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武田綾乃『青い春を数えて』読んだ!

武田綾乃『青い春を数えて』(2018)

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【総合評価】6.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

ガチで大事にしたい作品(9<x)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(x≦6)


【世界構築】1.5点 (2点)

武田綾乃さんにしか書けない学生の姿があるように感じるが、恐らく青春モノ小説を全然読んでないからそう感じるのだろう。見栄っ張りであるとか、相手を蹴落としたいとか、人間が当然持っている感情を半端な技術でラッピングする中高生を描くのが非常にうまいと感じる。自分は中高生時代にはまだ物心が付いて居らず、殆ど自我もなかったので記憶があまりないのだけれど、こんな感情で周囲や自分は動いていたのだろうかと考えると面白い。

 

【可読性】1点 (1点)

読みやすいです。素直な文章。


【構成】1点 (2点)

悪くはないが、驚愕の展開!というような面白さがあるわけではなく、ただ日常が流れていく。そういう作品なので仕方が無いが、もう少し捻ってくれると個人的には嬉しかった。

 

【台詞】1点 (2点)

たまにめちゃくちゃチープな台詞が挿入されるのだけれど、青臭さを狙ってやっているのだろうか。作品内でも言及されていたので恐らくそうなのだろうが、ひとつ微妙な台詞が入るだけで一気に作品の質が下がるように感じるので、なかなかチャレンジャーだなと思った。

 

【主題】1点 (2点)

割と「インターネットをやめろ」が主題な気もする。なぜなら他者の規範や意見が自分に染みこんで来やすくなり、自我が電子の海に埋もれてしまうから。自我をインターネットに乗っ取られると大変で、だいたい脳内に匿名掲示板が立てられることになる。それは青春を無駄にする大変もったいない行為なので、今すぐに辞めましょう……的な。

全く以てその通りなのだが、自分はその頃にはもうインターネットに頭をやられていたので辛くなりました。

 

【キャラ】0.5点 (1点) 

評価が難しい。武田綾乃さんが書くキャラって確かに今の中高生を反映していそうなのだけれど、逆に虚構性が増すというか、「キャラクター」として好きになれない。なんというか、進研ゼミの勧誘漫画に出てくるようなキャラクターを小説に持ってきたような気がする。めちゃくちゃに貶しているような気がして申し訳ないのだけれど、どうもテンプレ感が拭えないのだ。リアルすぎて逆にテンプレというか、キャラに意外性がないのだろうか? 物語ってそう進むと気持ちいいよね、そう喋ると気持ちいいよね、という流れに誠実なのだ。小説家として優秀だとは思うのだけれど、あくまで自分にとっては乗り切れない作品になってしまった。そういう意味ではユーフォはその辺りのさじ加減がすごく良い塩梅だったのかも。

 

加点要素

【百合/関係性】0.5点 (2点)

該当描写あり。個人的に一番好きなのは「側転と三夏」の姉妹の関係性だ。次点で「白線と一歩」の先輩と後輩。読んでいていいねとは思ったが、先述の通り、あまりキャラに実在感を考えにくいので完全にはハマれなかった。

 

【総括】

これ多分アラサーが読むから刺さりにくいのであって、中高生が読むと「自分のことが書かれている!」という衝撃で大切な本になる気がします。そういう意味では、自分はもっと早くこの作品に会いたかったです。総合評価6.5とか偉そうに付ける前に。