新薬史観

地雷カプお断り

サイコロきっぷで福井旅行(前編)

文章が長いので、読みたい部分だけ読んでください。

 

①まえがき(2022年8月13日)

ふつう旅行とは行きたいところへ計画を立てて(あるいは立てずに)行くものだが、行くつもりのない場所へ旅行することはなかなか難しいものである。

「よし、今日は行くつもりのないところに行くぞ!」と思い立ち、地図も持たずに徒歩やバイクで適当に走り回ったところで、直進や右折や左折を自分の意思で行う以上「行きたいところに行っているではないか」と指摘されても仕方ないだろう(明らかにクソリプだが)。

 

あるいは、せめてもの日常への抵抗として、いつもとは反対方向の電車に乗ってみたとしよう。けれどもそこには「反対の電車に乗ってみよう」というぼんやりとした目的地のイメージが働いているし(反対方向ということは、いつもの方面にある場所を除外しているという点で目的地をフィルタリングしていると言えるではないか!)、適当に降りてみても「ここで降りよう」という自分の意志が働いている訳だし、頭で思い浮かべた「目的地」のイメージから完全に逃れることは難しい。

やはり、行くつもりのない場所に行くためには、道端に落ちている新品の旅行券を拾ったり、水曜どうでしょうのごとく目的地も告げずに急に捕獲して輸送してくれるような友人が必要なのである。

 

とはいえ、そういう面白イベントに出会う確率はたいへん低い。

ああもう、じゃあどうしたらヒトは行くつもりのない場所へ行けるってわけ?とお悩みの貴方に朗報。

実は、JR西日本が実施したサイコロきっぷというものがありまして……。

www.jr-odekake.net

まぁ、もう申し込みは終わっているんですけれどねσ(^_^;)オイオイ

詳細は上のリンクから見てほしいのだが、多分わざわざリンクを踏んでくれる人はそんなにいないと思うので説明をば。

サイコロきっぷとは、キャンペーンページに仮想的に設置されたサイコロを降ると、その出目に応じてJR西日本が設定した目的地に行くことができるというものである。この魅力は主に2つ、①自分が意図しない場所に行くこととなる、②その目的地に行くまでの乗車券含めた特急券が往復5000円で手に入るというものであり、出発地は大阪市内からに限られるが、おおよそ割引率は50〜80%となっているなど、金がなく時間がある学生や自分のような暇な社会人には魅力的な施策だった。およそ1/36の確率で博多にも行けるというのも面白かったと思う。

とはいえ、じゃあ僕やります!とすぐに申し込めるかと言えばそうではない。発着が大阪限定であるため、仮に「東舞鶴」が目的地として出てしまった場合、東舞鶴に住む人間はわざわざ交通費を支払って大阪にまで出てきて、5000円の特急券で東舞鶴に戻り、ぼーっとした後にまたわざわざ大阪に戻って、さらに交通費を支払ってお家のある東舞鶴に帰らなければならないのである。

もう何が何だかわからない。

今のは極端な例だが、大阪を起点としている以上その目的地として設定されている各地方の人間は同様の問題を1/6くらいの確率で引くこととなる。これは大阪府民ではない私にとっても他人事ではなく、つまりサイコロきっぷというものは、引くためにそれなりの勇気と覚悟を必要とするギャンブルでありまして。

まぁ、引くんですけれどね。

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……何処?

 

何処かは分からないが、この時点で私の"勝ち"は決まっていた。

第一に地元ではなかったし、第二に行くつもりのない(そもそも存在すら知らない)土地に行けるのだから!

いや〜満足満足。

やっぱいいですね、行くつもりのない場所に行く権利を手に入れるのって。

サイコロきっぷ最高!

