※この記事にはネタバレがあります。未視聴の方は十分お気をつけ下さい。
ユホ・クオスマネン『コンパートメントNo.6』（2021）107分、フィンランド
<あらすじ>
1990年代のモスクワ。フィンランドからの留学生ラウラは恋人と一緒に世界最北端駅ムルマンスクのペトログリフ（岩面彫刻）を見に行く予定だったが、恋人に突然断られ1人で出発することに。寝台列車の6号客室に乗り合わせたのはロシア人の炭鉱労働者リョーハで、ラウラは彼の粗野な言動や失礼な態度にうんざりする。しかし長い旅を続ける中で、2人は互いの不器用な優しさや魅力に気づき始める。
あらすじ引用元
公式サイト
【総合評価】7点（総合12点：全体10点＋百合2点）
【作品の立ち位置】
オールタイム・ベスト・コンテンツ（10<x）
ガチで大事にしたい作品（9<x≦10）
積極的推し作品（8<x≦9）
オススメの手札に入る作品（7<x≦8）
まずまずな作品（6<x≦7）
自分からは話をしない作品（5<x≦6）
オススメできない作品（x≦5）
【世界構築】1.5点 (2点)
ロシアの寝台列車でのロードムービーという設定がよく、途中で下車してリョーハの実家？に立ち寄り一日を過ごしたり、その後も旅行先でうろちょろするのが面白い。あまり観ないタイプの映画だと感じた。映像はとても綺麗。
【可読性】1点 (1点)
飽きずに見ることができた。
【構成】1点 (2点)
良くも悪くも単調なロードムービーで、展開にそれほど意外性もなく（強いて言うならスリの被害に遭った時くらいだらうか）特に言うことがない。とはいえ、飽き飽きするタイプではなく、ロードムービーならまぁこんな感じだよね程度のものである。
【台詞】0.5点 (1点)
特に響いたものはない。
【主題】2点 (2点)
本来ならば恋人との旅行だったのになんか断られて無理やり一人旅になったという掴みは素晴らしい。粗野で下品で乱暴なリョーハ、初見では最低だけど、（多分）主人公のラウラに惚れた弱みでなんか優しくしてくれるのワロタ、みたいな映画である。ラウラはレズビアンorバイであることが明かされているのでリョーハの言いよりには答えることができないし、そういう面でも徹底的にラウラとリョーハが対照的な存在であることが分かるのだけれど、そんな2人がたまたま同じ車両に乗ることで一緒に旅行をすることになる、というただそれだけの話を楽しめるか楽しめないか。私は楽しめた。旅行が好きなので。
【キャラ】1点 (2点)
ラウラがなぜ恋人に旅行を断られたのかあんまり覚えていないのだが、ラウラも恋人役もキャラとしての旨みがあまりなかった。ラウラは教授である恋人の付き合いだろうか、上流階級に浸ることに抵抗があるような感じを見せるが、下流階級のリョーハには強く抵抗感を覚えるなど、自分の身の置き所に四苦八苦しているような感じは良かった。リョーハはなんか少女漫画みたいであまりに人が良すぎる。もうちょい変なところを出して欲しかった。
加点要素【百合/関係性】0点 (2点)
本作では主人公のラウラと教授らしき女性が交際しているなど、レズビアンが作品に登場するが別に百合だとは感じない。そのほか特筆すべき関係性もなし。
【総括】
本作はネットでの評判がめちゃくちゃ良く、2021年・第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でグランプリを受賞するなどめちゃすごい作品なのだが、自分はそこまで刺さらなかった。テーマが素晴らしいのは認めるのだけれど、リョーハがラウラに尻尾を振りすぎなのが面白くなく、どうせならリョーハはラウラのことが「お高く止まっていて嫌い」程度には感情の矢印の矛先を納めて欲しかった。もしそのまま途中下車して、一人でどこか宿を探そうとするラウラを仕方なく自分の家に迎え入れる（車内ではずっと無言、互いになんでこんなことしてるんだろう、くらい思っていると素晴らしい）という感じなら本当に自分好みだった。結局最初から最後までだいたいラウラの主張が通ったというか、長年の夢だったペトログリフ（岩面彫刻）を見ることができた（観客に見せないのはとても良い）のもリョーハのおかげだし、なんだかなあと思うところがある。尽力しすぎなんですよね。もう少し都合のいい男感が消えていれば文句なしの傑作だったと思う。あくまで私の場合は、ですが。
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