新薬史観

地雷カプお断り

謎の記憶について

今回は(も?)面白みのないただの日記なんですけれど、私には前後の文脈を欠いた謎の記憶があります。

この記憶について、私は度々思い返しては「あれは一体何だったのだろう」と首を傾げていたのですが、ふと「私が死んだらこの謎の記憶も消えてしまうのか……」と残念に思ってしまい、何となくこのブログに書き残しておきたくなりました。

その前に、私の弟の話をさせてください。

私の弟は生来より舌が短く、「だぢづでど」が「らりるれろ」になってしまったり、吃音があったせいで、話すたびに周囲から揶揄われていました。あまりにも揶揄われるものですから、母親は頭を悩ませた末に、弟を「言葉の教室」なるものに通わせていました。多くの人には聞き馴染みのない教室だと思いますが、ピアノ教室や算盤教室と似たようなもので、うまく日本語を喋るためのレッスンをする所だと考えてもらって構いません。

ともかくその教室は、私たちの通学区域のちょうど隣にあるA小学校の構内にありました。私も一度だけ、母と一緒に弟を迎えに行ったことがあるのですが、その教室の真ん中には大きなトランポリンが備え付けられていて、「何だこの教室は……」と驚愕したのを覚えています。

今思えば放課後児童のための教室だったのでしょうが、真面目だった私は教室にトランポリンが置かれている事実にショックを受けて、「弟は言葉のレッスンなんかせずに、教室の先生とグルになってトランポリンで遊んでいるに違いない!」と思い込み、弟にやや冷たい視線を向けていました。

閑話休題

そのような思い出があるA小学校なのですが、もう一つ、私にはA小学校に纏わる記憶があります。それが私にとっての「謎の記憶」なのです。

その記憶がいつのものなのかは判然としないのですが、恐らく私が小学校高学年、あるいは中学生の時のものです。少なくとも、その時には弟は「言葉の教室」を卒業して「だ行」が言えるようになっていましたし、あまり吃らなくなっていました。

その記憶は、私がある張り紙を見つけるところから始まります。小学校か、あるいは中学校の廊下の壁に貼り付けられていたその紙には、とある対面形式の試験を受験してくれれば、謝礼を支払いますよ、というものでした。

今思えばめちゃくちゃ怪しいのですが、私は「謝礼」と書かれた項目を食いつくように眺めていました。その金額までは覚えていませんが、確か1000円か5000円か……とにかく当時の私にとってはかなり嬉しい額でした。私はお金に困っていたので、すぐに申し込み、試験会場として指定された場所に赴きます。

それがA小学校でした。

私が案内されたのは、弟がトランポリンで跳ねていた教室ではなく、ごく普通の教室でした。机と椅子が教室の前方にぎっちりと固められていて、空いたスペースに椅子がふたつ並んでおり、その片方に初老の男性が座っていました。

「よく来たね」と男性は言いました。

私が頭を下げると、男性はニッコリ笑って「〇〇君だよね。君のことはよく知っているよ」と言いました。何故か尋ねると、男性は「私は君が転校する前に通っていた小学校の校長先生だ」と言いました。確かに私は数年前に小学校を転校していますが、転校する前の校長先生の顔なんてあんまり覚えていません。

とはいえ、ここで「私は貴方を知らない」なんて言ってもしょうがないので、当時の私はひとまず彼の発言を認めました。つまり、目の前の男性は私にとっての「元校長」なのです。私は、なぜ校長先生がこんな場所で試験監督をしているのかを尋ねましたが、元校長は「色々あってね」としか答えてくれませんでした。

「試験を始めよう」

元校長は紙芝居のようなものを取り出し、試験について説明します、と言いました。

「私が言う通りに答えてください」

それが説明の全てでした。私が何かを言う前に、元校長が紙芝居のように紙をめくると、そこには頭がどうかしたとしか思えない、かわいいクトゥルフ神話に出てきそうな生き物のイラストが複数描かれていました。どれもこれも、魚と犬とカラフルな折り紙を足して3で割ったような生き物です。

なんだこれは?

「ヌタを指差してください」

「え?」

「ヌタを指差してください」

「ヌタってなんですか?」

元校長はにっこりと笑いました。

「ヌタはヌタです。ヌタを指差してください」

私は訳がわからなくなりましたが、恐る恐る魚のような何かを指さしました。元校長は満足そうに頷き、謎の生物が描かれた紙をめくりました。そうして出てきたのは、また先ほどと同じような、存在自体が発狂寸前の生き物たちでした。

「メテを指差してください」

これの繰り返しでした。

半時間くらい経ったでしょうか。

気がつけば私は封筒に入った現金を握り締め、A小学校の外にいました。

これが私の謎の記憶です。

私がどういう人間かを知っている人は「どうせこれも作り話でしょ」と鼻で笑うと思うのですが、これに関しては本当に私の身に起きたことです。ただ、やっていることとか元校長の存在とかがあまりにも村上春樹すぎるので、なんか普通に妄想とか夢なのかもしれません。

しかしながら、部活の先輩とも上記のヤバい試験についての話をした記憶がありますし、確かに私の試験監督は、自身のことを「君の校長」だと名乗った覚えがあるのです。ヌタも指差した記憶がありますが、よく分かりません。分からないので、ずっと覚えているのです。

 

【ネタバレ感想】ストレンジ・フィクションズ「留年百合アンソロジー ダブリナーズ」

本記事は、拙作も収録されているストレンジ・フィクションズ「留年百合アンソロジー ダブリナーズ」の感想記事です。

booth.pm

 

ネタバレの可能性があるので、本記事はアンソロ読了後に読むことをオススメします。アンソロを持っていない方は今すぐ買おう!と言いたいところなのですが、有り難いことに手持ち分はすべて完売したらしく、在庫はゼロです。すみません……。どうしても読みたいという方は(私と交流がある人に限り)、直接お貸しすることも可能ですのでお申し付け下さい。借りたらちゃんと返してね。

それでは収録作の感想を投げていきます。なお、並びは掲載順です。

笹幡みなみ『全然そうは見えません』

一読して小説の技術がめちゃくちゃ高く、商業レベルじゃんこれと思いました。タイトルのつけ方がとても好みで、「全然そうは見えない」という言葉が留年にも百合にも効いているんですよね。こういうセンスが私にも欲しい、切実に……。

要素の選択もうまく、留年と性的指向の「他人にうまく言えない(=誤魔化しがち)」という共通項を拾い上げ、失敗を前提とした「誤魔化し」のプロともいえるサーカス団の演技についても取り入れているのが印象的でした。留年したことで炎の取り扱いになれているさくらと、夢のなかではまだ炎を扱えない渚。しかし二人は同じサーカス団にいて、炎を扱えないなりに観客を「誤魔化す」術を披露した彼女の手の内を、さくらはすっかり理解している。その「理解」されている状況こそが渚の求めている「炎」かもしれず、そうでないかもしれず、いずれにせよ間違いなく二人だけの関係がここにはあるんですよね。留年百合というジャンルにおける優等生のような作品だと思います。とても良かったです。

 

紙月真魚『海へ棄てに』

文章のリズムがとても気持ちよく、軽口を叩きつつも先輩である藤深春を大切に想い続ける女、菜摘行生の魅力に溢れた一人称視点の作品でした。

紙月さんの作品は紹介文からして良いんですよね。以下は紹介文の引用なのですが、

古馴染みの海まで歩いて、要らないものでも棄てにゆこうよ。空き瓶、道徳、混みいる感情。うまく投げれば跳ねるかな。※単位と未来は自棄で投げない。ゆく道すがら歌でも歌いつ:ノキ・ノキ・ノキノン・ホニャララ・ドア……。駅から川沿い、葉桜の道をのんびりてくてく。道草・寄り道おおいに歓迎。どうせ最後の自由時間、エンジョイしなけりゃ意味ないね。──そういや先輩、どして休んでたんですか?

このテンションとリズムが作品全体に染み渡っていて素晴らしいんですよね。もちろんこれだけが作品の魅力ではなくて、やはり「寒川冬芽」というヤバイ画家の女が強烈な存在感を放っていて、彼女の描く絵がとても魅力的に思えるし、同時に恐ろしくも思えてくる。その冬芽が、直接ではなく間接的に、「月踏」という絵画を通して菜摘が好きな藤先輩を強力な引力で連れ去ろうとしている様子が、百合的にめちゃくちゃ美味しかったです。また、終盤で菜摘が藤先輩に「海に棄ててないでちゃんと私に言ってよ。聞くよ。いくらでも。」と訴えるシーンはエモくて泣きそうになりましたし、最後の幻想的な海と月の描写も圧巻でした。楽しいのにエモも扱える文章、あまりに強すぎる……。

ちなみに、本作と似た構図の百合作品として、零合02に収録されている伊島糸雨「霧曳く繭のパスティーシュ」を連想しました。この作品も百合的にかなり美味しくて、やっぱ自分の好きな女が得たいの知れない女に惹かれているとすごく興奮するんですよね。自分もこういう百合を書きたいな。

話が逸れてしまいましたが、とにかく百合的にも美味しいし文章のリズムも楽しいし、私としては大満足の作品でした。オススメです。


鷲羽巧『still』

衝撃を受けました。本作は左側のページに街などのスケッチ、その右側にスケッチと対応するかたちで短い文章が添えられているのですが、絵が上手いのはもちろん、短い文章で的確に感情を揺さぶる術を心得ていてすごかったです。今回の留年百合アンソロでは、その場に留まる人が再び動き出すのを待ったり、誰かに手を差し伸べてもらう作品が多い印象でしたが、本作は留まり続けて離れてしまった人に向けられた作品ということで、そういうテーマの違いが新鮮な読み味になったのかもしれません。

