新薬史観

地雷カプお断り

ミリしらで妄想した『ONE PIECE FILM RED』の感想

ONE PIECE FILM RED』、大人気ですね!

自分は見ていませんが……。

今回の記事は、ワンピースの知識が「すね毛のすごいドフラミンゴが新世界の何らかの島(ワノ国以前)を脱出して空を飛んで海を越えている?」辺りの記憶で止まっている自分が、これまでTwitterのタイムラインで断片的に得た知識から物語を再構成(妄想)し、感想を述べるという試みです。

自分の手元にある情報(真偽不明)

これまでにタイムラインから得た『ONE PIECE FILM RED』の情報は以下のものです。

・ウタはAdoが演じる

・ウタはルフィと幼なじみだが、思想が相容れない

・ウタはシャンクスの娘

・シャンクスは実は複数人いる

・シャンクスに両腕がある

以上です。ここから物語を再構成(妄想)します。

 

想定されうる『ONE PIECE FILM RED』

・物語冒頭、スライムのように増殖するシャンクス

(シャンクスは無能力者では!?という観客を驚かせる)

・総勢101名のシャンクスがそれぞれ役割分担し、船の出航準備。船長のシャンクスには腕が生えている。シャンクスによるシャンクスのためのシャンクスの海賊団、それがシャンクス海賊団、通称『RED』である(大量増殖したシャンクスの髪により、遠くからでも赤く見えるので=レッドオーシャンの象徴、寧ろ『RED』の存在からこの海域には「レッドオーシャン」の名が付いている)。

・場面転換、麦わらの海賊団は航海中に歌を聴き、近くに島を見つける。ちょうど船を修理したかったんだとフランキー。上陸することを指示するルフィ。船員は船の修理までのあいだ島を散策することに。相変わらず聞こえる歌。声の主を探すと、なんとルフィの幼なじみのウタである。

・束の間の交流、交わされるかつての幼なじみエピソード(上映時間にして20分程度)

・突然島を襲う海賊、立ち向かおうとするルフィを遮り、ウタが歌をうたって撃退(なんか物理的な音符を出したりするんでしょう、知らんけど)(黄猿と戦っていた歯が鍵盤の海賊にそんなやつが居たような気もするが……)

・「は~、やっぱり海賊ってクソだよね」というウタ。「そもそもいい年して海賊なんて恥ずかしいし何考えてんだろうね船に乗っている人はもれなく就職して親を安心させて勤労の対価として得られた金銭から税を納めて社会に貢献したほうがいいよねw」と語るウタに、「お前が海賊の何を知っている!!!」とキレるルフィ(ドン!!!!)。二人は(そしてこの島と海賊そのものが)相容れないことに気が付く。ウタはルフィからこの島を出るように強要。了承する麦わらの海賊団。

・麦わらの海賊団、出航。

・「胸糞悪い奴らだぜ」とサンジ

・「でもあの歌、まるで泣いているようだわ」とロビン。

・確かに、冷えた黒い海にまでよく聞こえるウタの歌は悲しそうだ。

・場面転換。シャンクスはウタの声に気が付き増殖を途中で辞める。

・ウタの島に訪れるシャンクス、発狂するウタ。

・「ゲームをしよう、ウタ!」笑うシャンクス「お父さん当てゲームだ!」

・実はシャンクスは金曜ロードショーで「千と千尋の神隠し」を観てからと言うものの、大量に増殖してウタに「本当の父親」を当てさせるゲームにハマっていた。

・ちなみにウタの父親はオリジナルのシャンクスではなく分裂したシャンクスであり(分裂しても生殖機能は保存される)、彼はルフィを助けて腕を失った後に傷口から入った細菌類が分泌した毒素によって死んでいるため、ウタがこのゲームに勝利する確率はゼロである。

・101人のシャンクスの中から、震えながらオリジナルのシャンクスを選ぶウタ。

・「はずれ~!」ベロを出すシャンクス(パパなりの愛嬌の見せ方である)

・罰ゲームとして、ウタの下着は101人のシャンクスの下着と一緒に洗濯機で回される。

・絶叫するウタ。

・ルフィがその声を聞き、島に戻ることを決意。

・シャンクスのひとりが麦わらの海賊団の旗に気が付く。

・ルフィを出迎えるシャンクス。ウタと違って、今度はオリジナルのシャンクス一人での応対。

・「ルフィ、懐かしいな!」と語るシャンクス。

・しかしルフィは言う「誰だ、おっさん」

・ウタは半笑いで「何言ってるのよ、ルフィ!わたしのお父さんよ!」

・「そうだよルフィ、懐かしいじゃないか!え、おい。麦わらの帽子を返しに来てくれたのか?」

・「もう一度言う」ルフィは覇王色の覇気をビンビンにして口を開く。「誰だ、おっさん……いや、『おっさん達』と言った方が正しいか」

・まだルフィに姿を見せていない、シャンクスたちの間に戦慄が走る。

・シャンクスは真顔になる。「どういう意味だ?」

・「そのままの意味だ。ここに、オレに帽子をくれたシャンクスは居ない」

・ハッとするウタ(ウタは『千と千尋の神隠し』を観たことがないので、この回答に辿り着かなかったのだ)。

・ルフィは言ってはいけない言葉を口にする。「お前ら全員、シャンクスの偽物(コピー)だ

・ブチ切れるオリジナル「誰が偽物だァァァァァァ!」(※二次元キャラあるあるだが、複製する能力を持つオリジナルは、得てして皆「コピー」と言われることに過剰反応するものである。解説おわり)

・バトルに突入。麦わらの海賊団+ウタ vs.101人のシャンクス海賊団『RED』

・激アツである。

・バトルはなんやかんやで都合良く進められ、シャンクスは残り一人になる。

・まだ殴り合おうとするシャンクスとルフィは、ウタの歌によりその拳を止める。

・「もうやめて!」ウタは泣き叫ぶ「私たちに争う理由はないはずよ!」

・その通りだった。

・「宴だ~!!!」和解した(?)ルフィとシャンクスは肩を組みながら酒を飲み交わす。「うっせぇわ」を歌うウタ(これにはAdo目当ての観客もニッコリである)。手を叩いて喜ぶ麦わらの海賊団。

・みんなが酒に酔い潰れた深夜、砂浜で海を眺めるシャンクスにウタが近寄る。

・「眠れないの?」

・「ああ、まあな。ウタもか?」

・「まあね」

・沈黙。

・聞こえる波音。

・「なあ、もしもの話だが」シャンクスが口を開く。「オレがもう分裂できなくなったって言ったら、ウタは笑うか?」

・顔を強ばらせるウタ。シャンクスの瞳は本気であり、切なげで優しい。

・「実は、さっきの乱闘で、ルフィに殴られてオリジナルが死んだんだ。オレはただの『コピー』で、無能力者のただの人間だ。俺にはコピコピの能力は使えない(※ここに来て初めて明かされるシャンクスの能力名と、ルフィを助けたシャンクスがカナヅチではなかった理由!)」

・「でもな、最初からお前にとっての本当のお父さんなんていなかったんだ」

・固まるウタ「どういう意味?」

・たったひとり残されたシャンクス、ひとり娘に語る。ルフィとウタに優しくしたシャンクスはとっくの昔にいなくなっていたこと。その死を子ども達に伝えてショックを与えないように、いままで分裂して誤魔化してきたこと。

・シャンクスの言葉に強いショックを受けるウタ、けれどもルフィとのやりとりを思い出し、ウタは合点がいく。「だからルフィは……」

・「ごめんな、いままでずっと偽物のお父さんで」

・沈黙。そしてシャンクスの肩に寄り添うウタ。

・「ウタ?」

・「たとえ産みの親じゃなくても(※実際、シャンクスは産んでいない)、私にとってはみんなが本当のお父さんだったよ」

・「……ウタッ!」

・号泣するシャンクス。ヤシの木の陰から見守る麦わらの海賊団。

・翌朝、麦わらの海賊団は島から出発しようとする。見送るウタとたったひとりのシャンクス。

・「本当に行くのね」

・「ああ」

・「海賊も辞めないのね」

・「ああ」

・「どうして?」

・「大海賊王になりたいんだ、オレ」

・「それだけ?」

・「それだけ」

・「それは、この島よりも……」ウタは言いかけて口を閉じる。

・「ウタ?」

・「なんでもない」

・「そっか」

・「ああ」

・「じゃあな、ルフィ!」

・ルフィは笑う「ああ。じゃあな、シャンクスっぽいおっさん!これ、返すぞ!

・腕を少しだけ伸ばし、シャンクスに麦わら帽子を被せようとする。

・「いや、お前が持っておいてくれ」

・「でも」

・「『麦わらの一味』から『麦わら』を取ったら何も残らないだろ(※正確には「の一味」は残るので、シャンクスは嘘をついています)」

・「ほんとだ!おまえ頭いいな!(※しかし、ルフィにはそれが分からない)」

・「それほどでもないさ。ただ、実際そういうことなんだ。もうすでに麦わら帽子はルフィのもので、君たちのものなんだ。だからやるよ、その麦わら」

・「おう、あんがとな!」ニッと白い歯を見せ笑うルフィ。帆を張る船。

・麦わら海賊団が出航する。

・ウタは最後にどう言葉を掛けたらいいのか分からなくて、歌をうたう。

・目を閉じ、その声を背にして海風を浴びるルフィの顔は、とても穏やかだ。

 

観客の気分で読んでみた感想

まあ、微妙ではないでしょうか。増えるシャンクスは映像的に良いですが、個人的にはシャンクスに陳腐な真贋論を語ってほしくないので(着地点も安牌過ぎて面白くないし)もう少し冒険してほしかったところです。あとはウタが「うっせぇわ」を歌うのは流石にやり過ぎなので、その辺りの線引きはしっかりしてほしいですね。これで100億円売るのはムリでしょ……。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?

