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映画感想「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

No.166 映画 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000)

 ミストと並ぶ鬱映画と後から知ったのだが、自分は本当に前情報なしに見つけて、「盲目の母親が息子のために頑張る話か~おもしろそ~」と思って視聴。結果無事にメンタルが死んだ。ミュージカル映画ということも知らなかったので、工場で踊りだしたときにはすごく嬉しかったし、歌もうまいし音楽もカメラの構図も最高だし、これは最高の映画だな~とニコニコしていた。雲行きが怪しくなってきたのはお金の話が出てきてからで、もうこの時点で「こいつに盗まれるな」と確信したのだが、案の定の展開にも関わらず、想像を絶するキツさにもう見れなくなってしまった。そこで一度、酒と睡眠を挟んで日曜の朝から視聴再開。ようやく最後まで見れたわけだが、これは本当にきつい。セルマの不器用さと度が過ぎる純粋さに腹が立つのを何とか抑え込み(昔は自分もこういう素直すぎる、というか明らかに自分から墓穴を掘りに行くような人間がキツかったのだが、最近は映画に出てくる人間はそういうものだと受け止めることができるようになりました)、周りの人のすんごいやさしさに心癒されながらも、理不尽な展開につらくなり、めちゃくちゃ楽しいセルマのミュージカルに笑顔になってしまう。セルマのミュージカルシーンは明らかに手持ちカメラでやたらとぶれるしスピーディだしで、めっちゃ楽しい。ダンサーもみんなこれまでの文脈を忘れて笑顔になってくれるので、セルマと同じようにこちらまで笑顔になってしまう。のだけれど、セルマが脳内ミュージカルをやるときは決まってこちらのメンタル、というかセルマのメンタルの限界地点なので、それを考えると「ミュージカル楽し~!」と素直に思えない。でも楽しいからずるい。メンタルの振れ幅がすごくて、視聴するのにめっちゃ体力がいる映画だなとは思う。これは途中でこちらから視聴を停止できるから見れたのであって、映画と向き合い逃げ出すことが許されない映画館だと、メンタルをリセットできずに泣いてしまうかもしれないなと思った。

それはそれとして、こんなことを言うと引かれるかもしれないが、最後の絞首刑のカットがすごい好きだ。「彼らはそれが最後の歌だという。でも私たちが認めない限り、それは最後の歌じゃない」というセルマの歌の途中で死刑にするってのが、最もセルマの気持ちを汲んでいるシーンで、これによってセルマの歌が、ミュージカルが永遠に続くのだと考えるとようやく救われた気持ちになる。目の病気が遺伝すると知りながらも、子を産んだ理由は「赤ちゃんをこの腕に抱きたかったから」、「どうしてこんなにミュージカルが好きなんだろう」とセルマの気持ちも行動も、最後まで自分の感情に素直で、自分勝手だ。周りの人はセルマのためになんとかしようとしながらも、最終的にはセルマは(周囲がそう信じる)最悪のなかで自分が望む最高の人生を歩み終えた。そこにこの映画の良さがあるのだと思う。メリバってやつですね。すごく楽しい映画でした。