本作はカテゴライズするならすれ違い百合だとか離別百合になるわけですが、その二人の考え方の違いがとても良くて、日記を勧める「あなた」とスケッチをする「わたし」に始まる選択と考え方のズレが、苦しくて良かったです。「あなた」は苦労や失敗といった時間を無駄にする行為が心底苦手なわけですが、「わたし」はその考えには乗り切れず、失敗を失敗と受け入れつつも、そうでなくさせる術をスケッチを通して身につけている。「日記を書いて時間を積み重ねることで、時間の進みを感じることができるかもしれない」という「あなた」の提案は実際のところ的外れで、私たちが何をしようが留まっている瞬間など存在しなくて、白紙に線を引いていくように、刻一刻と選択の瞬間が私たちに訪れている――というふうに私は理解しました。こういうかたちでも、留年という事象をうまく自分に呑み込ませる作品が描けるんだな、と新鮮に感じました。行き止まりの街並みや、ラストの螺旋階段のスケッチがとても美しく、エモの面でも非常に優れているなと感じました。とても良かったです。

 

茎ひとみ『切断された言葉』

個人的にアンソロのなかでもイチオシの百合作品です。私が好きな百合は感情がイカれている作品なのですが、本作は感情がイカれつつも作品としてしっかりとした強度をもっており、めちゃくちゃすごい小説じゃん……となりました。ジャンルとしては恐らく百合ホラーになるわけですが、最後のシーンが激ヤバであまりに恐ろしく、読んでいて「うひょ~!」と声が出ました。というか本当に小説がうまくて、主人公の乃梨子が幼い頃からいつも一緒にいて髪型も服装もお揃いで、双子のような関係になっていた(この設定の時点でやばい)塔子の日記を覗くと、

わたしの真似ばかりする乃梨子を殺したくなることがある

という一行が書かれている時点で、ヤバすぎるわけです。そのうえ、乃梨子と塔子に近づいてきて仲良くなろうとしてきた無邪気な女を、幼いころに編み出した二人にしか分からない秘密のジェスチャー(この設定もやばい)で、

【彼女】【燃やしちゃおう】

というやりとりをする始末なので、もう本当にこの作品はどこまで行ってしまうんだよとドキドキするわけですが、先述の通り、読者の期待を裏切らないエグい終わりを迎えるわけで、私はすっかりこの作品にやられてしまいました。一番感動したのは、作品の文字数の少なさです。このページ数でこれだけ読者の感情を揺さぶる物語が書けるのか!と衝撃でした。ホラー百合の傑作だと思います。もっと百合のオタクは茎ひとみに注目するべき!

 

小野繙『ウニは育つのに五年かかる』

拙作です。紙の本で手に取って、ようやくアンソロとしての並び順を理解するわけですが、『切断された言葉』という傑作ホラー百合の後を担うのは流石に荷が重すぎる……と憂鬱になりました。実際、明らかに文章の質もテンポも違うんですよね。そのうえ、これは完全にチェックが漏れた私の責任なのですが、実は拙作だけ、句読点が半角になっておりまして……これはわざとではなくミスです。word入稿がいけなかった。読めないことはないですし、慣れればまあ読めるのですが、初見は文字が詰まっていて読みづらいと思います。いやホントすみません……。

気を取り直して作品の話に戻るのですが、これまでの収録作を読んで改めて拙作を読むと、なんか明らかに小説のかたちが違うんですよね。前の人たちの文章があまりに巧すぎるから(?)なのか、他人の小説を読んでようやく自分のキモさを知るというか、「なんで自分の作品ってこういう文章なんだろう?」と改めて思いました。作り方が違うのか? 良い意味でも悪い意味でも、なんで自分からこんな文章が出力されるのか訳が分からない。そもそもこれって小説として成立しているんですか? 何なんですか、これ? 誰か私に教えて下さい。

それはそれとして、内容について簡単な裏話をすると、まず始めに大学生にもなって「なのです」口調のヤバイ女が現実にいたら嫌だよな~と思っていて、そいつがめちゃくちゃ賢かったらマジで腹が立つし、そいつから好かれるのもめちゃくちゃ嫌だよなと思ったので、そこから夢野まほろと杉野美里というキャラを設定しました。あとは全部成り行きです。とはいえ「ストフィクの人ってなんかミステリ好きだよな……ミステリ書かないとキレられたりするのかな……」と勝手に思い込んでいた節があり、微量のミステリ?成分を含ませました。慣れないことをしたので、時系列がちょっとおかしいし終盤はキャラがめちゃくちゃ喋り倒しているので、いま読み返すと恥ずかしいです。また、個人的に百合を書くときはハッピーエンドを心がけていて、今回の物語では特に「留年」が後ろ向きに捉えられることが無いようにしようという思いもあり、夢野と杉野、両方の願いが最大限叶う終わりになるようにしてみました。面白くなかったらすみません。面白く読めたなら、それは貴方の日頃の行いが良いからです。

ありがとうございました。

 

murashit『不可侵条約』

めちゃくちゃ変なことをやっている人がいる!とビビりました。

本作を簡単に紹介すると、たまたま居酒屋で居合わせた女二人の喧嘩に「わたし」が耳をそばだてる場面の舞台脚本だと思うのですが、やや不条理な点があり、この説明で合っているのかは分かりません。というのも、話の途中で客席から上がって再び客席へと戻る召使の異質さや、舞台の天気予報を真に受けて自らの傘を確認する観客、また舞台に登壇していたはずの二人が最後に客席へと降りて会場そのものから出て行ってしまう描写から、この物語が展開されている場(第四の壁によって仕切られている空間)が、非常に不安定であるように感じたからです。

ただ確かなことは、「わたし」は背後のテーブル席に座っている、女二人のことを見ることができない、という点です。それはタイトルが示すように、決して犯してはならない条約のようなもので、二人だけで舞台を降りていく結論も助けて、問題意識としては「少女革命ウテナ」とか『wiz』収録の深緑野分「運命」だとか、『彼女』収録の青崎有吾「恋澤姉妹」に近しいものを感じました。もっとも、本作は語り手である「わたし」が舞台に登壇しながらも、会話する女二人を「見ることすらできない」という点で観客にも劣る立場を演じ続けなければならず、なおかつ女二人の台詞や、この物語の行く先を把握していない(脚本が事前に渡されていない)という点で、「わたし」の百合への到達できなさという観点においては、上記の作品よりも一歩先に進んだものであるように感じました。

また、特筆すべきはその形式だけでなく、女二人の会話にもあるように感じます。会話が進むにつれ、次第に女の片割れが留年したことが明らかになるわけですが、その留年によって二人のパワーバランスが逆転し、片割れがひどく不満を抱いているからこそ、別れ話のような喧嘩になっているわけです。もっとも、この喧嘩は(端から見ている分には)何も解決せず、二人だけの間だけで(何故か)納得するかたちで終わりを迎えるわけですが、そのような不条理さは舞台設定にも通じるところがあり、個人的には「結局、他人って自分の手の届かないところにいるんだよな」という感想を抱きました。他人って訳が分からないんですよね。中身が見えているようで全然見えていない。そういうことを感じる作品でした。面白かったです!

 

孔田多紀『パンケーキの重ね方。』

なんかやけに続編っぽいな(下敷きにしている作品がありそうだな)と思ったら、案の定ストフィクの「夜ふかし百合アンソロ」に収録された作品の続編だとあとがきで書いていて笑いました。自由すぎる。

私は(お恥ずかしながら)まだ夜ふかし百合アンソロを読めていないので、今作で初めてこの作品世界に触れることになったわけですが、やっぱバンド百合って性が乱れているなと思いました。メインストーリーで描かれる、四人組のバンドでそのメンバーの二人が付き合って、ちょっと思うことがあったので破局するしバンドも脱退します、あとは宜しくって残された方にとってはめちゃくちゃ最悪な話だと思うのですが、サイドストーリーで描かれる留年した名探偵の話が良い感じにエモくてうまく調和できているのがすごいなと思いました。他にも、二十何歳(あるいはそれ以上?)で高校の制服を着る名探偵はヤバすぎるし、「女女感情の職人」と呼ばれる作家でありながら女子校に勤務している先生もヤバいし、何より推理パートでASMRが流れたりと、結構めちゃくちゃなことをやっているのですが、それでも最後に「残された者」として感情を爆発させる響子の姿が印象的でエモかったので良かったです。

 

織戸久貴『春にはぐれる』

とても良かったです。ドイツ語の講義で知り合った先輩が留年しそうだから心配になって押しかけて、でも連絡先は交換していないから、私たちの関係はちょっぴり複雑で――みたいなエモい百合展開になるのかと思えば、「天気の子」の雪バージョンというか、ずっと雪が降り止まない世界になってしまった、というのがめちゃくちゃ良かったです(ハローサマーグッバイの最後もこんな感じだったっけ?)。雪が降りまくると、コロナが流行ったときのように外出が難しくなるし、人々はリモートで何かをするようになる。人と会うためには道を空けるために雪をかく必要があって、それによって生まれる人間関係があって……今までありそうでなかった作品世界で新鮮な気持ちで読むことができました。また、千咲が精神的に病んでダメになっていく様子はとても生々しく、一面の銀世界のなかで生と死の境界がひどく曖昧になっていくのがめちゃくちゃキレイで悲しかったです。ただ、そんな千咲の前にヒーローのように現れて手を差し伸べる海莉がめちゃくちゃ良くて、これがまた百合的にかなり美味しいんですよね。やっぱり先輩を慕ってくれる後輩ちゃんてバチクソに可愛いし、そんな後輩にピアス穴を開けられるのってかなりエッチなので……。そういう百合として美味しいところを押さえつつも、最終的には生きるのが下手くそな人間がどうやってこの終わった世界を生き抜いていくのかという今の私たちの状況にそのまま当てはまる問題に、「とりあえずの」答えを見いだそうとするのがとても良かったです。

(……ただ、なんていうんでしょうか。これは織戸さんがどう感じているかでコメントが変わってくるのですが、きっと織戸さんも感じているだろうと信じて敢えて言及すると、ピンク髪先輩と拙作のウニ先輩、想い人のために髪を弄っているという点において、なんか結構似てません……? なんでこんな変なアイデアが被るんですか? しかもお互い微妙にエモポイントとして扱っているからめちゃくちゃ申し訳なさがありますし……拙作を先に掲載していただきありがとうございます……そしてすみません、いや、誰も悪くないのですが……)

