あけましておめでとうございます。ねぎしそです。
今回は2024年を振り返る意味も含めて、漫画、小説、演劇、映画、百合カプなど、色々なベスト10を挙げていきたいと思います。
なお、あまりに文量が多くなってしまったので、前編と後編に分割します。
前編の内容は「(商業)漫画」「(漫画)同人誌」「演劇」「小説」、
後半の内容は「映画」「拙作」「百合カプ」「居酒屋」という括りにしました。
興味のあるところだけお読みください。
ベスト(商業)漫画2024
この一年は色々な漫画を読んだが、やはり百合のオタクなので、触れる漫画も百合作品が多めになってしまった。ということで、度数強めの百合眼鏡が掛けられた上での評価となります。
1. 岩浪れんじ『バルバロ!』
創作活動において、どのようにすれば人間(キャラ)が魅力的に描けるのかを示したお手本のような作品であり、濁流のようなテンポとエンタメ的な面白さも備え合わせている、凄まじい傑作。岩浪先生は、人間とは一つ上の視点を持っているような気がしてならない。
ちなみに現時点で百合要素は殆どない。一部怪しいところはあるものの、百合がなくても読み続けると思います。なるべく早めに同作者の『コーポ・ア・コーポ』も読まなければ……。
2. 芦原妃名子『セクシー田中さん』
「芦原先生の逝去」「もうこの作品の続きは読めない」という事実が私の評価に影響を与えていることは否定できないが、それを踏まえた上でも、自己肯定感が低い(ように社会から要請されてきた)女性に対して、雁字搦めの現状を一つずつ解きほぐす方法を、あるいはそのための勇気を読者に与えた点で、絶対に評価すべき作品。
また、「友達」だとは明言されているものの、朱里が田中さんに惚れ込み、殆どストーカーと化す描写からは百合の波動を感じ取ることも出来る。
3. 高森みなも『六年目の浦島太郎』
全てにおいてクオリティの高い傑作読み切り。時の流れの残酷さ、人間関係における「優しさ」、愛情の方向と効能について高い解像度を持ち、読後からずっと私の胸を締め付けている。姉妹百合要素もある。
4. 白梅ナズナ/まきぶろ『悪役令嬢の中の人』
悪役令嬢百合のひとつの到達点。自分の価値観に大きな影響を与えた人のために、自らの人生を躊躇無く捧げる歪な愛情が素晴らしい。特筆すべき点は画力で、悪役令嬢のレミリアの美しさは勿論のこと、神々の表現が異質で面白い。あと普通に漫画がうまい。
5. んみ『ロマンスコード』
人間×アンドロイド百合の最高傑作。人間が抱く愛と、アンドロイドの抱く愛、その違いと優位性について踏み込み、見事エンタメとして作品に昇華させている。それにしても、んみ先生の作風の広さには舌を巻く。一体この人は何者なんだろう……。
6. つるまいかだ『メダリスト』
フィギュアスケートを題材にした作品。純粋に話が面白く、キャラもかなり魅力的。自分の叶えられなかった夢を子供に託す系は、どうしてもエモくなるのでズルイとも言えるが、最近はその流れも不穏になっており面白い。また、主人公(の一人である)いのりちゃんに対して、同級生の天才・光ちゃんや歳上で顔が良いいるかちゃんから向けられる感情も百合として味わうことができる。
7. 武蔵野創『灼熱カバディ』
スポーツ漫画として非常にレベルが高く、特殊能力一歩手前の段階で、主人公達の熱いバトルを描いているカバディ漫画。他校の生徒を含め、キチンと登場人物の成長を描いている点が好印象。作中では男の娘の人見くんが女装して主人公の宵越(男)とダブルデートをするなど、かなり私好みの描写が挿入されるのだが、最終回では宵越が人見と同棲して同じベッドに寝ている人見ルートに突入していることが明らかになり、神作品であることが確定した。百合要素はないです。
