた彼らそのものであると思うのだ。審査員みんなを笑顔にさせる力が彼らにはあり、会場を沸かせる確かな技術力もあり、それが今もいろんな動画で発揮されている。

「BeatBoxの楽しさを多くの人に伝えたい」という感情は、HIKAKINからRofuへとしっかり受け継がれ、今こうして自分のなかに届いている。