 

以上、収録作の感想でした。

結論として、「留年百合アンソロジー ダブリナーズ」はめちゃくちゃ面白い百合アンソロなので、百合に興味があるなら読んだ方がいいし、留年という事象について興味のある百合のオタクは絶対に読んだ方がいいと思います(ここまで書いておいて、アンソロの在庫がなくてごめんなさい、私に言ってもらえれば貸しますので……)。

また、ストフィクさんの中では「今回の反響を受けて、留年百合アンソロでもうちょっと何かやりたいかも」という声も上がっているので、もしかしたら近日中に何か新しい動きがあるかもしれません。無いかもしれません。

改めて、この度はこのような素晴らしいアンソロジーに参加することができて良かったです。関係者の皆様、アンソロを手に取ってくださった皆様、ありがとうございました。

【寄稿のお知らせ】文学フリマ東京38

 

無職の週報、更新していなくてすみません……。

無職でなくなったわけではなく、ただ以前よりずっと怠惰な無職になっただけです。また隙を見て更新していきます……。

 

さて、今回は寄稿のお知らせです。

この度、ななめのさんにお誘いいただき、ストレンジ・フィクションズ企画の 『留年百合アンソロジー ダブリナーズ』に中編を寄稿させていただくこととなりました。

ストレンジ・フィクションズ [文学フリマ東京38・小説|百合] - 文学フリマWebカタログ+エントリー

直近で申し訳ないのですが、明日5/19(日)の 文学フリマ東京38にて初頒布となります。ななめのさんからお品書きもいただきました。こんな感じです。

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この留年アンソロ、中身については後述ですが、何と言っても表紙が素晴らしく……というのも『またぞろ。』の幌田先生が手掛けているんですよ! 『またぞろ。』の留年百合に脳を焼かれたオタクとしては、このような素晴らしい企画に参加できてガチ僥倖でございます。

続いてその中身ですが、錚々たるメンツが並ぶなか、私は3万字程度の「ウニは育つのに五年かかる」という中編を寄稿しました。

お恥ずかしながら私は留年経験が無く、それゆえ留年という(人によってはセンシティブな)テーマとどのように向き合えば良いのか分かりませんでしたが、分からないなりにクネクネしていたらこのような作品に仕上がりました。

200字あらすじとしてはこんな感じです。

四歳の夢野まほろは、大好物のウニ軍艦を食べて失神する。その際に「オホーツク海を見渡せる小屋でメスのウニを育て、熟した卵巣を啜らなければならない」という天啓を得た夢野は、担任と母親とのサイコロ勝負を制して北大へと進学し、そこで出逢ったウニ頭の美里に一目惚れをする。まほろは美里目当てで美里の所属する映画サークルに加入したものの、美里の目はサークル部長で美里の高校同期でもある小春に向けられていて——。

 

自分でも気が付いていなかったのですが、これを読んだフォロワーから「少なくとも現時点では留年要素はゼロですよね」と言われてビビりました。確かに……。まぁでもきっと誰かは留年している or するはずです。

私は最近他の方の作品を読んで凹むことが多いので、私以外の寄稿者の原稿は全然読めていません。その上で無責任な発言をさせていただくと、私はともかく、みなさんめちゃくちゃ面白い(はず)です!

興味のある方はぜひよろしくお願いします🙇

 

※ちなみに今回か前回からか知りませんが、文フリは入場料として1000円徴収するようになったっぽいのと、事前に入場チケットを購入した方が良さそうな感じなので、当日思い立って「試しにぶらぶら行ってみようかな〜」くらいのテンションの方はお気をつけください。

無職の週報【3/8~3/14】

本週報の目的

①対外的に何かしらの成果、あるいは記録を発表しなければならないという環境下に自らを置くことで、タイムマネージメント意識を強化する

②無職期間を振り返る際の日記として、あるいは今後誰かが退職を検討する際の資料として機能してもらう

 

▼前回の週報

negishiso.hatenablog.com

 

3/8金(「先生、ちょっとお時間いただけますか?」、鳥山明の死など)

・ブルアカの「先生、ちょっとお時間いただけますか?」を見る

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未プレイ時からブルアカの秘書的立ち位置を確保しているように思えたユウカだが、ゲームをプレイしていても全く出てこず、「なんでブルアカの先生の正妻ポジにこの子がいるのだろう?」という疑問を呈していると、フォロワーから上記のショート動画を紹介された。

二次元美少女が60秒間という短い時間で、如何にオタクを萌え萌えさせるかという試みなのだが、萌え成分が不足している人間であれば、大変心地よい時間を味わえるのではないだろうか。

ただ、この動画シリーズが真価を発揮するのは#13以降、「ユウカちゃん可愛い♡」が口癖のノアという名の二次元美少女が登場してからで、先生への好意を隠そうとして隠せないユウカの挙動に対し、揶揄うようで応援するかのような健気な立ち振る舞いを見せるノアに、私は百合の波動を感じざるを得なかった。かなりの身長差があるのも良いですよね。ノアユウ、かなりアリだと思います。

個人的にお気に入りのエピソードは#19と#22ですかね。

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鳥山明の死

まさかの訃報に驚いたが、私はドラゴンボールを殆ど読んでいなかったので、どちらかと言えばドラクエのキャラデザの人が亡くなってしまった、というショックの方が大きかった。全く制作状況がどうなっているか分からない新作のドラクエ12だが、このタイトルで鳥山明の生み出すキャラクターを見るのは最後になるのだろう。そう考えるとめちゃくちゃ悲しい。何を隠そう、自分はドラクエにハマったキッカケは、ナンバリングタイトルをプレイしたからではなく、父親がプレイしていた『テリーのワンダーランド』のモンスターに魅入られたからだ。あまりにドラクエのモンスター造形が好きすぎて、幼い頃にはオリジナルスライムを大量生産していたし(今思い返しても、ミイラスライムは中々のデザインだったように思う)、プレイしたことがない癖にイルルカの分厚いモンスター配合本を近隣のフリマで購入し、毎日読んでは見知らぬモンスターの配合に想いを寄せていた。とにかく鳥山明の生み出したモンスターを愛していた。どれもこれもめちゃくちゃ可愛く、格好よかったから。でもそれも二度と見ることができないのかと思うと……。

話は少し変わるが、鳥山明の訃報が発表された日、Xにてドクタースランプアラレちゃんが掲載される直前のジャンプの表紙とアラレちゃんの扉絵を比較する投稿が流れてきた。オシャレなメカデザインやらキャラ造形やらが今から見ても画期的すぎて、当時の読者と漫画家に思いを馳せた。

 

ハローワークで失業手当の手続きを行う

「貴方は健康ですし、今からでも就職したいですよね?」みたいな紙にYESと書かなければ失業手当が貰えないので、泣く泣くYESと書いた。再就職を推進する窓口では「わかもの窓口」みたいなところで通され、まだ自分が「わかもの」であることに僅かながらの安心感を得た。私は前職でカスみたいな仕事しかしなかったので、「できれば東京近郊にある職場で未経験でも行けそうな研究職みたいなことをやりたいッスw」と申請してみたのだが、実際のところ私は研究職をしたい訳ではないので(研究職ならあまり他の人間と関わらなくても良いのではないか、というぬるい期待)、やりたくもない仕事を第一志望にするという意味の分からないオタクになっている。

 

M-1に出たくなりネタを考える

先日、「誰かの無職体験記を読みたいな~」と適当なことを言ったのだが、「じゃあ書きますね」とわざわざ書いてくれた無職経験者の方が居て、丁度この日にメールで送ってもらった。有り難く拝読していたのだが、そこで無職の時間を活かしてM-1に出場したとの記載があり、素直に感心してしまった。別に私はお笑い芸人になりたい訳ではないのだけれど、それはそれとして、やはり「M-1」にはそれだけで人を惹きつける何かと完全に別世界を思わせる壁があり、それを体験として話せることに素直に羨ましさを感じた。私もM-1に出たい、というより「M-1に出たことがあるんですよ」と言ってみたい。なるべく本気で頑張って1回戦敗退ならエピソードとして最高である。というわけでハロワに向かいながらネタを書いたのだが、今読み返すとあまり面白くないかもしれない。

negishiso.hatenablog.com

あとこれは初耳だったのだが、「コント」というのは不可逆な時間のなかで芸人が何かしらの役を演じて進行する舞台であり、私の書いたこれは「漫才(漫談)」なのだと、お笑いに詳しいフォロワーから教えてもらった。こういう根本的なところからして分かっていないので、M-1への道はかなり遠い。そもそもコンビの相方を見つけなければいけないし、他人とネタ合わせもしなければならない等、いずれもかなり面倒臭いので、M-1ではなくR-1に舵を切るかもしれない。

まあ、本当に出場するかどうかは分かりませんが……。

 

・元職場の元同期とさよなら会をする

元同期が企画してくれて居酒屋に行った。みんな私に続いて職場を辞めようとしていて笑ってしまったが、いまの職場も別に悪いわけではないですよ、と全く説得力のない説明をして家に帰った。久しぶりに酒を呑んだ気がする。

この刺身盛りはかなり迫力があった。

 

二件目では同期が馬鹿ほど酔って、店の前の道路で大量に嘔吐してめちゃくちゃ店に謝ることになった。

 