 

②まえがき(2022年10月13日現在)

お久しぶりです。

というわけで、自分はこの権利を手に入れてから数ヶ月間放置していたのだが、どうも私は重大なことを見落としていたらしい。

というのも、行くつもりのない場所は別に私の行きたい場所という訳ではないので、まったく行く必要性を見出せないのである。

というか、行くのがめちゃくちゃめんどくさい。行くなら絶対に泊まり確定だし、それなら土日潰れますしね。いや、こちとら平日5日間も勤務して納税している社会人様なわけでして、疲れてんの。しんどいの。なにがサイコロきっぷだよ。たまの土日なんだからゆっくりさせろよ。なんでわざわざ芦原温泉ってとこに行かなきゃなんねえんだよ。アホか?とかなんとか言っているうちに季節は過ぎ、サイコロきっぷの利用期限の10月末が近づいてきたので、仕方なく行くことにした。

まぁ温泉だからギリギリ許せたけど、あんまりモチベがなかったので雑に宿も取りました。

はー、行きたくねえ〜。

 

なんか、福井県らしいです。芦原温泉

 

③福井旅行1日目

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仕事終わりの金夜、眠い目を擦りながらサンダーバードに乗車*1

 

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なんかその割にはゴキゲンな感じが出てますが……まぁ、色々調べるうちにちょっと楽しみになってきたのはここだけのヒミツです(照)

 

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2時間後、福井駅で途中下車。

サンダーバード、速いぜ。

速いけどもうこの時点で23時。眠い。

 

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ホテルに移動。写真は翌朝のものだが、全国旅割のお陰で実質600円となったお宿。朝食付きでこれはネカフェより安い。


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その代償として、謎の門限があったりする。ゲストハウスかよ。

 

さて、チェックイン後に「じゃあ寝ますか」とならないのが自分で、やっぱり旅のお供の居酒屋に行かないことには始まらない。

たまたまフォロワーに福井経験者がいたので、オススメのバーを教えてもらっていくことにした。

 

Agit(福井県福井市

このバーは下の記事で紹介されている。

makef.jp

この記事及び周辺の記事で挙げられている居酒屋/バーのなかでも、Agitのマスターの存在感は強い。クマさんの名に恥じないくらい、マスターはクマさんだった。でかい。そして気さくな方だ。既に入ってた常連客と完全に出来上がっていた空気の中に入り込むのはなかなか勇気がいることで、入店して数秒はクマさんと目があって完全に時が止まり「やらかしたか?」と思ったが、すぐに破顔して出迎えてくれたので助かった。常連客から二つ離れたカウンターの隅っこに座ろうとしても許してくれなかった。真ん中の方へ。それだけでもクマさんの人柄がわかって良い。自分がよく話していたのは女性の方だったのだが(クマさんの奥様だろうか?以後、奥様と称する)、その方も気さくで、人と話し慣れている感じがした(オタクにとって一般人はみな気さくな方だ)。

最近の自分はなるべくいろんな人と話そう週間に入っているので、完全にお喋りを強制されそうな空間はかなり居心地が良かった。こういう善意のみで構成される空間で嘘をつく気にはなれないので、素直に真実をぺらぺらと話した。なかなかに気持ちいい。この前たまたま入ったガールズバーではめちゃくちゃ女性と話して歌って5000円くらい取られたのだが*2、なんとなくあれ以来行く気にはなれないのに対し、ここの居心地は本当に良くて、ずっと通いたくなる。

入店以来、所作がずっと旅人なのですぐに観光客だと見抜かれたのだが、サイコロきっぷできた旨を告げると「でた〜!」という感じになり、少し盛り上がった。サイコロ勢は結構この店にも来るらしい。意外だが納得。福井に来たらここに来る以外に選択肢はない。

常連客の方は某映画館のスタッフらしく、映画館についての愚痴をずっと話していて良かった。一番面白かったのは、その映画館のビルの2階にある喫煙所のドアのノブの部分が低すぎるというもので、なんだか知らんが非常にローカル感のあるオカルトチックな話でドキドキした。次の日、ちょうど「こちらあみ子」が公開されるということなので、映画館に立ち寄ることをスタッフさんと約束する。

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その人が頼んでいた金色のボトル。飲めば良かったが時間がないのでやめておいた。


