新薬史観

地雷カプお断り

奥田英朗『町長選挙』読んだ!

奥田英朗町長選挙』(2009)

町長選挙 ドクター伊良部 | 奥田 英朗 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

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【総合評価】7.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(x≦6)

 

【世界構築】1.5点 (2点)

前作に引き続き面白いことは事実なのだが、伊良部が外に出てくるようになってからやや趣が変わってしまった。伊良部はずっと地下の診療所にいるから面白いと思うのだけれど、今回は終わりを意識してか外に出たり、マユミちゃんも少し親しみやすくなっている点でやや寂しさを覚えてしまった。

 

【可読性】1点 (1点)

すらすら読める。


【構成】1.5点 (2点)

シリーズ1作目、2作目に比べると、やや読後の爽快感が薄れていた。逆に言えば、それだけ構成が緩くなっているとも言える。悪くはないのだけれど。

 

【台詞】1.5点 (2点)

流石にシリーズ3作目ともなると(面白さに)慣れてしまったが、それでも十分に楽しめるのも事実。やはり台詞は重要だ。

 

【主題】1点 (2点)

これまで同様。ずっと続けて読むと有り難さが薄れてしまうので、もっと社会に憎しみを覚えている時に読めば評価が変わると思う。

 

【キャラ】1点 (1点) 

相変わらず魅力的ではある。

 

加点要素

【百合/関係性】0点 (2点)

該当描写なし。ややマユミちゃんとバンドメンバーの子の関係性が面白かったが、別に百合といって持ち上げるほどのものではないかな。

 

【総括】

ドクター伊良部シリーズの3作目にして最後の書。終わり方としてはやや物足りなさがあったものの、表題作である「町長選挙」の完成度が本書で一番高く、まあまあ満足できた。個人的には、本作から実在する「あの有名人」を題材に選んでしまっているのがすごく勿体ないように思えた。実在する人間を取り扱うことによるメリットは、文章で説明しなくても作品外の知識を読み手が勝手に補ってくれてキャラに実在性を与えるところと、対立構造や笑いをとりやすくなることくらいだ。それらは間違いなく面白い作品に必要なものではあるが、これまでのシリーズでも十分に達成できていたことを、何故最後のシリーズになって行ったのかがうまく飲み込めない。でも作品の質が極端に落ちているわけでもないので(やや落ちてはいる)、こきおろすこともできない。かなり評価が難しいように思うが、個人的にはこれからドクター伊良部シリーズを読む人は、1作目、2作目で止めていてもいいような気はします。知らんけど。

なにはともあれ、これでアニメ『空中ブランコ』を最後まで見る準備ができたのでよかったです。見るぞ~。