泥酔した同期を車に寝かせてカラオケに行ったのだが、非オタクとのカラオケが久しぶりすぎて何を歌えばいいのか全く分からなかった。30分くらいならなんとかなるが、3人で2時間は結構ターンが回ってきて中々にキツい。最近はいよわしか聞いていないがそれはどう考えても論外なので、安牌として「美しい鰭」とか「Habit」とか「ギラギラ」あたりを捻り出してみたがそれでもキツく、仕方が無いのでかなりの古さを感じるものの、「希望の轍」とか「アイスクリームシンドローム」とかを歌ってみた。終盤、アラジンの「A Whole New World」を歌う展開になった際には、先月アラジンを見てばかりの自分にとってかなり有利な進行となり、ギリギリついていくことが出来た。やはりディズニーは神なので、非オタクとカラオケに行ったときのためにも積極的にディズニー楽曲を押さえておきたい。「メリー・ポピンズ」の「チム・チム・チェリー」とか……。

 

文章に厚みがあるのでこの日は何かした気になっていたが、読み返すとブルアカのショート動画見てハロワに行って意味の分からないネタを書いて酒を呑んだだけなのでカスの日だった。

 

3/9土(地域対抗戦、R-1など)

・昨日書いた「毒虫」というネタと先日書いたセミのネタを声に出して録音した。

 この歳になってなお、現在進行形で黒歴史を作っているような気がする……。

・それ以外は何もせず気付けば夜になっていた。

本格的に無職になってきた気がする。無限の時間は、やはり人を腐らせる。

 

・Abemaの将棋チャンネルにて地域対抗戦

佐々木大地七段が藤井聡太竜王名人に勝った局と、深浦九段が藤井竜王名人を追い詰めた局が非常に面白かった。他の対局は藤井聡太竜王名人が強すぎて笑うことしか出来なかった……。

 

R-1グランプリを視聴

ルシファー吉岡サツマカワRPGどくさいスイッチ企画のネタが好みだった。ただどくさいスイッチ企画に関してはネタの完成度の割に点数が異様に低く、審査員の評価が「アマチュアにしては……」という枕詞で揃っていたのがキショすぎてビックリした。アマチュアに面白さで負けているからって、僻んで点数を低くするのはプロとして良くないですよ、と思うくらいには低かった。一方で、最後の展開がやや弱かったというバカリズムの指摘は正しい面もあり、これが正当な評価だと真正面から言われてしまうと否定出来ない部分がある。

あと吉住のネタはデモという政治的な主張を笑いに変換していて、デモに対する大衆の冷笑を強める側面がある点において最悪だと思った。面白かったら何をしてもいいという訳ではないでしょ。素直に軽蔑します。

最後に、街裏ぴんくは以前からめちゃくちゃ面白いと思って見ていたのだが、今回のネタはどちらもイマイチだった。でも優勝して嬉しかったです。これからテレビで見る日も増えるのだろうか?

 

3/10日(「ふつうの軽音部」、僕ラブ申し込みなど)

・クワハリ/出内テツオ「ふつうの軽音部」を14話まで読む

shonenjumpplus.com

人と寂しい速度ですれ違う様が新鮮で、かなりふつうの軽音部っぽいのですが、変なキャラが出てくると一気にフィクションとしての厚みが出てくるという好例。百合なので良かったです。続きが楽しみ。

 

・僕ラブ41への申し込み

3/31は横浜でμ'sのオーケストラコンサートがあるため、同日に蒲田で開催される僕ラブ*1に参加しようかなとぼんやりと思い始める。ただ、参加〆切が9日と昨日で終わっており、ガッカリ……という旨をツイートしたところ、フォロワーからのタレコミにより、近年の僕ラブでは〆切を過ぎていても参加申し込みボタンがページ上から消えるまでは参加OKとのこと。本当か?と思ってダメ元で申請してみたところ、後日、ちゃんと受付されていました。教えてくれたフォロワー、ありがとう!

ということで、3月31日には僕ラブ41の海未誕2024にて、冬コミで頒布したほのうみアンソロと、たまたま掃除していたら出てきた拙作のほのうみ短編集を頒布しようと思います。興味のある人は来てね。

 

ちなみにこの日は「ふつうの軽音部」を読むことと、僕ラブに申し込む以外マジで何もしなかった。何もしなさに磨きが掛かっている。

 

3/11月(アドベンチャーワールド

家族旅行で和歌山県の白浜にある「アドベンチャーワールド」というテーマパークにやってきた。幼少期に数回来た覚えがあるのだが、ディズニーランドを見てからだといかなるテーマパークもしょぼく見えるのがかなりの損失だと思う。昼飯時も、平日でそこまで混んでいないのに座席が全く足りないという現象が起き、休日の客はどうしているんだ……という素朴な疑問を抱いてしまった。

ただ、イルカショーだけは非常にレベルが高かった。全体の構成を練っていたり、音楽で観客の感情を揺さぶったり、誕生日の子をワイプで抜いて皆で拍手をするなど、若干のディズニーリスペクトが感じられた*2

 

動物を適当に見ているとヤギが居たのだが、よく見ると相方のお尻に自分の顎を乗せて寛いでいるシチュが完全に百合でビックリした。距離感が完全に幼なじみ百合。角がなく、体色も白だし(?)、両方メスだと信じたい。

 

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アドベンチャーワールドと言えば国内No.1のパンダの飼育数を一番の売りにしているが、最近何匹か中国に返した(はずな)ので、現在は二匹だけを飼育している。それでも日本一なのかは分からないが、久しぶりに見るパンダは無職の私よりもしがらみが無さそうで腹が立った。

 

・ホテルのために串本へ

この日の宿泊は、白浜よりも南にある串本という地のホテルにしたのだが、本州最南端以外の売りがなかった串本の至るところで「宇宙最先端の地へ……」と世迷い言が謳われていた。何事かと調べると、どうやら串本で国内初の民間ロケットが発射されるということで、官民一体となって盛り上がっているらしい。JP串本駅の前には宇宙兄弟の二人のイラストもデカデカと書かれており、結構ビックリした。

現地のニュースもロケットのことばかりであり、なんでもつい先日ロケットの発射が延期になり、13日に発射するとのこと。私たちが串本を出る翌日なのでタイミングの悪さを感じつつも、串本のホテルでゆっくりすることにした。

 

3/12火(「免許取るならオートマでいいよ」「写して」など)

・大雨の串本

翌日、台風レベルの大雨に見舞われたため、串本での予定はすべてキャンセルとなり、すごすごとお家に帰ることに。

 

・菱田すみ「免許取るならオートマでいいよ」を読む

shonenjumpplus.com

素晴らしい読み切り百合漫画だった。私もATのみのオタクだが、MTとATというキノコとタケノコのようなしょうもない戦争をエモいセカイ系(?)百合に昇華させたシナリオが見事だった。これくらいのテンションで読める百合漫画が好み。

 

・山本登「写して」を読む。

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とにかくエネルギーを感じさせる作品だった。決して同じ速度になることのない、カメラのフラッシュと人間の素早い動きが、この作品のなかでは同列になっているように思えて感動した。シナリオとしては、ただ卒業アルバムの写真を綺麗に撮りたい、と願うだけの少女の話なのだが、過去回想というかたちや、綺麗に撮りたい理由、それを助ける周囲の人々の動機付けなどをくっつけるだけで、ちゃんと物語として綺麗に見えるのが面白い。私は本当にシナリオ作りが下手くそなので、ある人物にフォーカスした物語を書く際には、参考にしていきたい作品である。

 

・保険証が再交付されたので心臓を見てもらいに循環器内科に行こうとしたが、全然電話に出てくれないのと、家から遠いので断念。

 ちなみにこの文章を書いている今もうっすらと痛いが、随分マシにはなりました。

 

・本を購入。

TLの評価が高かった、間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」と、先日縁があってスペースでお話させていただいた大澤聡さんの「定本批評メディア論」を購入。前者はチマチマ読んでいるが、もう1ページ目から面白いのでずるいと思う。

 

円城塔賞の最終選考(一次選考?)に残らず……

kakuyomu.jp

円城塔の作品は大好きだが、私の作品を残していなかったので円城塔のことがうっすらと嫌いになった(逆恨みが過ぎる)。それはそれとして、少なくとも円城塔の心に残る作品には出来ていなかったという点で反省をしなければならない。面白いとは思うのだけれど、ちょっと奇想というか、パンチが弱いのかな……と思ったりしている。それか流産という厳しい題材を当事者でもない自分が痛みも無く書いているところが良くなかったのかもしれない。その辺りは円城塔のみぞ知るところですね。

kakuyomu.jp

応募作はこちらでした。

 

・適当なことをツイートしたら変に伸びた

温泉から出て「気持ちえ~」となりながら書いたクソツイなのだが、蝉川夏哉さんに拾って貰えたので一気に拡散されてしまった。現時点で、この投稿で2万impを稼ぐこととなり、微妙にフォロワーが増えた。でも固定ツイートにしている自作が読まれた形跡はあまりないので、小説というキーワードは入っているものの、自作と直接リンクするような状況でも無い限り、2万imp程度では宣伝として期待するようなことはあまり起きないような気がする。

 

・エルヴェ・ル・テリエ『異常』読了

高校・大学同期のオタクから感想を求められたのが二月末頃で、本棚から引きずり出してダラダラと読みながら読了。最近長篇を読む体力が無くなっており危機感を覚える。一方でこの作品はウィットの効いた「読ませる」文章で、リサーチも深く、あらゆる点で一生敵わないなあと思わせる作品だった。本作のネタバレになるので深くは触れないのだが、同期と感想のやりとりをするうちに自分の読みの浅さに恥じることとなり、相変わらず自分は文章の響きしか触っていないな……と反省することとなった。

 

3/13水(カイロス爆発、中高同期Aと散歩、ALEC、AとBと飲み会)

カイロス爆発

www3.nhk.or.jp

11日の日記で触れた串本町の民間ロケットだが、物の見事に爆発したらしい。

先日のニュースでは串本町長が「絶対に失敗することはありません」みたいなことを言っていたので、今はどういう心境なんだろう……と本気で心配になってしまった。どの分野でもそうだが、あまりそういうことは言わない方が良いと思う。

 

・12時40分に中高同期の友人Aと合流し、ラーメンを食べる。

私の家から、Aのいる和歌山の有田川町まで移動。Aはとある国家試験を受験し結果待ちで暇をしていたため、平日の昼間にかかわらず、ブラブラしているアラサー男性の二人組が爆誕