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最初選んだのはシナモンジンジャーのカクテルで、写真は2杯目のバタードラム……という名前だった気がする。温めたラムにバターと砂糖を入れた心温まるホットカクテル。なかなかに素晴らしい。

というわけで、ホテルの門限(笑)が迫っていたのでこそこそと退店。門限さえなければフードもいっぱい頼みたかったのだが、ここでの会話が楽しかったのでそちらを優先してしまった。やっぱりこういう一期一会感があるから酒場巡りって楽しいんですよね。これから福井に行く方にはぜひオススメしておきます。


④福井旅行2日目
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門限のあるホテルだが、朝食は値段の割になかなか良かった。みんな大好き目玉焼きコーナーがありますし……いや、見たことねぇよこんなの。でも手元のアルミを蓋にして焼くというなかなか面白い体験ができてよかったです。


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いちおうバイキング形式だったので、ボリュームのある朝食を楽しむことができた。デブには有難いぜ。バックの方でホテルの人間が「もう卵がないよ〜」と泣き言を言っていたのが良かった(別に俺が大量に食ったわけではない、念のため)。

食事をしてから10分後にチェックアウトをするなどする。


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福井旅行の先輩に教えてもらったブータンミュージアム。Agitの奥様曰く「幸福度日本一の福井県と幸福度世界一のブータンに共通項を見出したどっかの社長が道楽で始めたもの」らしいが、勝山市に移転済みだった。残念。


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怖い名前の川だ。

 

福井県立美術館(福井県福井市
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本日のメインディッシュに到達。

この日は企画展の「ミリオンセラー ロングセラーの絵本たち」というものをやっていて、あまり興味はなかったのだが、地方に旅行したら絶対に美術館にいく縛りを設けているので必然的に行くことになった。


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なぞの岡倉天心像。ご両親がどちらも福井出身らしい。へぇ~。


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これです。

 

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入ってすぐに広がる、大量のパンの置物。このエリアはかこさとしエリアだった。圧巻である。見覚えがある人もいるかもしれないが、かとさとしの「からすのパンやさん」に出てくるパンを実体化させたものだ。すごい。

 

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これが該当ページ。隅っこでは実際にかとさとしの絵本を読むことができて良かった。からすのパンやさんにしても、からすが群れをつくるシーンや飛び回る様の表現が綺麗で素晴らしい。


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こういうのや、


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こういうのもある。

 

人生においてかこさとしのことを真剣に考えたことが無かったのだが、プロフィールを読むと東大を出て研究者として働きながらも絵本作家として大成した……という経歴らしく、なんだかもう敵わないなと思った。

次のエリアからは撮影禁止だったのだが、素晴らしいものがいくつかあったので記録しておく。

 

いわさきちひろ作品

「落がきをする子ども」

「子犬と雨の日の子どもたち」

デカいキャンバスで見るいわさきちひろ良すぎる。

「ぶどうを持つ少女」

「はなぐるま」

特にはなぐるまは俯瞰のカメラの感じがめちゃ好みで、構図も素晴らしかった。

 

あと、これは最大の収穫なのだが、刀根里衣という絵本作家を知れたのが本当に良かった。

とくに

モカと幸せのコーヒー」

「きみへのおくりもの」

「おもいで星がかがやくとき」

あたりの原画は、絵だけを見てキャラに感情移入して、その愛のひたむきさや喪失の痛みに共感してボロボロ泣けてしまうくらいだったので、ぜひ原画を見てほしいと思う(絵本になってテキストが付くとやや火力が弱くなっていた。細田守かよ)。

あとは

佐野洋子「わたしのぼうし」

林義雄「炊事の手伝い」

渡辺三郎「シャボン玉」が好みだった。とくに幼女の造詣が。

ありがたいことに、展示の終わりにこれまで紹介された絵本を自由に読めるスペースがあったので、心を掴まれた刀根里衣作品を読ませてもらった。「おもいで星がかがやくとき」は傑作。あとは刀根里衣が絵を、青山七恵が文を担当した「わたし、お月さま」はストーリーの展開や言葉遣いと絵の幻想的な雰囲気が非常にうまくマッチしていて、めちゃくちゃ興奮した。素晴らしい作品だと思います。

