新薬史観

地雷カプお断り

浅野いにお「おざなり君」読んだ!

毎日日記(Twitter除く)を書く知り合いが2人に増えた(ことを知った)ので、今日から自分も毎日ブログを書くことにした。二度あることは三度あると言うので、それを応用すれば二人にできることは三人目である自分にもできるはずなのだ。

 

というわけで早速書く内容がないので、手元の漫画の感想を書きます。

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ただただ贅沢な本という印象。いま世に出ている漫画は殆どがモノクロ原稿で世界に色を出そうとしているが、おざなり君は謎に「全ページフルカラー」なのにかかわらず、「色がある」ことをテーマにするでもなく、ひたすら漫画表現の幅を伸ばそうとしているように見える。

そのうえ、不条理な展開に加えて明らかに意味の無い実写の写真が挿入されたり、毎話タイトルロゴが変わったりと手が込んでいるのに、第7話まで掲載されるのはほとんど同じシナリオの漫画であるところも気になる。正直に言うと、この時点で自分は「しょうもないものを過剰包装することがこの作品が提示する面白さなのか?」と勘違いしてしまった。漫画で「無駄」を「贅沢」として消費する快感というのだろうか、浅野いにおなら考えそうだなと思ったが、実際にこの辺りは漫画自体の面白さより奇抜さが勝っているように思う。

話が変わるのは第8話からで、このあたりから話に厚みが生まれていく。上司に反抗する部下、という関係がなぜか恋愛関係に結びつき、かと思えば過去に二人は深い結びつきを持っていたことが明らかになる。序盤の理不尽な上司の暴力への解が後半に盛り込まれているという点で、最終的にこの作品の話に「無駄」なものはなかったのだと思い知らされる点で、やはり浅野いにおって漫画うまいなあと思う。これは伏線と構成の話ではなく、挿入してくるイラストや落書き、言葉選びなどに溢れる「浅野いにおワールド」とでも言えばいいのだろうか、「こいつふざけるな~真面目に描いているのか?」という先入観を読者に抱かせて舐めさせてから殴ってくるようなタチの悪さがあった(P26、27の見開きのライブシーンでは圧倒的な描写力で言葉を失う)。

テーマとしては、音楽に無限の可能性を感じていた学生時代の心と、その心とは別に成長していく身体、要求される社会的地位などとの折り合いの付け方が主に扱われているのが、その齟齬がどうしようもなくなった先としての一夜限りの性交という位置づけもかなり良かった。

やっぱ浅野いにおはすごい。