個人的には「本編に2割くらい掠っているかな~」と思っているのですが、もしすでに本編を観た方がいれば、「これくらい似ていたよ」って割合を教えていただければ幸いです♪

ではでは~。

 

田口智久『夏へのトンネル、さよならの出口』観た!

田口智久『夏へのトンネル、さよならの出口』(2022)

映画『夏へのトンネル、さよならの出口』公式サイト

【総合評価】8.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(5<x≦6)

時間をロスしたと感じる作品(x≦5)


【世界構築】2.5点 (2点)

ひたすらに映像が綺麗だった。空の青にはノイズがかかってざらついているし、背景や主要人物以外はほとんどぼかしを喰らっている一方で、主要人物の線や塗りはくっきりしており、非常に見やすい映像になっている。

また画も綺麗で、個人的に気に入っているところを抜き出す。

・親父からカレン返せよおと迫られて走るシーン、息遣いとともに頭上を見上げて黒い枝に満月が掛かって揺れているシーンがテンポ良く、画も綺麗。

・トンネルが常に水浸しで落ち葉が浮いている設定。返ってきたアイテムが落ち葉を跳ね返すように浮いているのも綺麗で良かった。

・最初に花城さんとカオルが出逢って沈黙になるシーン、また同様に二人だけの沈黙を許すシーン(水族館で二匹のジンベエザメが行き交うところ)の間の持たせ方が最高だった。

・再会を再演するところ、カオルが画面外に出て行ったかと思うとカメラが動き(割とここの動きだけ露骨で違和感があった)、そして最後に実は駅の後ろにはひまわり畑が広がっているという見せ方に発狂しかけた。ズルすぎるだろあれ。

・花火がふたりの別れを暗示するように露骨にふたりの間に割って空に上がっていくシーン。花火が別れと結びつくイメージがなかったので新鮮だった。

・花城さんの髪の諸々。流れ落ちる様が美しすぎてムリ。というかキャラデザが良すぎる。

また、設定にも触れると、トンネルと異世界の繋がりは『千と千尋の神隠し』を初め、イメージとして強固ではるが「トンネルそれ自体はどこにも繋がっていない」というのは結構面白いなと思った。また、これまで散々擦られてきたように平凡主人公が異常ヒロインに振り回されるのではなく、異常(要検討)主人公が平凡(要検討)ヒロインにつけ回されるというのは一見新鮮に見える。このパッと見の新鮮さは個人的には全然誠実じゃないように思えるが、少なくとも構造を少しは変えようとしている点では面白いと感じた。映像への感動が7割、設定への感動が3割くらいで合わせてこの点数です。

 

【可読性】1点 (1点)

飽きずに見ることができた。


【構成】1.5点 (2点)

時間経過を扱う作品なのだから、もう少し構成で遊んでも良かったんじゃないかなと思った。もちろん本作はこれで十分面白いのだが、一方で未来へ投げた諸問題を一切解決していない側面もあり、王道路線でいくなら多少フォローをしてほしかった(EDと一緒にイラストを流すなど)。

自分がもう少し踏み込んで欲しかった点

・塔野カオルの戸籍の扱い(行方不明だとして、13年もの間姿形が変わっていないのは他者への説明としてどうすればよいか。新たな戸籍を所得するにしても、保護者は花城さんしかありえず、そうなら結婚が面倒臭い!)

・塔野カオルのこれからの所属先(高校か大学か就職か)

・13年間のジェネレーションギャップのあれこれ(過去の遺物を映像に映し出していたのだから未来に進むだろうことは予想がついていたが、せっかくならその時間によって進んだ技術によるトラブルも欲しいところだった)

→例えば、13年というのは思春期の人間にとってめちゃくちゃ長いが、それだけの年月を費やしておいて語られる物語が「待つだけ」というのはしょうもなさすぎるし、花城さんがあまりに可哀想である。まあ、花城さんは13年経っても相変わらず美人だし、そこまで悲壮感がないのでなんとも言えないのだが、下手したら花城さんは花の20代を無になって過ごしている説もあり、マジで最悪である(かく言う私はそういう人間ですが、花城さんは恐らく恋愛したい側の人間でしょう)。個人的には、この「13年と108日」を無批判に引っ張ってくるセンスにグロテスクさすら感じてしまうので、せめてそこはキャラの純粋さではなく人間らしさにも注目してみるのはどうだろうか。

(以下例文)

花城さんは頑張って待ち続けたが、機種が古すぎたが故に、携帯会社のサポート期間も終了し、塔野カオルにはもう携帯が通じないようになってしまった。このまま待ったとしても、もう連絡手段はない。両親からも「漫画はさせてやっているんだからせめて結婚しろ」という圧力もあり、花城さんは漫画家の懇親会で知り合った(才能溢れる!)漫画家と結婚することにする。やがて子どもも生まれ、家事育児のために漫画家も半引退状態になってしまうが、子どもも6歳くらいに成長してなんとなく幸せな生活を送っている。そんな折、突然のチャイム。子どもがインターフォンの画面を見て「なんか男の子がいる~!」と叫んで花城(そうか、もう花城じゃあないんだった)さんが食器洗いを終えてハイハイちょっと待ってねどちら様と見てみると、そこには13年前の若々しい塔野カオルが映っていて……という展開なら、もう長らく漫画を描いていない元花城さんは腰を抜かして発狂するがいい物語にはなると思う(は?)

(例文終わり)

というわけで、上のも正直ありきたりではあるのだが、改めて13年は流石に長すぎるだろってことでやや批判的ではあります。あと最初の方に出てきた花城さんに突っかかってきた女との絡みが全然描かれなかったので、それはちょっと……と思った。

でも出された構成はそこまで悪くはないのでこの点数です。

 

【台詞】1.5点 (2点)

台詞がないがゆえに良いシーンがあり大変よかった。ただ、急に妹が世界の善性を背負い始めたのを台詞にして聞いたときには一気に冷めた。それはちょっとやりすぎ。

 

【主題】1点 (2点)

本作はトンネルから出ること(過去に囚われないこと)を目的にしていて、それはひとつの主張として良いのだが、カレンちゃんをトンネルから引きずり出せないのはどうしても納得がいかない。生物であるインコが引っ張ってこれたのだから、同じ条件にあたるカレンも生きたまま(それが同一人物かはわからないが)引っ張ってこれるはずである。それなのになんか知らんが思い出のなかでカオルは「やっぱり花城さんのほうが好きンゴ~!」とトンネルから脱出しようとするのでマジで嫌すぎる。一番イヤなのが、インコや破られた漫画と違って、カオルはカレンと過去の思い出のなかで遊んでいた説すらあり、そうした場合、カオルと対話していたのは「カオルの記憶のなかで創り出されたカレン」かもしれない。そうなると、カオルにとって都合の良い言葉しか吐かない(お兄ちゃん大好き!でも他にも友達つくってほしいなあ!いってらっしゃい!等)カレンにも納得がいく一方で、やっていることは過去へのケジメでしかなく、「えっ、過去との対話のためにカオルも花城さんも13年を無駄にしなきゃいけなかったのか」と思ってしまう。それはあまりにコスパが悪すぎるのではなかろうか。ならばやはり妹は連れ出せたはずと考えるのが自然であるが、カレンはトンネルから引きずり出すことができなくて……と堂々巡りだ。

自分はここに作劇上、重大な問題点があるように感じる。インコが連れ出せて妹が連れ出せないならその理由を描くべきだし、最初から過去との対話しかできないのであれば、ここまで大きなリスクをトンネルに設置すべきではない。個人的には、実際の妹(のように見えるもの)と対話して(この場合、妹は自分が死んだことに気が付いていなくて、久しぶりにあったお兄ちゃんと涙を流して再会を喜び、一緒に遊ぼうとせがまれて断れず、相手をしているうちに時間が過ぎていく、というのであれば納得のいくコストである)、連れ戻そうとするも、なぜか鳥居からは出ることのできない妹にその理由を問われて「お前は死んだからだ」と口にすることで過去と決別する、というのであればまだ納得はできるかな、という感じ。さらにここで花城さんが駆けつけていて、鳥居の向こうで無限に分裂して見える(しかもそのカオルは殆どが妹と楽しく遊んでいるのだ!)カオルの腕から本物を一本掴んで現実に連れ戻すという展開でも映像の面白さやエモがそれなりに生まれると思う。

というわけで、そもそも本作は過去に囚われずに前を向く人物を描こうとしながらも、その前への向かせ方に若干の無理やり感があるところが微妙だった。しかも、作品のテーマ自体も13年という長すぎるスパンを待ち続ける(過去に拘り続ける)花城さんの意義そのものを否定している点で、結局私たちはどの方向へ向けば良いのか、どちらが「前」なのか、主張として纏まりに欠けている。それが残念。