8. 筒井いつき『少女支配』
共依存百合の最高傑作。治安も人間関係も最悪だが、その分最後の終わり方が大変綺麗で素晴らしい。愛した人のために(過去の)自分の全てを捧げることは、現在地で空っぽのまま留まり続けることに等しい。端から見ると過去の人に自分の人生を奪われているようにしか見えないが、それを肯定する女の横顔からしか得られない読み味がある。
9. ヨシアキ『雷雷雷』
精密な背景と相性の良い線で、キャラの表情を細かく、可愛く描いているのが非常に好みな作品。設定自体に目新しさはないものの、キャラ造形は独特で読ませるものがある。2巻から先輩×後輩(バディもの)の百合が発生するのもお気に入りポイントの一つ。
10. 本尾みゆき『だってワタシ、120点だもの。』
スカッとジャパンのようなママ友マウンティング漫画かと思わせておいて、過去に餌をやったが為に、貧乏少女だった瞳から数十年近く異常に執着されてしまう不憫な女、美咲の物語。幼少期に母親から愛情を注がれなかった美咲は、大人になっても承認欲求に苦しめられてマウント気質になり、出来の悪い娘にも厳しく当たってしまうのだけれど、作中で様々な葛藤を乗り越え、ようやく娘を愛せる「正しい」ママになれたのに、その道筋には常に主人公のストーカーと化した瞳が立ちはだかる。その瞳がとにかく異常。狂気というか、もはや殆どホラーに近い。続きがめちゃくちゃ気になる作品。
ベスト(漫画)同人誌2024
最近は同人誌漁りにハマっていて、コミティアやコミケなどで発行された良さげな百合作品を意欲的に発掘しようとしているが、基本的に手に取るのは百合漫画ばかりで、百合小説はあまり手に取れていない。なので今回は同人誌という括りではあるものの、実質「(百合漫画)同人誌」というジャンルが正しいように思います。
上記を踏まえた上でご覧ください。
1. キカイ『口腔内に帰らせて』『ハムスター大作戦』(連作)
綺麗な物なら何でも口の中に入れてしまうヒバという名前の女と、親から決められた道を進むことをよしとするエリカの物語。背景の白が目立つ紙面であり、かなり線が少ない印象を受けるが、その分エリカの内面描写などの表現が豊かに見える。エリカが「変」なヒバにどうしようもなく惹かれる様子がめちゃくちゃ良くて、この引力こそが愛なのだと納得する。こういう漫画が描ければ死んでもいいよな、と思えるような作品の一つ。
2. みや『青色のうさぎ』
独自の感性を持った女性、のぞみが、幼なじみのはるちゃんと初めての同人誌即売会に参加し、本を出す話。よくある筋書きと言えばそうなのだが、みや先生のキャラクターはどこか少しテンポがズレているところがあって、それが堪らなく愛おしい。本作も、主人公ののぞみははるちゃんのことを溺愛していて、はるちゃんと一緒に何かをすることに強い喜びを感じ、自分の人生には興味を持てない一方で、はるちゃんはのぞみの中に眠っている才能との距離感が分からなくて……という時点でひどくエモいのだが、その結末がまた堪らなく愛おしい。多分そのうち商業デビューされると思います(それとももうしているのか?)。
3. 森あもり『月のねがいごと』
