通勤鞄の中に入れていたら
今日の大雨で濡れちゃった
ぎにゃああああああああああ
もう、許さない
雨も、鞄も、ダロウェイ夫人も
俺はひとりで生きていく
通勤鞄の中に入れていたら
今日の大雨で濡れちゃった
ぎにゃああああああああああ
もう、許さない
雨も、鞄も、ダロウェイ夫人も
俺はひとりで生きていく
三木孝浩『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)
ぼくは明日、昨日のきみとデートする : 作品情報 - 映画.com
【総合評価】6点(総合12点:全体10点+百合2点)
【作品の立ち位置】
ガチで大事にしたい作品(9<x)
積極的推し作品(8<x≦9)
オススメの手札に入る作品(7<x≦8)
まずまずな作品(6<x≦7)
自分からは話をしない作品(x≦6)
【世界構築】1.5点 (2点)
ネタバレになるが、双方向からの時間軸の人間を遭遇させるとどうなるかという試みは面白い。自分という存在と逆行する人間の在り方を描いている作品には『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』がある*1が、世界線ごと逆行させていて、未来予知も絡んでくるという点では『TENET』とかのほうが近いかも。ガッツリとした恋愛基軸でこれをやるのは面白いなあと思うものの、たったひとりだけがこのような状態になることに納得がいかないことや、どちらが先に助けたのか全然わからず、設定そのものに矛盾があるように感じるのでこの点数です。俺が説明を聞き漏らしている説はあるし、そう深くは考えなくてもいい作品なのかも。
【可読性】1点 (1点)
特に飽きることはなかった。
【構成】1.5点 (2点)
しっかりとラブロマンスを前半でやりながら、実はそれが前置きでしたという流れはテンプレだが悪くもない。最後の視点の変化のごちゃごちゃ感が気に食わないので(どちらか一方に絞って、片方の幼少期に遡って終えるべき)、この点数。
【台詞】1点 (2点)
特別良いと思う台詞はなかった。
【主題】0.5点 (2点)
すれ違いの恋愛はよく聞くが、実際の時間軸ですれ違う恋愛という切り口は面白かった。とはいえ、あまり恋愛に興味のない自分がこの主題に対して何かそれらしいことを言うのは難しい。
【キャラ】0.5点 (1点)
悪くはないのだが、最初から最後までキチンとかわいい愛美にとっては、イケメンの高寿がどんどんダサくなる(メガネとボサボサの髪はダサいオタクの象徴だとするうんちみたいな設定はともかく)のはマジで可哀想でしかたなく、やめてあげてよという気持ちが強かった。それでもひたすらに尽くす愛美に、男から見た願望、および性的役割を感じなくもないが、なんとも言えない。
加点要素
【百合】0点 (2点)
該当描写無し。
【総括】
恋愛カテゴリということで、斜に構えて作品を視聴した事実は否めず、やや点数を低く見積もっているかもしれない。普通に面白くはあったし、可哀想だなこの人らとも思ったのだが……特別感情が揺さぶられた訳ではないので、どうしても微妙な受け止め方になってしまう。自分から言えることは、「まぁ、いいんじゃないでしょうか」というひと言だけだ。
*1:まだ最後まで観ていない
こんにちわ。最近妻のいびきが五月蠅くて眠れないアル中親父です(←
新型コロナ、まだまだ続きますね。(^_^;)
これ、ホントにどこまで続くんですかね。
もしかしたら100年後まで続いちゃうんじゃないかなと思ったり(汗)
その頃にはウチの一樹は115歳、共樹は112歳…
おいらも142歳だなあって、流石に死んでるかw
昨日、とある部下とサシで呑みに行きました。
いいとこの大学も出てて、なかなか優秀なんだけど、
「どうも職場から浮いているな~…」って目をつけてたの。
管理職にもなると、こういう気配りも仕事のうちっちゅーことで、
いいから呑め呑めつって値の張った旨い酒を飲ませて、
親父なりの処世術を聞かせてやりましたw
やっぱり、会社は人付き合いですからネ。
いくら仕事ができても、愛想が良くないとダメなのよ。
まずはしっかり挨拶からってことで、
