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芝山努『ドラえもん のび太と鉄人兵団』観た!

芝山努ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986)97分

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https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09T5GDJ4B/ref=atv_dp_share_cu_r

【総合評価】 9点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

ガチで大事にしたい作品(9<x)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(x≦6)

 


【世界構築】1.5点 (2点)

ドラえもん特有のSFが好み。秘密道具によって生み出される世界観は唯一無二のものであり、鉄人兵団が襲ってくる状況もある程度の緊張感があって良い。

 

【可読性】1点 (1点)

観ていて疲れない、飽きない。

 

【構成】1点 (2点)

話の構成は悪くないが、良くもないように思う。この前に観た『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』に比べると、緊張感が足りない。画面作りと構成にもう少し手を加えるとさらに良くなる気がするが。

 

【台詞】

1.5点 (2点)

2000年代以前の作品に特有の欄外の台詞(独り言のようなもの)によるツッコミが冴えており、良かった。

もちろん、しずかちゃんとリルルのやりとりも良い。

リルル「今度生まれ変わったら、天使のようなロボットに――」

(中略)

しずか「ふたりは、ずっと友達よ」

リルル「おともだち――」

【主題】

1点 (2点)

主題は何だろうと思ったが、例えロボットであっても自我を持つと階級が生まれるという概念は面白い。解決策は他人を思いやる心というところも、切実さがあって良い。あとはロボットの忠誠心を揺るがす人とのふれあいとか? いずれも面白いが今の自分にとって心に響くものではなかった。


【キャラ】

1点 (1点)

よくよく思えば、ドラえもんのキャラはかなり魅力的だ。既に彼らのキャラを知り尽くしているので、バックボーンを描かなくても彼らのことを理解できる点でシリーズ映画は有利なように思う。また、新キャラであるリルルもかわいくて、ロボットにあるまじき(!)反抗心をもっていて魅力的だった。


加点要素【百合】

1.5点 (2点)

しずかちゃんとリルルの関係は、人間対ロボットの文脈を下敷きにしている。しずかちゃんはリルルがロボットである衝撃を受け止めてから二人の関係を始めようとしているからだ。とはいえ、そこからの接し方はルッキズムに強く依存するものであり、ミクロスもリルルと同じように、喋る・自分の意志がある無性別のロボットであるのに、リルルの治療の際には部屋から追い出してしまう。もししずかちゃんがリルルをロボットとしてしか見ていないのであれば、ミクロスを追い出さなくてもいいはずである。しずかちゃんはリルルを女性として認識し、女友達として(いま思うと、しずかちゃんに女友達はいるのだろうか?)接しているのだ。そう考えると、ラストは大切な同性の友人の喪失に他ならず、しずかちゃんの慟哭も一層身に染みる。当初はのび太とリルルのみによって紡がれる展開を思わせながらも、リルルの治療や隔離、タイムマインに乗るに至るまで、全てがふたり(+ミクロス)によって展開されている点も、女性同士の秘密めいた関係性を表現しているようで良い。最後に生まれ変わったリルルはのび太にのみ姿を見せ、しずかちゃんには「伝聞」というかたちで物語上の存在として再会することになるが、一見不親切なその姿勢こそ「天使のようなロボット」そのものであり、そのような再開でもふたりが結んだ「おともだち」の約束がリルルの「他人を思いやる気持ち」の支えになっている、というシナリオは大変優れている。百合として性癖ではないために満点は難しいが(幼なじみ百合大好き!)、二人の関係性に最大の敬意を込めてこの点数とした。

 

【総括】

ドラえもんは何を見ても面白いのかもしれない。特に本作は、『「百合映画」完全ガイド』でもアニメとして最古の百合作品(1986)として挙げられている点からも、百合作品の系譜を追いたい人にもお勧めの作品である。