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大橋明代『海辺のエトランゼ』観た!

大橋明代『海辺のエトランゼ』(2020)

映画「海辺のエトランゼ」大橋明代監督インタビュー「日常をていねいに描きたい」 | WebNewtype

映画『海辺のエトランゼ』公式サイト

 

【総合評価】8.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(5<x≦6)

時間をロスしたと感じる作品(x≦5)


【世界構築】2点 (2点)

離島に住む人間の暮らしが実写映画のような演出で表現されていてよかった。ライティングや波風の音、背景の色合いなど、まるで旅行をしているかのような気持ちにもなれる、かなり素晴らしい映像・音声だと思う。人間の作画も非常に丁寧で安定しており、全体的に高レベルであると感じた。一方で、この作品独自の世界観というものを感じにくい点に難点があると思ったが、まあ日常作品だしな……と思ってそっちの面での基準は考えないようにした。

 

【可読性】1点 (1点)

全然引っかからずに観れてよかったです。


【構成】1.5点 (2点)

同性愛者の人間(駿)が好きな男(実央)に出逢い、ナンパ「するまで」ではなく「してから」に比重を置いているストーリーなのがよかった(オタクあるあるとして、同性愛系二次創作は恋愛の成就をゴールに設定しがちなので)。とはいえ、恋愛の成就をゴールにした作品同様、本作も障害として同性愛特有の周囲の視線、不理解さが置かれているのは変わりない。これは最初に「ナンパした男が(別に呼んでもないのに)帰ってきた」という設定にしていたのが良くて、同棲しつつも駿と実央の問題は何も解決していない(寧ろ未来の選択肢が徐々に狭まっていくという点で悪化すらしている)点が優れているなと思った。あとの許嫁との衝突はすでにクリアされている点も物語を円滑にするうえで、いい働きをしていたし、家族との問題は、まあだいたい想像通りのかたちに落ち着いて良かった。途中で許嫁から「せめてキスをしてくれ」と言ったのを実央が割り込みキスするのは非常に驚いた。普通の日常のなかにも適度にスリリングな展開に持っていく手腕がよかったです。原作通りなのかな?

 

【台詞】1.5点 (2点)

やや恋愛脳気味の実央と、若干冷めている駿の掛け合いがよかった。

 

【主題】1.5点 (2点)

同性愛者の日常を描きながら、勝手にその愛を高尚なものにするでもなく、低俗なものにするでもなく、ありのままの性欲を伴った恋愛を描いているのを好ましく感じた。やはりこの作品でもっとも素晴らしい動きをしているのが実央で、彼によってこの物語はここまでのメッセージを持つことになったのだと思う(自分の印象だと、同性愛の恋愛ものは駿×駿みたく探り合う関係が多いような気がする)。一方で、あくまで自分の感情として、過去の自分を孤独から救ってくれた恩人に対して、ここまで明確な性欲を感じるのか?という疑問は捨てきれなかった。おそらく実央は生来の同性愛者ではないと思うのだけれど、駿に対して一度限りでも所有したいという欲望があるわけでもなく(実央が目指しているのはずっと駿の隣にいることなので)、性的交渉をしなければ別れるという切迫感があるわけでもない。ただ彼は自然と駿と性的交渉をしようとしている。自分にはそのスタンスやモチベがあまり分からなかったのだが、これについては自分の恋愛観が強く反映されている気がするので、他の人は気にはならないのかもしれない。

 

【キャラ】1点 (1点) 

とてもよかった。みんなキャラが立っていたように思う。レズビアンカップルのおとなしめの女の子*1の存在感がもう少しあれば嬉しかったかもしれない。

 

加点要素

【百合/関係性】1点 (2点)

該当描写あり。とはいえ百合に関するとふたりの関係性はあまり重視されておらず、物語性がなかったのでそこまで良さを感じることはなかった。でもかわいい女の子が幸せそうに寄り添っているのはいいものだと思います。BL方面については、素直にいいなと思いました。狂うほどではない。ふたつ合わせてこの点数。

 

【総括】

なかなかに良い作品でした。何回観ても楽しめるかもしれないなと思える点で、エンタメとしても優れているように思う。ガチガチの異性愛主義の人間(職場にいるおっさんとか)に見せるとどういう反応をするのか気になった。漫画原作には続きもあるようなので、気が向いたら読むかもしれない。

*1:名前を調べるために公式サイトに飛んだのだが、キャラが掲載されて居らず笑いました。無記名でいきます