ハイスクール・フリートを知っているだろうか。
2016年に放送された、女子高生が船に乗るアニメである。
リアルタイムで観ていた記憶はなく、おそらく当時は知らなかったか、1話切りをした。
同時期に放送されていた2016年春アニメといえば、「アイカツスターズ!」「あんハピ♪」「くまみこ」「ふらいんぐうぃっち」などなど、結構面白いアニメが揃っていた。強かったのが「Re:ゼロ」とか「ヒロアカ」などなど。今思い返すと、ここにハイフリが入っていたのかという驚きがある。
見逃したとは言え、1年に1度くらいはハイフリを見たくなる時がある。
オタクが自分の知らないコンテンツで面白そうにしているのを見ると、なんとなく気になるもので、ハイフリを観たくなるきっかけのひとつが「はいふりカメラ」だった。知り合いのオタクが、よく「はいふりカメラ」で撮った写真をTwitterに上げていたのだ。
そもそもはいふりカメラとは何か?という人に説明すると、写真のフレームにハイフリのキャラがいて、写真と一緒にアニメのキャラが写りこむカメラアプリである(図1参照)。
図1 ミケちゃんと呑む本麒麟
「はい、ちーず!」と元気なミケちゃんの合図でシャッターが切られる。
撮れた写真がなんとなくシュールだったこともあり、当時オタクの友人たちの間で流行った。
ハイフリのアニメを観ていないくせに、ラーメン二郎をはいふりカメラで撮るなど、今思い返すとかなり厳しいことをしていた。
当時の写真を思い返すと、ラーメン二郎の隣に、猫の五十六(いそろく)がいた気がする。
このカメラのありがたいところは、キャラと一緒に写真を撮りたいオタクが、寝そべりやフィギュアを持ち歩かなくて良い点にある。
今でこそ自分も周りもやらなくなったが、数年前まで、ねんどろ(掌サイズのアニメキャラフィギュア)と写真を撮るブームがあった。
おそらく身内だけで流行ったものだが、うまい飯や美しい風景を、アニメキャラと同じフレームに収めたかった。
当然そこには一般人への配慮が必要で、そこを見誤ると全体的なオタクsageに繋がってしまう。
想像してみて欲しいのだが、掌サイズとは言えフィギュアを握りしめて観光地を彷徨いたり、ご飯を前にして挙動不審になっている成人男性はただただキモい。
なおかつオタクはアニメキャラを見るだけでもニヤニヤしてしまうのに、それが掌の中にあるという嬉しさでさらに顔面が崩壊する。純粋にキモさにバフがかかる。
神経質そうな子連れのおばさまが、その様子を見てオタクに嫌悪感を抱いても仕方ないように思う。
いわゆる「生理的に無理」というやつで、オタクのキモさにおばさまの灰色の脳細胞が発火し、高度な演算処理によって子供への被害を本能的に察知してしまうのだ。知らんけど。
よってオタクは、一般人にフィギュアの存在を見られてはいけない。それは一種の死活問題である。
今でこそツイフェミさんの快進撃が目立つが、当時の世間もオタクdisの向きはかなり強かった。
世間はキモいオタクを見たくない。しかし、オタクはアニメキャラと写真を撮らずにはいられない。
そういうわけで、オタクは「オタクカメラ・タイムアタック」を強いられることになる。右手でカメラを起動しながら、左手で鞄のなかから一瞬でねんどろを取り出し、シャッターを切り、すぐさま鞄のなかに隠すのである。確か当時の最速タイムは2秒くらいだった。ここまで来れば立派な競技である。
いや、「立派な競技である(ドヤ)」じゃあないんだよ。アホか。
当時の自分を思い出し心がしんどくなってきたが、とにもかくにも、はいふりカメラはその死活問題に解決の筋道を与えた。
偶像をフレームに落とし込むことで、オタクは「フィギュアを持ち歩かなくてもよい」ようになったのだ。
ここで聡明なオタクなら、「いやそうはなるまい」と突っ込んでくれるだろう。
「ハイフリのオタクならともかく、お前が撮りたいのは園田海未とであって、(僕は園田海未ちゃん推しです♡)未視聴のハイフリのアニメキャラと撮影するのは論理的ではないだろう」と。
全くもってその通りであり、今思い返すと、(一時的とは言え)結局はいふりカメラで満足してしまった自分は、「園田海未と写真を撮りたかった」わけではなく、「アニメキャラと写真を撮るキモい自分に酔っていた」だけではないかと、この記事を書きながら唐突な気付きを得てしまった。
割と吐きそうである。
話を本題に戻す。
結局、はいふりカメラを使うくらいならアニメを見ろという話なのだが、自分はこの記事投稿の2週間前に至るまで、一切ハイフリを観なかった。
それには海よりも深い理由がある。
周りのオタクがみんな口を揃えて「ハイフリは幼なじみNTR百合アニメ(広義)」だというのである。
「幼なじみNTR百合アニメ(広義)」?
日本語に直せば、「幼なじみの女の子同士が、ポッと出の女に広義の意味で寝取られてしまうアニメ」ということになる。
は?