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全国でも準グランプリに輝いためちゃウマラーメンと聞いていたのだが、普通だった。

 

有田川町地域交流センター「ALEC」に移動

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Aが中高時代に訪れていたという図書館に案内してもらった。


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ALECの周辺。どうやら有田川町は絵本の町として売り出しているらしく、絵本作家のイラストが至る所に描かれていた。そのなかでもこのおにぎりのイラストは特に可愛いなあと一目で気に入ったのだが、著者の「鈴木のりたけ」という名前に覚えがある。

 

あとで見返すと、やはり先日、愛知県の漫画家・絵本作家によるチャリティオークションで一目惚れして落札した色紙の著者だった。こういう不思議な繋がりに触れると、かなり嬉しくなってしまう。ちなみにこの色紙に描かれている謎のおすしは、「うちゅうずし」と言うらしい。


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ALECの内部には図書館もあるのだが、こういう設備があってビックリした。なんじゃこれ。


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一番ビックリしたのは、本を持って歩きながら通るだけで貸し出しが完了するという謎のシステムである。こんな片田舎に、見たことの無い最新鋭の設備があるってどういうこと? 蔵書も悪くないし、漫画も置いているし、カフェも併設されているしで、個人的にはALECのある有田川町をかなり羨ましく思った。まあ、ALEC以外は特に何もないのですが……。

 

・友人Aと談笑

 Aとは中高からお互いに小説を書いて読みあった仲なので、小説の話が気兼ねなく出来て有り難い。最近は国家試験で忙しくて書けていないとのことだが、それが終わればまた何処か公募を目指して小説を完成させたいとのことだった。

 そのような話を散歩をしながら、6時間くらい話し続ける。何を話していたのかはぼんやりとしか覚えていないが、この前Twitterのスペースに現れた自称IQ180のオタクがすごかった、という話をしたらかなりウケていた。

 

・もう一人の中高同期Bと合流して飯

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近況を報告しながら飯を食ったのだが、この居酒屋のご飯が今まで食べてきた居酒屋の料理のなかでもトップレベルに美味しかった。しかも低価格なので、もし今後、有田川町に立ち寄る人がいたら是非ここの料理を食べてみてください*3

tabelog.com

ちなみに合流した友人Bは私の元カノなのですが、未だに普通に飯を食ったりする関係なのでかなり奇妙に感じている。まあこっちも向こうも気にしていないし、これが普通なのか……?*4

Bは昔からジブリや映画が好きなので、久しぶりにジブリの話や映画の話が出来て良かった。やはり「君たちはどう生きるか」はこれまでのジブリと比べてワクワク感がないしつまらなかった、という見解は一致したが、宮崎吾朗の「アーヤと魔女」はめちゃくちゃすごい、という話には共感してもらえなかった。最近気になっている映画の話になると、Bが口にした映画を私がすべて観ていたので、かなり気持ちが悪い人だと思われたかも知れない。Aは全く映画を観ないのでずっと黙って聞いていた。いま思い返せば話題選びが良くなかったな。

その後、Bが「実は振り込み詐欺に遭って……」という話をして悲しかった。中高の時からBは二次元キャラみたいに純粋で人を疑うことを知らない人だったので、いつかは詐欺に遭うだろうなと思っていたのだが、実際に詐欺に遭うとちょっと笑えなくなってくる。Bの知り合いが放った、「実は1億円の宝くじに当たったんだよね……」という冗談も本気にしてしまったというのだから、益々今後が心配になる。これ以上、大きな詐欺に遭わないといいが……。

最後はAのアルバイト先だった港に意味も無く行って夜空の星を眺めた。オリオン座とか北斗七星がめちゃくちゃ綺麗に見えてビックリした。

 

3/14木(銀だこ回数券を購入)

・銀だこにて回数券を購入

たまたま銀だこに立ち寄ったら何かのイベントをしていて、本日のみスタンプ3倍とのことなので11回分の回数券を購入した。

 

それ以外はマジで何もしていない。無職になりつつある!まずい!

 

無職の週報【3/8~3/14】/ 終

*1:ラブライブ!シリーズの同人即売会

*2:私のテーマパークの比較対象の持ち札がディズニーしかないだけで、そんなことはないと思う

*3:ここまでハードルを上げるとよくないかもだが……

*4:交際経験がBしかないのでマジで分からない

【コント】毒虫

 M-1に出たいのでコントのネタを考えました。

 

以下、台本

 

「はいどーも」

「晴れのちアメルヤでーす」

「いやー最近太ってきちゃってさあ」

「ああそう」

「甘いものばっかり食べちゃうわけ」

「あら、遠藤くんは甘いもの食べるの。あ、そういうことならさ、いいものあるよ。おれ毎日食べてるから全然太んないの」

「へえ、なんですか斉藤くん。教えてくださいよ」

「うん、毒虫って言うんだけれど」

「毒虫?」

「そう、毒虫」

「待って……なんなんですか、それは」

「え? 毒のある虫」

「そのままじゃねーか。お前なんてもん食ってんだよ」

「えー、でもうまいよお」

「そんなわけないだろ。なんで毒がうまいんだよ」

「いやね、食うと舌がピリピリ痺れるのよ」

「ガッツリ毒じゃねーか! それ舌がやられてるんだよ! てかさ、なんで毒虫食うと痩せるんだよ」

「え、知らないよそんなの。婆ちゃんが言うんだもん。これ食っときゃ痩せるって」

「え、お前の婆ちゃんも毒虫食べてるの?」

「婆ちゃんっていうか、家族みんな?」

「一家揃って食べてんの!? 毒虫一家じゃん」

「それは言い過ぎだろ」

「どこがだよ! まごう事なき毒虫一家だろ。お前もう明日から苗字を毒虫にしろよ」

「アッハッハ……」(声にならない笑い)

「何がおかしいんだよ」

「だってさぁ……それじゃあおれの名前、毒虫毒虫になっちゃうw」

「お前の名前、毒虫なの!? 両親、頭おかしいんじゃねーの!?」

「なんでだよ! いい名前だろ、毒虫」

「よくはないだろ。お前それ、子供が亡くなりやすい地域でさ、悪魔とか死神に命が取られないようにってあえて汚い名前つける民族のやつじゃねーか」

「ツッコミが長いんだよ」

「黙れ毒虫! お前の名前が俺にツッコミをさせてるんだよ! お前が毒虫なんて名前じゃなければこんなツッコミせずに済むんだよ! てかお前さ、どういう気持ちで毎日、自分と同じ名前の毒虫食ってんだよ」

「え、仲間だなあって」

サイコパスだろ。仲間を食うなよ」

「お前だって食うだろ!」

「食わねえよ、俺は人間を喰いません」

「そうじゃなくてさ、お前の名前キノコじゃん」

「そうだけど」

「お前さ、昨日もキノコ食ってたよな」

「だからなんだよ」

「お前も食ってんじゃねーか、仲間をよ!」

「キノコは違うよ、あいつらは……友達だから」

「似たようなもんだろ! 食うなよ友達を!」

「黙れ毒虫、このやろ!」

「なんだキノコ!? てめえ!」

(3秒間、取っ組み合い)

「なぁ!」(毒虫の方から手を止めて)

「なんだよ!」

「やめねえ!? 争うの!」

「ああ……そうだな」

「わかってるよ、俺も。毒虫が変な名前だって」

「キノコは違うけどな」

「キノコも変だよ」

「なんだあ!?」(殴りかかるフリ)

「やめろって! 似たもの同士だよ、俺たち」

「……ああ、そうかもな」

「でもさ、親がくれた大切な名前じゃん。毒虫も、キノコも」

「まぁな」

「バカにしちゃダメだよ、やっぱり。俺も大切にしてるから……死んだ両親がつけてくれた名前」

「え? お前の両親亡くなってるの?」

「ああ、死んでるよ」

「えっ、なに、事故?」

「いや、警察曰く毒死らしい」

「毒死……毒死?」

「原因不明の毒のせいだって」

「毒虫じゃねーか! それ絶対毒虫だって!」

「え? でも婆ちゃんはそうじゃないって」

「いや絶対そうだって、何歳で亡くなったんだよ」

「どっちも32」

「毒虫だよ絶対! 死ぬには早すぎるって! お前の両親さあ、毒虫のせいで毒虫のお前の成長を見る事なく死んでんだよ! こんな悲しい事あるか!?」

「悲しい、のかなあ……」

「お前、感情まで毒虫に殺されてんじゃねーよ! ダメだってお前まで毒虫食べたら! 死ぬぞお前!?」

「でもばあちゃんが毎日食べろって……」

「いや、なんで婆ちゃん……おい、待てよ。婆ちゃんは生きてんのか?」

「生きてるけど」

「婆ちゃんも毒虫食べてんだよな?」

「あー、いや、最近は食べてないなあ」

「婆ちゃんは食べないのに、お前と両親には毒虫を食べさせていたのか?」

「そうだけど」

「……なあ、ひとつだけ質問していい?」

「なに?」

「……お前の両親に、多額の生命保険かかってなかった?」

「ああ、二人合わせて2億ね」

「婆ちゃん!!」

「え?」

「婆ちゃんだよ! 犯人は婆ちゃんだって!」

「お前何言ってんだよ笑」

「お前が何言ってんだよ! お前の両親、保険金目当てで婆ちゃんに殺されたんだって! 毒虫で!」

「毒虫って、俺のこと?」

「そうじゃなくて……待てよ? お前の名前、毒虫だよな」

「だからなんだよ。その話はもうやめるって……」

「一部の地域ではさあ、悪魔から命を守るために、あえて変な名前をつけるんだってなあ!」

「……え?」

「お前の名前の毒虫ってさあ、もしかしてさあ!」

「……」

「お前の両親が……すべてに気が付いてた両親が……悪魔の婆ちゃんからお前を……お前を守るためにっ……!」

(沈黙、3秒)

