新薬史観

地雷カプお断り

あまりに欲がなさすぎる

欲望が欲しい。

これはおかしい一文である。「欲しい」の目的語は欲しいものであるべきなのに、その対象が「欲望」となると、まったくの自己撞着ではあるまいか。そうでもないか。

 

今日は久しぶりにラボの後輩に会い、軽い日常会話をした。その時の話題が「今、先輩は満ち足りていますか」だった(原文ママ)。今思い返すと宗教勧誘か何かだった可能性があるが、自分は言外の意味を把握するのにしばらく時間がかかるタイプの人間なので、その時は素直に自分が満ち足りているかどうかを考えた。

このブログを熱心に読んでくれている人がいるのかどうかわからないが、最近の自分のブログの更新頻度を見てもらうと分かるように、毎日ダラダラしながら何らかの創作物に触れている。映画だったり漫画だったり小説だったりエトセトラ。学生最後のモラトリアムということもあり、文化系の人間が羨む悠々自適ライフを自分は思う存分満喫している。間違いなく今が人生の絶頂期だと思う。後の人生は下がるだけかと考えると気が重いが、割と未来を考えずにのんびりできているので、自分が頓馬であることを有り難く思っている。

こんな感じなので、自分は今過去一番に満たされているのだ。満ち足りている。やることがなく、やりたいことだけができる環境とはこれほどまでに良いものかと感じ入る反面、あと一年くらい留年でもすればよかったと(僕は毎年言っているんだこれを)悔やむこともある。

以上のことを頭に浮かべ、先ほどの後輩からの質問には「満ち足りている」と回答した。「何も欠けていると思わないんですか」というやや強い語気の質問にも「小説と漫画と映画とアニメで十分だなあ」と答えた。ひどく不満そうだった。

結局その場はそこで終わり、自分は後輩が何を言いたかったのかを聞けずじまいに研究室を後にする(会話が下手なので相手に話を振ることを忘れていた)。そんでもって家に帰ってこの文章を書いているわけだが、ふと他の人間はこういう時に何と答えるのだろうと気になった。自分は友達が非常に少ないので、同世代の人間と世間話をする機会があまりない。数少ないオタク友達はゲーミングPCと最新ガジェット(?)の話で持ちきりなのだが、そっち方面に疎い自分は蚊帳の外だ。生来の貧乏暮らしの癖が抜けないからだろうか、未だにお金や高価なものを疎んでしまうし、それに魅了されている人々を理解できないでいる。高いものには高いだけの価値があることを知ってはいても、その良さを知らない限りは食指が伸びないことを知っているので、あえて馬鹿でいることを心がけている。恐らくそのスタイルが問題なのだろう、もっと情報を得れば欲望が得られるはずだと思っても、現状で満たされているのに、わざわざ欲望を拡大しにいってどうすると考え直す。困ったことだ。身動きがとれない。

こんな感じなので、地位や名誉にも特別な思い入れがなく、今後のキャリアについても「文字を読んで書ければいいな」程度の曖昧さしかない。あと一ヶ月も経てば悪名高い「労働」なるものが始まるが、地方の中小企業ということもあるのだろうか、未だに自分が何をするのかも知らされないでいる。そんなわけで、周りの人間に仕事内容を聞かれた際には、頭に思いついた職種を適当に選んで口にしている。

結局のところ、自分は将来の見通しが非常に不鮮明で、自分事を他人事として捉えすぎている向きがあるようだ。しかも外界に関してあまりに無頓着で、自分の世界に閉じこもりすぎている節もある。まあ、本人がそれで満足しているならいいんじゃないのとは思うのだけれど、この歳からこのようでは老後が心配である。既に欲が枯れ果てた人間は、これ以上老化とともに何を悪魔に差し出せばよいのか。

楽そうな職場なので、過労によりメンタルが……ということにはならないだろう。ただ「労働」により得られる賃金が、使われることなく貯まり続ける未来が見える。親に使ってあげようにも、親も似たような性格なので家族揃って困る光景が目に浮かぶ。恋愛事には一切関心がない。可哀想なアフリカの子供達に寄付でもしようかと思ったが、そこまで人間ができていないのが自分なのだ。

見ず知らずのお前達に使うくらいなら俺が使う!

特に使い道はないのだけれど。*1

 

【210224追記】

創作物に関する欲があるのに無欲ではないのでは?というコメントをいただきましたが、まったくもってその通りですので、記事タイトルおよび本文中の「あまりに欲がなさすぎる」という文言に注釈として(創作物に関するのもの以外)を各自付与お願いします。

*1:小説と漫画と映画とアニメにお金は必要だが、月に4万円もあれば万事において事足りる。何と言ってもコスパが抜群なのだ。創作者のためにもっと価格を上げてくれてもいいんですよ