引きこもりになった幼なじみが突然、かぐや姫であることを告白し、部屋から出てきて欲しかったら三種の神器を持ってこいと言ってくる話。森あもり先生は『わたしの悪役令嬢』でもそうだが、既存の物語を逆手に取るような話が多く、その共感性をうまくズラして、コメディチックなオリジナリティ溢れる作品に昇華するのがうまいイメージがある。本作はその面白さと百合のエモさが両立している点を評価しました。
4. あまもりフェスティバル『塗料を全身に塗った女』
表題の通り、全身を真っ黒の塗料で塗った女と、その親友の物語。シナリオの構成がうまく、全身を真っ黒に塗る、という奇想がちゃんと物語に食い込んでいるのが素晴らしい。冬コミで百合目的で購入しようとして、念のために作者の方に「これは百合ですか?」と聞いたら「分からないです」と回答されたのですが、私的にはガッツリ百合だと思います。
5. 柚木いつぐ『花見手振り』
可愛らしいデフォルメチックな女性二人が、花見をしながら手話について話す物語。主人公の二人は両片思いというか、相手が自分のことをどう思っているのか伺っている節があるのだけれど、その探り探りのデートのなかで、お互いが向き合って手話をするときのモノローグがめちゃくちゃ素晴らしかった。
6. 桜井くん『おまえひとりが舟を焼く』
不良に憧れる女子高生たちの日常をギャグを織り交ぜて描いた作品――かと思いきゃ、一人だけタガが外れてしまうところまで、「日常」に組み込んでしまった衝撃的な作品。とにかく読んでくれ、としか。
7. 橋本ライドン『ゆめみる姉妹』
橋本ライドン先生の、狂った女から向けられる歪んだ愛情をいっぱい摂取できる作品。金持ちのお嬢様が顔が好みの貧乏な女を拾い、お姉ちゃんと呼びながらも「飼い犬」として接する話。破滅しそうだが、しなさそうでもある、そんな絶妙なバランス感覚がスリリングで楽しい作品。
8. 青木俊直『工事中ガールズ』
体内で(物理的な)工事が進行している女の子たちの物語。一見、あまりにも奇想がすぎるのだけれど、可愛らしい絵柄とホバーダンスという種目を絡めることで、めちゃくちゃ爽やか且つストレートに読める先輩×後輩百合漫画になっているのが恐ろしい……。
9. 日野雄飛/モレロ『ふつうのともだち』
霊感を持つ二人の女子高生が、危険な怪異と触れ合うホラー百合作品。日野先生とモレロ先生が、どちらも同じキャラクターで別々の話を描く、という体裁になっているが、どちらの怪異も容赦がなくて面白い。両名ともに画力が卓越していて、女の子がとても可愛いのも嬉しいポイント。
10. 梅原うめ『おくびょうウサギはおたがいさま』
中学校が別々になったこと以外は、どこまでも王道な幼なじみ百合漫画……のはずなのだけれど、卓越した画力と安定したコマ割、一切無駄のないシナリオから出力される幼なじみ百合パワーは凄まじいものがあり、大谷翔平が投げるストレートのような貫禄がある。野球何も知らないけれど。
ベスト演劇2024
今年は9作品しか観れませんでした。作品数の関係上、評価の低い作品もランクインしており、ベストとして挙げる意味がほぼ無いことを確信している。まぁ書くんですけれど。
1. くによし組『重い愛』
人物描写とテンポ、ギャグセンスに衝撃を受けた作品。感心するあまり、上映中は空いた口が塞がらなかった。2024年で一番衝撃を受けた作品かも。私が観劇したのは「伏線編」(short ver.)であり、タイミングの関係上、後日上映されたネタバレ編(本編)を観ることは叶わなかったのだが、未だにそれが悔しくて仕方ない。なんとかして観る手段はないだろうか……?
