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佐藤順一&柴山智隆『泣きたい私は猫をかぶる』観た!

佐藤順一&柴山智隆『泣きたい私は猫をかぶる』(2020)

泣きたい私は猫をかぶる - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

映画「泣きたい私は猫をかぶる」公式サイト|Netflixにて全世界独占配信中!

【総合評価】6点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

ガチで大事にしたい作品(9<x)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(x≦6)


【世界構築】0.5点 (2点)

作画は好き。キャラデザもよくて、特にムゲの目や睫毛がとてもよかった。

肝心のシナリオは……ジブリの『猫の恩返し』を下敷きにしているのだろうか。独自の世界観を生み出そうとしているが、全然できていないように感じた。生活の描写シーンが少ないため、猫だけが住む島・猫島の現実感も一切ないし、ただ人間の街の延長線上に存在する場所になっている。ムゲときなこが頻繁に街と猫島を行き来したり、他のキャラも簡単に猫と人間の変身を繰り返すことも原因のひとつだ。ふたつの世界、または人と猫との間に明確な断絶や境界線がないために、物語上の緊張感も生まれない。自分としては、作品の没頭に重要な「フィクションとしてのリアリティ」を感じることができなかった。

とはいえ、猫になって人間の言葉が聞こえづらくなるという表現は非常に重要なムーブであり、自分好みのものだった。これでさらに「にゃにゃっ!?(えっ、日本語も読めないんだけど!)」となるとよかったのだけれど。

その辺りをしっかり書いているお気に入りのラブライブ!の二次創作があるので貼っておきます。

www.pixiv.net

マジで猫への変身をやるならこれくらい徹底して描写してほしい。大好きな作品だし、物語の強度や猫になる動機的にもこっちの作品を読んだ方が満足度は高いと思います。

 

【可読性】1点 (1点)

観るのを辞めようと思うことはなかった。


【構成】1点 (2点)

全体的に盛り上がりに欠ける。最初のスリルは「ムゲが猫であることがバレそう」なことであり、次に「ムゲが見つからない」「ムゲが猫から戻れない」と続く。でも対抗馬のきなこは早々に諦めて猫に戻ろうとするので、この時点で「ムゲが猫から戻れない」ことのスリルは半減する。もう人間に戻れる空気になる。たとえ猫の店主がどんな意地悪をしてもそこまで怖くないのだ。最終的にはその辺りの問題も天辺にたどり着くことができるかとか、ボールを取り返すことができるかとか(そのうえ店主の動きは緩慢でスリルがない)のアクションになってしまって、ただ画面を眺めるだけになる。銃とかがあると生命の危機的にも良いのだけど、そういうわけでもないし……う~んという感じ。悪くはないけどさ。

 

【台詞】0.5点 (2点)

特に良いと思った台詞がない。

 

【主題】1点 (2点)

他人がいくら楽そうに見えても案外そうでもないし、皆さん与えられた生を精一杯生きましょうという話になりそう。これは本当にその通りだが、自分にとって必要なメッセージではなかった。あとはタイトル通り「猫を被る」というフレーズもそれなりに重要ではあり、子どもが猫を被って全然本心を曝け出さないからこんなことになっちゃうんだよという路線に乗ると、もっとみんな素直に生きましょうという話にもなる。その通りなのだが、個人的にはムゲにとって「猫を被る」対象が両親であるのに対し、実際に猫のお面を被ってアクションをするのが日之出くんという点に論理の混迷が見られたので、タイトルとして不適だろうと思った。

 

【キャラ】1点 (1点) 

キャラとしては、ムゲがかなり活き活きしていてよかった。百合漫画ばっかり読んでいるせいか、ここまで男に対して好き好きな女子を観るのは新鮮だった。でもひのでサンライズアタックは技名として非現実的すぎて全然乗り切れなかった。

親友の頼子ちゃんの百合ムーブはよかったです。まあ、最終的に異性愛規範に回収されるんですが。あと、母親同士でキャットファイトをする感じもよかったです。

 

加点要素

【百合/関係性】0.5点 (2点)

該当描写あり。親友の頼子からムゲに向けての感情は良かったように思う。ムゲは頼子をなんとも思ってなさそうなのも面白かった。この関係性を好きか嫌いかで言えば間違いなく好きなのだが、物語の強度的に乗り切れない部分がある。

あと、きなこと薫さんの関係性も百合っちゃ百合なのかな?

 

【総括】

う~~~~んという感じ。どちゃクソにひどいって訳じゃないが、先述のように物語に入り込めない。本当に佐藤順一が関わってるのかなあ?と思ってしまった。あと音楽があんまりハマってないようにも感じた。『花と亡霊』それ自体は良い曲なのに、挿入タイミングが微妙。それにスタッフロールでは吹き出しをベタベタ貼ってそれなりの文量の物語を進めるので普通に冷めちゃう。何よりラスト、ムゲと日之出が一緒に日の出を見なくてどうするんだよと気が狂いそうになってしまった。あんなに語感の悪いひのでサンライズアタックを延々に繰り返していたんだから、せめてネタを回収しろ!一緒に日の出を見ろ!!!!

ダメだな、粗しか出てこない。あまり良くない傾向なのでこの辺で。

難しく考えずに見る分には楽しめるかもしれません。