部下の背中を叩いてやりました。(^^)
そんで、部下のための飲み会だったんだけど、
おいら、アル中親父ですからw
2軒くらいじゃ全然お酒が足りないつって、
無理やり部下の家に押しかけさせてもらいましたw
いやいや、奥さんがいるなら流石に遠慮しますけどネ(汗)
そいつは独身だし、ひとりで夜を過ごすのは寂しかろうということで、
おいらが賑やかしにいったわけです(^^)
そんで、いろいろ酒を飲みながら話していてね、
おいらの持ち札のひとつである、
「無人島に何を持って行くか」を聞いてみたんです。
これ、盛り上がっておもしろいのよ。
人によっていろんなものが出てくる。
答えにそのひと自身が現れるんですナ。
ちなみにおいらは、カポーティの『冷血』(^^)
何度も繰り返し読んでいて、もう表紙はボロボロw
本当は嫁さんを持っていきたいんだけれど、
この前それを嫁さんに言ったら、
「私はモノじゃありません!」って怒られちった(^_^;)
だから、おいらは本でいいよ。
水とか食料とか、いろいろ生活に必要なものはあるけどさ。
やっぱり、自分のなかで大事にしたいものってあるじゃない(^^)
おいら、こう見えて文学部だったのよ。
もちろん、遊んでばっかだったけどw
あ、そうそう。それで、肝心の部下はどう答えたかっていうと……
どう答えたと思う?
「日本列島を丸ごと持っていく」って言うんだよ!
オイオイ、国引き神話じゃないんだから!w
流石にそれはズルだろって言い返したらね、
うるせえって急に逆上してきて、おいらの首根っこを掴んでくるの。
本当は、ここでおいらは帰るべきだったんだよな。
いまから書くことは、たぶん、
これまでのおいらを知っている人にショックを与えると思う。
だから、しがないアル中親父のおいらのままバイバイしたいって人は、
是非、ブラウザバックをしてくださいませ。m(_ _)m
でわ。おいらが、部下に首根っこを掴まれたところから。
あのね、これだけは言わせてほしいんだけど、
おいら、その時ベロベロに酔ってたの。
だから、いつもよりかなり、プッチンしやすくなってた。
だって、二十歳も年が離れた歳下に、
そんな舐めた態度をとられちゃうんだもん。
さすがに、会社イチののんびり者で通っているおいらも怒りました。
おいらね、今でこそこんなビール腹だけど、
昔はけっこうやんちゃくれだったんです(←
だから、昔の血が騒いじゃったのかなあ。
近くに重い灰皿があって、
それで、
部下の頭をゴツリと、
やってしまいました。
最近の若者は貧弱だ!ってよく部長も言ってるけど、
あれ、ホントなんだなって思ったね。(-_-)
人間のあたまって思ったより柔らかいし、
それからピクリとも、部下は動かなかったもん。
おいらは一気に酔いが冷めて、
慌てて身支度を調えて、すぐに家を飛び出した。
自宅に帰ったら、もうかなり遅い時間だったし、
寝室で、嫁さんとちびっ子達がぐっすり寝ていた。
しばらく寝顔を眺めてから、
おいらはリビングのソファに寝転がりました。
一緒のところで寝る気にはなれなかったの。
それで眠れないうちに一晩明けて、
まだ誰も起きないうちに、おいらは家を出た。
人の少ない、土曜日の始発の電車に乗って、
もう一度、部下の部屋に行くことにした。
電車に揺られながら、
ちびっ子達の枕元に、リュックが置かれていたことを思い出した。
そういえば、今日はピクニックに連れて行くって約束してたっけ。
そう考えたら、おいら、泣けてきたよ…。
泣いているおっさんが電車に乗っていたら、
みんな驚いてしまうと思うので、
誰にも見られていなかったことを祈ります。(-_-)
部下の部屋に着くまで、ずっと夢でありますようにって祈ったよ。
こんなおいらだけど、家族もいるし、会社のこともあるし、
まだまだ家のローンも返せてない。
だから、チャイムを押しても返事がなかったときや、
部屋に鍵が掛かっていなかったとき、
おいらはやっぱり帰ろうかと思った。
ゲームのカセットに息を吹きかけるみたいに、
ここに来るまでの電車を乗り換えたら、
何かが変わるのかもしれないって。
でも、もしかしたらあいつは
ベッドで寝ているだけかもしれない。
だから、返事がないんじゃないの?