 

【キャラ】1点 (1点) 

カレンちゃんも花城さんも美しくて大変好みだった。カオルくんも良い感じに歪んでいて好きだった。ビジュアルが本当に最高。

 

加点要素

【百合/関係性】0点 (2点)

該当描写なし

 

【総括】

想像以上に「自分ならこうする!」が出てきた作品ですが(何様すぎる)、逆にいえばそれだけ面白く心が動かされた証でもあるので、点数としてはこんなものだと思います。脚本(あるいは原作?)にウーンという感じではありますが、映像は本当に綺麗だし、間の取り方もとてもいいのでオススメです。

2022年6月~8月度 履修コンテンツまとめ(56作品)

前書き

ブログを書く気が一切起きなかったので久しぶりの更新になります。

特に書くこともないので、最近履修したコンテンツを勝手に格付けしたものを恥も外聞もなく公開することにします。なお、格付けを行う採点基準はいつも通り以下のものです。

【基礎点(配点10点)】世界構築(2点)、可読性(1点)、構成(2点)、台詞(2点)、主題(2点)、キャラ(1点)、【特別評価点】百合/関係性(2点)

=合計12点満点(百合がある場合)

なお、それぞれのカテゴリで感情が狂うと「構成2.5点」「百合3点」とかつけてしまうことも多々あり、まったくルールは遵守されていないため、あってないような基準となります。

上記の採点基準により、自分にとっての作品の立ち位置を評価しました。まあそれだけだと寂しいので一言コメントも載せています。

 

 

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

 

12    佐野妙    『ウリとツメ 』    漫画

幼なじみ百合はいずれ離別しなければならないというのは、現実世界で発生している別れを勝手に創作の世界に持ち込んで気持ちよくなっているだけの作者のエゴであり、それを虚構世界に生きるキャラが享受する必要性など何処にもないということを証明した幼なじみ百合の傑作。話が進むにすれ、幼なじみである百爪小春に向ける感情を徐々に開示し、強め、なんとか百爪家の戸籍に入ろうとする瓜生桜子の姿には感動すら覚える。桜子が小春の手を引き進もうとする最後のシーンでは今後のイニシアチブの在処が明確に示されており、桜子は必ず何らかの手段で百爪家の戸籍に入るだろう。序盤こそ「ウリとツメ」というタイトルに相応しいよくわからない掴みを見せられるものの、それを補ってあまりある幼なじみ百合を摂取できる。

11.5    いしいひさいち    『ROCA 吉川ロカストーリーライブ 』    漫画

音程以外ぜんぶ音痴な吉川ロカと、そのロカの安心装置である柴島美乃の感情があまりに強烈で発狂!「おまえはオレのシマだ」「うれしい」と電話で語り合うひとコマは間違いなくROCAの真髄。学生としてのロカと歌手としてのロカを少ない線で書き分けるうまさも、語り口から感じさせるそのひとの背景も、読者を涙ぐませる構成も素晴らしく、芸術作品としても自信を持ってオススメできる。ファドは分からないが百合なら分かる自分から言わせれば、これは傑作百合漫画です。

11    瀬戸口みづき    『めんつゆひとり飯 』    漫画

「気になる相手を脳内に勝手に住ませて会話する」という発明を行った偉大なるノーベル百合賞受賞候補作品。楽に生きたいめんつゆちゃんと丁寧な暮らししかできない十越さんの生き様のぶつかり合いが素晴らしいし、十越さんに至ってはめんつゆちゃんを無意識のうちに征服しようとしているので、その感情の強さに笑顔になれる。台詞回しやギャグセンスも圧倒的に優れており、 泰三子『ハコヅメ』の再来かと震えるばかり。まだ完結していないので、今後が楽しみな作品。

11     山本英夫    『殺し屋1 』    漫画

百合要素がないのにこの点数に食い込んできた異常漫画。最初から最後までずっと自分が見たことの無いものを見せられ、ただただ興奮させられる。ギャグなのかシリアスなのか、現実なのか妄想なのかも分からないまま、「狂気&面白さ」で話を展開していく力業に気を失いそうになる。「目」や「視線」「覗く」という観点からしっかり語ることもできる批評性も備えており、マジで異次元の漫画。本当の天才っているんだと思った。

11    志村貴子    『淡島百景 』    漫画

志村貴子の百合。言葉遣いがたいへん綺麗で、個人が楽しむ範囲で勝手にノベライズしてこの空気感を勉強しようと思っています。

 

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

 

9.5    後藤羽矢子    『プアプアLIPS 』    漫画

貧乏人と金持ちの物語はありふれているが、そこに百合が加わり、さらにしっかりとした展開を有している作品は希少な気がする。物語と人間関係がはっきりと動く快感を楽しめる傑作。パッと見おねロリだが、成人同士の百合です。

 

積極的推し作品(8<x≦9)

 

9    今村夏子    『こちらあみ子 』    小説

マジで面白い。あみ子の目にしている小さな世界を、まるで白昼に懐中電灯を片手に歩き回っているかのような錯覚に陥ってしまうので恐ろしい。どこまで計算されて書かれているのか分からない狂気も素晴らしい。

9    いのり。/青乃 下    『私の推しは悪役令嬢 』    漫画

純粋に良いエンタメ百合。悪役令嬢であるクレアの魅力がずば抜けているが、青乃下先生のコミカライズ能力の高さが異常であるような気もする。

9    Playdead    『INSIDE』    ゲーム

言語なく恐怖と感動の操作性を与える唯一無二のゲーム。ラストの展開には思わず声が出る。前作の理不尽死にゲー『Limbo』よりも格段に難易度は下げられているので、絶対に多くの人にプレイしてほしい。

8.5    村上春樹    『ねじまき鳥クロニクル 』    小説

久しぶりに読んだ村上春樹で、思わず素晴らしいなと思ってしまった作品。井戸のなかで笠原メイと会話をするシーンがピカイチ。相変わらず何をチンタラやっているのか全然わからないが、その回り道のすべてを楽しませることのできる文章力がすごい。

8.5    瀬戸口みづき    『初恋症候群 』    漫画

幼なじみ百合の破滅を、同性愛を理由にしない観点でしっかりと描いており良かった。まだめんつゆほどの台詞のセンスはないが、変なキャラの魅力はこの頃から健在。

8.5    ジェイソン・ロバーツ    『GOROGOA』    ゲーム

こちらも無言語のゲーム。独特の操作と世界観、グラフィックが大変素晴らしい。結局なんのこっちゃわからんゲームではあるのだが、それがGOROGOAの伝えたいことのようにも思う。

8.5    堀井雄二    『ドラゴンクエストビルダーズ』    ゲーム

ドラクエシリーズのなかでも異色作である、勇者とは一切関係のないキャラが主人公。マイクラが好きなら絶対にやったほうがいいし、マイクラが好きでなくても、初代ドラクエをプレイした記憶がある人間には絶対にオススメしたい作品。章ごとの難易度や、世界観の作り込みも丁寧で良い。

 

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

 

8    長井龍雪    『空の青さを知る人よ 』    映画

姉妹百合なので良い。田舎で燻っている人間にもオススメ。

8    ソルジェニーツィン    『イワン・デニーソヴィチの一日 』    小説

強制収容所での労働の一日を徹底的に退屈に描写し、時に妙に楽しく描くことで奇妙なリアルさを感じさせる異常な作品。1日×3653日の衝撃。

8    heisoku    『ご飯は私を裏切らない 』    漫画

変なバイトの解像度が高く面白いが、作者の私生活が心配になる。

8    panpanya    『二匹目の金魚 』    漫画

panpanyaワールドは優しいし面白いので、エンタメとして万人に勧められる。

8    酉島伝法    『るん(笑) 』    小説

言語に執着し、それを物語に落とし込む天才。分断される現代、分断された向こう側の生活を描き、変わらない人間の愛情も表現することで、読者の世界の捉え方を強く揺さぶるので良い。

8    ちさこ    『みんな私のはらのなか 』    漫画

焦りながら婚活をする女が最終的に女とくっつくことでしか得られない栄養素。

8    ふじた渚佐    『ひなたと三笠 』    漫画

うるさい画で描かれる百合に衝撃。百合は静かなものだと思っていたが、これは男性が女性に求めている仕草を反映しているキモいイメージなのかもしれない。うるさい百合を人々は真剣に描き読むべき。

8    小林キナ    『ななしのアステリズム 』    漫画

スクールランブルの天満ちゃんが好きなので、どことなく似ている白鳥司が百合キャラで嬉しかったものの、失恋するので悲しかった。琴岡みかげのすべてを俯瞰しているつもりになる未熟さが魅力的で良かったが、勝手に司を「お前は本物のレズビアンじゃないね」と思うところだけはウーンという感じだった。思うだけならいいが、それが実際物語に反映されて、性的志向を理由に恋愛関係が成立しない方向性に進むのでモヤる。15話『スコーピオン』、16話『イヤ』はすさまじく良かったし、最後の投げっぱなしの終わりさえ除けば、物語や感情の交差の仕方はなかなか良かった。男を誑かす女装男を見ることができるのもgood。