満足して退館。

 

ヨーロッパ軒総本店(福井県福井市

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県立美術館から、テクテク歩いて昼食へ。

フォロワーさんオススメのヨーロッパ軒なるものへ行くことにする。どうやら福井では非常に有名なソースカツ丼のチェーン店(の本店)らしく、かなり混雑していた。店内では多くのサイン色紙が飾られており、学生も大量に出入りしていることからも、福井のソウルフードとして愛されていることに間違いはなさそうだ。


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強欲なので、カツだけでなくエビフライとメンチカツも乗ったスペシャル丼(1180円)を注文。

肝心の味ですが……(要らない引き)めちゃ美味かったです!

衣は軽くサクサクで、どの具材もジューシー。しかも掛かっているソースが酸味が強くさらさらで、ご飯にもカツにもバッチリ合っていて「あ、これは美味いわ」と一口目で確信した。


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うますぎてソースを買ってしまった。観光客仕草がすごいが、家でもこのソースを使えるなら最高である。福井に来たらまたここに来たいぜ。

 

福井市美術館 アートラボふくい(福井県福井市

続いて市立の美術館へ。県立は福井駅に近いのだが、市立の方は福井駅から片道で徒歩1時間程度とやや遠い。さてどうしようかなと思ったが、どうやら福井駅から無料バスが出ているらしい。めちゃくちゃ助かる。

けれども、バス乗り場の案内がやや不親切で迷ってしまったので、乗りたい方は早めに下調べをして行くことをオススメします。
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無事到着。見た目からしてデカい。

 

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今回の目当ては「山下清展」です。正直山下清にほとんど興味はなかったのだが、オタクなので行きたくなくても美術館に行かなくてはならない。


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「ス・ケートボード禁・止」(だからなんだよ?)

 

で、内部は一切の写真撮影が不可だったのでここからは雑感になるが、山下清に興味のない人間が山下清に興味を持つには十分なくらいの情報、作品があって満足だった。

ここで簡単に説明すると、山下清とは、幼少期の重い消化不良の後遺症で知的障碍(あるいはサヴァン症候群か?)を持ち、知的障碍児養護施設にあずけられるも、そこでの特訓により貼り絵の才能が開花し、以後「貼り絵」「ペン画」「油彩」などによって各地の風景を緻密かつ鮮烈に描写することを得意とした芸術家である。

山下清の代表作「長岡の花火」(1950)

日本では山下清の名は「裸の大将」で有名だが、コンテンツとしての「裸の大将」と山下清との違いとして、実際の山下清は旅行先で絵を描かなかったことが知られている。山下清は驚異的な記憶力の持ち主であり、一度みた風景を忘れることはなかったらしい(そのためサヴァン症候群説が浮上している)。彼が作品を制作するのは、旅行先から自宅に帰ってからのことであり、鉛筆で簡単に下書きをしてから、様々な色紙を使って記憶のなかの風景を表現していた。

非常に面白いのが、山下清の技術力が時間を経る毎に凄まじくなっていく点である。展示されている作品を見ても、彼の幼少期の絵はお世辞にもうまいとは言えず、そこらのガキと同レベだった。しかしながら、15歳頃から特訓の成果が出始め、一気に貼り絵としての完成度が高まっていく。個人的に転換点だと思ったのが「二重橋」という作品で、素人目で見ても「こいつ、絶対に伸びるやんけ……」と思わせる迫力がある。事実、1937年以降の彼の絵はどんどん世間から評価されるようになるのだが。

