新薬史観

地雷カプお断り

わたしたちに許された特別な時間の終わり

特別な時間が終わる。

f:id:negishiso:20220301202431p:plainラブライブ!スクールアイドルフェスティバル、縮めて「スクフェス」。

2013年にリリースされてもうすぐ9年になるが、公開当時は音ゲーアプリの草分け的存在として、アニメをよく知らない一般人をも「ラブライブ!はよく知らないけど曲なら知っている」と言わしめた画期的ゲームである。

2022年を迎えると流石にかつての隆盛は見る影もないが、「スクスタ」という後釜が出てきたにも関わらず依然としてμ'sのオタクから愛されている点を鑑みるに、まだまだ現役バリバリの長寿ゲームと言ってもいいだろう。

これまでスクフェスは生存するために様々な方向性を検討してきた。ソシャゲ戦国時代である今、ただの音ゲーであるだけでは生き残るのは難しい。

最も大きな方向転換を果たしたのは、スクフェス6周年記念に行われた、「なかよし総選挙」という名の「推しカプバトルロワイヤル」である。

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なかよし総選挙 | スクフェスシリーズ6周年記念

このバトロワの恐ろしいところは、入賞賞品である。

上位3位に選ばれたペアはそれぞれ最も人気のあったシチュエーションの「特別ストーリー」を配信。
さらに1位のペアは「描き下ろしUR」も追加されるのでお楽しみに!

原文ママ

驚くなかれ。なんと上位3位までのカプには公式お墨付きのシチュエーションストーリーが配信されるのだ。シチュエーションは「温泉」「スイーツ巡り」「カラオケ」「遊園地」の4種類。

これが「何を意味するのか」、カプのオタクならおわかりだろう。

そう、「自カプがデートしているかのような新規書き下ろしストーリー」が公式から得られるのだ!!!!

しかし、喜んでばかりはいらない。この企画はオタクに与えられたはぐれメタルの剣ではない、もろはのつるぎなのだ。

つまり、同人人気のある顔カプが、公式によって正当化される危険性を孕んでいるのである。キャラの関係性の編み直し――しかもオタクの恣意的な結び方で!――がなされた後のキャラは、もはや自分の知っているキャラではない……とまで言うと言いすぎなのだが、当時の自分は冷静では無かったため、声の限り発狂していた。地雷カプが同人人気を獲得している私たちにとっては、非常に厳しい戦いなのだ。

私たちの勝利条件はふたつある。

①ほのうみを入賞させること

②地雷カプ(顔カプ)を入賞させないこと

最も素晴らしいのは①かつ②が満たされる時であるが、現実はそううまくはいかない。

総選挙はスムーズに行われた。下は中間発表①の結果である。

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ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル – スクフェス » なかよし総選挙 第1回中間発表

1位と2位は揺らぎようはない。納得の順位である。

しかし、それ以降は――なんだ、この順位は? あまりに馬鹿げている。嘆息するほかない。想像と異なっていた訳ではない、予想通り過ぎたのだ。

地雷カプが3位につけ、ほのうみは圏外という残酷な並び。絶対的敗北である。

私は狂い、普段は一切話さないような小中高の友人にも手当たり次第「ほのうみを知らなくてもほのうみの温泉シチュに入れるように」と連絡を送ったのだが、そもそもそんな連絡を送れる友達は一切いなかったのでこの文章は嘘である。せいぜいTwitterで喚くのが関の山だった。

しかし、そんなこんなで迎える中間発表②では、順位に変化が訪れる。

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ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル – スクフェス » なかよし総選挙 第2回中間発表

3位に地雷が埋まっていることには変わらない。しかし、そのあたりを慎重に迂回しながら順位を下ると、あることに気がつかないだろうか?

いるのだ、6位に。

我らがほのうみが。

――正直、かなり意外なスコアだった。現実をうまく認識できないが、もしかしたら入賞圏内にいるのかもしれない。

さて、私たちが選ぶべき選択肢は2つだ。

①入賞を信じてほのうみに入れる

②地雷の暴発(入賞)を防ぐために別の票田を狙う

①は積極的勝利、②は消極的勝利だった。つまり、②の作戦は4位につけているカプに票を入れることで、地雷カプを3位から引きずり下ろそうと言うわけだ。

あまりに意地汚く、あまりに意地汚い。他人の脚を引っ張って楽しいか? 不純な動機で票を入れられるカプの気持ちになったことがあるか? どちらもNOだ。本当は前者はYESだが、今の私にとってはNOだと言える。他人の好きを馬鹿にすることは良くない。あんまりだ。しかし私にとっても譲れないものがある。卑屈さだ。私は卑屈だった。あまりに地雷カプを憎んでいた。解釈の違うやり口に辟易していた。雰囲気だけで語られる関係性が許せなかった。別に誰が悪いわけでもない。彼らはそれが好きで、私たちはこれが好きなだけだ。ただ、当時の私はいま以上に愚かで若く、毎日を必死に生きていたから、自分の解釈領域を守ることに最も心血を注いでいた。

