新薬史観

地雷カプお断り

あらた伊里「総合タワーリシチ」(完全版)読んだ!

びっくりしました。なぜなら毎日書くはずのブログの存在を忘れて昨日寝たからです。毎日書くと決めて2日目のことでした。つまり毎日記事を書いたのは初日だけであり、その瞬間に「毎日」の定義が崩壊します。たった一日を「毎日」と表現するのは、日本語の厳格さが許さないでしょう。何事も続かない人間のことを三日坊主とはよく言いますが、自分は坊主にすらなれない未熟者、初日胎児がいいところかもしれません。臥薪嘗胆の意味も込めて、今日からハンドルネームは初日胎児にします。

 

嘘です。

 

百合漫画を読みました。

「総合タワーリシチ 完全版」

あらた伊里先生の「総合タワーリシチ」です。

ブログは初日胎児な自分ですが、百合だけは無限老人です。いくら読んでも百合は良い。この感情に恐らく終わりはないのでしょう。そうでなければ困ります(百合に興奮する老人はちょっと怖いけど)。

率直な感想としては、全体的に脚本力が弱いように思ったのですが、それを上回るキャラの魅力に溢れていて面白く読めました。おそらく前者の弱さは古い漫画のノリによるもので、様々なキャラがコマ内で幾多ものボケとツッコミを行うことによってテンポが悪くなる、ということなんだと思います。キャラがボケようと前傾姿勢をとりすぎることでシナリオが分断されるように感じるのは、そう珍しいことではありません。というのもこれは持論ですが、ひとつのボケに至ると、これまでの展開が一端回収されるように思うからです。これはちょっと正確に書けているのか分からないのですが、きらら系ギャグで流行の四コマ漫画形式で話を進めるものでは、当たり前ですがすべての四コマ目にボケが用意されていて、そのためにシナリオは三歩進んで二歩下がることを繰り返さざるを得ません(結のための起承転までの2歩、掲載された第○話として進めるための1歩)。そのために同じことを普通の漫画でもやろうとすると、コマ割が非常に難しいだけでなく、読んでいる割に話が進まないということになると思います*1

また、漫画が実際にはしっかり話を進めていても、ギャグが頻繁にあるだけで、読者の認識で同様の現象が起こるものだと勝手に考えています。これは全体像より目の前にあるギャグが「何故面白いのか?」に注目しがちになるからです(自分だけかな?)。

 

ですので、このような漫画でキャラを好きになるのは結構面白い体験でした。テンポの良さと感情移入は切っても切れない関係にあると思うので、読みにくい漫画は(小説でも同様に)キャラに感情移入しにくくなると考えています。実際にこの漫画に完全にノリきれたわけではないのですが、それでもキャラ同士の関係性に魅力を感じたのは、脚本とは独立したキャラの可愛さ、動きのコミカルさが秀逸だったからなのかもしれません。実は自分は「時任都」さんのビジュアルに心を奪われており、この子をずっと眺めていました。

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3位の子ですね。

おそらく髪型と瞳がクリティカルだったのですが、実は幼なじみ百合をやってくれる貴重な人材でもあり、そのお相手は6位のバベルちゃんです(本名:日下部ちはや、なおバベルと呼ばれることは殆ど無い)。

都はちはやを「ちーちゃん」と、ちはやは都を「みゃあ」と呼ぶというびっくりするくらいの甘い呼びかけを日常的に行っているのですが、高校生になって以来、ちはやは「みゃあ」と呼ぶのを恥ずかしがるようになります。それで皆の前では「みやこ」と呼ぶように心がけていてるのですが、それを都は寂しく思っているという流れがあります。さらに二人の家は隣同士で、全く部屋を片付けられない+親が多忙で帰ってこないことも合わせて、いつしかちはやは都の部屋に住むようになったというオタクの欲望ガンガンの設定で関係が描かれるのも非常に嬉しいポイント。最終的には書き下ろしでアホのちはやが都にすごいことをしてすごい反応になるので、かなり面白い関係性でした。また、幼なじみ百合における性欲の描き方はかなり難しいと思っていたのですが、こんなに幼なじみの距離感をやっていて、それでいて性欲への繋がりに違和感がないのも参考になりました。

他のカプも非常に魅力的だったのですが(1位2位のカプです、次点で好き)、時間が無いのでひとまずこのあたりで。百合が好きなら買って損はしないおもしろ百合漫画です。特に書き下ろしの漫画が非常にクオリティの高いものになっているので、読むなら完全版がいいんじゃないかなと思います。偏見本棚にタイトルを記入してくださった方、ありがとうございました!

*1:四コマ形式があのようなシナリオで進められるのは、コマが非常にコンパクトかつ見た目が美しいからで、読むことに対するストレスが極限まで無くされているからだと思います。これは全て適当な感想です。