最後に触れておきたいのが、彼の放浪癖についてである。彼が知的障碍児養護施に収容されていたことは先述の通りだが、実は6年後の1940年に脱出し、以後ひとりで日本中を放浪するようになるのだ。脱走時で18歳、そこから約15年間も(1955年まで)放浪し続けたというのだから常軌を逸している*3。このクソ長い放浪の最初のモチベは徴兵検査からの逃げにあるが、結局職員に連れ戻されて徴兵検査を受けたところ知的障碍ゆえに兵役も免除され、山下清は安心して再び放浪に励むこととなる。そして彼が長い放浪から帰ってきて、見た風景を思い出しながら貼り絵にすると、各界から大評判。東京大丸での展覧会ではモナリザ展に匹敵する観客動員数500万人を突破したというのだから、マジで無敵である。

自分も旅行が好きな部類ではあるが、山下清のように過ごすことができればどれほど心地よいかと考えてしまう。もっとも彼の場合は自分よりもかなり悪条件で*4やっているのだから、自分がやらないのはどうしても言い訳がましくなってしまう。う~ん、流石に完敗です。山下清を見習わないとな。皆さんもそう思いませんか?

メトロ劇場(福井県福井市f:id:negishiso:20221018063536j:image

市立美術館を出て、再び無料バスに乗って福井駅へ。そのまま近くのミニシアターまで移動する。お目当ては(この劇場では)本日公開の「こちらあみ子」。昨日、バーAgitで話した方が務めている場所でもある。


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劇場内ではこういうのがあって良かった。自由に書いていいとのことなので、「ほのうみ参上!」とでも書こうと思ったが、ペンが見つからないので書けなかった。

劇場内の雰囲気も良く、近所にこういうのあって欲しいわ……と思わざるを得なかった。福井っていい街ですね。

「こちらあみ子」の感想はまた後日。青葉市子の音楽がすごかったとだけ。


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帰りに、バーで話題になっていた、ドアノブの位置が低すぎる喫煙所の扉を観に行った。


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確かに低い!低すぎる!自分の膝くらいの位置にあるんですが。

クマさんが管理人に聞いたところ、「あれは業者(ボランティアの方)の取り付けミスです」とのことで、特に車椅子の人に配慮しているとかではなく*5、マジのミスだった。草だ。

 

ぼくがJR芦原温泉駅から本当のあわら温泉街に行くまで

さて、映画が終わればすぐに温泉街に移動せねばならない。なんとか17時発の電車に乗り込む。温泉を楽しむには慌ただしすぎるが、急げば間に合うじゃろと楽観的に考え、芦原温泉駅に到着。

このとき17:29。
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呑気に写真を撮っているが、これが致命傷であることを当時の私は知る由もない。

駅から出るとまったく温泉街ではなく、ただの田舎である。辺りを見渡し、ようやく温泉地から駅が離れていることを思い出す。そうだ、バスで行かねばならない。バス停を探していると自分の横を「あわら湯のまち駅」行きのバスが通り過ぎる。なるほどあのバスか。バスが来た方へ向かう。案の定バス停がある。おーこれだこれだと思い、次のバスを調べてみる。f:id:negishiso:20221018063548j:image

本日は土曜日。見るべきは右の青い欄だ。最終便は17:31発。

つまり、先ほど自分の横を通り過ぎたバスが最終便だったのだ。

マジかよ。

仕方ないから徒歩で行くしかないようなので調べる。f:id:negishiso:20221018063600p:image

正気か?

芦原温泉駅」を名乗っておいて、芦原温泉まで徒歩で1時間も掛かるのかよ?

タクシーの料金を調べると2000円もするので諦めた。2000円あったら1件の居酒屋で酒が飲める。タクシーにそこまでの価値はない。貧民なのでひたすら歩くことにする。温泉地まで。1時間かけて。

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田舎過ぎて街灯すらないので、車のライトが前方の足元を照らすタイミングを見計らって進んでいく。周囲は田園。そうでもしないといつ足を滑らせて落っこちるかわからない。いや、こちとらゲームアクションやってんじゃねーんだぞ。