そう信じたい気持ちにあらがえなくて、
おいらはドアを開けた。
ドアの隙間から差し込んだ朝の光が、
薄暗い玄関を細く照らしていた。
おいらが恐る恐る踏み込むと、
リビングの電気はついていて、
部下は、
頭から血を流していた。
昨晩から、少しも動いていなかった。
おいらは今、ネカフェでこの文章を書いています。
本当に、バカをしでかしました。
これまでに、おいらは会社で
いろんなことをやらかしてきましたが、
今回が間違いなく、一番のやらかしです。(T_T)
手が震えて、キーボードをうつのに
いつもよりずっと、時間がかかります。
おいらは、ずっと悩みました。
今日はちびっ子達とのピクニックなんです。
よりにもよって、なんで今日なのかなあ。
一ヶ月前から言われてたのになあ。(T_T)
とりあえず、今日のうちは黙っていて、
警察が来るまではしらばっくれようかなあとか、
そう思ったりするのだけれど。
おいらは、さっき、
「無人島に何を持って行くか」という話をしました。
今のおいらなら、まちがいなく
「部下の死体」だって答えます。
無人島なら、おいらがしたこともバレないし、
警察も死体を捜せないから。
でも、そうすると、
代わりに本は持っていけないのだと考えると、
おいらはひどく悲しくなりました。
おいらが無人島に持っていくのって、
本じゃなくて死体なんだって。
大切なものじゃなくて、隠したいものを、
おいらは選んでしまうのかなって。
それがおいらの人生なのかと考えると、
おいらは、すごくつらい。(T_T)
嫁さんはもっていけないし、
ちびっ子達も、どちらかひとりなんて選べない。
家族はみんな大切だから、おいらは本を選びます。
ちびっ子達を遊びに連れていけないことより、
つらいことがあるなんて、おいらは知らなかったよ。
おいらは、おいらが思っていた以上に、
ワガママな人間だったようです。(^_^;)
ちょっと前から、嫁さんが何回も電話を入れてきています。
寝室においらがいないから、きっとお怒りの電話なんだろうなあ。
開口一番、「アンタどこにいるのよ」って怒られるのが目に見えるw
今回のことは、何もかも正直に、嫁さんに話すつもりです。
これまでで一番怒られるんだろうなあ。いや、泣かれるかも?
そう考えと、本当に出たくないw
でも、このブログを書き終えたあとに、
一番に電話をかけようと思います。
したくないことだけど、しなきゃいけない。
おいらはそれだけのことをしたのだから。
一樹、共樹。
今日もピクニックに連れて行けなくてごめんな。
本当に、おいらはダメなパパでした。
どうか、パパを許しておくれ。
そして、ダメなパパに代わって、
ママのことを支えておくれ。
もち蔵さん。
いつもいつも、コメントありがとう!
ブログ立ち上げ時期から、本当によくしてくれて感謝です。
もち蔵さんが勧めてくれた芋焼酎、
まだ呑めてないままだった……スミマセン
こんな最後になっちゃったけど、
もしまた帰って来れた時は、仲良くしてくれますか?(←
ごめん、難しいよね!忘れてw
miyuki*さん。
いつも、コメントありがとう!
おいらがこれまで投稿できたのも、
miyuki*さんがいつも遊んでくれたからです。
本当の本当に、ありがとう!
これまでおいらの記事を読んでくれた皆さん。
こんなおいらの記事を読んでくれて、ありがとう!
