最近、なんちゃって健康オタクの自分が注目しているものに「口内環境」がある。口内環境と健康がうまく結びつかない人も多いだろうが、よくよく考えると口内で発生した細菌は喉を通って胃の中にいき、どこかしらのタイミングで血液に乗って身体中を駆け巡って悪さをするので、割とダイレクトに健康と結びついている(という認識でいる)。この辺りはちょっと前に紹介したテーマパーク8020に詳しいので各自読んでもらいたい。
さて、口内環境を気にし始めたのがちょうど去年の今頃だった気がする。テレビで「最近の若い人の1/3は歯周病ですよ」と語られていたのがきっかけで、「それだけ割合が高いのなら、たぶん俺も歯周病だろう」と思って歯医者に行くことにした。
ビンゴだった。
歯科医はかなり驚いていたようで、「歯周病って軽度だとあまり自覚症状がないのに、よく来られましたね。珍しいですよ」と言っていた。とはいえ自分は全然軽度よりの中度だったのでそれなりにちゃんと治療をする必要があった。
そこで出会った「歯間ブラシ」という存在を、俺は一生忘れない。
この歯間ブラシによって、自分のなかの「歯磨き」という概念は決定的に変えられた。歯間ブラシとは、文字通り「歯と歯の間に入れるブラシ」である。自分は二十数年生きていてこの存在を知らなかったのだが、今となっては「これ絶対に義務教育で教えるべきだろ」と確信している。「おかあさんといっしょ」でも紹介してほしい。歯磨きの唄に「歯間ブラシ」というワードを入れろ!こどもたちに「歯間ブラシ」という単語を、音から覚えさせるのだ!
さて、なぜここまで自分が歯間ブラシに拘るのかと言えば、それが歯石付着予防・歯周病予防のキーパーソンとなるからだ。思い出してほしいのが、歯医者に行った後のことである。よくわからないうちに歯石を取られ、やたらと歯と歯の間がスースーした覚えのある人も多いのではなかろうか。舌でベロベロやって「お、なんか隙間あるぞ」とやったことのある人は多いはずだ。しかし、今のあなたはどうだろう?歯と歯の間に隙間はあるだろうか?
ないのでは?
そう、多くの人は歯と歯の間に歯石が詰まっている。「だからなんなんだ」とあなたは聞く。私はこう答える。
私「歯石は口臭の原因にもなるし、歯周病菌の住処にもなる。つまり、歯石は口の中にない方がよろしいのです」
あなた「なるほど、しかしながら、毎日歯磨きをしているのにどうして歯石が付着するのでしょうか?」
それを教えてくれるのが、この歯間ブラシだ。
一度使ってみないとこの感動は分からないと思うので、ぜひ一度騙されたと思ってやってみて欲しい。理想のタイミングは、歯医者に行って歯石をしっかり取り除いてからだろう。ご飯をたべて歯磨きをして、最後に歯間ブラシを使うのである。そうすると、しっかり磨いたはずの歯の隙間から食べかすがうじゃうじゃと出てくるはずだ。これ、めちゃくちゃな衝撃である。個人的には天動説とか地動説とかその辺りのパラダイムシフトを感じた。自分が信じていたものが不完全だったことを知ったとき、人はここまで呆然とするのだと思い知った。大袈裟だと思うだろうか? 俺は「マジ」である。
驚くべきことに、歯ブラシによる歯磨きって全然万能ではないようだ。一生懸命歯磨きをしたところで、せいぜい食べかすを取り除けて5割くらいだろうか。けれども多くの人はまだこの事実に気付いていない。歯ブラシは万能だと思っている……気がする。
ここで、歯間ブラシをやっていない人の日常についてインタビューをしてみよう。
Q「あなたの一日を『歯磨き』の観点から教えてください」
A「そうですね。朝ご飯を食べて、歯ブラシで歯を磨くでしょう?(わたし追記:歯間には食べカスが残っている)そんでお昼ご飯を食べて、また歯ブラシで磨きますよね。(わたし追記:歯間にはさらに食べカスが詰まっていく)それから晩ご飯を食べて……ああ、たまに満腹になって歯磨きを忘れてそのまま寝ちゃいますねw(わたし追記:あーもう歯間がめちゃくちゃだよ。なに考えてんの?)」