8    谷川ニコ    『クズとメガネと文学少女(偽) 』    漫画

やっぱ谷川ニコ面白いわ。クズのクズさをもっと表現してほしかった。

7.5    ジム・ジャームッシュ    『ナイト・オン・プラネット 』    映画

物語の見せ方と魅力のあるキャラの描き方が大変参考になる。タクシー映画にハズレは無い説をまた補強するかたちに(『コラテラル』『タクシードライバー』『タクシー運転手 約束は海を越えて』)。

7.5    姉井戸    『悪役令嬢と愛のためならなんでもする女 』    漫画

百合。表題作はキャラを現実世界に引きずり出すのが良い。すべての作品に作家性が出ており、いまはまだチープな表現もあるが、説明されない不穏な空気はこれから化けるかもしれないと密かに期待。

7.5    村上春樹編    『恋しくて 』    小説

アリス・モンローに出会えたきっかけとなった大切な短編集。『ジャンク・ランダ・ホテル』は圧倒的に優れており、今村夏子を想起させて素晴らしい。ジム・シェパード『恋する水素』はイマイチだったのだが、後から円城塔がジム・シェパードフォロワーであることを知り、他の作品を読むなどしてなんとか興味を持とうと努めている。

7.5    南木 義隆    『蝶と帝国 』    小説

帝政ロシアを舞台にした、湯浅政明日本沈没2020』。エンタメとしては微妙だったが、本作はひとりの女性がレズビアンであるというだけで何処にも所属できず承認するチャンスすらも棒に振ってしまうような自己肯定感の低い人間に育ってしまった環境要因が問題であることを表現した作品だと思っているので、必然的に「そもそも他者の人生をエンタメとして消化してよいのか」という話に踏み込んでしまいがち。超能力要素は不要っちゃ不要だが、そのような力を以てしても帝政というかたちの見えない圧力には勝てないことを表現したのだと考えると頷けるので、まあ。

7.5    伴名練    『百年文通 』    小説

面白いが、割と想像通りの展開だったので特に驚きが無かった。女性の語り口は非常にうまい。妹から姉への強い感情も良かった。

7.5    つばな    『惑星クローゼット 』    漫画

作家性しかない。百合かと言えばまあそうくらいではある。かわいい女の子とグロの融合はなかなか面白いが、ホラーが強烈すぎる。

7.5    つばな    『バベルの図書館 』    漫画

同上。ホラー要素は薄いが、タイトルからも察せられるようにややSF要素のある作品。微妙に意味が分からなかった。

7.5    やまもとまも    『小杉センセイはコドモ好き 』    漫画

幼稚園児に自らが性的に消費される存在であると自覚させるようなスキンシップを行う小杉センセイに強い憤りを感じるし、そのせいもあって素直にエンタメとして楽しめない部分がある。が、物語としては百合の乱れ咲きなのでオタクの好きなやつではある。

7.5    缶乃    『複数人交際百合アンソロジー レモネード 』    その他

複数人で交際するのは別にいいのだが、想像以上に「みんな仲良し!」系があったので驚いた。個人的には一夫多妻的な構造の方が自然なので、もし自分が書くならそっち方面になると思う。作品としては、みかみてれん『マイ・トレジャー・マイ・プレジャー!』、謝神逸器『蝶の知らせ』、鈴菌カリオ『彼女の彼女』が良かった。

7.5    スズキナオ    『「それから」の大阪 』    文章

スズキナオの文章はやはり良い。

7.5    紺色3号    『同級生の推し作家に百合妄想がバレた結果 』    漫画

最新刊である3巻で描写された関係が良かった。無事に続刊されてほしいところ。

7.5    アジイチ    『できそこないの姫君たち 』    漫画

終盤の展開が熱い百合漫画。誰かの憧れになり得るキャラと、平凡なキャラとの恋愛を描くために必要なハードルを丁寧にこなしており好印象。誰かのために自分から変わりたいという感情が百合の源泉かもしらんねと思わせてくれたことに感謝。自分の感情をまったく制御できないギャルにも一見の価値あり。

 

まずまずな作品(6<x≦7)

 

7    野添ちかこ    『旅行ライターになろう! 』    文章

これで俺も旅行ライターになる。

7    ジョナ・ヒル    『mid90s 』    映画

まあまあ良い。

7    竹宮 惠子    『少年の名はジルベール 』    文章

ぜんぜん知らない少女漫画史が知られて良かった。第二部と名高い萩尾望都『一度きりの大泉の話』をはやく読まなければいけない。

7    工藤進    『南鎌倉高校女子自転車部 』    アニメ

気が狂っている序盤数話を除けば、ふつうのほほん自転車アニメ。どちらかと言えば熱いが、番組最後のA応Pのコーナーで中和される。自転車にちょっと乗りたくなるアニメ。

7    乙ひより    『クローバー 』    漫画

良いのだが、キャラが結構入り交じっていて、時系列がややこしい。あと両家の姉妹全員レズビアンというのはなかなか……。

6.5    河村智之    『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会TVアニメ2期 』   アニメ

河村智之『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会TVアニメ2期』観た! - 新薬史観

6.5    本間 修    『パリピ孔明 』    アニメ

微妙に百合があるが、ありきたり。

6.5    斜線堂有紀、 相沢沙呼乾くるみ円居挽、 青崎有吾、 織守きょうや、 武田綾乃    『彼女。百合小説アンソロジー 』    小説

全体として思っていたよりもレベルが低かった。斜線堂有紀『百合である値打ちもない』がダントツで優れている。ふたりについて回る「見られる(消費される)」視線は、素顔を出して配信者として舞台に立つからこそ付与されるものではあるものの、当然消費サイドに気を回してVtuberになったり整形をしなければならない状況は異常なのであり、「百合」を消費しているルッキズムに脳を支配された百合豚への糾弾であることは明白である。この糾弾に対して百合豚は「百合(ふたりの世界)を覗かない」ことでしか斜線堂有紀の期待に応えることはできないが、よくよく考えると顔がいい人間同士の消費されやすさは別に百合に限ったことではなく、斜線堂有紀の批判はそこまで適切ではないような気もする。とはいえ「整形してくれてありがとう」という台詞を引っ張り出してきた愛情の解像度は魅力的。

6.5    ジャンニ・ロダーリ    『パパの電話を待ちながら 』    小説

悪くない。発想力が欲しいときに童話はオススメ。

 

自分からは話をしない作品(5<x≦6)

 

6    朝井麻由美    『ソロ活女子のススメ 』    文章

エッセイみたいなものなので普通はこの辺のカテゴリに収まります。

6    京極尚彦    『ガル学。Ⅱ〜Lucky Stars〜 』    アニメ

微妙

6    倉田嘘    『それでもやっぱり恋をする。 』    漫画

微妙。本気のエモか、それとも笑いを狙っているのかが分からない。怖い。

6    村上春樹    『職業としての小説家 』    文章

自分語りキツい。

 

5.5    タムラコータロー    『ジョゼと虎と魚たち 』    映画

タムラコータロー『ジョゼと虎と魚たち』観た! - 新薬史観

5.5    文尾文    『私は君を泣かせたい 』    漫画

いまいちピンと来なかった。

5.5    わたりさえ    『お嬢様はラブコメの主人公になりたい! 』    漫画

下品。

5.5    矢坂しゅう    『君に紡ぐ傍白 』    漫画

フルカラーなのはすごいが、自分は受容しにくいストーリーラインだった。

 

時間をロスしたと感じる作品(x≦5)

 

5    柿内尚文    『バナナの魅力を100文字で伝えてください 』    文章

うんこ

5    最果タヒ    『さっきまでは薔薇だったぼく 』    詩

意味がわからない

5    燃え殻    『ボクたちはみんな大人になれなかった 』    文章

ちんこ

5    柿内尚文    『パン屋ではおにぎりを売れ 』    文章

にゃんこ

 

後書き

いかがでしたでしょうか?