よろしければ、また、どこかで!m(_ _)m
end.
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『アル中親父の、ゆる~い徒然お酒日記♪』最新の投稿
2022年4月23日「みなさま、これまでありがとうございましたm(_ _)m」コメント(1329)
2022年4月16日「今宵は、しっぽり、ひとり酒♪」コメント(27)
2022年4月3日「なかなか、時間がとれないものです(汗)」コメント(4)
2022年3月24日「従姉妹から珍しいお酒をもらいました♪」コメント(6)
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』(2011)
【総合評価】7.5点(総合12点:全体10点+百合2点)
【作品の立ち位置】
ガチで大事にしたい作品(9<x)
積極的推し作品(8<x≦9)
オススメの手札に入る作品(7<x≦8)
まずまずな作品(6<x≦7)
自分からは話をしない作品(x≦6)
【世界構築】2点 (2点)
駅の壁に住んでいる、という設定がかなりよかった。駅構内がひとつの生活空間になっているのも面白く、そこでの人間関係が描かれるのも魅力的。スティーヴン・スピルバーグ『ターミナル』みたいな話だと思ったが、そっちよりもこっちの世界観の方が魅力的に感じた。それでいて、史実に基づいているのも好み。
【可読性】1点 (1点)
適切な位置に飽きないためのスリル要素があり、よく考えられていると思った。
【構成】1.5点 (2点)
非常にお手本的であると感じた。孤児ヒューゴの物語からパパ・ジョルジュの半生(サブストーリー)に切り替える手法は見事だし、それでいて面白いのでかなり良い。とはいえ、サムネにもある時計塔のシーンが特別目立つわけでもないのが気に掛かった。逆回転する時計のお披露目、映画を通した時計塔のシーン、時計の修理屋としての血筋、公安官に追い詰められた時計など、物語では時計のモチーフが頻出するにもかかわらず、物語のなかで重要な役割を占めているわけではない。それなのにパッケージに時計を出すのか?という困惑があった。自分ならもっとも盛り上がるパパ・ジョルジュのために機械人形を持って行こうとするシーンに時計塔の文字盤に隠れる構成にするだろうと思う。まあ、今でも十分に面白いんですけれど。
【台詞】1点 (2点)
特別、これだと響いた台詞があるわけではなかったが、悪いわけでも無い。
【主題】1点 (2点)
過去にとらわれていた人間が前に進み始める物語である。良いと思う。
【キャラ】1点 (1点)
サブキャラの個性が強く、魅力的だった。限られた尺のなかでうまくサブストーリーを組み込めていたと思う。主人公ヒューゴの行動原理もわかりやすく、感情移入ができた。
加点要素
【百合】0点 (2点)
該当描写無し
【総括】
本作でジョルジュ・メリエスという存在を知ることができたので良かった。昨今では珍しい、万人受けするような作品になっている気がする。本当にめちゃくちゃ前にマシュマロをもらったことがきっかけだったのだが、今回ネトフリに契約したことで無事に視聴できてよかったです。教えてくれた方、ありがとうございました!
