新薬史観

地雷カプお断り

結愛せるふになりたい

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結愛せるふになりたい。

あ〜結愛せるふになりたいよ。

結愛せるふになりたい。

 

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結愛せるふ

 

 

まえがき

二次元のキャラになりたい、と思ったのは久しぶりのことである。

これまで数々のアニメ作品に触れてきたが、近年は老化により『今期アニメ一覧表』なるものから遠く離れていた。最近は専らTwitterで話題になっている作品だけをdアニメストアで追いかけ、毒にも薬にもならないしょぼい呟きをして満足するような軟弱者になっている。そんな私にとっては、そもそもアニメを観るという体験自体が貴重なのだが、そのなかでも「お前になりたい」と思わせるようなキャラとのエンカウントは稀有である。

 

結愛せるふに対する視線の変化

最初は、腹の立つやつだと思った。

まず、私は朝ちゃんと起きることのできない人間が嫌いだ。自分の身の回りのことを満足にできない人間も好みではない。ドジだし会話は要領を得ないし幼馴染からの好意も全く解さないような鈍感で鷹揚ですぐに妄想に逃げ込む、自分の主張を少しも持っていない千切れかけの凧のような結愛せるふが大嫌いだった。少しでも目を離せば風に流されて遠くへ飛んでいってしまいそうな、危うい結愛せるふを見るのが嫌だった。私の顔はいつしか結愛せるふの幼馴染であるぷりんと同じ表情をつくるようになった。結愛せるふを見つめては、感情を燻らせるぷりんに同情した。

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ぷりん(本名:須理出 未来)

ようやく結愛せるふを許せるようになったのは、アニメ第2話から第3話にかけてのことである。結愛せるふはせるふなりにぷりんのことを考えているのだと分かり、私は安堵した。その時の私はぷりんに感情移入をしていたので、私はぷりんの代わりに少しだけ救われたような気がした。

 

安寧は長くは続かなかった。

 

いつものように、ぷりんの顔つきで結愛せるふを眺めているうちに、私はとんでもないことに気がついたのだ。

こいつは、私が持っていないものをすべて持っている。

のんびり生きることを許容してくれる周囲の理解、したいことをさせてくれる部活の友人のサポート、どんな状況でも自分のことを心配して気にかけてくれる大切な幼馴染、生傷の絶えない瑞々しい二次元美少女としての肉体。

そして、幼馴染の視線を惹きつけて離さない、危うい存在感。

 

私の、結愛せるふを見る目は変わった。

結愛せるふは私にとっての仮想敵となった。仮想敵であり、嫉妬と羨望の対象であり、別次元から見た攻略対象でもある。奇しくもDIYは「欲しいものがなければ自分で作れば良い」をテーマとしている。そうだ、自ら作れば良いのだ。ぷりんに愛される環境がなければ、愛される環境を自ら作れば良い。そのためにはどうするべきか?考えるまでもない。結愛せるふの、彼女の存在に成り変われば良い。私はいつしかそう考えるようになった。

 

結愛せるふになりたい。

妄想癖があって、すぐに上の空になって、壁にぶつかったり道で転んだりしていつも生傷が絶えなくても構わない。

シャツがはみ出てても寝ぐせがすごくても「ま、いっか!」と気にしない。

落書きが趣味の、のほほんとした家庭に育った、のんびりとした高校1年生になりたい。

結愛せるふになりたい。

そのことを自覚したのは、つい最近のことである。

 

ぷりんじゃなくて、結愛せるふ

私は小学生の頃から任意の二次元美少女になりたいと思い続けてきた独身異常男性だが、先述のようにその少女像が特定のかたちを取ることは珍しい。珍しいなかでも共通項というものがあって、その殆どが推した百合カプの片割れになっている。

つまり、私が好きな百合カプの構造はこうだ。

女1:推し(DIYの場合、ぷりん)

女2:推しが好きな女(私がなりたい存在。DIYの場合、結愛せるふ)

つまり、私は推しの二次元美少女になりたいのではなく、推しの二次元美少女が好きな二次元美少女になりたいのだ。そうして推しに近づく権利を得た後で、推しの二次元美少女に迫りたい。なんでもない仕草で推しを弄びたい。私の一挙一動でドキドキする推しは、とてもかわいい。

先日、私のこの説明に対して「お前の欲望はただの俺嫁厨のそれではないか」という指摘を受けたが、そうではないことを予め説明しなければならない。たしかに私は「ルッキズムに塗れた二次元美少女への低次元化および女体化願望」があることを認めなければならないが、かと言って俺嫁厨の語に含まれているような「俺」の存在を、私は断固として許していない。あくまで私の推しが好きになった女は上記で述べたような女2しかあり得ないのであって、超絶プリチーになった二次元美少女の「俺」ではない。いくら女2より二次元美少女となった「俺」のステータスが優れていたとしても、である。そこはカプのオタクなら共感できる考えだろう。