この3ヶ月はかなり漫画(特に百合)に注力した期間でした。またぼちぼち映画や小説にも触れていこうかな~と思います。

みなさんもオススメの作品があったらぜひ教えてくださいね!

marshmallow-qa.com

今日見つけたおもしろい芸人「惹女香花」

惹女香花(ひきめかぎばな)という芸人がいるらしい。

 

街裏ぴんくの動画を眺めていたらサジェストされた。これが見事に大当たりで、ないことをひたすらベラベラ喋る芸風が街裏ぴんくと似通っていてとてもよかった。*1

自分が最初に見たネタはこちら。

youtu.be

掴みはB級感があるものの、フリップ芸としてのテンポの良さが嬉しい。特筆すべきは現地の人を笑わせるだけの「微妙な言語のつながり」を連打できる部分だ。これ、自分は2回くらい見返したのだが、面白いようでギリギリ「笑い」としては成立していないように思えてならない。「言語の構造として次にくるだろう言葉*2をひたすら並べるだけ」という一見何が面白いのか分からないものが、一周回って現地ではしっかりネタになっている。これってかなりすごいことだよなと真顔になってしまった。個人的にはこの連関は詩的であるとすら思う。

 

次に見たのがこちら。

www.youtube.com

これは前のネタよりも面白さが一般化されていてとても良かった。

ないないエピソードの選び方や言語センスが絶妙で、素直に誰にでもオススメできるネタだと思います。「ない 検索履歴」の爆発力は異常だと思う。終わり方がもう少し綺麗なら個人的には嬉しかった。

 

最後に紹介するのはこちら。

www.youtube.com

これは個人的に惹女香花の可能性を最も感じたネタで、全体的な面白さでは『ない〇〇』には劣るものの、地動説のと墓の下りは本当に天才だと思ったし、ガードレールの春やほかのエピソードをもっと洗練することができれば最高のシリーズネタにできると思った。

とはいえ、これを突き詰めた話芸こそ街裏ぴんく説があるので、個人的には惹女香花にはフリップ芸で嘘を語る芸人四天王になってほしいと思います。まだ大学生らしいので将来有望すぎる。どんどんネタを磨いていってほしいと勝手に期待しています。

 

それにしてもYoutubeのサジェスト機能、めちゃくちゃ怖くないか。だって街裏ぴんくと惹女香花を結びつけるコメントやキーワードなんて動画内のどこにも記載されていないはずなのに、芸風として扱っているテーマがまるきり一緒な人が見事にピックアップされたのだから。まあ、おそらく獣道理論だと思うので別に驚くものでもないのだけれど、このように素晴らしい芸人さんに出会わせてくれたyoutubeには感謝します。ありがとうございました。

*1:もちろん、しゃべりの巧さや話の構成能力は街裏ぴんくの方が圧倒的に上だと思うが

*2:これが直観的にはわからないし、説明されてもピンとこない

【二次創作】セックス・イン・ザ・ハンド【ラブライブ!/ほのうみ】(約11,000字)

【前書き】

最近あまり二次創作をしていなかったので書きました。本来ならば問答無用でpixiv行きなのですが、問題に進展が見られないのでここに投稿することにします。

ラブライブ!の二次創作、高坂穂乃果園田海未カップリング小説(約11,000字)です。ややR-18要素を含みますので、苦手な方や未成年の方は読まないように気を付けてください。

 

【以下本文】

 

 見つめ合う瞳。
 妄想かもしれないと思う海未の両耳を穂乃果の手のひらが包み込む。ふたつの顔が接近し、ふたつの鼻が交わり、海未の鼻先だけが穂乃果の皮膚をやわらかく押した。この時はじめて、海未は自分の鼻が穂乃果より高いことを知った。やや遅れて、穂乃果の唇のやわらかさも。

 

「予行練習しようよ」
 そう言ったのは穂乃果だ。海未はそれに何と返したのかを覚えていない。怪訝な表情をしたことは覚えているが、それを穂乃果がどう捉えたのかは分からない。昔から海未は感情が顔に出やすくて、よく祖母にたしなめられた。「大和撫子たる者、どんな気持ちも腹んなかおさめて、いつも凛とすましているものですよ」とは祖母の言葉だが、海未は無批判にそれを受け入れ徹底しようとしたものの、結局いつも穂乃果に感情をかき乱され、大和撫子とはほど遠い言動で彼女の背中を追いかける羽目になっていた。
 そんな風だから、海未の祖母は穂乃果のことがあまり好きではなかったのだろう。海未は長らくそのことに気が付かなかったのだが、ある時、穂乃果の所作からふたりの関係性を微かに感じ取った。基本的に穂乃果が人を避けることはない。幼少期の彼女は音ノ木坂に住む人を親戚の一種だと捉えている節があり(事実、地元から愛されている和菓子屋の看板娘である彼女がそう感じるのも無理はなかった)、散歩ですれ違っただけの人にでも子犬のような人懐っこい笑みを浮かべて挨拶をしていたので、彼女の周囲には彼女を愛する人間だけで構成された、無償の愛を通貨とする社会が自然と形作られた。
 その愛が、海未の祖母には通用しなかった。
 穂乃果は恐るべき聴覚で園田家の人間の足音を聞き分けることができたので、海未の部屋で遊んでいる時に突然飛び上がり、押し入れやベッドの中にその身を隠すことが多々あった。不思議に思い扉を開けた海未は、こちらに向かってくる祖母や、背中を向けて静かに去っていく祖母の姿を認めることとなった。こちらを見て「なんです海未さん」と祖母は言う。海未は慌てて顔をひっこめる。
「とにかく静かなんだよね」
 穂乃果は煎餅を噛み砕きながら答えた。
「母上の足音も、かなり静かだと思いますが」
 穂乃果は首を横に振った。「ぜんぜん違うね、海未ちゃん修業足りないんじゃないの?」
 すぐにふたりの追いかけっこが始まったのは言うまでもないが、実際に穂乃果は海未よりも正確に、確実にふたりの足音を聞き分けていた。海未はなぜ穂乃果が祖母から隠れなければならないのかをきちんと理解していなかったのだが、毎度の穂乃果の慌てっぷりを眺めていると「この子は祖母から隠さなければならないのだ」と思うようになった。そんなわけで祖母と母親の足音を聞き分けられない海未は、誰かの足音が近づくたびに、ベッドの上で家から持ってきた漫画を読む穂乃果と自室のドアとを見比べてハラハラしたのだが、穂乃果はきちんと足音の主が分かっているので、それが祖母だと分かるや否や、身体が浮くほどに飛び跳ね、山里から降りてきたタヌキのように俊敏な動きで押し入れに転がり込むのだった。ベッドの上に投げ出された漫画を片づけるのは海未の仕事だ。それから祖母の足音が海未の部屋を通り過ぎるまで(あるいは祖母が海未の部屋のドアを叩き顔を覗かせ室内をぐるりと見渡してから用件を言ってふたたび室内を視線で舐めまわして顔をひっこめるまで)、穂乃果がお婆上様に見つかりませんようにと祈り続けるのも海未の役目だった。なぜ穂乃果がお婆上様に見つかるといけないのかはわからなかったけれど、その願い事は海未と穂乃果の逢瀬にちょっとしたスリルをもたらしていて、お互いその緊張感を楽しんでいたのは事実だ。祖母の足音が遠くに溶け込み、穂乃果が押し入れからそっと顔を出すその瞬間を、海未は心から愛していた。
 幼い頃からの海未の願いは届いたのか、以来穂乃果が海未の祖母と出会うことは正月と盆を別にしてほとんどなかった。正月に会うと言っても互いに視界に入るくらいのもので、園田家の一階で数々の障子を開けて大部屋をつくって開かれる高坂・園田家合同の宴席でも、ふたりは常に対角線上に座っていた。毎年、海未の祖母は穂乃果にお年玉を渡していたのだが、それさえいつしか海未を通して穂乃果に渡されるものになっていたし、耳打ちされたお礼を穂乃果に代わって祖母に言うのも海未の役目になっていた。いったいぜんたいどうしてこのようなややこしいことになっているのか海未には見当もつかなかったが、祖母と穂乃果の間を行ったり来たりすることに、そこまで居心地の悪さは感じなかった。ふたりとも全く敵意を欠いていたし、その言伝はまるで習わしのように執り行われたからだ。海未はふたりの間で何度も往復した。何度も、何度も。

 

 ふたりは成人してから一度だけキスをしたことがある。もっともキス自体はふたりの歴史を遡れば特段珍しいことではなかったが、その時期を考えると、表現にはやや語弊があるかもしれない。ふたりがこれまでにお互いの身体に口づけをした日時はほとんど幼少期に集中しており、そのどれもが親愛の挨拶の域を超えぬ、いわゆる「ノーカン」に該当した。残りの四例は中学二年生の夏休みに時間を持て余した穂乃果がお遊びでした海未への頬キスと(海未はひどくパニックになった)、高校三年生の学園祭でロミジュリを演じた際にしれっと学園中の生徒に見せつけるように行った脚本にはなかったはずの穂乃果から海未への目覚めのキス(海未は顔を真っ赤にして穂乃果をビンタした)、三つめが高校卒業式の日に「学校生活の思い出にキスしてほしいの!」と体育館裏で駄々をこねまくっていた穂乃果にした額へのキスで(これが海未にできる最大限の親愛表明行為だった)、最後はμ's全員が成人を迎えた同窓会で王様ゲームをした末に完全なる悪ノリで行われた穂乃果と海未による数十秒間にわたる口づけだった。重なる唇を見て「きゃああああ」とか「やばーーーい」とか叫び、割れんばかりの拍手をしているのは酩酊していることりだけで(言うまでもなく王様ゲームを提案した彼女は最初からこれを望んでいた)、一瞬だけ唇をくっつけてから離れようとする海未の顔をしっかり固定して離そうとしない穂乃果を驚きに満ちた瞳で見つめる海未が諦めたようにまぶたを閉じて穂乃果の唇に身をゆだね熱い息を漏らし酸欠と恍惚でぼうっと薄目になっていく海未の様子を他のメンバーはみな固唾を呑んで見守り、誰一人として言葉を発することができなかった。「舌も入れてーっ!」と真剣に叫ぶことりのスマホカメラの連写音だけが居酒屋の個室を満たしていた。

