空中ブランコ ドクター伊良部 | 奥田 英朗 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
【総合評価】9.5点(総合12点:全体10点+百合2点)
【作品の立ち位置】
ガチで大事にしたい作品(9<x)
積極的推し作品(8<x≦9)
オススメの手札に入る作品(7<x≦8)
まずまずな作品(6<x≦7)
自分からは話をしない作品(x≦6)
※前作『イン・ザ・プール』とほぼ同じ評価です。
【世界構築】2点 (2点)
前作に引き続き、めちゃくちゃ面白い。ドクター伊良部と看護師マユミが患者を迎えるという設定に変更はなく、世界観を同一にしているシリーズもの。エンタメ作品としてかなり優れている。文体も最高にクールで、ハチャメチャな人間を自在に操る三人称視点が素晴らしい。やっぱり時代は三人称ですよ、三人称。
今作に出てくる患者は以下の通り。
1 余所者を信頼できないサーカス団員
2 尖ったものが恐ろしいヤクザの若頭
3 義父のカツラを取りたい精神科医
4 後輩に怯えるプロ野球選手
5 何を書いても過去作の焼き直しな気がする女流作家
う~ん、面白い。ただ、前作に比べると尖り具合が0.95倍くらいにはなりましたね。まあ元の点数が10000点くらいあるので問題はない。
【可読性】1点 (1点)
すらすら読める。
【構成】2点 (2点)
一編一編にスリルがあり、読後の爽快感がすごいのは前作同様。特に3本目の「義父のヅラ」はスリルに溢れており、素晴らしい。
【台詞】2点 (2点)
キャラクターが非常に活き活きしている。台詞の捌き方も見事だと思う。
【主題】1.5点 (2点)
伊良部の「抑圧しているから病気になるんだよ。じゃあ解放すればいいだけじゃん」というスタンスそのものが主題になっており、それに翻弄される人々が魅力的。自分もやばい精神病になったらここに診察を受けに行きたい。
【キャラ】1点 (1点)
たいへん魅力的だった。
加点要素
【百合/関係性】0点 (2点)
該当描写なし。
【総括】
ドクター伊良部シリーズの2作目として文句なしの出来。もちろん、一作目であそこまで世界観がつくれていればコケる訳がないのだけれど、読んでいて常々、ああこれが自分の目指すべきおもしろ文章だなあと思いました。文章そのものに味わうような美しさはないのだけれど、キャラが遊びまくっている自由さを可能にする文章捌きは参考になる。藤本タツキ先生もそうだが、キャラに「いえーい」や「いやっほー」と言わせて世界観が崩れない作品作りを目指したい。また、個人的には読んでいる人間の感情を揺さぶること(できれば驚きや笑顔が望ましい)に文字や文章の面白さがあるので、その辺りを突き詰めていきたいですね。良かったです。オススメ。