何を考えているのかは自分でも分からないのだが、歯間ブラシを使わない人間の歯間には大量の食べカスが残っていて、それはいつしか歯垢(プラーク)となることは事実だ。昼夜問わず口内には唾液が分泌されているのだけれど、そこに含まれるカルシウムやリン酸がプラークに沈着し、石灰化して歯石となってしまう。
こういう論理で、私たちは歯の隙間を歯石によって埋め立てているのだ。恐ろしい……健康に良かれと思ってやっているのに、そこまで効果がないなんて。健康オタクにとっては一種のホラーではなかろうか。
ともかく、歯石は口臭と歯周病の原因にもなるし、最近は歯周病菌が認知症や糖尿病とも関係しているっぽいので、マジで除去した方がいいらしいです。
じゃあ、いきますよ。せ~の、
『みんなも歯間ブラシを始めよう!』
(笑顔の子ども達が学校のグラウンドに集まり、空に向かって手を振っている。その手に握られているのは歯間ブラシだ。よく見ると子ども達は人文字を作っていて、空撮するカメラマンは、そこに「歯」という文字を認める)
(End)
……と、ここまでは歯周病の予防の話である。もちろん、歯間ブラシも歯周病に一定の治療効果は持っている*1。
しかしながら、ある程度進行した歯周病には、歯間ブラシはやや力不足らしい。
それをようやく理解したのが、昨日のことだった。
「そろそろマジでV7やんないとダメですよ」
歯科医はそう言った。約一年、俺は歯間ブラシだけで歯周病を治そうとしてみたが、歯周病は多少は良くなったものの、「う~ん」な状態がずっと続いていた。
つまり、悪化こそしていないが、回復の方向に向かっていないのである。
実は、歯周病治療のメインウェポンとして、「V7」という歯ブラシをずっと前に歯科医からもらっていた。
ところがこれ、びっくりするほど使いにくい!
動画を見ても訳が分からず、腹が立ってしまってずっと放置していた。自分はこういう技術を必要とするものには滅法弱いのだ。自動車免許もMTなんて取れる気がしないからAT限定である。そういう人間なので、もらって一年間ずっと洗面所に放置していた。最初の方は「まあ難しいからね。歯間ブラシだけでもやってくれたらいいよ」と笑っていた歯科医も、今では「V7、いい加減にやりましょうね。よくなりませんから」と真顔で言うようになってしまった。怖い。笑顔につけ込みすぎたのかもしれない。
というわけで、人に怒られることにめちゃくちゃストレスを感じる激弱メンタルの自分は、流石にヤバいと思って必死にV7の練習をしました。そしてようやく今朝、V7を扱えるようになったのです。
歯間を通るブラシの毛。
おめでとう、自分。
やってみると、確かに歯間ブラシとは全然刺激の強さが違いました。特に奥歯のすっきり感は異常で、なるほど、このようにして歯肉に刺激を与えるのかという新たな気付きがありました。
次回の検診は1ヶ月後。果たして、少しでも歯周病はよくなるのか。あるいはまた歯科医に怒られてしまうのか。恐ろしい。恐ろしいが、やらねばならない。私は健康オタクだからね。
みなさんも早めに定期的に歯科検診に行きましょうね。もしかしたら行く気がなくても「国民皆歯科検診」によって行かざるを得ないかもしれませんが、これに関してはマジですごく良い政策だと思っているので、デカい声をあげさせてもらいます。
岸田内閣万歳! もちろん岸田内閣の関係者は全員歯間ブラシを使っていますよね!?
使っていても特に何も思いませんが……。どっちでもいいよ別に。
好きにしたら? みんなもう大人なんだし。
*1:歯間を差し入れする際に歯肉を刺激するため