 その忌まわしい最後のキスが、今や過去のものになろうとしている。
 海未は穂乃果とキスをしていた。久しぶりに会ったかと思えばすぐに穂乃果に引きずり込まれた。最悪だと思う。「予行練習」とかいう言葉に虚を突かれたのがいけなくて、けれども結局何を言われたところで(あるいは何も言われなくても)海未は穂乃果と念入りに唇を合わせていただろう。海未は穂乃果に弱かった。何故かはわからないが、大抵の物事は海未の意思に関係なく、穂乃果が望んだ通りに運ばれていく。昔はふたりの意思をすり合わせればそれでよかったが、流石にこの歳にもなると海未にも絶対に守りたい自分の意思があって、それが「穂乃果との交際拒否」ということになる。海未は中学生から今現在に至るまで穂乃果からの艶めかしいお誘いや匂わせを様々なやり口で断ってきたし、これからもそれを受け入れるつもりはなかった。
 簡単な話である。海未は穂乃果に性的魅力を感じないのだ。
 もっとも、それは穂乃果にだけではない。海未は未だに恋愛というものが分からなかったし、誰とも性交渉をしたいとも思えなかった。大学時代に何度か性別を問わず性交渉を試みたが、相手の膨張した性器や膨らんだ胸、艶めかしい白い肌を見ただけで海未はパニックになってしまい、ホテルやその人の部屋から服を抱きかかえて逃げ出してしまうのだ(流石にドアから出る前に最低限の服は身に着けていた)。もっとも、そのうちのひとりは絶対に海未を犯そうと心に決めていたので、海未に逃げられそうになった際には自分の沽券に関わると思い歯を噛み締め力づくで海未を押し倒そうとしたのだが、不運なことに海未は道場の娘で最低限+αくらいの護身術は身につけていたので、靴下だけ履いた全裸の海未に簡単にひっくり返されてしまった。
 背中を痛め、唖然としながら天井を見つめる男子大学生。屹立するビンビンのペニス。


 海未は恋愛相談の相手にことりを選んだ。海外留学中のことりとはどうしても画面通話になってしまうが、こんなことを話せるのは彼女しかいなかった。自らの性体験について話すことは海未にとって大変に勇気のいる行為だったが、穂乃果も海未も下着や生理用品などについての基礎知識の半分はことりから教えてもらっていたし(残り半分は母親からだ)、留学してからもことりは(頼んでもいないのに)向こうでの性体験についてざっくばらんに話してくれたので、次第に海未も性について話題にすることに抵抗をなくしていたのだった。ここまではことりの作戦通りではあったものの、別にこれを機に海未を取って食おうとしているわけではない。ただ海未が恋愛について悩んでいるのをことりはずっと気にしていたので、彼女の相談窓口になってあげたいと思ったまでのことである(もっとも、ことりにとって穂乃果と海未の関係がどのように進展するのかは最大の関心事だったので、おこぼれを狙っていたのは否定できないが)。
 そういうわけで、海未は他愛もない日常について話してから「そういえば!」と両の手を合わし下手くそな話題転換をして(この時ことりは笑いを噛み殺していた)、ぽつりぽつりと性の悩みについて語り始め、徐々に興が乗ってきたのか身振り手振りを交え(ここで何度か海未はテーブルの緑茶を飲んだ)、女から服を抱えて逃げたり勃起した男をひっくり返した話を臨場感たっぷりに話して、「つまり私は他人とエッチなことができないんですっ!」と締め括った。海未は肩で息をしながらことりの反応を待った。ことりは口を開く。
「じゃあ海未ちゃんは、ふだん何でオナニーしてるわけ?」
「お、オナニーって」海未は顔を真っ赤にした。
「何で、っていうのはオカズのことね。私はけっこう雑多に選んでてさあ、最近だとこの動画とか、あとは~……これとか。あっこれもたまに見るかも」
 海未は携帯のトークアプリに次々に送られてくるエロい動画サイトのURLを踏んだ。ありえないくらいのエロい広告がスマホ画面を縦横無尽に飛び交い点滅するなかで再生される動画ではエロい女性が汚い男性に強引に迫られていたり、エロい女性同士が乳繰り合っていた。海未は眉をしかめる。
「こういうの、私はあまり見ないんです」
「じゃあ何をオカズにしているの?」
「……それは」
「それは?」
「笑いませんか?」
「笑わないと思うけど」
 すでにことりは半笑いだったが、それには気付かず海未は深刻そうな顔つきでパソコンのマイクに向かって囁いた。
「わたし、男体化した穂乃果でしかイケないんです」
 ことりは笑うのを忘れて真顔になった。数秒経ってから、え、なんて?と聞き返した。ですから、と海未は声をいっそう潜めて言う。
「わたし、男として生まれた想像上の穂乃果に無理やり襲われるシチュエーションでしか興奮できないんです」
「男の……穂乃果ちゃん?」
「私は穂高と呼んでいます、男なので」海未はきっぱりと言った。「男として生まれた穂高は私と正真正銘、両家公認の許嫁なんです。けれどもある夜、穂高は我慢できずに私に夜這いをしかけてきます。お互いに小さいころからよく見知った家なので、暗がりでも一切迷わずに私の部屋のベッドまで辿り着くことができるんです。私は寝ぼけながら何かがベッドに入ってきたことに気付くのですが、次の瞬間には口にハンカチのようなものを詰め込まれます。現状を把握できずパニックになる私の耳元で、男が囁くのです。大丈夫、安心して、僕だよ……耳に馴染んだその声を聞いて、私の身体をつくっていた緊張が一気に弛緩します。なんだ穂高ですか、暴漢かと思いましたよと言う私の口はハンカチが詰められているので実際はふがふが言っているに過ぎないのですが、その間に穂高は私の寝巻の下からするりと手を突っ込んで、さりげなく私の胸を揉みしだこうと――」
 不意に海未は話を辞めた。
「ねえことり、私は今なんの話をしているんですか?」
「え?」
 途中から聞き流していたので、ことりには海未の質問の意図がうまく掴めなかった。答えられずに黙っていると、海未は真剣な表情でふたたび口を開く。
「ですから、なぜ私はこのような恥ずかしい話をしているのでしょうか?」
 そんなのことりの方が知りたかった。確かにことりは普段のオカズについて尋ねたが、誰もその妄想の詳細を教えろなんて言っていない。自分の大切な幼なじみ(海未)は、もうひとりの大切な幼なじみ(穂乃果)を脳内で性転換させ、犯される妄想をすることで自らを慰めていた――改めて考え直すと、海未の妄想はことりに理解できそうでできないギリギリのラインに乗っかっている。オーケー、とことりは心で呟いた。話し合おう。分からないことは話し合えばいいのだ。
「海未ちゃんは」ことりから切り出す。
「確か、穂乃果ちゃんと付き合うつもりはないんだよね」
「ありません」
 海未はキッパリと言った。「私は穂乃果とエッチなことはしたくないので」
「でも、穂乃果ちゃんのことをオカズにはするんだ」
「穂乃果じゃなくて、穂高です」
 海未はつとめて冷静に言った。ことりはオーケーと繰り返す。留学して以来、ことりは余裕がなくなるとオーケーと言うようになったのだが、海未はたいして気にしていなかった。ことりは両の手でこめかみを押しながら頭のなかを整理し、質問内容を整える。
「つまり海未ちゃんにとって、穂乃果ちゃんと穂高くんは大きく違うんだ」
「全然違います」
「どう違うの?」
「実在するか、しないかです」
 海未が前のめりになって画面に大きく表示される。ことりは唾をのむ。
「たとえば明日、穂乃果が性転換手術で、あるいは魔法で男性になったとします。その容貌は私の妄想のなかの穂高と完全に一致していて、そのうえ穂高に改名すらしていて、妄想通りのシチュエーションで私の部屋に夜這いしてきて、ベッドのなかで私の口にハンカチを突っ込んでくれる――そういうことであれば、私はきっと穂乃果とエッチができるのだと思います」
「ですが、現実はそうではありません。この世界に魔法はありませんし、性転換手術をしたところで穂乃果は穂高になりません。仮になれるとしても、私は全力でそれを阻止します。私とエッチするためだけに性転換するなんてあまりにバカげている。そう思いませんか?」
 そう思うとことりは言った。でも、それがバカげているかどうかを決めるのは穂乃果ちゃんだよ、とも言った。
「その通りです」海未は力なく頷く。「そしてこれは幼なじみとしての勘ですが、おそらく彼女は、その選択肢をバカげているとは思わないのです」
「……だろうねえ」
「結局のところ、あの子は好きな人と一緒にどこまでも気持ちよくなりたいのです。何よりも刺激を求めているんですよ。今の彼女にもっとも素晴らしい刺激を与えてくれるのがエッチなんです」
「穂乃果ちゃん、性欲強いもんねえ」
「強いなんてもんじゃないですよ!」海未は半ば泣きそうな声で叫ぶ。「成人してからの穂乃果の思考は、六割が私との破廉恥なことで占められていて、残りの四割はそれをどうやって実現するかに占められているんですっ!」
「それは流石に言い過ぎだよ」
 海未が俯いたまま否定しなかったので、ことりは察した。海未は嘘をつかない人間である。どうやらことりの知らないところで、海未は穂乃果に散々言い寄られているらしい。
「いまも昔も、穂乃果は恋する乙女ですよ」
 海未は面白くなさそうに呟いた。
「高校生のときにはスクールアイドルに恋をして、大学ではカレッジアイドルとかいう新しい概念まで作り上げて各地で歌って回って楽しそうにしていましたけれど、歌への恋がそれなりに落ち着いてからは手もち無沙汰でぶらぶらしていて、結局あの子が辿り着いたのが『恋愛への恋』だったというだけの話です。そして彼女は、恋愛の最終到達点こそが性行為だと信じ込んでいる。ふざけたことを言っているように聞こえるかもしれませんが、穂乃果は真剣ですよ。彼女にとっては、今はまさに大恋愛時代なんです」
「海未ちゃんとのね」
 海未は深いため息を吐いた。ことりはさりげなく聞いてみる。
「穂乃果ちゃんと一度だけでもしてあげるって選択肢は、無いのかな」
 海未が冷たい視線を向けてきたのでことりは身構えたが、その瞳に込められた感情は怒りというより諦念だった。自らの黒髪を触りながら海未は言う。
「もちろん、できることならしてあげたいですよ」
 海未はことりを見る。
「でも、やっぱり穂乃果とは無理なんです。あの子の裸が視界に入ると、欲情するより先に何か服を着せてあげたいと思うんです。分かりますか? 私にとって穂乃果は、家族よりも近い距離にいるんです。そっと手を伸ばせば、人差し指があの子の小指に触れるんです。そうして手をつないで、笑ってくれるあの子の笑顔が好きなんです。あの笑顔をずっと守りたいんですよ」
「私は」
「別に、性的快感に打ち震える穂乃果なんて見たくないんです、恐らくそれは――」
 海未はしばらく言葉を探し、諦めたように呟いた。
「私ではない、他の誰かの役割です。私ではない、他の誰かの」