「なぁ、遠藤……」

「なんだよ、斉藤……」

「俺さあ、毒虫って名前でよかったよ。父さんも母さんも、俺のことを愛してくれてたんだなあ」

 

(二人、黙って抱きしめる)


 

無職の週報【3/1~3/7】

時の流れとは早いもので、完全なる無職になって一週間が経つ*1

退職する前にはぼんやりと「無職になると無限に時間が生まれるんだろうなあ」と思っていたがそれは明確な誤りで、たっぷり時間はあるからヨユーヨユーとベッドの上でソシャゲをしたり将棋をしているうちにあっという間に時は流れ、体感としてはむしろ会社員をやっていた時の方が時間を有意義に使えていたように思えてくる。

いやはや、無職とはなかなかに難しい職業である。

というわけで、上記の懸念を解決するため、これからはなるべく日々の活動を纏めた週報を記事として投稿する。私が三日坊主なのはご承知の通りだと思うので、この取り組みが果たしていつまで持つのかはとんと見当も付かないが、少なくとも対外的に何かしらの成果、あるいは記録を発表しなければならないという環境下に自らを置くことで、タイムマネージメント意識を強化する作戦だ。

もちろん、本週報は日記としての側面も持つ。

以下週報。

3/1金(「龍と苺」を180話読む)

柳本光晴「龍と苺」が期間限定で全話無料公開していることを知り、180話まで一気読みをする(3/8現在、全話無料公開は終了している)。

朝の9時から読み始めて、最新話の180話まで読み終わったのが21時だった。

さっそく無職をしているな。

私は著者の前作である「響~小説家になる方法~」を未読なので知らなかったのだが、知り合いに聞いてみたところ、どうやらこの作者の世界に暴力は付きものらしい。プロ棋士、そして棋士のトップである竜王ともあろう者が、いとも容易く女子供に暴力を振るう点、そもそも将棋をたしなんでいるモブおっさんの女性蔑視が度を超えて酷い点など、将棋が好きな人間にとってはそれなりに不快な描写が続いたが、話の筋としては面白く、最後まで飽きさせずに読ませるものだった。やはり負ける人間の過去回想ほどグッとくるものは無いし、天才である主人公の藍田苺(あいだ・いちご)の快進撃は見ているだけで気持ち良い。個人的には、苺が先輩として将棋部を指導する立場になってからの物語が非常に良く、後輩との距離感を含め、将棋を通じて人格が形成されていく様は、将棋のスポーツとしての側面を表現しているようで素晴らしいと思った。

また、話にしっかりと幼なじみ百合が出てくるのも良かった。本作には、メインキャラではないものの、将棋以外の生活能力が皆無な天才女子高生棋士鴨島凛々(かもじま・りり)と、そのお世話をしているそこそこに将棋が強い女子高生の小松すずによる百合がある。互いの才能についてアレコレして確執が生まれるとかではないのだけれど、凛々はずっとすずにお世話をしてもらえると信じている点、実際にすずも多少はそれに答えてしまう点が萌えである(最も、最終的には凛々も自立するのだが)。

と、ここまでは180話の感想であるが、上記の感想を全て爆発させる衝撃の181話がネットで公開されたばかりである。もう全話無料公開も終了したので一から追いつくのは難しいと思うが、機会があれば是非180話を堪能し、181話の衝撃に「は?」と目を丸くして欲しい。

以上、思ったよりも長くなったが「龍と苺」の感想終わり。

この日は「龍と苺」だけで全てが終わっている。

 

3/2土(「エデン条約編」「のび子ちゃん」など)

・ブルーアーカイブのエデン条約編を読み進める。

補習授業部の馬鹿馬鹿しい日常からシリアスな展開に持っていく手腕は流石の一言。往年のエロゲー感がある。あんまエロゲーやったことないけど。

 

・ヒフアズにハマる。(ヒフミ×アズサのカップリング)

 

・シナリオの途中で自分で育成したキャラを使用する場面があり、そこで詰む。ストーリーが第3章のラスト直前でお預けになり、涙。

 

・作曲を少しだけやる。メロディーは思いついたが、もう少し検討。

 

・零合02を読み進める。

 

・「のび子ちゃん」という二次創作を読む。のび太が実は女性であることを隠していたら……という世界線をもとに、出来杉からのび太に向けられた、劣等感と性欲の入り交じった感情を描くすごい作品だった。絵柄をしっかり寄せているのがすごいし、カメラワークとかもめちゃくちゃ気持ちよくて良かった。投稿されたのが10年前ということでビックリ。すごい人もいるもんですね。

www.pixiv.net

 

・Abemaにて「ABEMA地域対抗戦 予選Aリーグ 1位決定戦 <関東A VS 中国・四国>」を視聴。

メンツ的に関東Aの勝利はほぼ確みたいなものだったが、混戦の果てに菅井八段が羽生九段に勝利し、チームを勝利に導いていてすごかった。これで糸谷八段を温存しているんだからすごいですよね。次戦が楽しみ。

 

3/3日(「棋王戦第3局」)

・【第49期棋王戦第3局】藤井聡太棋王 対 伊藤匠七段を視聴

 大注目の一戦。個人的に藤井聡太棋王への勝利に最も近い存在が永瀬九段と伊藤匠七段だと思っているので、本戦も楽しみにしていたのだが、結局は第一局の持将棋定石を警戒した藤井棋王に序盤から▲4五桂と研究を外されてしまい、長考に沈んでかなりの時間差が生まれることに。その後、伊藤匠七段もなんとか良い手を指し続け、△3四馬となったあたりでは戦況もまずまずだったのだが、その後難しい手順があったのか、藤井棋王への迫り方を誤り、どんどん悪くして負けてしまった。悲しい。次回は伊藤匠七段の先手番なので、ここでなんとか1勝をとってほしいところではある(伊藤匠七段は今のところ、公式戦で藤井棋王に対して0勝なので、かなり相性が悪いのかもしれない……いや、純粋に藤井棋王が強すぎるというのもあるが)。

youtu.be

 

・零合02を読了。感想などは後日(下記)掲載。

 

3/4月(「エデン条約編」、古民家ランチ)

・役所に無職ですと言いに行こうと思ったが、雨なので断念。

無職になってからは、カメハメハ大王ではないが、雨が降っていたり風が強く吹いている時は「用事は明日でいいや、今日は家で大人しくしておくか……」という選択ができるのですごい。

 

・百合エントリを発見

見下していた女が成り上がってモヤモヤするのは百合です。本作では見極めが難しいが、独占欲があるとなお良い。

anond.hatelabo.jp

 

・親に連行され、和歌山県紀美野町の古民家系食堂へランチに行く

地元産の植物しか使わないと謳う精神は良い。が、ワンプレートランチ(デザート付き)で2200円という価格におったまげた。美味しかったですけどね。

 

・親に連行され、近くのカフェでティーパーティーをする。

ピカデリーという茶があり、「新宿ピカデリーやんけ」と思って注文。全然新宿ピカデリー要素はなかったが、香りも味もフルーティーで美味しかったです。

 

・エデン条約編、自キャラ育成の末、なんとかヒエロニムスを倒して読了。

めちゃくちゃ良かった。シナリオがいいしキャラも可愛いし、百合もすごいし、ブルアカってもしかしてすごいコンテンツなのでは? モリモリ二次創作意欲が湧いてくる。

・モリモリ二次創作意欲が湧いていたので、ハナコハの落書きをする。

こうして見るとやっぱり私の絵、というか落書きはインターネットでよく拡散されているかわいいイラストに対して、視認性と可愛さ、キャッチーさが欠如しているように感じる。だからと言ってどのように描けばいいのかは分からないが、伸びないイラストよりかは伸びるイラストの方がいいに決まっているし(一般的に伸びる萌えイラストは多くの人にとっての「かわいい」や「好き」という感情を呼び起こした事実を示しているため)、自分としても二次元美少女のかわいさの再現性を高めていきたいので今後も精進したいところ。折角の無職期間なので、萌えイラストの技術も高めていきたい。

 

3/5火(「未解決事件は終わらせないといけないから」「OROKAWA MELTDOWN」など)

・役所に無職ですと言いに行こうと思ったが、雨なので断念。

 やむなし。

 

・「未解決事件は終わらせないといけないから」をクリア

前々から知り合い各位に勧められていたのを思い出しプレイ。2~3時間でクリアできる短さながら、ハッシュタグのワードを通じて関係者の証言を思い出し、その発言内容と時系列をそれぞれに当てはめていく、という新しいプレイ体験、そして二転三転するシナリオに大満足。ネタバレを避けるため多くは言及しませんが、800円で出来る体験のなかではかなり上位に来ると思うのでオススメです。

store.steampowered.com

 

・ケムールにて「OROKAWA MELTDOWN」を寄稿

kemur.jp

小野繙名義で「OROKAWA MELTDOWN」という短編小説を寄稿しました。あらすじはこんな感じです。

泥酔を日課とする未名子はある夜、Xで泥酔してくたばる女の写真を投稿するアカウント「OROKAWA MELTDOWN」を見つける。見苦しいけどバズっているその写真の女は、よく見るとまさかの自分で……。

私が書いたわけではないので手放しに褒めるのですが、本当に出来の良いあらすじだと思います。

本当はもうちょっと序盤の導入を長めにして、終わり方もより読後感の良い感じにしたかったのですが、6000字という字数制限と今の私の技術力ではこれが限界でした。投稿前日まで推敲を重ねてしまい、編集者の方には大変ご迷惑を掛けましたが、読んだ方から面白かったという声をいただけてホッとしています。正直もう自分ではよく分からなくなっていたので……。

フォロワーの方から質問があったのでほんの少しだけ裏話を書くと、本作の導入部分の「ある日、泥酔して見知らぬオッサンにダル絡みをして、オッサンも訳が分からずブチ切れていたのだけれど、急に私が正気に戻って『あなた誰ですか』という問いかけをしたものだから、双方ビックリして気まずくなって別れた」というエピソードは私の実体験であり、先日、この話をフォロワーと呑んでいるときに披露したところ、めちゃくちゃウケて「それ絶対に作品にした方がいいですよ」と言われたので、その言葉を真に受けて採用してみました。その後の展開はなるように任せましたが、狂人vs狂人の構図を描きたかったので、そのように出来て良かったです。個人的には結構な百合エンドだと思っていたのですが、読んでくださった方はみんな「今回は百合要素弱いっすね」みたいなことを仰るので、マジで?となっています。私からしたらストーカー女が女を追いかけ回しているだけで百合だし、追いかけ回される方が嫌がりながらも若干の名残惜しさを感じるというところが最高に萌えなのですが、私の当たり判定が広いだけかもしれません。気になる方はぜひ読んでみてください!