これは友人の説明なので僕に文句を言わないで欲しいのだが、「ハイフリ」は、『主人公(ミケちゃん、女の子)は、幼なじみの女の子(もかちゃん)がいながら、ポッと出の女(シロちゃん)に寝取られてしまう』というストーリーだというのだ。ややこしいのだが、寝取られるのは幼なじみではなく主人公である。友人曰く、「幼なじみといイチャついているのは最初の1話だけで、それ以降ずっとポッと出の女とイチャつき、最終的にその女と結ばれる」らしい。それが広義でのNTRにあたり(?)、友人曰く、ハイフリは「ミケシロ」なのだと。「ミケもか」ではなく「ミケシロ」。それがこの世の真理らしい。
申し遅れたが、自分は百合豚であり、百合要素があるならブヒブヒ言いながらアニメに飛びつく部類の人間である。
とはいえ、別に百合が全てだというわけではない。アニメを評価するにあたり、百合はあくまで加点要素に過ぎない。
あくまで自分の場合だが、だいだいアニメの評価軸は「キャラのかわいさ」「脚本」「動きや表現の良さ」「演出」に並んで「百合」が入る。
厳密な数値づけをしているわけではないが、感覚的には、前4つで各25点、最後の百合で100点くらい入り、合計200点くらいで判断している。
実に公正な評価基準だ。
ただ、「百合」の点数には振れ幅があり、正確には「±100」となる。
最高の百合なら+100, 普通の百合なら+50, ノンケなら0, 合わない百合なら-100という評価基準だが、まさに「幼なじみNTR百合アニメ(広義)」が-100点そのもので、それならいくらキャラがかわいく/脚本が良く/動きが良く/演出が良かったとしても合計0点、そんな作品見てられるかとブチ切れてしまうことになる。
え、だって嫌じゃない? 幼なじみNTR百合アニメ(広義)……。
自分はその前情報を鵜呑みにしてしまい、2020年に至るまで「ハイスクール・フリート」を見なかった。いや、見れなかった。
ところが、そんな僕は映画館で劇場版ハイフリと出会うことになる。
確か劇場版メイド・イン・アビスの帰りだった。あまりの上昇負荷に「あえ^〜(鳴き声)」となっていたところに、ハイフリの宣伝ポスターを見つけたのだ。
「劇場版のハイフリか……結局アニメ見てないんだよな……」
その時の自分は心が荒んでいた。黎明卿があまりに想像を絶する存在だったし、作画はバケモンだったし、プルシュカが可哀想すぎた。
癒されたかった。(切実)
脳内は、切実に百合を求めていた。(あなたが食物を食べて生きるように、百合豚は百合を食べて生きています)
自分は無意識のうちに「はいふり 劇場版 ミケもか」と調べていた。ミケもかは幼なじみ百合のカップリング名である。
すると、出てくる出てくる限界ツイート。
「全体的にミケシロだけど、それを凌駕するミケもかだった」
「ミケもかじゃん」
「やっぱりミケシロなんだよな……」
どうやらミケシロとミケもかが拮抗しているようである。
そして、全体的にミケシロなのは確実らしく、ミケもかシーンは数分くらいしかないという。
それでも、ミケシロとミケもかは平衡を保っているのだ。
イメージで言うと、画用紙(ミケシロ)に穴を開けようとする針(ミケもか)のようなものである。
一撃必殺の四文字が頭に浮かんだ。ミケもかは、たった一撃で相手を仕留める奥義のようなものかもしれない。ルパンの五右エ門やワンパンマンのように。
家に帰ったら「ハイフリを見よう」と思った。
たとえ幼なじみNTR百合アニメ(広義)でも、劇場版のミケもかがなんとしても見たくなった。
俺は劇場版で、その奥義が見たい。
家に帰り、その日のうちにハイフリ12話とOVAを全部見た。(図2)
図2 やっぱり僕は信頼のdアニメストア!画像のキャラがもかちゃんです。かわいいですね。
アニメを見終わった自分は、たまらず叫んだ。
「ミケもかやんけ!!?!?!??!?絶対許さん♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪(憤怒)」
自分はひどく怒り狂っていた。
どう考えてもミケもかなのに、「ミケシロは真理」だと言い張った友人に対して。
怒りのあまり、「アニメ本編はどう考えてもミケもかだった」「お前の目は狂っているのか」「お前が見たのは本当にハイフリか?」「百合解釈もまともにできないのか」という内容の怒りの長文リプライを送ったうえに、空中リプライまでした(図3)のだが、どう考えても精神異常者のそれであり、今は深く反省をしている。当然友人からはガチ切れされたが、いつものことなのでなんとかなった。
図3 自分の怒りの空中リプライ。""本質""(激寒)ってなんだろう。
アニメ本編のどこがミケもかで、どこがミケシロなのかはここではあえて語らない。
自分はミケもかにしか見えないが、ミケシロを否定する気は(あまり)ないので判断は個人にお任せする
ただ、これだけは言わせて欲しい。
ハイフリは「幼なじみNTR百合アニメ(広義)」ではなく、完全なる「幼なじみ百合アニメ」だ!
自分の大好物! +100点!!!!!!!!!
というわけでドンドン行く。ミケもかに対して絶対的な信頼を寄せた自分に敵はなかった。
まず漫画を全巻買った!(図4)
図4 はいふり漫画版。ミケもかオタクは必読。
劇場版を観に行った!!(図5)
図5 入場特典の漫画付き。こにゃにゃちはー!は流石に寒すぎたか。
ミケもか絵を描いた!!!(図6)
図6 かわいいね。背景は描けません。
アプリを始めた!!!!(図7)
図7 アプリのスタート画面。こいつらいつもピンチになってるな。
怒濤の快進撃である。しかし戦いはまだまだ終わらない。
もかちゃん星5が来るまでリセマラだ、もかちゃん星5が、、、
あ?
あ、、、、、??????
あ^^^〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!(昇天)
ここに至るまで10回くらいのリセマラで済んだ。これはもう運命ですなぁ!?
星5のもかちゃんが引けたから 2月25日はハヤシライス記念日(俵万智)
そう。2月25日はハヤシライス記念日なのだ。
ハヤシライスでもミケちゃんの話をするもかちゃん、、、SUKI
ん?
は……?
は?
……。
「ハイフリにハマり、アプリを初めたらログイン2日目にサービス終了が発表された」終