 

「でも穂乃果ちゃんは、海未ちゃんを求めているんだよ?」

 

 海未は画面通話のウィンドウを閉じた。数分ほど雑多なウィンドウが散らばったノートパソコンの液晶を見つめる。何も考えてはいなかった。スマホの画面に通知ポップが表示される。ことりからだった。
『ごめんね、言い過ぎちゃった』
『でもこのままじゃ、穂乃果ちゃんも海未ちゃんも』
 海未はスマホの画面を消し、部屋の電気も消してベッドのなかに潜り込んだ。枕の下に隠していた清潔なタオルを自分の股間の下に敷きながら、穂高のことを考える。穂高は海未の白い身体に熱視線を浴びせる。海未は下着の上から股間を指でなぞる。熱い。海未は巨大な男根の付いた穂高の目を怖いとは思わなかった。穂高の瞳にはそこら辺の男にはないあたたかな陽だまりが映りこんでいて、その白い領域は決して海未を痛くしないと約束する説得力で満ちていた。海未は穂高を信頼している。穂高も海未を信頼している。お揃いだった。海未は頭を浮かせてさらに枕の下から青いハンカチを取り出し、ぐしゃぐしゃに丸めて自分の口に突っ込んだ。ベッドの下に隠してあるバイブを取り出すのは、穂高のかたちが海未を包んでからだと決めていた。けれどもその日の穂高は全然海未に手を出さなくて、海未の隣で横になってずっと優しい目で海未の自慰行為を見つめていたかと思うと、そのままオナニーの妖精のように立ち消えてしまった。海未は宙ぶらりんになった性欲の渦のなかでパニックになる。穂高は性欲のわからない海未が自慰行為のために生み出した性器の発明だった。彼が去ってしまった以上、海未がオーガニズムに達する手段は失われてしまう。穂高は旅に出たのかもしれない。その不在は今夜限りかもしれないし、永久かもしれなかった。海未は震える。お願いだから帰ってきて、と中途半端に濡れた下半身のままベッドのなかでぼろぼろ泣いてしまう。海未は自分が泣いている理由が正確には分からなかった。穂高の不在によるものか、永遠に達せない恐怖から来るものか。恐らくそのどちらでもないと海未は思う。助けて、穂高。どこにいるの、穂高。迎えに来てよ、穂
乃果の腕が海未を抱き寄せる。海未は言葉も出なかった。自分の背後に穂乃果がいると思った。その後にこれは誰だろうと思い、なんだか思考の順序がおかしくなっていることに気付く。間違いない、これは穂乃果だ。でも、なぜ分かるのだろうと海未は思う。息遣いか、腕の長さか、身体の温もりか、胸の膨らみか、あるいはその全てか。性行為をしたわけでもないのに互いに互いの身体のかたちを知り尽くしている海未と穂乃果は、なんだかあまりにあべこべで、自分の居場所すら把握できない。きっと、また家で嫌なことがあって私のベッドに潜り込みに来たのだと思う。成人してからも稀に穂乃果は家出をし、その潜伏先に園田家を選んだ。勝手がわかるし、なにより好きな人がいつでもそこにいるからだった。

「あっ、えーと」穂乃果が言う。「こんばんは」
「こんばんは」
「おじゃましてます」
「されてます」
「ねえ、あまり嬉しくない質問をしてもいーい?」
「どうぞ」
「オナニーしてた?」
 海未は何も言わなかった。
「手伝おっか?」
 海未は何も言わなかった。
「穂乃果、女の子の気持ちいいところは結構わかる自信あるよ。同じ女だし」
 海未は何も言わなかった。
 穂乃果も何も言わなかった。
「私、そろそろお見合いをしなければいけないんです」
「知ってるよ」
「相手はもちろん男性です」
「それも知ってる」
 穂乃果は海未を抱きしめた。
「でも海未ちゃん怖がりだしさ、お見合いがうまく行ってもエッチできないんじゃないの?」
「そんなこと、ないですよ」
「ふうん、そっか」
「そうですよ」
 沈黙。
 ねえ、と穂乃果は言った。
「予行練習しようよ」

 

 結局最後まで、何の予行練習なのかは聞けなかった。
 気が付けば海未は穂乃果と長い長いキスをしていた。海未は目を閉じる。成人してから二回目のキスであり、兼ねてよりずっと嫌がっていた深い深い口づけだった。
 海未は穂乃果とキスをしながら、これまでに考えていたことを考えていた。なにかとても複雑で、重要なことだ。けれども、何が複雑で、どう重要なのかは思い出せなかった。海未はすべてを諦める。嫌悪感を無理やり手放して、仕方なく穂乃果の身体に触れた。いま私は悪いことをしているのだと思った。海未は悲しくなる。 けれどもこの不誠実な行為で目の前の大切な存在が笑うのであれば、もしかすると海未の方向性は間違っていないのかもしれない。あとから追いかけようと思った。言い訳は海未の得意分野だったから。
 海未が触れると、穂乃果は喜んだ。ふんふん子供のように息を荒くして、今度はこっち舐めて、次はこっちと指示を出した。いろんなところを舐められ、摘まれ、気持ち良くなった穂乃果は満足して、海未の身体に手を伸ばし、何度も何度も海未の顔色を伺いながら海未が求めている快感を引き出そうとしていた。けれども海未はどうしても感じることができなくて、なんとか頑張ってその気持ちに答えようとするうちに海未の頭のなかには穂高が現れていた。帰ってきた、という感慨はあまりなかった。これが本物の穂高である確信は持てなかったし、確かめる手段もなかったからだ。オナニーの妖精、穂高。海未はずっと穂高のことが好きで、穂高も海未のことが好きだった。
 そのはずだった。
 けれどもこうして本物の穂乃果の瞳を眺めていると、穂高の目とは幾分か違っていることに気が付く。別人なのだ。穂乃果と穂高は別人で、やっぱり海未は穂乃果に性的魅力を感じることができなかった。それは穂乃果の性別がなんであれ関係ないのだと思う。仮に穂乃果が男として生まれても、きっと穂高にはならなかった。穂高は偶像だ。誰も穂高にはなれないのだ。
 穂乃果の頬の産毛に触れる。穂乃果が目を細めたので、この子を大切にしようと海未は思った。その感情はふたりの部屋、祖母の足音が遠くに溶けこんで、幼い穂乃果が押し入れからそっと顔を出すあの瞬間のものと似ていた。
「ごめんなさい、やっぱり私、穂乃果をエッチな目では見れない」
 はじめ言われたことが分からなくて、穂乃果は戸惑った。戸惑いながらも海未の性器に触れようとして、海未に手首を強く握られた。穂乃果の視線が泳ぎながらも海未のものと交わる。
「応援するって言ったのに」
「ごめんなさい」
「いつも穂乃果の味方だって言ったのに」
「ごめんなさい」
「嘘をついたの?」
「そうですが――そうではありません」海未は続ける。
「私はあなたの夢を応援することが好きです。あなたの夢に巻き込まれるのも大好きです。けれど、私にもどうしても出来ないことがあったんですよ。そのことに私は気が付いていなかった。ただそれだけのことなんです」
「努力でどうにかなるものじゃないんですよ。むしろ、これは努力でどうにかしてはいけない類のものなんです。ただじっと黙って受け入れるしかないものが、世の中にはあるんです」
 沈黙を破ったのは穂乃果の鼻をすする音だった。
「わかんない」
「海未ちゃんが何言ってるのかわかんない」
 穂乃果はぐずぐず泣いていた。
「わかんないよぉ」
 海未も泣きたくなった。でも、泣けなかった。この場において悪者なのは海未だけだ。穂乃果との約束を破ったと言われても仕方がなかったし、事実その通りだったから。海未はこの日、はじめて穂乃果の敵になった。それは生まれて初めてのことで、海未にとっても不思議な感覚だった。なぜ自分は今ここにいるのか、説明をすれば長くなる。ふたりはなんらかの共同体だったはずだし、今もそのつもりだ。海未は穂乃果を信じている。これくらいのことで私たちは終わりにはならない。そうでしょう、穂乃果。海未は唇を小さく動かす。