 

3/6水(銀だこ390円、零合の感想、夏コミ申し込み)

・「龍と苺」181話更新

 伝説の回。詳細は既に述べている通りだが、180話すべて読んで、ぜひこの1話の衝撃を味わって欲しい。

 

・銀だこ390円セール

Xにも投稿したのだが、私はこの世の食べ物のなかで銀だこのたこ焼きがTOP10に入るくらいに好きなのだが、8個入580円という価格設定にキレ散らかしているため、全然買わずに1年近く口にしていない。

3月5日から7日にかけて、銀だこが1舟390円のセールを行っていたので無職のアドバンテージを活かして買ってみた。思ったよりも美味しくなくて悲しくなった。家族も食べるかなと思ってもう1舟買ったのだが、冷えた銀だこは外側のカリカリ感がなく、マジで美味しくなかった。最悪である。銀だこを、呪う。

 

・零合 百合総合文芸誌 第2号の感想記事を投稿

感想を書くために何度も読み直してめちゃくちゃ時間を掛けました。「無職になったからにはこういう知っている人の関わっている作品には積極的に感想を言っていかなければ……」という謎の使命感で書いたのですが、めちゃくちゃ疲れたのでやっぱりこういう感想を日常的に書いている人はすごいと思います。

negishiso.hatenablog.com

 

・夏コミに向けて、ブルアカでサークル申し込みを行う。

コハルちゃんがかなり可愛く描けたように思う。個人的には、二次元美少女の肌に「限りなく白に近い色」以外のものを選択できたのがめちゃくちゃ嬉しい……。ただ直前までコハルちゃんのヘイローを描き忘れていたのと、いま見返すとコハルちゃんの首から全身を中心で二分している謎の線を描き忘れているので、結構後悔している。果たして自分にちゃんとした漫画が描けるのかは分からないが、最終的にはエロ漫画も描いてみたいので、その練習も踏まえ、出来るところまでやってみようと思う。目指すのは映画のようなカットで構成された漫画なのだけれど、初心者がやるには難しすぎるかもしれん……。

 

3/7木(ハロワ失敗、図書館、シネマ203、ハムガールの冒険)

自転車屋のアサヒでチャリの空気を入れようとしたら、わざわざ店員が出てきて入れてくれた。サービス精神旺盛過ぎる。

 

離職票を紛失したと思い込んでハロワの窓口に行ったら「まだ貴方に離職票は届いていないので届いてから来て下さい」と言われ、追い返される(家に帰ると離職票が届いていた)。

 

・図書館で書籍を借りる。

るるぶ九州」

るるぶ箱根」

石川宗生「ホテルアルカディア

大前粟生「チワワ・シンドローム

今村昌弘「屍人荘の殺人」

岐部 雅之(編訳)「ブラジル文学傑作短編集」

読む気満々で借りているものの、書かなければいけない原稿が数多くあるので果たして何冊読めるのか不明。

 

・和歌山のぶらくり丁にある「シネマ203」を訪問

5日、この方の投稿で地元にミニシアターが出来ていることを知る。「映画が好きです!」とデカい声を出している割にこんなことも知らなかったの、恥ずかしいな……と思い訪問。現地に着いて思ったけど、やっぱこれ映画館があるって察するの無理ですよ。

映画のポスターが一枚貼られているところの横にある路地を進むと階段があり、そのアパートの一室(203号室)がミニシアターとなっていた。すごい所だった。

スクリーンはこんな感じ。音響もまずまずの大きさ

折角なので、カール・テオドア・ドライヤー「ミカエル」とビクトル・エリセミツバチのささやき」を視聴。「ミカエル」はまさかの台詞の音声が入って居らず(BGMはある)、登場人物の台詞が文字として挿入される。なんかごちゃごちゃやっていたがあまりの眠気に負けてしまい、まともにあらすじを追えなかった。俺は何をしに来ているのか。1700円は地元のミニシアターへの寄付ということで自分を納得させる。

次の「ミツバチのささやき」は、子供の死への興味を描いた作品だと思うのだけれど、どう評価すればいいのかは分からない。面白くない訳ではないが、ストーリーがかなりゆったりと進むのと、死を匂わせる「線路」「毒キノコ」「イサベルの死んだふり」「焚き火飛び?」などのストーリーが断片的に挿入されているようで、そこまで美しくないように感じた。まあでもアナがめちゃ可愛いのと、イサベルのアナに対する優位な立場が徐々に覆っていく様は良かったです。ミツバチのモチーフについてもうちょっと考えることが出来ると、評価も変わるかもしれない。

 

・ブルアカのコハルちゃんを描くなどする。

夏コミに向けて、コハルちゃんを中心とした漫画を描こうと思っているのだけれど、こうやってちゃんとした作画をしようと思うとかなりの時間が掛かるため、キャラの線を省略したりして簡単に可愛く描けなければならない……ということで練習をしている。個人的にはかわいいと思うが、インターネットにはもっと線が少なく、可愛いコハルちゃんに溢れている。イラスト、漫画の世界はマジで難しい……。

 

・フィビ鳥「ハムガールの冒険」

素晴らしい漫画だった。やはり作品におけるテンポ、スピード感は現代の創作においてメチャクチャ重要であるように感じる。深く作品の世界を表現しなくとも、そこに生きているキャラを魅力的に描けば、自然と読者はキャラを通じて作品世界や物語のテーマを読み取るし、読み取らなくても最後、ハムガールがこれまでお世話になった人たちから何かを受け取ったっぽい描写を入れることで、大団円というか、いいものを読んだ感が出る。こういう手法を参考にして小説に持ち込むのが重要だと思う(雑すぎるか?)。

www.pixiv.net

 

週報終わり。

この一週間、マジで何もしてね~と思ったが、列挙すると想像以上に書くことがあってビックリした。ここまで詳細に書かなくても良い気もするし(7500字もある!)、この週報だけで3時間くらい掛かっているので、今後の書き方については要検討ですね。

*1:大抵の会社員は退職前にまとまった有給休暇を消費することで「偽の無職期間」が発生するため、その状態と区別して「完全なる無職」と呼称している

零合 百合総合文芸誌 第2号【ネタバレ感想】

本記事は各収録作品に関するネタバレ(?)を含む「零合 百合総合文芸誌 第2号」の感想記事です。

未読の方は気を付けてください。

前置き

本作が「ゼロ年代」をサブテーマにしているため、感想の所々で「ゼロ年代」というワードを使うと思うのですが、私は三大セカイ系作品とされている「最終兵器彼女」「ほしのこえ」「イリヤの空、UFOの夏」こそ履修しているものの、「セカイ系」を内包する「ゼロ年代」という概念までは十分に理解できていないため、私が何かを言おうとしていた場合、頓珍漢なことを言っている可能性が高いです。

それに伴う責任を取らない、ということではございませんが、上記を踏まえたうえで下記の感想をお読みいただければと思います。

 

序文『百合、並びに物語に対する切実な試論』

こちらの投稿に掲載されている文章ですね。

かなりの熱意を感じたので、本作を読むに当たって重要な序文だと考え、文意を読み取ろうとかなり時間をかけて向き合ってみたのですが、先に述べた通り、私にゼロ年代に対する知識がないせいか、この序文が訴えようとしていることにあまりピンと来ませんでした(すみません)。何なら一文目の百合に対する問題提起からよく分からなかったので、単に私が百合、あるいは物語に対して鈍感すぎるだけかもしれません。

ただ、自分も百合で物語を書こうとしている人間なので、鈍感であるなら鋭敏にならねばならず、この辺りのギャップは何らかのかたちで埋めたいな……とは考えています(誰か説明してくれる人がいたらお願いします泣)。

 

佐藤友哉『大火』

百合、SF、ホラー、セカイ系の要素をバランス良く散りばめている点、読みやすい長さの短編に纏められている点、読後感が良いという点において、プロ作家の技巧が光る大変優れた作品でした。アンソロの初手にこの作品を持ってくるのは大正解だと思います。

私は佐藤友哉作品を「デンデラ」しか読んだことがないので、勝手な印象でもっとめちゃくちゃなアイデアと文章を書く人だと思っていたのですが(失礼すぎる)、本作の文体は、戦時中の少女を語り手として淡々と物事を描写する静的なもので、非常に読みやすかったです。話の構成もうまく、情報の出し方もお手本みたいな感じでした。

個人的にうまいなと思ったのが、無駄な描写を省きつつ、「お邸に入りました」「 作業を再開しました」など、人によっては入れなくても良い動作を示す短文を挿入していることで、文章にテンポが生まれている点です。本作はホラー要素も含まれているのですが、見知らぬ場所で見知らぬものが蠢いている、という舞台設定において、こういう手探りのような文章を入れることで雰囲気をつくることができるのか、と感嘆しました。また、戦争のさなかに静まっているお邸といういかにもな舞台や、「私」と未来予知ができるお嬢様の関係が、直接的に日本の戦争の状況と結びついている様子はまさに「セカイ系」そのもので、テーマの取り込み方が巧すぎる……と唸りました。百合総合文芸誌かつ「ゼロ年代」をテーマとした作品として、模範解答に近い作品ではないでしょうか。

 