2. 果てとチーク『はやくぜんぶおわってしまえ』
美醜を競い、生徒の性自認を揺るがせる点において、ミスコン・ミスターコン(男装コンテスト)は不適である、という判断が下された女子校を舞台に繰り広げられる会話劇。上映時間前から役者による日常会話が繰り広げられ、日常をシームレスに非日常へと接続させる手法が見事で、そのままどこにでもありえるなんでもない日常会話から、それぞれの生徒が抱えるトラウマ、悩みが発露していき、鑑賞者の心を抉る、えげつない展開になっていく。上映の最後の演出はいつまで経っても忘れることが出来ず、生徒の悲痛な叫びが耳に残るとんでもない作品。
3. 世田谷シルク 二人芝居『カズオ』
たった二人で複数人の登場人物を演じ、なおかつ題名の「カズオ」を演じることはない、という気の利いた配役。シナリオもうまく練られており、対立関係にある銀行の支店長である二人の男の家族に、うまい具合に寄生(パラサイト)する家庭教師のカズオのクズっぷりが爽快で、最終的にボロボロになった両家が組み立てられるなかで、それぞれの家の父親同士、母親同士、子供同士で育まれる関係がかなりエモい。もちろん、母親同士の関係は百合に該当するので、百合のオタクとしても嬉しい話だった。
4. ばぶれるりぐる『川にはとうぜんはしがある』
ある田舎の一軒家と、屋根で繋がりつつも建物としては2mほど離れている「離れ」との間にある空間(地面)を「川」のように見立て、すのこを橋のように使って行き来する家族を描いた作品。
そのビジュアルが優れているのは勿論、田舎の実家に帰ってきて離れに住み、イラストレーターとして活動する妹と、イラストレーターという職業の不安定さに眉を顰める姉、事なかれ主義の姉の夫、イラストの才能を秘めた姉の娘や、田舎に移住してきた人当たりの良い謎の男と、濃いキャラが揃っていて観ていて楽しい。それでいて、田舎と都会、才能と努力、独身と結婚などの二項対立を揺るがす話は、多くの人に刺さると思う。非常に優れた作品。あとこの作品にはとうぜん百合がある。
5. バングラ『習作・チェーホフのかもめ』
寡聞ゆえチェーホフの作品を観たことがなかったが、普通に脚本の出来が良くてワロタ、となった。チェーホフ、あまりにも人間を描くのがうますぎる(と思わせるのがうますぎる)。
6. マミアナ『奈落のクイズマスター』
変な地下空間(奈落)でクイズ番組を放送している男と、入管で上司に言われるがまま偽装工作を行う女性の世界が交差する、かなり奇妙な作品。どことなく『スラムドッグ$ミリオネア』を思わせるが、作品全体の主張は外国人の入管での死亡事件の原因の追及にあり、最後の音声にはひどく驚かされた。
7. お布団『アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国』
結構難しい作品。あの時、〇〇していれば……を延々と繰り返したり、挑戦的な演出を試みていたりしていたが、そこまで自分に刺さったわけではなかった。
8. 家劇場の一周忌『おわりの遊園』
北千住にある、既に劇場としての役目を終えた家劇場を一年ぶりに蘇らせて演じられた演目。ダンスと音楽が中心でストーリー性が薄かったので、私が苦手なタイプの作品だった(話がないと私は楽しむことができないので)。
9. ルサンチカ『刺繍/TATTOOER』
色々とすごい劇団らしいが、本作は楽しみ方がよく分からなかった。
10. 無し
ベスト小説2024
ここ一年は小説に対する興味がほとんど無く、まともに本が読めていないのでこのランキングの精度はかなり低いと思う。ちなみに『地雷グリコ』は11位なのでランキングには入っていません。アレ日本国民が一丸となって持ち上げるほどは面白くはないでしょ(面白いことは面白いと思う)。それとも俺の感受性が死滅しとるんか?