逢坂冬馬『 同志少女よ、敵を撃て』(2021)
同志少女よ、敵を撃て | 逢坂 冬馬 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
【総合評価】8.5点(総合12点:全体10点+百合2点)
【作品の立ち位置】
ガチで大事にしたい作品(9<x)
積極的推し作品(8<x≦9)
オススメの手札に入る作品(7<x≦8)
まずまずな作品(6<x≦7)
自分からは話をしない作品(x≦6)
【世界構築】2点 (2点)
充実した参考文献から、当時のロシアの戦争の様子を思い浮かべることができて良かった。バタバタと人が死ぬ作品を読んだことがないこともあり、「人が脈絡もなく死ぬ」という『日本沈没2020』のような演出方法をとった作品にはやけにリアリティを感じてしまう(日本沈没2020には乗り切れてはいないが)。お気楽なものだと我ながら思う。
【可読性】1点 (1点)
かなり分厚いが、飽きずに読むことができて良い。
【構成】2点 (2点)
難癖をつけるところもなく、丁寧に練られたシナリオであるように思う。盛り上がるべきところで盛り上がり、締めるべきところで締めている。お上手。
【台詞】1.5点 (2点)
面白い台詞はいくつかあった。
私の知る、誰かが……自分が何を経験したのか、自分は、なぜ戦ったのか、自分は、一体何を見て何を聞き、何を思い、何をしたのか……それを、ソ連人民の鼓舞のためではなく、自らの弁護のためでもなく、ただ伝えるためだけに話すことができれば……私の戦争は終わります
手際の良さを見ながら、セラフィマは写真の撮影と狙撃の親和性について考えていた。
戦争の本質が達人同士のチェスのように進行するのはほんの一部でね。あとは概ね、ひどいミスをした方が、よりひどいミスをした方に勝つものなのさ
その肉塊から湯気がもうもうと上がる。その姿は、昇りゆく彼らの魂と形容するにはあまりにも凄惨であり、人間が物質へと還元されてゆく過程そのものであった。
ドイツに次ぐ敵と呼ばれるシラミ
猫の集まりのように無言で過ごし
誰か愛する人でも見つけろ。それか趣味を持て。生きがいだ。私としては、それを勧める。
なかでも、一番惹かれたのは下のものだ。
「砲兵少尉ってすごいね、カチューシャロケットとか、一五二ミリ榴弾砲を指揮してるの?」
セラフィマが幼なじみのミハイルと出会った時のシーン。これまで戦士の口調だったのに、幼なじみと再会して言葉遣いが昔のものになっている。しかしその内容は戦争についてであり、拭いきれない人間の変容が描かれておりツボだった。
【主題】1点 (2点)
自分は未読だが、「女性から観た戦争」というのはスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』で描かれていると聞いている。ではこの作品の何が新しいのかと言うと、自分には説明がし辛い。まあ未読なので当たり前だが。
一方で、これは読書会を経て納得したことでもあるが、この作品は女性のみに場を提供しており、男性を閉め出している点において、これまでの男性からみた戦争小説とやっていることは同じではないかと思ってしまった。もっとも、結果的に後発となってしまった女性視点の小説に「両性からの視点を描け」と求めることは、男性の特権的立場からの要望にも思えて気が引ける。もっとも、今回の著作がテーマとして「特定の性からのみ戦争を語ることの愚かさ」を批判しているのであれば、その試みは失敗していると言えるだろう。
そういうわけで、戦争と人間の愚かさには興味のある自分ではあるが、そこまで乗り切れる話ではなかった。戦争には善悪の境界線は存在しないのだ!ということに驚きを覚えるには、やや歳を取り過ぎた。
【キャラ】0.5点 (1点)
台詞はそれなりに魅力的だったのだが、キャラに特別魅力を感じるかと言われると微妙だった。特にもっとも感情を移入すべき主人公のセラフィマは、兵士に成り果てたということもあるが、唐突にフェミニズムに目覚め、女性の権利を主張したりする。脈絡もなくだ。そういうところが作品への没頭をやや阻害している気もする。
加点要素
【百合】0.5点 (2点)