私は「りんぱな」に投票したのだ。

 

終結果は以下の通り。

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なかよし総選挙結果発表 | スクフェスシリーズ6周年記念

1位から「のぞえり」「にこまき」「りんぱな」――そう、唾棄すべき地雷カプは入賞を逃したのだ! 万歳! I did it! (やってやったぞ!)

当時、この結果がかなり話題になった。主に論点は3位の是非についてだ。地雷を腕に抱いた彼らは言う。「これまでずっと3位だったのに、この仕打ちはないんじゃないの?」

尤もだと思う。私は「奴らは何を言っているんだ?」と笑いながらも、「のぞえり」と片方が被ってしまっている地雷カプは、「他に入っていないメンバーだっているのに!」という攻撃に対しては装甲が薄いため、運営から外されるリスクを孕んでいた。あまりに不信気味だろうか?ただ、こういう人気投票が開かれてしまった以上、常に運営は睨まれる立場にある。気になるなら一度ココくんに聞いてみると良い。

それはさておき、私たちは勝利条件の②を満たし、無事に何かに勝ったことになる。何に? もちろん地雷カプにだ!

はぁ、やれやれ。これでようやく安眠できるな。

……。

――本当に?

 

私たちが望んでいたのは、こういう未来だっけ?

私たちが本当に見たかったのは、「ほのうみ」の書き下ろしシチュエーションストーリーじゃなかったっけ?

 

結論から言うと、運営は私たちを救済することに決めた。あまりに五月蠅いからだ。ここでの「私たち」には、ラブライブ!でカプを営んでいる殆ど全てのものが該当する*1

そう、上記の書き下ろしシチュエーションストーリーを、すべてのカプにおいて行うことに決めたのだ。

μ'sは9人いる。つまり9C9=36(組)のカプストーリーが描かれることになったのだが……これって、めちゃくちゃすごい福利厚生だと思いませんか?

 

こうして、運営によって仕組まれた私たちの戦いは、運営からの救いという形で繋がり(まるでDVみたいだ)、それもようやく終わりを迎えようとしている。なかよし総選挙というバトルロワイヤルが終了してから、もう3年が経つ。

もうすぐ、ほのうみのストーリーが実装される。

1ヶ月に1カプというゆったりとした進行を、その特別な余生のような時間を、私たちは楽しみにしていた(本当は早くしろとブチ切れていた)。いずれは地雷カプのストーリーも実装されてしまうけれど、それでも良かった。どうでも良かったとさえ換言できる。推しカプの幸福が約束されてしまうと、もうなんか全然なんでもかんでもどうでも良くなってくる。視界の隅で地雷カプがセックスをしていても関係ないのだ。この3年でそういう思考ができるようになった。私は成長しているのかもしれない。

以下はこれまでのカプストーリーの記録だ。

36の組み合わせを、毎月ひとつずつ消化していく。

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ほのうみは、いつ来てもおかしくなかったし、来なくてもおかしくなかった。

2022年2月28日、3月度の組み合わせが「にこと花陽」であることが決定したその瞬間に、「穂乃果」と「海未」の組み合わせが確定した。あとは、二人がいつ来るかだ。来月かもしれないし、6月かもしれない。地雷カプと重ねるように、5月に来ることも考えられる。

ただひとつ言えるのは、「ほのうみ」の話が実装され、私が視界に入れたその瞬間に、わたしたちに許された特別な時間は終わりを迎えるということだ。

この3年間、とても幸福だった。読むまでは絶対に死ねなかった。もちろん、実装されるまで私が生きている保証なんてどこにもない。だからまだ生きていたいのだと思う。私が生きている間に来て欲しい。その反面、ずっと来なければいいのにとも思っている。きっとこれが終わると、本当の本当に公式からの大きな供給は途絶える。そんな気がしているから。

ねえ、スクフェス。残りの数ヶ月も私たちと一緒に駆け抜けようね。

だるいから毎日のログインはしないけれど。

*1:該当しないのは、ことほのうみなどのポリアモリーを好むオタク、A-RISEやAqoursと言った外部のグループと横断する形のカプを好んでいるオタクなどだろう