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『せかいのおきく』評価・感想【ネタバレ有】

※この記事にはネタバレがあります。未視聴の方は十分お気をつけ下さい。

阪本順治『せかいのおきく』(2023)89分、日本

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<あらすじ>

江戸時代末期、厳しい現実にくじけそうになりながらも心を通わせることを諦めない若者たちの姿を、墨絵のように美しいモノクロ映像で描き出す。武家育ちである22歳のおきくは、現在は寺子屋で子どもたちに読み書きを教えながら、父と2人で貧乏長屋に暮らしていた。ある雨の日、彼女は厠のひさしの下で雨宿りをしていた紙屑拾いの中次と下肥買いの矢亮と出会う。つらい人生を懸命に生きる3人は次第に心を通わせていくが、おきくはある悲惨な事件に巻き込まれ、喉を切られて声を失ってしまう。

あらすじ引用元

https://eiga.com/amp/movie/98522/

公式サイト

http://sekainookiku.jp

 

先に謝ります。一生懸命作られたのにこんな点数をつけてすみません!

【総合評価】4点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

オールタイム・ベスト・コンテンツ(10<x)

ガチで大事にしたい作品(9<x≦10)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(5<x≦6)

オススメできない作品(x≦5)


【世界構築】0.5点 (2点)

本作は白黒映像で、各章のラスト数秒だけはフルカラーになるという作りをしているが、その意図がうまく掴めなかった。江戸時代を表現するために白黒でやっているなら1秒でもフルカラーにしない方が良いし、もしうんこが汚いから観客への配慮として白黒にしているのなら、やはり白黒にしておくか、あるいはずっとフルカラーでドギツイ映像を垂れ流した方がうんこに対して誠実だった気がする。中途半端が一番良くない。また、作品全体を通して真面目な作品なのかギャグ作品なのかを掴みにくいところも苦手だった。こちらもどっちかに極振りしてほしい。両方やりたいならもう少しうまくバランスを取って、観客と映画との距離感を定めてほしかった。

あとこれは一番重要なことだが、うんこが全然臭そうじゃないのが腹立たしかった。江戸は今よりずっと衛生面が悪いはず(違いましたっけ?)だし、回収されないうんこの周りにはハエがブンブン飛び回っているはずである。序盤からハエの飛んでいないうんこを見せられて、とても残念だった。中盤で数回飛んでいるのを確認したがあれでは全然足りない気がする。死ぬほどハエを飛ばして欲しいし、ブンブン音を鳴らしてほしいし、もっと臭そうに映像を撮ってほしかった。ギャグのように書いているが私は真剣である。下肥買いの物語なのだから、うんこの汚さや臭さはそれを扱う人間が如何に蔑まされていたのかの説得材料にもなるため、絶対にもっと拘るべきだった。白黒だとそれがうまく伝わらない。そういう意味でも、私はフルカラーでこの映画を観たかった。

 

【可読性】0.5点 (1点)

割と序盤で飽きた。

 

【構成】1点 (2点)

全体の話の筋は悪くないのだが、よく分からないうちにおきくの喉が切られ、だらだら下肥買いの話が長く続くなど、ややペース配分がおかしいように感じた。ここでも、シリアスならスリリングな展開で話を観客を惹きつける、ギャグならテンポ良く進めることで観客を惹きつけるなどのやり口があったはずである。本作はただ江戸時代の若者の日常を描こうとしている。その試みはいいのだけれど、やはりエンタメ作品である以上なんらかの配慮は必要だろう。

 

【台詞】0.5点 (1点)

特に響いたものはない。

 

【主題】0.5点 (2点)

正直、なにが言いたいのかよく分からなかった。身分差恋愛の尊さみたいなものだろうか?なんならおきくが喉を切られる意味も分からないし、それが効果的に働いていたようにも感じなかった。

 

【キャラ】0.5点 (2点) 

矢亮がいい味を出しているものの、やや台詞回しがくどく、好きにはなれなかった。中次の何者かになりたいけれど一歩を踏み出せない感はよかった。おきくからはあまりなにも感じられなかった。

 

加点要素【百合/関係性】0.5点 (2点)

矢亮のことは好きだし恩義も感じているが、それはそれとして結局は身分も低いし身分の高いやつにはへこへこしている口だけの部分を不満にも思っている。そんな中次から矢亮への複雑な感情は結構良かった。このコンビを描いたのは魅力的で良かったが、中次とおきくの恋愛は特になにも感じなかった。

 

【総括】

結局は方向性というか、作品世界をかっちり決めた上で物語を展開させてほしかったという話に尽きる。あと本作では「せかい」という言葉が用いられて、「東に行けばいつしか西から出てくる」ようなニュアンスの解説をお寺の住職が行なっていたが、それを持ち出すなら最後のエンディング前の魚眼レンズのシーンは、やっぱり左からやってきて右に行く三人組を、時間をかけて再び左から出すことで、彼女たちの小さな「せかい」を表現した方がいいのではないかと思った。それをやらないならわざわざ魚眼レンズで画面を歪める必要はないのではないか。まぁ他にやりたいことがあったのかもしれないけれど、製作陣のやりたいことや言いたいことがことごとく自分とは合わない、そんな珍しい映画だった。多分、他の人が観たらもっといい評価になるんじゃないでしょうか。

 

 

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