青島もうじき『標のない』

ものすごい力作です。初見の感想は、私の理解力が低すぎるせいで「なんかすごい気もするけどよくわからんな……」というのが正直なところだったのですが、何度も読み返して物語の要素を整理することで、本作の趣旨をようやく掴めたような気がします(全然見当違いだったらすみません)。

まず、「名前というものが無くなってしまった星」という舞台が面白く、それを実現させる「何者かが食べてしまった」というファンタジックな設定と、そこをあまり掘り下げずに進めるのが好みでした。上記の設定を活かした文体も面白く、名前を失ったことで星に住んでいた二人の語り手が混ざり合って物語を紡いでいるのも良かったです。

また、作中で記されているように、「口にする」という語の「食べる」と「発話する」の両義性を基盤にしつつ、星の外からやってきた分類学者によってもたらされた「本来分けられないものを刻み、異なるものにするための言語」「言葉を尽くし続けようとする愛」という概念を軸にして、互いの関係性を安易に表現する言葉を探さず(既存の言葉を与えず)守ろうとする二人や、自分の愛する人への愛が系統樹のように永遠に保存されることを願う人、それを拒み言葉を(愛を)尽くそうとする人など、多様な感情・関係の在り方が美しい文章で表現されていて、テーマ設定とそれを実現する手腕が凄まじすぎると思いました。終わり方もすごく綺麗で、気持ちよく締まっています。

一方で、本作のどのあたりが「ゼロ年代」なのかはよく分かりませんでした。


片山恭一『死が消える場所』(コメント)

あの片山恭一!?とビビりながら読みました。「ゼロ年代」の知識はないので私は「セカイ系」の文脈における物語の役割として読んだのですが、「死が消える場所」というコンセプトが面白かったです。一方で「百合」については特に言及しているようには見えなかったので、欲張るならそこもワンフレーズ欲しかった想いがあります。

 

綾加奈『腐り落ちてなお』

妹が死んだ姉をゾンビとして生き返らせて、生まれたアディショナルタイムをどのように過ごしていくのか、というお話です。掴みと医師免許に代わる「屍師免許」というアイデアが面白く、この単語だけで一気に作品世界に没入できました。また、私自身6年くらい北海道に住んでいたので、北海道ネタがふんだんに盛り込まれているのが個人的に嬉しく、函館のラッキーピエロのネタやハセストの焼き鳥弁当など、懐かしいものが沢山出てきて良かったです。

一方で、作品を読み進めるうち、頭の片隅にずっと「姉が本当に大切なら、どうしてプロに任せず自分で蘇生させたんだ……?」という疑念が違和感として消えず、物語への没入をやや妨げている感はありました。ただ、終盤にはその謎も解決しますし、最後のツイストが二人の関係性をさらに複雑なものにしていて楽しく読めました。

最後に、意識が朦朧とし始めた姉が、マフラーを投げ捨てて満足そうに進む描写は、変なリアリティがあって良かったです。こういう描写に弱いので。

 

伊藤なむあひ『Axe to Fall』≪前≫

一言であらすじを説明するのが難しい作品なのですが、強いて言うなら、音信不通となった「経済ちゃん」という名の風俗嬢(?)を追い求めて、OLのコトコが、「首男」の噂と拳が飛び交う治安の悪い街を探偵と一緒に駆けずり回る物語です。

こちらの作品も舞台は北海道なのですが(!)、突如現れた黒い壁によって世界から隔絶されてしまう……という舞台設定がかなり特殊で惹かれました。

文章がいい感じに脱力していてめちゃくちゃ読みやすく、しかも面白い。私はすらすら読めてフックを効かせる文章が好きなので、伊藤さんの作品はドンピシャでした。バトル描写も勢いがあって良かったです。また、経済ちゃんとコトコの関係性もなかなかに百合成分が高く、百合作品としてかなり良いのでは、という気がしています。

何と言っても、終わりが「なんだかドキドキしちゃいますね」という締めなのが素晴らしく、このフレーズだけで一本取っているように思いました(何の一本なのかは知りませんが……)。続きが非常に気になる作品です。

 

燈河佑『この曲は現在ご利用になれません』(漫画)

かなり心を打たれました。この御時世、女が二人で配信する話はありきたりな気もするのですが、突如相方が居なくなるという展開と、作劇の巧さがエモを引き出しているのかなと思います。序盤のテンポの良い二人の掛け合いから、美星が居なくなって一人語りに移る雰囲気の切り替わりや、終盤での甘い過去回想の挿入など、感情がグイグイ引っ張られてとても良かったです。「この曲ちょうだい」という一見奇妙なお願いが、二人だけの関係を象徴しているようで痺れました。

 

伊島系雨『霧曵く繭のパスティーシュ

憧れの先輩の叔母が書き残した「調律機関」を巡る、「私」がどのように生きていくかの物語です。これまでも伊島さんの作品を目にする機会はあったのですが、大変お恥ずかしながら(且つ失礼ながら)二次元美少女に萌え萌えしているうちに本当に漢字だらけの文章が読めなくなっていたので、本作はまだ漢字が少なくて助かりました(それでもかなり体力を使いましたが)。

本作は無意識下で私たちの思考に影響を与える「嫌釈性意味内容(ダークマター)」をテーマとしている点において、伊藤計劃の「虐殺器官」をリスペクトしていると思うのですが、物語の主軸をSFではなく「私」の等身大の未来の進路に絞っているのが終盤のエモさにも繋がっていて良かったです。一方で、SFの設定にかなり気合いが入っており、説明描写に割かれている文量も多かったため、作品の掲げているテーマの割には、読み味がやや重めに感じました。

ただ、本作のシチュエーションは百合作品としてかなり好きで、「私」と繭先輩、黛さん、お姉ちゃんとの関係はどれも魅力的で良かったです。こういう百合が読みたいんですよね。

 

波木銅『国境沿いのピンボールリザード

あらゆる点において優れている傑作だと思います。

訪問修理工のクックーが、ゲームセンターにある亡霊の取り憑いたピンボール台を修理する話です。あらすじの時点で面白いのですが、語り手をクックーの彼女にしたり、回想するかたちでクックーの物語を語るなど、構成もめちゃくちゃ練られているし、ウィットに富んだ文章も素晴らしいし(『玉を弾いて遊ぶのにね!』)、何よりキャラが本当に活き活きしている。デブ専レズビアンで、ベッドの上でヘビーな彼女に押しつぶされて骨を折りながらイク女って何なんだよ……すごすぎる。海外文学のような(雑語り失礼)台詞回しも好みで、今後の私の創作においても指針にしたい作品でした。今回の収録作で、頭一つ抜けているのではないでしょうか? オススメです。

 

前仲パ須田『トレイル・トゥ・スターライト』≪前≫

なんというか……すごい作品です。

人を殺すことを厭わない女、夏織とシャルが裏社会で活躍しながらもアイドルとして活躍しようとする話です。龍が如くのような暴力ファーストの世界で百合をやるとこうなるのか……という感動がありました。暴力モノは正直苦手なのですが、本作は暴力と恋愛が良い配分で合わせられており、大変面白く読めました。銃撃戦や裏社会の描写などはめちゃくちゃ詳しくないと書けないだろうな、という部分が多く、下調べや知識量の豊富さに圧倒されます(それとも経験者なのか?)。

個人的に素晴らしいと思ったのは、夏織がシャルのライブを見て、感動のあまり「生きていること」を実感し、これまでの自分の所業と今後の展望の無さに訳が分からなくなって衝動的にシャルに殴りかかって半殺しにするシーンです。この支離滅裂な展開には心底圧倒されました。キャラ解像度がとても高いのだろうなと思います。今後破滅しか無さそうな二人がどのような終わりを迎えるのか、続きが楽しみです。

 

汐都れむ『グッバイスタンダー』≪長篇一挙掲載≫

今回の収録作で唯一の問題作だと思います。正直なところ、面白い・面白くない以前に、訳が分かりませんでした(マジですみません)。訳が分からないというのは、恐らく作者が意図的に組んでいるレイアウトや文章のせいでもあると思うのですが……自分でもうまく説明ができないのですが、これまでの読書・執筆経験から次に続くだろうと想定する文章が来ずに別の描写が描かれたり、視覚的な美しさを求める現代詩のような要素が多分に入っているために、なんとなく容易な(あるいは安易な)読解が拒まれているように思いました。

また、所々にゼロ年代のアニメネタが挿入される一方で、キャラの口から語られるエピソードはどれも切実で痛々しく、文章を読み進めていくうちに、もはやキャラのものか筆者のものかも分からないような「痛み」がヒシヒシと伝わってきて、途中からはまともに読めませんでした(体力ゲージが尽きました……)。

後にフォロワーに相談したところ、本作の文章のレイアウトは佐藤友哉作品(ex.青酸クリームソーダ)に近しい部分があるとご指摘いただき、それでなんとか「ああ、これがゼロ年代なのか……」と納得することができたのですが、それでもまだ分からない部分が多く……この作品を真正面から受け止めることができませんでした。

この感想を読んで、筆者は「狙った通りだな」となるのか「いやそうじゃない、もっとちゃんと読めよ」となるのかは分かりませんが、現時点の率直な感想はこのようなものですかね……。

 

総括

レベルの高い作品が多く、面白い文芸誌に仕上がっていました。

寄稿者に北海道在住/出身者が多いからか、北海道が舞台の作品が多かったのと、読むのに体力が必要な作品が多かったのが気になりましたが、後者については前号から引き続き「文芸誌」なので、そんなもんかなと思います。ただ、感想からも分かるように、私は硬い文章を読むのがかなり苦手なので、個人的には難しい単語が出てこなかったり、人が死なない感じで、もうちょっと明るい雰囲気の(あるいはハッピーエンドの)百合文芸作品があると嬉しいですね!(要望のレベルがガキんちょすぎる)

それはともかく、第2号も様々なかたちの百合文芸を読むことができて良かったです。

次号も楽しみにしています、ありがとうございました!

 

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