 泣いている穂乃果を眺めていると、海未は数年前の祖母の葬儀を思い出した。前日までピンピンしていたのに、とつぜん脳卒中でぽっくり逝ってしまった。享年七十三歳。海未も含めた園田家は誰も祖母の死を現実として実感することが出来ずに、大人たちは粛々と手続きを済ませていった。
 葬儀の当日、一番泣いていたのは穂乃果だった。出棺に向けて花束や贈り物を棺桶に入れる時、穂乃果は園田家の人間の誰よりも大粒の涙を溢していた。彼女は特別な言葉を発したわけでもなければ、特別なものを棺桶に入れたわけでも無かった。けれども、彼女の涙が伝染して周囲の人間は静かに泣いた。海未も泣いた。祖母の死から一度も泣けていなかった海未は、穂乃果がここで泣いてくれたことに少しだけ感謝をした。
 祖母の葬式を終えて数日が過ぎた頃、海未の部屋でふたりが過ごしていると、誰かの静かな足音が聞こえた。穂乃果は少しだけ顔を上げて呟く。
「もう海未ちゃんにも分かるようになっちゃったね、足音」

 

 穂乃果が何を言おうとしていたのか、今なら分かるかもしれなかった。
 人は時間とともに大切なものを失い、代わりとなるものを手に入れていく。その前後の価値を確かめるように、人は失ったものの感触と、新しく手に入れたものの手触りを比べ続けていくのだ。海未の手のひらでは祖母の死が転がされ、穂乃果の手のひらではセックスが転がされている。どちらもあまり良い感触とは言えないけれど、そのうち角がとれて手に馴染み、他人には説明しがたいものになっていく。
 海未は穂乃果を信じている。穂乃果も海未のことを信じている。だからふたりは、たまに手の中にあるそれらを交換するのだ。それは本来推奨されないやり方なのだけれど、ふたりの場合は違っていた。他人には説明しがたい何かを、自分たちだけには説明できるように交換するのだ。ふたつの手のひらで転がされたそれらは、自然とかたちが似通ってくる。証にしようと海未は思った。ふたつの手触りを、あたらしい共同体の証にするのだ。
 海未はすすり泣く穂乃果の手のひらに、自らの手を重ねた。ふたつの手のひらに包まれた空間は次第に温まり、穂乃果の指に海未の指が一本ずつ絡んでいく。
 見つめ合う瞳。

 

終『セックス・イン・ザ・ハンド』

人は10分で何が書けるのか

特に書くことはないのだけれど、最近あまりブログを更新していないのと、そういえば人は制限時間を設けられたときに何を書こうとするのだろうと思いこの記事を書いています。もうすでに1分経ちつつある。タイピングミスが目立つせいで、これがちょっとは改善されるだけで全然スピードが変わりそうです。

無いことを話します。

この前、道端で倒れている女性がいました。見るとぜえぜえ言っていて、かなりしんどそうです。大丈夫ですか、と上から声をかけると「大丈夫なように見えますか」と質問に質問で返されたので、こいつ態度悪いなと思いましたが、女性の言うことも一理あって、流石に健康な人間には道路に寝そべってぜえぜえやるよりも楽しいことがいくらでもあるので、まあやっぱりこれは異常事態だろうと思って救急車を呼ぼうとしたのですが、私にとっては他人との通話自体あまりないイベントだったので、というより私がこの携帯に買い替えて本当の意味で電話を使うことが初めてですらあったので緊張で指が震え、どうしても119番ができません。私はあろうことか間違えて元カノの連絡先を押してしまいました。

プルルルル。

慌てて切ろうとしたのに、一瞬で通話状態になりました。私はもうどうしたらいいのかわからなくて、携帯を倒れている女性に渡しました。

「出てください!」

「消防隊の人ですか?」女性は汗を流しながら顔を上げます。

「多分そうです」

「もしもし」

『なに?』

「え?」

『なんか用事?』

「あの、救急車」

『てかあんた誰、あたらしい女?』

「病人にあたらしいとかあるんですか」汗をだらだら流して女性が私に聞いてきたので、「まあ最近はコロナとかなんとかありますからね」と言ってお茶を濁していたのですが、ここで10分が経過したので終わります。

 

【結論】

10分だと自分は嘘をつくことがわかったし、嘘をつくにしてもまともな話にはならない。

タムラコータロー『ジョゼと虎と魚たち』観た!

タムラコータロー『ジョゼと虎と魚たち』(2020)

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』公式サイト

【総合評価】5.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(5<x≦6)

時間をロスしたと感じる作品(x≦5)


【世界構築】1点 (2点)

脚が不自由なキャラクターの世界に触れることができてよかったが、「足が不自由ならモチーフとして人魚姫を当ててやれ」、「一方でヒロインの羨望の的となるダイビングの人間を主軸に添えてやれ」という思想はあまり捻りがないように感じた(王道といえれば王道なので、まあ悪いことではない)。また、背景が非常にきれいであり、新海誠よりも効率的かつ美しく世界を描写できている点でかなり好印象をもったが、時々必要もないし明らかに効果が弱いのにカメラをぐるぐるさせるところで首をかしげてしまった(これは素直によろしくないと思う)。要するにプラマイゼロなイメージ。

 

【可読性】1点 (1点)

飽きずに見ることができた。


【構成】1点 (2点)

構成が練られていたかと言うと微妙。ジョゼと恒夫のバックボーンが入るわけでもない。ふたりが本当に求めていることについて(恒夫はなぜ海を潜るのか、ジョゼはなぜ海を描いているのか)、あるいは絶対に相容れない対立構造(本作では健常者と障碍者が該当する)について、またふたりの相互理解のキッカケとなった海は作品内でどういう存在なのかについて、もう少し考えた方がいいような気がする。せっかくの題材がもったいない。

 

【台詞】1点 (2点)

特に響いたものは無い。

 

【主題】1点 (2点)

タイトルの虎と魚たちは、ジョゼにとっての敵と憧れ、つまりはジョゼをとりまく環境について表しているので、必然的に作品もジョゼの環境を描くことになる……と思っていたら、途中から恒夫が交通事故に遭い、感動リハビリストーリーになるので何がしたいのかよくわからなかった。この事故を通して、恒夫がジョゼと同じ目線になる、ふたりで車いすに乗って病院内を競争するとかならめちゃくちゃ面白いと思うのだが、特にそういう目線のすり合わせもない。夢破れてささくれ気味になった恒夫は、サクラのような歓声をあげるこどもたちと一緒にジョゼの紙芝居を見て感動、無事に恒夫は自分の脚で立ち上がることができるのだった――というストーリーに、一切なんのメッセージも感じられなかった。絶望しても立ち上がれという話はジョゼが祖母の死によって達成できるテーマだし、もし仮にジョゼばっかりひどい目にあって可哀想!だという意味で順風満帆な恒夫を交通事故に遭わせたのだとしたら、あまりにシナリオ構築が雑すぎるし、ジョゼの方こそかわいそうである(自分が障碍者であるというだけで、周りの人が傷つけられていくのだから)。本作はあまりタイトルの掘り下げがなされなかったが、自分が考えるなかでは、ジョゼにとっての虎とは「障碍者は健常者が営む社会の円滑な運営を邪魔をするお荷物だと見做す視線」であり、魚たちとは「健常者になった末に目にすることができる景色」である。ならば、ジョゼが達成しなければならないことは、王道路線なら「自分はお荷物ではない」と健常者に指し示すことや、「憧れの景色」を目の当たりにすることが該当する。あるいは最近のトレンドとして、そもそもその手の問題には乗らずに「社会において誰がお荷物か」という議論から降りたり、「健常者でも見ることができない景色を見る」など、いくらでも達成方法はある。それなのに、いつしか物語は恒夫の感動リハビリストーリー(ジョゼはずっと足が動かないのにお気楽なものである)によっていい感じに回収され、テーマは「大好きな人からもらった言葉を糧に頑張ろう!」的な恋愛路線に行きついて二人は幸せなキスをして終了する。

まあ別にそれでもいいのだけれど、ジョゼの問題はどうなったんだよと思わずにはいられない。自立の鍵となる彼女の画はどのような広がりを持つのか、彼女が終盤でようやく手に入れた「物語る能力」は、彼女とふたりの関係をどのように肉付けていくのかなどが全然明らかになっていない。もったいないと思う。

 

【キャラ】0.5点 (1点) 

「あたい」が一人称でもいいんだけれどさあ。

 

加点要素

【百合/関係性】0点 (2点)

該当描写なし

 

【総括】

いろいろ散漫でもったいないなと思った。書きたいことはもうすでに上に書いているので、特に書くことはない。