新薬史観

地雷カプお断り

湯浅政明『犬王』観た!

湯浅政明『犬王』(2022)

劇場アニメーション『犬王』

 

【総合評価】8.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(5<x≦6)

時間をロスしたと感じる作品(x≦5)


【世界構築】3点 (2点)

湯浅政明の最高アニメーションというだけで基礎点が2くらいつくのだが、今回はそれに加え、リアルでは決して実現しなさそうだけど技術的には可能っぽく見せている異常な能楽を見事に表現しており、その映像と音楽に惚れ込んだ。特にアヴちゃん演じる犬王の歌は別格であり、湯浅政明の映像と合わさることでとてつもない威力を持っていた。キンプリのプリズムショーを観ている時にもこのような体験をしたことがあるが、まさか似たような感覚を覚えることになるとは。料亭で大真面目にゲーミング・ハンバーグを出されるような驚きがあった。もちろん、ハンバーグなので美味しいのは保証済みです。

 

【可読性】0.5点 (1点)

音楽が常に流れているような作品で素晴らしい……が、友魚の歌が割と代わり映えせずに延々と流れていた部分があり、そこはちょっと飽きてしまった。この飽きは本作品にとって致命的な気がするのでやや深刻に捉えた。


【構成】1.5点 (2点)

平家の呪いをうけ異形の子として産まれた犬王が、同じく平家の呪いで失明した友魚とともに音楽で平家の魂を浄化していくというストーリーはかなりすっきりしていて好み。一方で、犬王と友魚が最初から別れて呼び込み訳と演技に別れていたのが謎だった。あそこまで画期的なものを作るのなら、最初から琵琶法師と能楽を融合させたほうが絶対にいいだろうと思ってしまう。まあラストの舞台で融合する美しさを考えるとこういう話でも問題はないものの、途中で「こいつらはそれぞれ何をしているんだ?」と思ってしまい、集客効率の悪さにやや冷めたのはちょっと悲しいところ。

とはいえ、勧善懲悪もしっかり聞いていたし、それ以上に作品としてオリジナリティを築いているので、その辺りは十分カバーできていると思います。

 

【台詞】1点 (2点)

特に響いたものは無いが、的外れというものでもない。

 

【主題】1点 (2点)

新しいことと権力との闘争とでも言えばいいのだろうか。新しさは常に革命の可能性を秘めており、体制を破壊する可能性を有している(事実、作中でも現実でも、これまで愛されていた能楽も琵琶もほとんど過去のものになってしまった)。そういう風に考えるとふたりはあまりにもあっさり暴力を有した体制に潰されてしまい、ちょっと悲しいことになっている。流石にあれだけの熱狂をうめば、誰かがこっそり篝火のように絶やさずに受け継いでいてもいいものだが、その辺りの整合性やテーマとしてのインパクトに欠ける印象があった。まあでもその一種の新しさも「異界」との融合によって生まれたものだし、すべて荼毘に付してお終いというやり口でも問題ないと思う。好みではないけれど。

 

【キャラ】1点 (1点) 

キャラはしっかり立っていたと思います。やはり異形である犬王の造詣が素晴らしい。生まれ変わった犬王の顔が思ったのと違った方向性でう~~~~むとなったけれど、まあそういうものでしょう。内面はしっかりと保たれていたので問題ないです。

 

加点要素

【百合/関係性】0.5点 (2点)

幼なじみBLとでも言うべき作品だと思う。本当はもう少し最後の別れに時間を割いてほしかったが、ああいうものかもしれん。さっぱりしていて良かったです。

 

【総括】

ぶっ飛び方が凄まじいので、ぜひとも映画館で見ることを推奨したい作品。湯浅政明の描く人間の描き方や、その身体性の表現はやっぱり天才的だし、アヴちゃんの声によって生み出される立体感はすごかった。舞パートで音に乗るのはとても楽しいし、ぜひとも絶叫上映などを開催してほしいところ。一緒に歌いたくなります。オススメ。