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iPhoneは夜景に強いのであんまり写真では絶望感が伝わらないが、気持ち真っ暗である。あ~あ、車に乗れたらなあと思うのだけれど、今の私は免許更新を忘れて失効したまま放置しているので車にも乗れないのである。やれやれ。こんなんじゃ村上春樹になっちまうよ(どういう意味?)。

 

丁寧にきっかり一時間をかけて芦原温泉の真の最寄り駅「あわら湯のまち駅」に到着。クソがよ~~~~~~~~~~。
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旅館にて

旅館は「駅から5分♪」を謳っていたが、自分は65分掛けているのでその表記は誤りである。
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汗ダラダラなのですぐに温泉に入りたいのだが、どうやら予約したプランが「エレベーターのないお部屋なので」とのことで、3階まで階段で歩かされる。フロントでは「帯でございます」とタオルと一緒に帯を持たされたが、部屋に行くと浴衣がない。部屋じゅう探してもない。帯だけが手元に残されている。しかたなくフロントに行くと、見えにくい位置に浴衣置き場がある。帯でございますじゃないんだよ、浴衣も案内してくれよ。浴衣を回収してそのまま温泉へ。もう服もべとべとだし、身体を洗ってすぐに温泉に入る。流石に熱くて気持ち良い。客は全然おらず貸し切りだった。はじめて芦原に来てよかったと思う。ふと「サウナもございます」と言われたことを思い出しサウナに行く。サウナだけがある。水風呂もウォータークーラーもない。かろうじてクールダウン用の椅子だけが一脚置かれている。どうしろと?このサイクルだと脱水症状で死ぬが?死ぬのはイヤなので微妙にサウナで暖まってから椅子に入って常温になり温泉に入る。サイクルすらしなかった。サウナはクソだが温泉は気持ち良い。私は温泉が好きだ。でもよく考えれば、これまでの人生で気持ちよくない温泉に入ったことなんてない気がする。温泉がすべて気持ちいいものであるなら、この旅館の良いところは何もないではないか。全国旅行支援も適用されなかったし。

あ~~~~~~もうクソじゃ全部クソじゃ芦原はクソじゃ観光客の来るところではない、もうワシは1000歳生きたのじゃロリキツネ娘の気分じゃ、あ~~~癒してほしいワシも癒やしてほしいもう人間ばっかり癒やすのはクソじゃ、こういう時にはf:id:negishiso:20221018063524j:image

ビールに限るのじゃ

 

おでん酒Bar IPPO(福井県あわら市
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芦原温泉街で唯一良いところは湯けむり横丁じゃ。かなり個性的な屋台村になっていて、酒飲みにはたまらんのじゃ。


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うまいのじゃうまいのじゃ。酒呑んで飯食って退店。

 

手羽先ひね鳥 鳥ひろ(福井県あわら市f:id:negishiso:20221018063516j:image

酒飲んで


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手羽先食って


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モツ食って


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ひね鳥食って退店。

 

牛ホルモン焼き 西やん(福井県あわら市f:id:negishiso:20221018063423j:image

酒飲んで


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ホルモン焼き食って


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〆に炒飯作って退店。

以上。

この店で自分と同じサイコロきっぷユーザー(30代くらいの男性)と出会い、一緒にこの後酒でもどうかと言おうとしたが、なんだか急に全部がどうでも良くなり、何も言わずに帰って寝ることにした。

 

つづく。次回完結です。

*1:ちなみにこの写真はサンダーバード福井駅から去って行くところです

*2:飲み放題が付いていたのでがぶ飲みして「元取ってますね」と苦笑いされた。最高の貶し言葉だが最高の褒め言葉だと都合よく認識しておく

*3:そして心底尊敬する、自分にはとてもできないことだ

*4:なにしろ、彼が放浪中に持っていたものは「二個の茶碗(ご飯用と汁物用)」「箸」「手拭い」「着替え」「旅先で犬に吠えられた時のために護身用の石ころ5個」だけというのだから本当にすごい。護身用の石ころ5個の力強さ!

*5:そもそも階段からしかアクセスできないので、車椅子の人は使用できない場所にある