百合だと叫ばれる本作だが、個人的には好きな百合ではない。例えば、百合に限らず同性愛は必然的に同質的なものである。今回はセラフィマとイリーナがパートナーとして同棲する(そして恐らく性交渉も行っている)にまで至ったが、彼女たちは共に指を負傷し狙撃ができなくなった狙撃兵で、生き甲斐として愛する者を見つける他なかったという点において鏡を見ているように(もちろん性別も含め)同質的な存在である。それが「え!?実はイリーナさんって私のことを想って色々してくれたのね!」という気付きによって、安易に恋愛的な視線に切り替わるのはちょっと解釈違いだった。これまでの積み重ねを考えると、恋愛への切り替えのトリガーとして弱いように感じるからだ(同質性が強固であるということは、本来ならば恋愛感情に切り替わりにくいことを意味するので)。本作は帯にも「シスターフッド小説」と銘打っているが、作者の余計な描写でシスターフッドが(二次創作的な)百合になってしまっており残念に感じた。
【総括】
実は先日、こっそりとオンライン読書会グループを結成した。読書を通して他人と友人になることを目的にした読書会である*1。記念すべき第1回の読書会には8人が集まり、課題図書に本作が選ばれた。そのなかで、自分は作品の構成や緻密な事前調査のうえで成り立つ世界観を評価して本作を10点中9点としたのだが、殆どの人は6点をつけていて笑ってしまった。悪くはないが良くもないというのがおおよその意見だった。確かに自分はこの作品を小説のお手本としては評価しているものの、このような作品が書きたいかと言われると否である。もっとキャラに魅力が欲しいし、展開としてもぶっ飛んだ作品の方が好きだからだ。とはいえ、その意見は自分の好みによるものであり、いくら自分たちが騒いだところでこの作品の価値が損なわれるわけではない。もちろん、自分は変わらずこの作品を推すつもりである。
それにしても、こうして他人の率直な感想に触れる度に、自分の評価軸は甘すぎるのかなと思ったりする。何を読んでも基本的には楽める人間なので損をしているわけではないのだけれど、こうやってチマチマ他人の作品を偉そうに格付けしておきながら、その評価が甘いのであればちょっと恥ずかしいなと思った。
*1:公募制、これ以上人数が増えると管理が難しいので現在は参加を締め切っている
マーティン・スコセッシ『沈黙-サイレンス-』(2016)
【総合評価】9.5点(総合12点:全体10点+百合2点)
【作品の立ち位置】
ガチで大事にしたい作品(9<x)
積極的推し作品(8<x≦9)
オススメの手札に入る作品(7<x≦8)
まずまずな作品(6<x≦7)
自分からは話をしない作品(x≦6)
【世界構築】2点 (2点)
キリシタンが弾圧される時代のキリスト教の司祭を描くという、非常に面白い設定。なおかつ、原作を丁寧に再現することで、原作小説にあったディテールの描写が映像にも活かされているように思う。
例えば以下の原作の描写だが
その穴までの血潮が、まるで一刷毛、線を描いたように地面に長く続いていた。
これ、絶対に映画で映えるだろうなと思っていたらやっぱり最高の映像になっていて笑顔になってしまった。
他にも、原作では力が入っていなかったが、
・階段を下るシーン
・井上と話すときにで囚人小屋でみなが歌うシーン
・ロドリゴが小屋の中でキチジローに迫るシーンの、柱の移り変わり
・井上が畳の上で茶を啜るシーン
などは、どれも大変映像として決まっており、良かった。
【可読性】1点 (1点)
飽きずに観ることができる。
【構成】1.5点 (2点)
原作のプロットには沿っているものの、尺の問題で、小説での貯めに貯めたロドリゴの鬱屈した神の沈黙への感情がやや軽くなっている。ここは仕方ないとは思うが、全体としては面白い。
【台詞】2点 (2点)
「さあ」フェレイラはやさしく司祭の肩に手をかけて言った。「今まで誰もしなかった一番辛い愛の行為をするのだ」
自分が大好きなこの台詞があったので良かった。
【主題】2点 (2点)
本作のテーマは「神の沈黙」であり、原作からはブレていない。ただ、原作で描かれていた人間描写がやはり希薄になっているように感じてしまう。それは仕方がないことなので、特に文句を言うつもりは無い。欲を言えばキチジローの卑しさをもっと前面に押し出し、こんなヤツ神様も救いたくねえよと思わせるキャラ作りをしてほしかったのと(窪塚洋介はイケメンすぎる)、フェレイラとの間に結ばれた最後のやばい関係をもう少し描いて欲しかった。