繰り返すことになるが、私がなりたいのは結愛せるふである。私はぷりんの感情を強く揺さぶる結愛せるふになりたいのだ。結愛せるふのことだから、恐らく私が結愛せるふに向かって「お前になりたい」と言ったところで、何も考えずに「いいよー」と許諾するのが目に見えている。私は狂喜乱舞し結愛せるふになる。なにしろ本人のお墨付きなのだ。私は結愛せるふになるや否や、ぷりんにとてつもなくしょうもない迷惑をかけにいくだろう。あるいは自室にこもって「うわああ大変!誰か助けてえ〜!」と叫びまくり、隣の家に住むぷりんを無闇矢鱈とハラハラさせるのも良い。脈絡もなくぷりんの寝床に入り込んで、ぷりんをびっくりさせるのも楽しそうだ。他にも、ぷりんの専攻分野を勉強する様子を見せてぷりんを喜ばせてあげたいし、次の日には全てを忘れてぷりんをガッカリさせてみたい。そんな小細工をしなくても、ぷりんとのんびりベンチに座って、青い空を滑るように流れていく雲の様子を眺めてみるのもいいだろう。それに飽きたら、ごちゃついたキッチンでぷりんとぷりんを作りたい。出来上がったぷりんをぷりんにあーんしたい。

きっとぷりんは顔を真っ赤にするだろう。

その赤面を誰より近くで見ることのできる、結愛せるふになりたい。

 

ぷりん助けて〜

最近、事あるごとに「ぷりんたすけて〜」と叫ぶようになってしまった。作中で結愛せるふがそんなことをぷりんに言ったかどうか定かではないが、私の気持ちはほとんど結愛せるふに近づきつつあるので、辛いことがあったときにはぷりんに助けを求めるようにしている。つい一昨日も、誰もいない坂道を自転車と調子に乗ってものすごい勢いで駆け降りている途中、あまりに感情が昂まりすぎたが故に「ぷりん助けて〜!」と絶叫してしまった。念頭にあったのはアニメ4話のラストシーンである。自転車を漕いでいた結愛せるふは転倒して道路脇の低木に頭から突き刺さる。私もそのような危険性を有していたので、念のためにいっぱい叫んだ。アニメでは低木に突き刺さったせるふをぷりんは助けなかったので、ここでもし私がぷりんに助けられれば、私が結愛せるふとしてぷりんに選ばれたこととなる。

結局、5回くらい叫んだところで前方に住民の姿を発見し、私は口をつぐみ、その住民の横をものすごい速度で通り抜けた。私は幸運にも自転車から転倒しなかったし、低木にも突き刺さらなかった。

ぷりんは助けに来なかった。

 

私は「結愛せるふ」をうまく演れるか?

このクソみたいな文章もいよいよ終わりに近づきつつある。私はこれまで、私が結愛せるふになるにあたって、核となる疑問から意図的に逃れてきた。

つまり、結愛せるふとなった私は誰になるのかという点である。

当然のことながら、私が結愛せるふになった場合、その精神は私が担っていると考えるべきだろう。しかし先述の通り、ぷりんが好きな女は結愛せるふであって、「俺」であってはならない。

するとどうなるか?

結愛せるふになった私は、ぷりんに少しでも疑われないように自我を殺し、結愛せるふをうまく演じる必要があるのだ。

ここには逃れようのない、致命的な問題がある。

1.仮に私が極めてうまく結愛せるふを演じることができて、結愛せるふにすり替わったことがぷりんにバレなかった場合

いくら私がうまく演じようとも、大切な幼馴染と私がすり替わったことに気付かないようであれば、結愛せるふに対するぷりんの愛も知れたものである。そんなの解釈違いだ。少なくとも、私が好きになったぷりんではない。私はぷりんに幻滅するだろう。

 

2.私とすり替わったことがぷりんにバレた場合

私は結愛せるふにはなれない。

以上、ただそれだけ。

 

つまり、私はどのようにしてもぷりんと幸せにはなれない。分かっている。私はこの事実を最初から理解したうえで、この文章を記している。

私のことを馬鹿だと思うかもしれない。気持ち悪いと思うかもしれない。しかし私には、この文章を書く必要があった。この迂遠な思考が必要だった。もしかしたら抜け道があるかもしれないと期待しながら文章を書き進める、この時間が必要だった。

そして、全てを諦めるための結論も。

 

私は結愛せるふになれない

先述の通りである。私は結愛せるふになれない。なってもぷりんを幸せには出来ない。ぷりんに相応しいのは結愛せるふ本人だ。私ではない。

私は結愛せるふになれない!

ここに理想と現実のギャップがあり、物語があり、この物語こそが私である。

もうこれ以上、多くは語らない。

 

私は結愛せるふになりたかった。

今もまだ、そう思い続けている。

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