1. 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』
エンタメ小説として優れているのは勿論のこと、破天荒な成瀬を支える島崎と成瀬の関係があまりにも美味しい。文句無しの傑作エンタメ百合小説であり、百合のオタクはこうすれば百合作品を大衆に膾炙することができるのだと学べる教科書としての側面も持っている。『成瀬は信じた道をいく』も同様に素晴らしい。百合度は続編の方が強いかも。
2. エルヴェ・ル・テリエ『異常』
ワンアイデアSFではあるものの、それを起点に人間を精密に描くことに成功し、それでいてエンタメとしても満足できるクオリティに仕上げている傑作SF。ネタバレになるので詳細は書けないが、私には何度生まれ変わってもこれを書けない自信がある。
3. 朝井リョウ『正欲』
水の膨らみ、爆発、飛び散り……というような現象に性的興奮を覚える人々の物語。特殊性癖小説とひとくちに括ることは出来るだろうが、この性癖をどれだけ自分事として捉えることができるかで、この物語の立体感が変わってくる。と言うのも、私は小学生の頃からTSF(性転換)というジャンルにどハマりし、以降TSFでしか性的な興奮を抱くことが出来なくなったのだけれど、私が特殊性癖と思い込んでいたTSFも相対的に見ればメジャーな性癖であり、「水の躍動」に興奮する人々に共感することはかなり難しく、メジャーとマイナーの線引きの難しさを思い知った。どこまでが正常で、どこからが異常なのか? その辺りの固定概念がある人間全員に読んでほしい作品。
4. 塩田武士『存在のすべてを』
読者として特筆すべき点は無いのだけれど、ある人間と、その周囲に存在する人間の描写があまりに素晴らしく、登場人物の「実在」の演出に成功している、という点で評価した作品。私が何度も生まれ変わっても書けないだろうなと思う。
5. 間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』
SFの延長線上にある純文学というか、何が人間を人間たらしめているのかを明らかにした、これまでにありそうでなかった素晴らしい作品。この作品が優秀賞に留まっている時点でハヤカワSFコンテストの選考委員は見る目がなく、この作品に否定的な意見を述べた作家陣はすぐさま選考委員から退くべきだと思う。逆に言えば、優秀賞としてでも評価された点にハヤカワSFの善性を見出すべきかもしれないが、私は今のところSFアンチなので誰が何をしようがどうでもいいです。
6. 佐佐木陸『解答者は走ってください』
支離滅裂な描写を語る淡々とした文体からどういうオチをつけるのかと思っていたら、中盤からの急展開にビビりました。結果として諏訪哲史『りすん』に連なる私の関心領域のど真ん中をぶち抜く凄まじい作品。筆者の魂が込められている。
7. 織守きょうや『いいよ。』
『貴女。百合小説アンソロジー』に収録されている短編。無口な同級生に惚れた女子高生が、自身の心中を吐露するような甘い語り口が素晴らしく、二人の共通の友人が少し距離を置いたところでバランサーとして機能しているのが印象的な作品だった。百合が好きなオタクに総じて刺さるような強さを持っている。
8. 一穂ミチ『光のとこにいてね』
一緒になりたいのになれない、二人の女性の人生を描いた作品。正直ストーリーをあまり覚えていないのだけれど、終始不条理な展開でくっつきそうでくっつかないギリギリのラインを攻めていて、なかなか幸せになれない展開と繊細な心理描写に悲しくなっていた気がする。が、ラストの展開がしっかり百合で良かったです。
9. 川上未映子『黄色い家』
ちゃらんぽらんな母親の代わりに自分の面倒を見てくれた年上の女性と同棲しながら、同年代の女の子たちとヤバい橋を渡って金を稼いでいく女の子の話。「みんなで過ごすこの日常がずっと続けばいいのに……」と真剣に願う主人公が、風水に目覚めて家を黄色くし、子供とは思えないリーダーシップを発揮して、どんどん金を追い求めていくのだけれど、同年代の女の子はみんな「この生活が続けばいいのに」と口にするだけで全く行動に移さないところに熱意の差があり、そのズレから崩壊に向かっていく流れが辛かった。主人公の年上の女性に対する感情がかなり独特で、私の中では百合認定をしています。
10. ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』
歴史的な(化学分野における)偉人の伝記のようでありながら、ホロコーストや原子爆弾などによる「愚かさ」の物語でもある。「プルシアン・ブルー」の章の視点の転換には目を見張るものがあるし、最終的な結論には脱力するしかない。映画『オッペンハイマー』や『関心領域』にも通じる部分はあるが、アレらよりも人間のことを茶化しつつ、ハーバー・ボッシュ法の発明で爆発的に育て、破壊してきた「自然」に対して目配せをしている点において、より切実に人間の愚かさに向き合っているように感じた作品。
前編は以上です。如何だったでしょうか?
「映画」「拙作」「百合カプ」「居酒屋」の2024年ベストについて纏めた後編はこちらからご覧いただけます。
何かしら意見やコメント等ありましたらこちらまで。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!