【キャラ】1点 (1点)
ロドリゴの棄教(と言えるだろう)に至るまでの絶望が大変うまく導けている。
加点要素
【百合】0点 (2点)
フェレイラとの関係が十分に描かれていなかったため、該当描写無し。
【総括】
マーティン・スコセッシは『タクシードライバー』しか観ていない説があったので、原作を読んだ作品でその映像力の高さを知ることができてよかった。
なぜ「沈黙」を映画にしたのか。それは私にとって、この作品が人間にとって本当に大切なものは何かを描いた作品だからです。
これは作品HPに掲載されていたマーティン・スコセッシのコメントだが、なるほどそういう考えで撮ったのだと合点がいった。彼は棄教した者同士の特別な関係性に胸を打たれたわけではなく(もしくは優先度が低めだったのか)、信仰と信徒が天秤にかけられたとき、人は自分の大切なものよりも他人の命を選んでしまう様を描いたのだということでFAだと思う。一方で、他人の命ではなく自分の命と信仰が天秤に掛けられたとき、人は信仰を選んでしまうこともある。纏めると、本作で描かれた人間の精神構造は以下の通りだ。
【優先度】他人の命>自分の信仰≧自分の命
とはいえ、これは決して誰にでも当てはまるものではなく、キチジローは「自分の命」を最優先にして動いているキャラであり、本人もしきりに繰り返す「弱い人間」に該当する。自分もここに入る。ただ、弱い人間は「ぱらいそ」には行けないかもしれない。ならばどうするべきか、そう考え、実際に動ける人は、自然と優先度の位が上がっていく。これがパードレだ。そして、本来のパードレは他人の命よりも布教を優先することになるため、主に左側の不等式は成立しない。けれどもそれは、棄教を迫られない世界各国において「他人の命」の問題が提示されないだけであり、「見えない」ものとして条件に上がらないだけである。それゆえ、誰しも「信仰の優先度が一番である」と信じることができている。神の沈黙が気にならないのもそのためである。ではパードレは全員日本に来るべきなのかというとそうではなくて、所詮絶対的な真理などは存在せず、どのような思想も切り口によって如何様にもなる(当然、閉じたコミュニティでは真理にもなり得る)ということが理解できていればよく、理解する必要がなければそれに越したことはないのだ。もちろん、歪んだ真理もまた真理である。当然のことだが、そのことはしっかりと記憶しておく必要がある。
最近助けてくださいと思うことが多くなってきた。
毎日続けるつもりだったブログの更新を忘れた時、労働をしていてふと我に返った時、労働から帰ってきてお腹が空いているのに冷蔵庫のなかに何も入っていない時、特にすることもなくTwitterのタイムラインを永遠にシュポシュポ更新している時、読みたい本が多すぎて逆に何も読めない時など、ベッドに寝転がりながら助けてくださいと思う。お家にいるのにお家に帰りたくなってしまう。
すみません、誰か助けてくれませんか。
Q. 誰に言っているの?
A. 誰かに言っています。
Q. どのように助けて欲しいの?
A. それはそちらで考えてもらって……。
この感情はなかなか言語化できるものではないし、共感してもらえるものでもない。かと言って、素直に助けてと言ったところで捻りがないし、周囲の人からガチで心配されて助けに来られても、こちらとしては別に助けを求めていないので困ってしまう。
そういうわけで、最近は意味の無いツイートを通してSOSを世界に発信している。
人と人が手を取り合って収斂の斂の左下
— osı̣ɥsı̣ƃǝu (@negishiso) 2022年4月18日
年間読書量3冊のダンゴムシ
— osı̣ɥsı̣ƃǝu (@negishiso) 2022年4月18日
— osı̣ɥsı̣ƃǝu (@negishiso) 2022年4月19日
みかんの上にある時間
— osı̣ɥsı̣ƃǝu (@negishiso) 2022年4月19日
遺伝子組み換えによって最初からミロを出すようになった茶色い乳牛
— osı̣ɥsı̣ƃǝu (@negishiso) 2022年4月19日
ウケを狙っているわけではなく、何かを伝えたいわけでもない。強いて言うならSOSだが、特に助けは必要としていない。では、このツイート群はいったい何なのか?
その答えはプロフの最後に書いています。