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庵野秀明『ラブ&ポップ』観た!

庵野秀明ラブ&ポップ』(1998)112分

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Amazon.co.jp: ラブ&ポップを観る | Prime Video

【総合評価】 8.5点(総合12点:全体10点+百合2点)

【作品の立ち位置】

ガチで大事にしたい作品(9<x)

積極的推し作品(8<x≦9)

オススメの手札に入る作品(7<x≦8)

まずまずな作品(6<x≦7)

自分からは話をしない作品(x≦6)

 

【世界構築】2点 (2点)

カメラの画角がいちいち新鮮で面白い。スカートから覗いたり、足元だけを徹底的に映したり、画面をスプリットして女性を品定めする側とされる側を同時に表現しているところは顕著である。また、映像の切り替えのテンポもよく、序盤で机の下で足元とレールを映す箇所の切り替えタイミングや、タイトルの入れ方、ナレーションの挿入の仕方、エスタブリッシング・ショットなどはまさに「庵野」の仕事だと感じる。タイミングによっては数秒観ただけで「庵野だ!」と言えるような作品世界を構築できているように思うし、それでいて庵野の作品群のなかで独自の立ち位置も獲得しているので文句なしに満点です。

 

【可読性】1点 (1点)

ここがちょっと難しいところで、メガネ長髪の男性の時の映像は、セリフも合わせてかなりの不協和音になっていた。それを考慮すると0.5点なのだけれど、もしこの不快感を狙って作っているならすごいな~ということで1点にしました。

 

【構成】2点 (2点)

家を出た少女が援助交際をして家に返ってあたたかく家族に迎え入れられるという構成はとても良いし、援助交際の目的も明確であり、それでいてしっかりとキモい男性に振り回される冒険が描かれており良かった。援助交際をするたびに強烈な男たちによって何かしらの喪失を感じ、汚されているように感じるつくりにしているのも素晴らしい。それでいて、キャラとしても展開としても意外性があり面白かった。このテーマで描くには満点であるように思う。

 

【台詞】

1点 (2点)

映像に特徴はあるが台詞にはあまり魅力を感じなかった。しかしそれがこの作品の自然さに繋がっている気はする。よくよく考えると、女子高生の台詞の「それらしさ」はすごかったかも。ただし自分の好みではない。

 

【主題】

1.5点 (2点)

身体と金銭のやりとりにおいて、果たしてその取引は公正なのか、あるいはどちらかが搾取をされているのか、という問題への投げかけを行っている。結論としては「自分の身体を大切に思ってくれている人がいるなら大切にしなよ(金銭であなたの身体を安売りするな)」という決まり文句に落ち着いてはいるものの、正直これ以上の結論には至れないような気もするので特にコメントはない。いずれにせよ自分のこの問題への関心は強いため、興味深い作品だった。


【キャラ】

1点 (1点)

パパ活をする側の心理描写も良く、パパさんサイドの個性も強烈でかなり良かった。


加点要素【百合】

0点 (2点)

該当描写無し。女の友人のために一緒にパパ活をする仕草は百合と解釈できなくもないが、本作はグループによるパパ活のため、一人ひとりとの関係性が希釈され、自分は百合とは判断できなかった。

 

【総括】

庵野はやっぱりすげ~と思いました。20年前でこの映像のクオリティなんだから、いま特撮ではない実写映画を撮るとどのような作品になるのか非常に気になる。今の庵野はどのような画角を選び、どのような演出方法を選び(アニメーションは挿入されそうだ)、どのようなテーマを選ぶのか……何としてでも観たい気になってきた。

とにもかくにも、『ラブ&ポップ』はまだ観ていない人には是非観て欲しい作品です。話の種にもなるんじゃないでしょうか。ジャケがいいからね。